魔法つかいプリキュア!総括感想 みらいたちの辿ってきた足跡を3つの視点から追いかけてみる。

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 先日最終回を迎えた魔法つかいプリキュア!を一言で言い表すなら、多くのものに祝福されてきた子どもたちがその永続を根拠に未来の明るいことを信じる物語でした。(一息)
 今回は魔法つかいプリキュア!がどのようにしてこの物語を描いてきたのかを振り返ってみようかと思います。

魔法つかいプリキュア!における3つの柱

 魔法つかいプリキュア!全50話の物語には大きく分けて3つの柱が貫いていました。
 そもそもプリキュアシリーズは物語のつくりかたとして、①初めに物語全体のテーマを設定→②それを元に各プリキュアごとの個別テーマを設定し、物語の中で掘り下げていく→③各プリキュアが掘り下げてきたものを束ね、全体テーマに対する答えとする。・・・という手続きを基本としています。プリキュアに限ったことではなく、チームヒーローもの定番の脚本術ですね。
 魔法つかいプリキュア!も例外ではなく、3つの柱はみらい、リコ、はーちゃんに概ね対応しています。比較的人数が少ないからか、はたまたはーちゃんの加入が遅れるからか、ところどころで担当に拘らない柔軟な描かれ方もしていますけどね。

 まずはこの3本柱を簡単に紹介しましょう。

祝福されていることを実感するストーリーライン・・・はーちゃん

 ひとつめの柱は、子どもたちが「自分は愛されている」という実感を得て安心する物語です。魔法つかいプリキュア!において「祝福」と「愛」はほぼ同義になります。
 子どもにとって世界は不思議なものだらけ。どうすればいいかわからなくて不安になってしまいます。それを、例えばお母さんが手を握っていてくれることによって安心し、勇気を得て、不思議なものに挑戦していくのです。
 子どもたちはやがて気付くでしょう。世の中にある大概のものは自分に優しくて、本当はちっとも恐いものなんかじゃなかったことに。やがて世界中の不思議なものはワクワクもんへと変わり、子どもたちの行動範囲は飛躍的に広がっていきます。
 このテーマは主にはーちゃんが担当しました。出自が謎に包まれていた彼女が、それでも自分の生を肯定するためには、今この瞬間に自分が愛されているという実感が必要でした。

現在を未来へと連続させるストーリーライン・・・リコ

 ふたつめの柱は、子どもたちが大人になる道を探る物語です。この要素は現在の自分に与えられている祝福を未来にも通用させるためのものです。
 子どもにとって大人は最初から大人です。お父さんは産まれたときからお父さん、お母さんは産まれたときからお母さん。だから、子どもはお花屋さんだとかケーキ屋さんだとか漠然とした夢は持つものの、どうすれば自分がお父さんお母さんのような大人になれるのか想像できません。
 それでも子どもたちは日々成長します。成長しながら、子どもたちはふと理解するのです。昨日、今日、明日、明後日。特別なことをしなくても、この何気ない日々の積み重ねがいつか自分が大人になる日に繋がっていることを。
 このテーマは主にリコが担当しました。Go!プリンセスプリキュアのような未来志向のストイックな努力によってではなく、毎日をより楽しいものに変えていく努力によって、夢に近づいていった彼女の姿はとてもユニークでした。

「悲しいお別れ」と戦うストーリーライン・・・みらい

 みっつめの柱は、誰もが経験するであろう暗い未来、「悲しいお別れ」との戦いです。暗い未来をやっつけることで、それと相反する明るい未来を信じられるようになるという構図です。「手を繋ぐ」というテーマを標榜しながら、「祝福」だの「未来」だの一見関係のない個別テーマを描いてきたのは、コイツをやっつけるためでした。
 しかし残念ながら現実世界においてこれを回避することは不可能です。正々堂々立ち向かうほかにコイツを乗り越える方法はありません。
 もし現在から続く祝福の力によって「悲しいお別れ」に打ち勝てたなら、それはつまり「手を繋ぐ」ことへの賛美にもなります。先ほども描いたとおり、祝福の正体はあまねく生命たち相互の愛情だからです。
 このテーマは主にみらいが担当しました。振り返ってみれば、彼女が心乱されていたのは唯一、別れに関する出来事だけだったんですよね。

