超人女子戦士ガリベンガーV 第30話感想 学問がやがて哲学にたどり着く。

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生徒役:電脳少女シロ、犬山たまき、八重沢なとり

マツタケは絶対人の言うことを聞いてくれません!

出演バーチャルYouTuber

電脳少女シロ

「先生のお話のされかたやふるまいもすごい見てて癒されて、うん。すごい上品」

 女の子は話したがりなイキモノだとよくいいますが、むしろ聞きたがりなところも強いバーチャルガール。自分が喋るべきところとそうじゃないところを見極め、自分だけでなく周りの人の面白いところもしっかり引き出します。特にガリベンガーVの先生がたはみんなその道を極めた魅力的な方々なので、話を引き出せば引き出すほど面白くなるわけです。
 やたらと語録が豊富、そしてやたらと逸話も豊富。というのも彼女は多趣味・多芸なうえ、やたらと柔軟な発想力も持ちあわせ、ついでに傍若無人な性格なため、自由にさせると大抵常人に理解できない奇矯な言動をしはじめるからです。彼女の動画を見てなんともいえない気持ちになったときは「シロちゃんの動画は為になるなあ」と、とりあえず納得しましょう。彼女はあなたが為になることを望んでいます。
 まるでアブない人のようですが、そして実際アブない人なのは確かなのですが、こう見えて彼女は共演者をよく見ています。聡明です。共演者の対応力を推し測り、ギリギリ捌ききれる程度のムチャ振りを仕掛けるのです。おかげでいつのまにか人脈の輪がずんどこ広がってきました。タチが悪いったらありゃしない。

犬山たまき

「安心してください。ついてますよ」

 あなたは男の娘という概念のなんたるかをご存じでしょうか? 古くは女装キャラとか女装っ子と呼ばれ、女装した男の子は一括してひとつの属性と見なされていました。ですが、業の深い私たちはあるときふと気付いてしまったのです。女装キャラには①女子校に潜入する主人公など、あくまで男性として感情移入したいキャラと、②男性というのは意外性ある設定ってだけで、それ以外は普通の女の子として見たいキャラ、2種類がいることに。実質的に男キャラとして見たいか女キャラとして見たいかという、受け手から見た主観的な違いにより、近年では前者を“女装男子”、後者を“男の娘”として属性が細分化されるようになりました。ちなみに私が好きなのは女装男子でも男の娘でもなく、精神入れ替わり系のTSもの(『君の名は。』みたいなやつ)です。そんなわけで、犬山たまきは設定こそ男性ですが実質的には間違いなく女の子なのです。
 ちなみに男の娘といえば、今どきストレートにはなかなか出せなくなった古典的な女の子らしさとか、女性キャラには大っぴらにやりにくくなった濃い目のセクハラ表現とかの受けとめ役としての需要も根強くありますが、犬山たまきの場合はそういう男の娘キャラへの幻想ガン無視で普通にサバサバ系女子です。サバサバ系女子なのでエロトークだけ無制限にウェルカム。

八重沢なとり

「小峠さんが初めての製造できる人になるかもしれない。鼻で」

 風紀とは日常生活についての決まりごと。すなわち八重沢なとりあるところに私立ばあちゃる学園アイドル部の日常があります。アイドル部のtwitterが盛り上がっているときは、たいがい彼女が他の部員に絡みにいって話題を広げているときです。アイドル部のtwitterが静かなときは、大抵彼女がお寝坊しているときです。(ウソです)
 彼女の最大の持ち味はなんといっても親しみやすさでしょう。イラストが上手かったりリズム感が優れていたり、何をやらせても器用にこなす優等生のはずなのですが、なぜだかいつも隙だらけ。自分から罰ゲームを提案しておいて、いざ罰を受ける段になるとぶーたれてみせたりね。おかげで視聴者からの反応のたぶん8割くらいはツッコミとイジリになっています。アレですね。誘い受けってヤツですね。
 ちなみにスカートの話は取り締まり対象なのでご注意を。万一「短い」と口にしようものならすぐさま稲穂のムチと風紀ビームが飛んできます。そのくせ本人が率先してスカートの話題を出したがる。これは罠だ!

授業構成おさらい(+ 補足事項)

超難問:マツタケの謎を解明せよ!

