生徒たちが待っている。
(主観的)あらすじ
修道院のガレキの下敷きになって眠っていたシンファニカは、懐かしい声に起こされてわずかに身じろぎしました。よほど地盤が緩んでいたのか、たったそれだけのことでガレキの山は崩れ、なだれ落ちる石クズとともにシンファニカは川へ身を投げ落とされてしまうのでした。
川から引き上げてくれた親切な村人に話を聞いてみると、なんとあれから5年もの歳月が過ぎているといいます。慌てて詳細な日付を確認するシンファニカ。聞いて、安堵しました。――よかった。遅刻はしないで済んだらしい。
荒みきった山道を越えて修道院への階段を上ると、そこにはすでに生徒がひとり、暗がりの奥に佇んでいるのが見えました。
暗く淀んだ瞳で覇気なくこちらを睨みつけ、うわごとのように何かつぶやいています。まるで砂埃を吐き出すかのようなかすれきったその声は、他に音のない廃墟のなかですらよく聞き取ることができません。ただ、槍を持つ右手にだけははち切れんほどの力強さが感じられました。
・・・ああ、やっぱりこうなってしまっていたか。
眉間を貫く涙の味、口から漏れかけた謝罪の言葉を必死に飲み込んで、シンファニカは努めて微笑み彼に手を差しのべました。
今日は約束していた同窓会の日。
まずは、彼に陽の光を浴びせてやりたいと、そう思いました。
感想
まずは想像以上に荒みきっていたディミトリの無残さに驚き、次に情け容赦なく銀武装した盗賊の大群に驚きました。
いざ戦ってみたら、なんかディミトリひとりで壊滅させられそうな勢いでしたけどね。この子いつの間にこんな強くなってたの。(相変わらず前線の置物状態継続中でした)
そしていくら待てどもドゥドゥーが来ない・・・! 行軍の指輪は持たせたはずなのに!
王国の情勢は予想していたよりはるかに芳しくなく、あからさまに毒婦っぽい顔立ちの女摂政が、積極的に帝国への国土割譲を進めているようです。勢力図を見るだけでわかる地獄絵図。首都に王手がかかってるじゃねーか。ディミトリが生を繋いでくれただけでも御の字です。
そのディミトリを生きながらえさせてくれたものが、明らかに例の妄執だというのは何とも複雑な気分ですが・・・。まあ、生きてシンファニカと再会してくれたならそれでいい。負債はこれから取り返すし、宿題はこれからやっつける。取り返しがつかないだなんて考えない!
シンファニカに付いているゲームプレイヤーは、生徒たちがそれぞれの人生に納得できる日まで守りぬくって決めているんですから。
ディミトリと生きてもう一度引き会わせてくれた妄執には感謝。けれどここからはそれを振りはらう戦いも始めなければなりません。
だって、それをどうにかしないことにはいつまで経っても私とシンファニカの目的は果たせず、いずれディミトリをゾンビ化する算段でもするしかなくなってしまう。生徒たちにはできるだけ長く生きてほしいと思っていますが、ただ生存してくれさえすればいいってものでもないんです。私の信念として。
(ディミトリ以外は)健やかに成長してくれた生徒たちを頼もしく思いつつ、ある意味ここからが教師としての本領、彼らの人生が素晴らしいものであることを保障する教育活動は続きます。
さしあたって戦争は彼らにとって相当に厄介なものらしいので、ついでにそちらもどうにかしないとね。
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