魔法つかいプリキュア!の辿ってきた足跡

 以下は話数ごとに3つの柱がどんな描かれ方をしたかを振り返ってみたものです。私の勘と独断でテキトーに区切ってあります。
 放送当時の感想文とは違う解釈になっている部分も多々ありますが、初見と全体を俯瞰してからでは見方が変わるものなんだと理解してください。いつかまたもう一度最初から感想文を書いてみたいものですね。いったいどのくらい印象が変わるのやら。(その前にいいかげんドキドキ!プリキュアの感想文の続きも書かなきゃですが)

1. 魔法学校編

第1話 出会いはミラクルでマジカル! 魔法のプリキュア誕生!
第2話 ワクワクの魔法学校へ! 校長先生はどこ!?
第3話 魔法商店街でショッピング! 目覚めるルビーの力!
第4話 魔法の授業スタート! ふしぎなちょうちょを探せ!
第5話 氷の島ですれ違い!? 魔法がつなぐ友情!
第6話 特訓! 魔法の杖! 先生はリコのお姉ちゃん!?
第7話 人魚の里の魔法! よみがえるサファイアの想い!
第8話 魔法のほうきでGO! ペガサス親子を救え!
第9話 さよなら魔法界!? みらいとリコの最終テスト!

 みらいとリコの出会いから最初のお別れの危機まで。起承転結の「起」に当たる部分なので、まずはみらいたちのおかれている現状を紹介しています。
 見た目の印象に反して初めから割と優秀な主人公だったみらいとリコでしたが、当然というか何というか、テーマ的な部分ではズタボロに貧弱です。

祝福されていることを実感するストーリーライン

「お婆ちゃん、いつも私を信じてくれるんだ。だから何でも正直に話せるの」
「私の大切なみんなの街になんてことしてくれるのよ!」
「あの星はきっとあなた自身が引き寄せた。あなたは素晴らしい魔法つかいになれる、そう思った。だからペンダントを託したのよ」

 この範囲においては第3話、第6話が特に重要ですね。みらいとリコがいかに周囲から愛されているかを提示し、また、鬱屈していたリコがその愛を受け入れるまでの過程が描かれました。
 リコがずいぶんと屈折した性格に描かれていたため、当初は彼女の家庭環境を少し心配したものです。それが覆った第3話は個人的に印象深いエピソード。例えどんな難しい家庭環境であれ、彼らがいてくれたならリコの心根はまっすぐ育っているはずだと信じることができました。まあ、そもそもが全くの杞憂だったのですが。
 家族や魔法商店街の人々が優しく見守ってくれていたにもかかわらず、リコはひとりで自分を追い詰めていました。彼女が魔法を上手く使えずにいたのはそのせい。「手を繋ぐ」テーマに反して、差し出されていた祝福の手のひらに気付けずにいたんですね。
 初めから祝福されていたことを自覚し、姉であるリズ先生の愛情を素直に受け入れることで、彼女の魔法は劇中で初めて成功します。

現在を未来へと連続させるストーリーライン

「落ちてないし!」
「リンクルストーン・エメラルドを見つければ先生たちも認めてくれる。補習を受けなくても済むと思ったんだけど」
「立派な魔法つかいってどんな魔法つかいなの?」

 第3話でのみらいの指摘が鋭かったですね。Go!プリンセスプリキュアにおいて実態のない夢はむしろ無限の成長動機として強く肯定されたものですが、魔法つかいプリキュア!のスタンスは違うと早期に明らかにされました。
 リコは理想の未来(夢)を追いかけるあまり、今の自分を受け入れられずにいるという危うさを持っていました。それを真の意味で解決するのは次の範囲に任せるとして、ひとまずここでは未来志向のリコのダメっぷりと現在志向のみらいの優秀さを対比する形で問題点を浮き彫りにしています。