 吉村先生はマツタケ研究の第一人者です。京都大学で農学博士としてマツタケ研究を行ったのち、岩手県の岩泉まつたけ研究所所長を15年間務めあげ、現在は再び京都へ戻り、まつたけ十字軍という団体を立ち上げて活動しています。
 驚くべきはその成果。岩泉まつたけ研究所ではマツタケの栽培方法を俗説含めひとつひとつ検証し、実際に15年間で収量を4倍に増やしました。現在『岩泉まつたけ』は独自ブランドとして商標登録されるほどに成功しています。まつたけ十字軍においてはマツタケが絶滅状態にあった京都市岩倉地域において、再び採取できるほどに生育環境を回復。これまでの研究成果を生かし、ますますいっそうの栽培方法確立を進めています。

 今回の授業テーマはマツタケ。
 マツタケは人工栽培できないというのは知っている人も多いでしょう。だからこそ高価なわけですし。ですが、実は上記のとおり里山での栽培方法ならほぼ確立しているようです。私も今回初めて知りました。
 香りマツタケ味シメジ、という言葉があります。たまに「ここでいうシメジってホンシメジのこと(スーパーで売っているのはブナシメジ)で、この言葉は高級キノコそれぞれの風味を讃えているんだよ」と言っている人がいますが、実は勘違いです。マツタケもホンシメジも昔は庶民の食べ物でした。むしろ人工栽培品が流通する以前はシイタケのほうがよっぽど高級品。元々は大衆にとって身近で特に美味しい2大キノコを、愛着をもって「香りマツタケ味シメジ」と呼び慣わしていたわけですね。
 マツタケはかつて庶民の味で、現在では超高級品です。いったい何故か? その意味を考えながら吉村先生のお話を聞いてみると、今回の授業はいっそう味わい深いものになるかもしれません。

トピック1:この中でマツタケはどれ?

 この番組定番の導入。
 1つ目はシイタケ。腐朽菌の一種です。
 昔は高級品として扱われていました。というのも、お寺からの需要が高かったためです。肉食厳禁な仏教徒が日々の食事でダシの旨みを味わうためには、干し椎茸がどうしても必要不可欠だったわけですね。

 2つ目はエリンギ。これも腐朽菌の一種。
 腐朽菌というのは朽ち木に生えるキノコのことです。菌床をオガクズや米ヌカなどで代替可能なため、多くの種で人工栽培方法が確立されています。ちなみに軸が太いエリンギは日本人好みに品種改良されたもので、ヨーロッパでは逆に傘の大きいものが好まれているとか。

 3つ目はポルチーニ。菌根菌です。
 菌根菌というのは生きた木の根に生えるキノコのこと。ヨーロッパで高級食材として愛されているポルチーニですが、人工栽培できず、その高い需要を満たすことができていません。マツタケと同じ状況ですね。

 4つ目はバカマツタケ。こちらも菌根菌です。
 人工栽培に成功した数少ない菌根菌キノコです。ニュースリリース当時はメーカーの株価が早朝からストップ高に跳ねたそうな。マツタケそっくりな味らしくスーパーで手軽に買える日が今から楽しみですが、どうやらあと2~3年くらいはかかりそうな見通し。

 5つ目がマツタケ。もちろん菌根菌です。
 傘が開いていない若いもののほうが香りが強くて美味しいとされます。けれど若いものは土(というか枯れ草というか)に埋まっているため、見つけるのも掘り出すのも大変。そのあたりの手間や希少性があるため、ただでさえ高価なマツタケのなかでも、料亭なんかに卸される高級品には尋常じゃない値段がつきます。

 「なんか、結構、やっぱなんだろ、山に慣れてるからかな? 結構見たことあるような」
 どうやら山を持っている家の生まれらしい八重沢なとり。今回彼女がちょくちょく実体験込みのいい発言を言っているのもあって、先生もたくさんいい反応をしてくれていますね。
 「すごい関係ないんですけど、先生の爪めっちゃきれいじゃないですか?」
 これとかすごくいい着眼点。先生、ぴょんと教壇から顔を出していましたね。
 ウチの祖父母も昔よく山菜採りに行っていた(※ ただし土地持ちではない。ほら、東北民なので・・・)んですが、帰るといつも指先真っ黒。シーズン中は爪も短くギザギザしていました。マニキュアか。その手があったか。もっとも、祖父母はもういませんし、私自身は山菜採りに行かないので無用の知識になりそうですが。

 「先生のお話のされかたやふるまいもすごい見てて癒されて、うん。すごい上品。やはりマツタケに囲まれているからだ」
 電脳少女シロの話のつなげかたもさすが。60年間研究しつづけてきたものと自分の類似点を見つけられたらそりゃ嬉しいでしょうとも。だって、よっぽど好きじゃなきゃそんな長い付きあいできませんもん。本気で好きだって気持ちが言葉の端々から出てますもん。嬉しいでしょうよ。

トピック2:マツタケはどこに生える?