「悲しいお別れ」と戦うストーリーライン

「リコちゃん・・・! 来てくれてありがとう」
「私はリコじゃなきゃ嫌だ! リコと一緒に合格するの!」
「あれ、おかしいな。もうひとりでも魔法うまく使えるようになったと思ったんだけどな・・・」

 出会ったばかりのみらいとリコでしたが、第9話のお別れを筆頭に、さっそくいくつかの別れの影が描かれます。第4話での迷子の不安、第6話のペンダントにまつわるリコの嘆きなど。
 天真爛漫に振るまっているように見えたみらいでしたが、その実、この頃から彼女はひとりぼっちになることに対して人一倍ナイーブな少女として描かれていました。
 第9話でのお別れは初めからわかりきっていた必然で、それなのにみらいたちにできたのは別れの悲しみをじっと耐え忍ぶことだけでした。校長先生がナシマホウ界にリンクルストーンを感知したから別れずに済んだものの、このときのみらいたちはまだ「悲しいお別れ」に手も足も出なかったわけです。

2. ナシマホウ界編

第10話 ただいま! ナシマホウ界! ってリコはどこ?
第11話 モフルンの初登校? ワクワクのトパーズをゲットモフ!
第12話 満天の星空とみらいの思い出
第13話 たのしいBBQ! 幸せたくさんみ~つけた!
第14話 みんな花マル! テスト大作戦!
第15話 ハチャメチャ大混乱! はーちゃん七変化!
第16話 久しぶりっ! 補習メイトがやってきた!
第17話 水晶さんおしえて! おばあちゃんの思い出の人
第18話 魔法界再び! リンクルストーンを取り返せ!
第19話 探検&冒険! 魔法のとびらのナゾ!
第20話 ドタバタでヤバスギ! 魔法界に生まれたエメラルド!
第21話 STOP! 闇の魔法! プリキュアVSドクロクシー!
第22話 芽生える新たな伝説! キュアフェリーチェ誕生!

 我ながらなんと中途半端な区切り位置。けれどこの次から明らかに独立したエピソードが語られるのでここでしか区切れません。
 魔法つかいプリキュア!のエブリデイマジックとしての側面が本格化しだした範囲ですし、あまりにも雑な登場のトパーズ、闇の魔法つかいたちの退場と関係なしに描かれる日常話など、魔法つかいプリキュア!独自のテイストがようやく理解されはじめた時期でもあります。色々と重要な要素がいっぱいです。

祝福されていることを実感するストーリーライン

「星がすっごくきれいだったの。暗くて恐かったはずなのに、キラキラしてて明るくて」
「はーちゃんにはお母さんが3人いるモフ?」
「そんなことない! ミラクルとマジカルは諦めない! プリキュアは強い、強いのー!!」

 キュアフェリーチェ登場の前段階として、トコトコ期のはーちゃんにスポットライトが当たった時期です。この頃のはーちゃんはまだみらいたちの子どもとして一方的にお世話される側。イタズラしてみらいたちに心配をかけたり、リンクルストーンを守ろうとして力及ばなかったり、まだまだ未熟な部分が目立ちます。けれどみらいたちはそんなはーちゃんを決して叱らず、むしろ親としていっそう頑張ろうと努力します。
 そんなみらいたちを見ていたからこそ、はーちゃんは叱られずとも自分なりに反省し、萎縮することなく自分の信じるステキなことを実践し続ける少女に成長しました。自分を祝福してくれるみらいたちへの信頼と尊敬がはーちゃんという人物の土台です。
 幼いみらいが星空に気付いて泣きやんだエピソードも見逃せない部分ですね。私たちに祝福をくれるのは何も生命たちだけではありません。この世界そのものも私たちを祝福してくれています。だからこそ奇跡も魔法も実在する、という理屈に繋がる重要な要素ですね。この点については後にマザー・ラパーパとして擬人化もされます。

現在を未来へと連続させるストーリーライン

「見方が変わったのね」
「みらいと一緒に頑張って探したら、見つかったときにとっても幸せな気持ちになれると思うの」
「無駄な努力なんてない。どんなことでも一生懸命頑張れば、きっと自分の力になる」

 前半の魔法つかいプリキュア!を語るうえで最も重要だったワードのひとつが「見方が変わる」でした。このブログのみならず、あちこちの感想ブログでこのワードが頻出したものです。
 「立派な魔法つかいになる」という夢ばかり追いかけて空回りしていたリコ。そんなリコの転機となったのが、一見魔法の研鑽とは何の関係もないナシマホウ界での生活と、第12話でみらいが聞かせてくれた「見方が変わった」昔語りでした。彼女の興味の先が未来(夢)から現在(日常)へと移ります。
 これより以後、リコは時々不安を感じながらも周囲の祝福に支えられながら、自分なりに夢に至る道を完成させていくことになります。

「悲しいお別れ」と戦うストーリーライン

「きっとみんなでこうして見てるからだよ。こっちとかあっちの世界とか関係なくさ」
「はーちゃんを返して!」
「リコ、帰っちゃうモフ・・・?」

 結論からいえば「悲しいお別れ」との戦いは今回も敗北です。第21話でドクロクシーを倒してもはーちゃんは帰ってこず、第22話ではリコとすらお別れすることになるところでした。やり過ごせたのは単にはーちゃんが自力で帰ってきたという偶然(あるいは世界からの祝福)のおかげです。さすがラスボス、手強い。
 ただし第9話よりは成長しています。みらいたちは自分たちがどうしたいか、どうしてほしいかの意志表示ができるようになりました。第9話ではこれすらできずに泣いていたんですよね・・・。
 今回は力及びませんでしたが、この成長が次回さっそく成果をもたらすことになります。

3. キュアフェリーチェ強化月間

第23話 これからもよろしく! おかえり、はーちゃん!
第24話 ワクワクリフォーム! はーちゃんのお部屋づくり!
第25話 夏だ! 海だ! 大はしゃぎ! かき氷が食べた~いっ!
第26話 想いはみんな一緒! はーちゃんのクッキー

 プリキュア恒例の追加戦士販促期間。はーちゃんにスポットが当てられるため、必然として彼女が担う「祝福」周りのテーマが多く進行します。

祝福されていることを実感するストーリーライン

「私は力になりたい。みらい、リコ、モフルン。私を大切にしてくれた、守ってくれたみんなの力になりたい。だから!」
「大丈夫。はーちゃんの気持ち、ちゃんとわかってるよ」「それに、この程度のこと私たちなんてことないし」
「はーちゃんの気持ちがいっぱい詰まったクッキーなんだよ。すごく嬉しくて、美味しかった!」

 ずっとみらいたちに守られてきたはーちゃんが、今度は自分がプリキュアになってみらいたちを守ります。このあたりを転機として、はーちゃんのみならずみらいたちも祝福される側から祝福する側に変わります。けれど彼女たちは一方的に祝福する側というわけでもありません。キュアミラクルキュアマジカルも守られっぱなしではなくキュアフェリーチェと助けあうように、彼女たちは祝福を受けながら祝福する存在になります。後に太陽魔法として顕現する、魔法つかいプリキュア!後半の基本的な思想です。
 海水浴場や商店街、はーちゃんが人の多いところで好んで魔法を使うのは、彼女の魔法が祝福そのものだからですね。その証拠に魔法を目撃した人はみんな笑顔になります。さすがは幸せを運ぶ妖精。マザー・ラパーパを継ぐ者。
 例えやり方を間違えてもはーちゃんは必ずまた笑顔を取り戻します。彼女が摩耗した分だけ、みらいたちがまたすぐに彼女を祝福してくれるからです。

現在を未来へと連続させるストーリーライン

「今まで飲んだミルクよりずっとずっと美味しい。なにこれ、どんな魔法?」
「魔法は万能ではありません。どれだけ強い力を手に入れたとしても、大切なものはそれを使う者の清き心、そして熱き思い」
「モフルンのビーズ。みんなでお部屋をつくること。何でも魔法に頼っていたらわからないワクワクがあるんだね」