 「木の、やっぱ根元ですかね? なんかこう、掘り返さないといけないところにあるイメージありません?」
 「軟らかい土のところに生えてると思います。やっぱ固いとこう、キノコが『上に出れないー!』ってなっちゃいそうな気がして、土がやっぱふかふかーなところに生えてる気がします」

 犬山たまきと八重沢なとりがおおむね正解。どうでもいいですが今回の八重沢なとり、いつにも増してふにゃふにゃしていますね。

 マツタケが好む環境は、人の手が入った里山です。ほどよく木が間引かれていて土壌の保水力がさほど強くなく、乾燥しているため微生物の活動も多くない土質。枯れ草の腐葉土化が進まず地面に敷き積もっているのが特徴です。
 マツタケ自体は木の根っこから直接生えてくるわけじゃないので、土の固さ自体はさほど問題じゃありません。ふかふかの枯れ草に隠れているから掘り返さないといけないんです。

 それから、これも枯れ草に隠れているので本格的に探す人にしか見つけられないのですが、マツタケが生えるアカマツの木の周辺には「シロ」と呼ばれる白っぽい輪っかができます。
 これはマツタケ菌のコロニー。アカマツの根っこに寄生したマツタケ菌が土壌全体に広がることによってできるものです。

 そもそも大半の植物が根っこの部分で何かしらの菌類と共生しているというのは知っているでしょうか? 植物の根は先の方からおよそ9割がたの範囲に及んで何かしらの菌糸が入り込んでいます。これらは植物に代わって土壌の養分を吸収してくれたり、植物に必要な栄養と自分が欲しい栄養を融通しあってくれたりしています。
 完全な無菌状態では植物はなかなか大きく育つことができません。人間の腸にビフィズス菌その他が住んでいるのと似たようなものですね。
 アカマツとマツタケ菌の関係もまさにそれ。アカマツはマツタケ菌が寄生できる環境でこそよく育ちます。そして、マツタケの育つコロニー(シロ)は生きたアカマツの根のあるところにしかできません。

 「みんな。シロの場所を覚えて」

トピック3:なぜマツタケは貴重なの?

 「単純にやっぱ、採れる数が少ないんですかね?」
 犬山たまきの回答はもちろん正解。大衆食だった江戸時代はもちろん、昭和時代でも今よりはだいぶ安く流通していました。(それなりに料金は高いものの)産地では食べ放題に近いイベントが催されたこともあったようです。

 「庭師さんがなんか『松の手入れは難しいんじゃあ』って言ってたんですよ。なので、なんか松自体がすごい育てるのが難しいから、松の周りで採れることが多いマツタケは貴重なのかなって思った」
 肝心なのは電脳少女シロの出した回答です。

 この記事ではすでに最初のほうで書いたとおり、マツタケ菌は菌根菌です。生きた木の根っこに寄生させなければ育ってくれず、そのためシイタケなどのように工場で大量生産することができません。これがマツタケが高級品とされる最大の原因。
 だからこそ、吉村先生は完全栽培ではなく自然環境下でマツタケを育てる研究を長年してきたわけですが――。

 そもそもマツタケは生産量自体が昔に比べて減っているんですよ。アカマツの里山が減ったから。
 日本人が想像するかつての自然豊かな暮らし、人里近くにある豊かな山林には基本的に全て人間の手が入っていました。おおかたの樹木は地元の人間が薪や木材として利用するために植樹したものです。人間に都合がいいよう植えられ、人間の都合で間引かれ、人間の都合でライフサイクルが管理されていました。
 アカマツも例外ではありません。かつてアカマツは薪に利用するため植えられていました。ですが、今どき薪なんて使う人はほとんどいません。しかもアカマツは建築資材に使うため育てるには向かない木です。育てるのに手間がかかるうえ、木材に加工してからも古くなるにつれて曲がりが出やすい材質です。
 建築資材に向くのは杉です。育ちが早いし、縦にまっすぐ伸びるので建材としても扱いやすい。住宅の需要が高まった高度経済成長期、日本の里山は次々に他の樹木から杉へ植え換えられていきました。・・・すぐに輸入木材が入ってきて、その杉林も放置されるようになりましたが。(花粉症流行の原因ですね)