 前の範囲で散々語りつくした分、こちらの範囲ではこのテーマは第24話だけでしか語られません。テーマ的に新しく踏み込んだ要素はあまり多くありませんが、見方を変えるだけでなく、努力することが強調されていることが特徴ですね。
 努力すること自体は現在と未来を連続させる要素ではありませんが、現在をより良くする努力の積み重ねで未来を素晴らしいものに変える、というリコ理論の一部として最終的に取り込まれることになります。

「悲しいお別れ」と戦うストーリーライン

「キュアップ・ラパパ! 大好きなみらいとリコとモフルンとずっーと一緒にいられますように!」
「素直な言の葉はときに魔法となって人の心を動かす」
「エメラルドと私がいるからみんなまで狙われちゃう。私がいたらいつまでもみんなを困らせちゃう」

 条件付きながらついに初勝利です。第23話の魔法の言葉や校長先生のセリフが第49話でも再び重要になってくることからもわかるように、今回の方針が「悲しいお別れ」と戦うための基本骨子となります。私たちは世界中あらゆるものから祝福を受けているのですから、そこから一番多くの力を引きだすためには「素直に助けを求めること」が一番大切になるわけです。
 こう書くと無責任な他人任せって印象になってしまいますが、前提として心から希望を信じて努力し続けることもまた重要になっているので、そう簡単にはいきません。例えば第26話のヤモー戦のように心が不安で陰っていては、いくら不幸を嘆いていてもエメラルドは輝いてくれないのです。

4. 夏休み後半戦

第27話 Let’sエンジョイ! 魔法学校の夏休み!
第28話 魔法界の夏祭り! 花火よ、たかくあがれ!
第29話 新たな魔法の物語! 主役はモフデレラ!?
第30話 魔法の自由研究! が、終わらな~い!!
第31話 結晶する想い! 虹色のアレキサンドライト!!

 そういえば夏休みが2ヶ月もあったんですね。うらやましい。
 この範囲は総じて溜め回になっています。デウスマストの気配を匂わせたり成長したジュンたちの様子を描いたりしつつ、みらいたちそれぞれの問題を改めて確認することで、以降の彼女たちの爆発的な成長に繋げています。
 モフデレラ? ・・・あれは伝説ですし。

祝福されていることを実感するストーリーライン

「モフデレラの3人を思う気持ちが自らを魔法つかいに変えたというのか」
「私、やっぱりみんなと違うのかな」「ふたりが来たら元気になったモフ」
「だけど、悩みなんて忘れるくらい、みんなといると楽しい」

 第29話モフデレラ回を経て、祝福すること、されることが具体的な力となります。ここではまだ夢の世界の出来事ですが、魔法つかいプリキュア!は現実に魔法が存在することを立証する物語でもあります。後に祝福の力は「奇跡」だとか「魔法」だとか呼ばれるものとして現実に発現することになります。
 はーちゃんに提示される問題は出自が謎に包まれていることへの不安です。結局のところ彼女の使う魔法はマザー・ラパーパの力であり、実際に「みんなと違う」存在でした。彼女の不安を取り払えるのは真実ではありません。みらいたちがくれる祝福、今愛されている自分への肯定感です。

現在を未来へと連続させるストーリーライン

「おしまいになんてしない。だって、魔法界のみんなで花火を見るなんてすごくワクワクもんじゃないの」
「小さい頃に、リコはいつも私と一緒に魔法の練習をしてたわよね。あの頃からずっと思ってた。もっとたくさんのにも魔法を教えてあげられたらいいなって」
「立派な魔法つかいって何なのかやっぱりまだわからない。立派な魔法って何なのか。でも、魔法があったから繋がれた」

 リコの夢はふんわりと空虚で、何をしたらそこにたどり着くのか、そもそもそれがどんなものなのかすら見当もつかないものです。おぼろげながら理想像のイメージができていたGo!プリンセスプリキュアの春野はるかとはこの点で決定的に異なります。似たようながむしゃらな努力をしているにも関わらず結果が振るわなかったのはそのためです。
 だからリコは「見方を変える」以後、未来ではなく現在を起点とした、別のアプローチを模索していました。
 少なくとも花火の準備はしておかなければ、みらいたちの成果に関係なく花火を打ち上げることは絶対にできません。少なくともリコと魔法の練習をした思い出がなければ、リズ先生がどんなに成績優秀であったとしても今のような生徒思いの教師にはならなかったでしょう。
 いずれも現在を起点に未来を志向する考え方です。ここまで考えが至ったなら、もう答えは出たようなもの。

「悲しいお別れ」と戦うストーリーライン

「悲しいお別れは、もうしたくないんです」
「ミラクル! ひとりで無茶しないの!」「みんなで一緒に、ですよね」
「あの時のみらいくんの強いまなざし・・・。大丈夫じゃ。彼女なら、彼女たちなら!」

 第27話は私が毎週のように「悲しいお別れ」云々語り出したきっかけのエピソードですね。それでもコイツそのものがラスボスになるとは思いもしませんでしたけれど。
 この頃のみらいの言動は非常に危ういものでしたが、こうして改めて振り返ってみると、案外ここまでの時点でそれなりに戦うための準備は整っていたんですね。どうりで危なっかしさの割に校長先生に信頼されてたわけです。
 ひとりで猪突猛進に突っ込むのは論外ですが、信念を持つこと自体は「悲しいお別れ」との戦いにおいて有効です。未来なんて元々見通しのきかない暗闇のようなものなんですから、根拠なく何かを信じられるくらいでちょうどいい。なにせそれだけで未来を楽観視することができるんですから。つまりは「希望」ってやつです。

5. ミトメール編

第32話 ワクワクいっぱい! はーちゃんの学校生活!
第33話 すれ違う想い! 父と娘のビミョ~な1日!
第34話 ドキドキ! 初恋の味はイチゴメロンパン!?
第35話 生徒会長総選挙! リコに清き一票を!
第36話 みらいとモフルン、ときどきチクルン! って誰!?
第37話 魔法が決め手? 冷凍みかんのレシピ!
第38話 甘い? 甘くない? 魔法のかぼちゃ祭り!
第39話 今日はハロウィン! み~んな笑顔になぁれ!
第40話 愛情いっぱいのおめでとう! リコの誕生日!
第41話 ジュエリーな毎日! 魔法学校へ放課後留学!
第42話 チクルンにとどけ! 想いをのせた魔法のプリン!

 物語の円熟期。成長したみらいたちが周りの人々と深く関わりだすようになり、このあたりからドラマがますます重厚になりました。

祝福されていることを実感するストーリーライン

「部長さんがみんなをワクワクさせたら、みんなもきっとワクワクのプレイをしてくれるよね」
「リコはね、私を優しく見守ってくれたの。私を暖かく育ててくれた。わかるの。それはきっとリコも同じように家族から優しさをいっぱいもらったからだって」
「きっとみらいがたくさんおしゃべりしてくれたから、モフルンもみらいに何か伝えたいと思うようになったモフ」

 この頃になると、みらいたちはすっかり自分たちが祝福されていることを前提にものを考えるようになります。それが当たり前になることで、今度は誰が/どうして祝福してくれているのかという部分に考えが及ぶようになります。
 どうしてあなたが祝福されるのかといえば、それはあなたを祝福してくれている人もまた他の誰かから祝福されたからです。その他の誰かもまた、さらに別の誰かから祝福されたのでしょう。連綿と続く祝福の連鎖。すべての子どもたちはその末端にいます。
 ここに考え至って、みらいたちは祝福する側に回ることを実践しはじめます。

現在を未来へと連続させるストーリーライン

「すごく好きな人ができて、そのために頑張ったんだよ!? それを意味がなかったなんて言わないで!」
「ゆうとくんは最初から自分の答えを持っていて、ゆうとくんが生徒会長ならきっとステキな学校になります」
「今日はありがとう。来年もお祝いしてくれたら嬉しいな」

 恋や生徒会活動といった夢のために努力する人たちと、それを応援する人たちの姿が描かれます。未来のための努力が現在の幸福を損なわないのかという検証です。
 まゆみの努力が勝木さんとの友情を築いたように、ゆうとくんの努力がリコやはーちゃんの支持を集めたように、たとえ夢のための努力であっても、同時に現在にもちゃんと恩恵があることを示します。思えば夢のために空回りしていた頃のリコもたくさんの人に愛されていました。未来のための努力と現在の幸福は共存します。
 誕生会への感謝の言葉はこれらに対する逆説ですね。祝ってくれた家族を幸せな気持ちにすることで、また次の誕生会が催される未来を紡ぎます。これもまた現在を起点に未来を志向する発想です。