 アカマツは手がかかる割に使い道がないんです。だからマツタケの採れる里山も減りました。
 多くは杉に植え替えられました。そうじゃない山も手入れがされなくなった結果、雑多な植物が繁茂し、土壌が腐葉土化してマツタケが育つには向かない山に変わりました。現代の日本のマツタケの生産量は昭和初期と比較しておよそ45分の1にまで落ち込んでいるそうです。
 日本から里山が消滅したことによる弊害はおそらくあなたも知ってのとおり。マツタケが採れなくなっただけじゃありません。洪水の原因だったり、野生動物が街中に迷い込んできたり、いろいろ。

 「人工栽培できるものとしては、ホンシメジ。ホンシメジだけがなぜかできましたが――、マツタケは絶対人の言うことを聞いてくれません!」
 吉村先生のインタビュー記事を読んでみると、先生はマツタケの人工栽培には興味を持っていないそうです。若いころは人工栽培に向けた研究もしていたそうですが、マツタケと向きあいつづけるにつれて、むしろ自然栽培のほうにこそこだわるようになったとか。
 “あのマツタケが採取できる”。人にアカマツの里山を復活させる価値を訴えるための手段として、自分の研究成果を役立てられると考えたから。
 現在、吉村先生はマツタケの採れる里山を復活させる活動を行っているわけですが、それと並行して間引いた枝や落ち葉の利用方法を提案する活動もしています。先生のライフワーク自体が里山復活へ向けた啓蒙活動にもなっているんです。

 「へえ。(マツタケって)ただ者じゃないですね」
 「ええ。本当に。悔しい! 悔しいですけどね」

 それはそれとして、やっぱり研究者として英知の手が及ばないことには悔しさを覚える吉村先生かわいい。
 悔しがりながらもなんか嬉しそうですけど。
 本当にマツタケのことを愛しているんだなあって思います。ノロケ話を聞かされてるみたいな感じ。

トピック4:なぜマツタケは良い香りがする?

 「マツタケ名人がいい匂いなので、採るくだりで匂いがつく」
 「特別な、やっぱりいい匂いの出る胞子的なものをふりまきつづけてるんですかね?」
 「傷をつけてしまうとニンニクの匂いが出るのと同じように、キノコもその、切ったときにその切れ目から旨み成分が匂いになってぽわぽわぽわーって」

 質問の趣旨がぼやけているので回答もトッ散らかってしまっていますが、一番正解に近いのは犬山たまきということになるでしょうか。この子、考えすぎないでパパッと喋るおかげでフラットな回答が出やすいですね。
 電脳少女シロは今回いつにも増して先生へのリスペクトが篤いですね。それこそなにか嗅ぎとったんでしょうか。
 八重沢なとりは唐突に旨み成分とか言いだしているあたり、たぶん元々の料理知識から持ってきた回答ですねコレ。キノコ類は細胞を傷つけると旨みも香りも強くなります。干し椎茸が美味しいのは乾燥によって細胞壁が千々に千切れるから。冷凍するのも効果的です。プロの料理人もマツタケを調理する前に表面だけ軽く凍らせることがあるそうですよ。中まで凍らせてしまうと今度は食感が悪くなっちゃいますけどね。

 マツタケの香りは日本人だけでなく、ナメクジや虫などの小動物も好むようです。彼らに胞子を運ばせるために、彼ら好みの香りを出しているんじゃないかというのが先生の説。
 そういえば世界三大珍味のトリュフも西洋人にとってはかぐわしい香りだけれど、日本人からすると土の臭いだとか野郎の臭いだとかいいますもんね。土地ごとの動物が好む香りの傾向っていうのがあるのかもしれません。

 「たしかに小峠さん寄ってますもんね」
 「まんまとね。ホントまんまとよ」
 「ねー。すごい。そういう作戦なんだ」

トピックex:マツタケの美味しい食べ方

 味噌漬けってことは、これも浸透圧によって1日かけて細胞壁を壊しているヤツですね。美味しそう。マツタケは手が出ないけどあとで大きいシイタケ買ってきて試してみよう。

 「じっちゃが持ってきたやつはそれこそ炭火でちょっと炙って食べたりだったりとか、炊き込みご飯にしたりとかしてるんですけど、この食べかたは初めてです。美味しい! 家でちょっと広めたいと思います。うん。おいしー」
 この八重沢なとりを見ているときの先生の心底嬉しそうな顔よ。

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