「悲しいお別れ」と戦うストーリーライン

「みらいがいるとみんなみーんな笑顔になって、仲よしになれるモフ。そんなみらいがモフルンは大好きモフ」
「私、思うんだ。ワクワクは私ひとりで運んできたんじゃない。みんなと出会って生まれたんだって」
「友達とわかり合えたワクワクが、トパーズのパワーをよりワクワクさせたのです!」

 前範囲から引き続き未来を照らす希望を編んでいきます。直接「悲しいお別れ」と戦うわけではありませんが、その下準備といったところですね。
 前範囲ではみらいひとりによる希望がフォーカスされましたが、こちらではみんなに希望を振りまくこと、その希望を束ねてより大きな希望をつくることが描かれます。これまでみらいたちは自分が無力だから「悲しいお別れ」に敗北し続けてきたわけですから、その対策としてみんなで繋がろうというのは妥当な答えですね。

6. 「悲しいお別れ」との決戦

第43話 いざ妖精の里へ! あかされる魔法界のヒミツ!
第44話 モフルン大奮闘! みんな子供になっちゃった!?
第45話 想いは時を超えて・・・! 友情のかたち!
第46話 魔法のクリスマス! みらい、サンタになる!?
第47話 それぞれの願い! 明日はどっちだー?
第48話 終わりなき混沌! デウスマストの世界!!
第49話 さよなら・・・魔法つかい! 奇跡の魔法よ、もう一度!
第50話 キュアップ・ラパパ! 未来もいい日になあれ!!

 壮大な設定が次々と開示され、そしてそんなものとは全く関係のないラスボスとの最後の戦いが繰り広げられました。3つの物語軸がひとつに収束します。

祝福されていることを実感するストーリーライン

「魔法は願い。奇跡を願う思いが繋がり、いつか世界に届いてくれるよう祈りを込めて与えた魔法の名前、それがプリキュア」
「ひとつの大地からあふれ出たたくさんの生命は出会い、そして心を繋ぐ。宝石のように固く結びついた生命。そこから放たれる光はいかなる災いも困難もはねのけ、誰にも壊すことも、飲み込むこともできはしない! この輝きこそがエメラルド!」
「素直な言葉は力になる。思いが繋がっていれば、それは奇跡を起こすのよ」

 祝福し、祝福される連鎖はあまねく生命を股にかけて繋がっています。誰もがよりよい未来を願って祝福しています。私たちの住む世界はそんな未来への祝福の集合体です。
 それほどに大きな力ですから、もしあなたが未来の希望を求めて心から願うなら、世界はきっとあなたのために奇跡を起こしてくれるでしょう。
 自分が祝福されていることを実感し、やがて自らを含めた祝福の連鎖を発見するに至った一連の物語は、こうして「悲しいお別れ」を打ち倒すための力となりました。

現在を未来へと連続させるストーリーライン

「我らの生き様、茶番などと言わせておくものか!」
「キュアップ・ラパパ! 私たちは必ず、絶対、また会える! ・・・これでバッチリよね。魔法、かけたから」
「今私いろんな国のことを勉強してるんだ。お母さんのお店の仕入れで海外に行ったりね。もっと知りたいんだ、私の世界のワクワクを。そしていつか・・・」

 現在の幸福を尊重し、そこを起点として未来を志向する考え方は、現在に存在する希望の輝きを未来まで届けることを可能としました。
 日々の日常を楽しみつつ夢を追いかける努力を欠かさない限り、そこにはどんな悲しみも入り込む余地はありません。
 世界の見方を変え、現在から未来に至るまで希望が連続する可能性を示した一連の物語は、こうして「悲しいお別れ」に負けないための力となりました。

「悲しいお別れ」と戦うストーリーライン

「時が経っていても、離れていても、どこかで繋がっていたのかもしれないわ」
「夕日が沈んだらみんなおうちに帰る時間。でも新しい朝が、明日が来ればまた会える。夕日がキレイなのはそう信じてるから」
「キュアップ・ラパパ! リコに、みんなに、会いたい・・・」
「私、生徒たちにも教えてあげたいの。世界にはステキな出会いがたくさんあって、ステキな出会いは新しい自分にも出会わせてくれるって」

 物語序盤から長く続いたプリキュアと「悲しいお別れ」との戦いは、みらいたちが太陽の魔法を紡ぐことで決着しました。
 太陽の魔法とは、あまねく生命の持つ祝福の力を束ね、現在から連続する未来の先まで照らし出す希望の力。要は手と手を繋ぐことでもたらされる奇跡の魔法です。
 現実として別れというものはどんなものであっても不可避です。けれど現在から未来に至るまで希望を信じ続ければ悲しむ必要なんてないし、いつか会えると信じ続けていれば必ず再会できるものです。
 こうして「悲しいお別れ」はみごと打ち倒されました。あとに残るものは再会する日を心待ちにするワクワクだけです。

 魔法の杖もリンクルストーンも持たないみらいが奇跡の魔法を行使できた意義は大きいと思います。
 それはつまり、私たちの世界には魔法があって、みらいのように心から願えば、私たちも魔法を使えるかもしれないってことですから。
 少なくとも私たちの世界に祝福や希望は実在します。奇跡としか思えない不思議なこともたくさん起こっています。

 それはいったいどうしてか。
 もしかすると世界はとびきり優しくて、みらいのようないい子に優先して奇跡をプレゼントしてくれるのかもしれない。
 そう想像を巡らすと、なんだか未来が明るいような、幸せな気持ちになりませんか?
 私はこの想像に幸せなものを感じるので、奇跡の魔法の実在を信じます。子どもたちが私よりも幸せな未来を築いてくれますように。

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    コメント

    1. MY より:

      SECRET: 0
      PASS: 6efe87f3d0d6828c1c5047523a3dee65
      初めてコメントさせていただきます。
      現在5歳の娘を持つ父親です。
      毎週魔法つかいプリキュアを子供と一緒に視聴しつつ、いつからかこちらのブログの感想を読むことも併せて習慣になっていました。
      毎回こちらのブログを読むたびに、自分が見落としていた要素や物語のテーマを発見し、魔法つかいプリキュアを視聴するのがもっと楽しみになっていきました。

      子供と一緒に同じテレビ番組を見て楽しむ、きっと人生においてかけがえのないひとときを、さらに楽しいものにしていただいて、どうもありがとうございます。

      娘はキラキラプリキュアアラモードも気に入っているので、
      今後の更新も楽しみにしています。

      ただ、くれぐれもご無理をなさらないように、ご自分のペースでご執筆なさってください。
      あなたにも祝福を。

    2. 疲ぃ より:

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       祝福ありがとうございます。
       我ながら毎回何かしら祈ってるなーと自己ツッコミしていたところですが、ついに他人から指摘されてしまいました。これからも続けようと思います。
       他人の感想を読むのって面白いですよね。私も毎週楽しみにしているブログがいくつかありますが、読んでいると自分には無かった視点に気付くことができて、世界が広がる心地です。

       あなたとあなたのお子さんの、幸せな現在と輝かしい未来が守られますように。

    3. MY より:

      SECRET: 0
      PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
      返信ありがとうございます。
      他人様の感想にコメントをしたことも初めてなので、これでいったん最後とさせていただきます。

      このブログで書かれる魔法つかいプリキュアの感想は、ものすごく文章が美しくて、そして書き手の優しい人柄が伝わってきて、僕が子供に対する接し方にまでも良い影響を頂きました。

      特別な娘を持つ平凡な父親から、改めてあなたに祝福を。
      ありがとうございます。

    4. 疲ぃ より:

      SECRET: 0
      PASS: 80f390687300bdae4fc284a720ece2aa
       また機会があればコメントくださいね。
       あんまり褒め倒されると座りが悪くなっちゃいますけれども。

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