スイーツが持つ力、キラキラル。人の心の中でその輝きはいっそう強くなる。
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(主観的)あらすじ
前回の戦いで悪い妖精たちは良い心を取り戻しました。悪行を反省する妖精たちに、いちかはスイーツを配ります。悲しい顔はもうおしまい。みんなでスイーツを食べればみんな笑顔で仲よしです。
時を同じくしていちかの学校にイケメン転校生がやってきました。黒樹リオくん。彼はいちかに並々ならぬ興味がある様子。けれどスイーツづくりは苦手なようで、誘っても一緒に手伝ってはくれません。その割にはスイーツづくりに詳しいようですが・・・?
実はリオの正体は妖精たちを悪の道にそそのかした悪人・ジュリオ。スイーツのキラキラルが人の心の中で輝きを増すメカニズムに興味がある彼は、キラキラパティスリーのスイーツを食べたクラスメイトの心からキラキラルを奪ってしまいます。プリキュアの活躍で退けることはできたものの、彼は今日も変わらず黒樹リオとしていちかの学校に通い続けるのでした。
新展開。敵幹部が入れ替わること自体は過去のシリーズでもたまにあったことですが、敵が変わるのに合わせて物語のテーマ自体も変化するのはもしかすると初の試みかもしれませんね。
ジュリオはどうやら昔はお菓子をつくる側だったようですが、何らかの事情でスイーツに憎しみを抱いている様子。こうなるといちかたちがこれまで描いてきた「スイーツをつくる幸せ」だけでは彼を説得することができません。そこでスポットライトを浴びるのが「スイーツを食べる幸せ」。プリキュアの守るべきものが、スイーツそのものからスイーツを食べた人の心へとステップアップしていきます。
・・・当然、そうなると今度は「スイーツを食べる幸せ」に対しても反証が必要になってくるはずですが・・・あと2回くらいは敵がまた入れ替わるんでしょうか? 次は「スイーツを贈る幸せ」あたり?
論理未完成
「たかがスイーツだろ。キラキラルの容れ物じゃねえか」
前回ガミーがそんなことを言っていました。
キラキラプリキュアアラモードがこれまで描いてきた物語の文脈からすると、実はこの考え方はそう間違ってもいません。これまではいちかたちがスイーツをつくるところにばかり注目して、「スイーツをつくる幸せ」に偏重した描き方をしてきたからです。
スイーツはつくり手の思いがいっぱい込められたもの。だから食べると幸せな気持ちになる。
聞こえはいいですが、この理屈において幸せ(=キラキラル)を生みだしているのはスイーツをつくる側だけです。食べる側はただそれを消費するだけ。裏を返せば確かに幸せなものを運ぶだけの「容れ物」と言えなくもありません。
ガミーたち悪い妖精が問答無用でやっつけられる外敵として描かれてしまっていた理由がここにあります。ぶっちゃけてしまえば、つまりまだちゃんと反論できないから。
今のところ、いちかたちの活動はつくることだけで完結してしまっています。
お母さんへの思いを捨てたくないという自己都合のうさぎショートケーキ。誰かと一緒にスイーツづくりを楽しみたいという願いを込めたりすプリン。青空のような人という当人のイメージから生まれたらいおんアイス。一筋縄ではいかないことに個人的な楽しみを見出したねこマカロン。大切な人に思いを届けるのを諦めたくないという信条でつくりあげたいぬチョコレート。などなど。
全てつくりあげた時点で目的は達成していて、食べる人のことはついで程度の扱いでした。だからこそスイーツが変身アイテムに変化しても問題なかったとも言えます。そういえば妖精たちのスイーツ工房もそんな感じで自家消費していましたね。
つくるだけで満足なら、本当は完成品を他人がもらっていっても問題ないはずです。だってつくることだけに意味があるのなら、食べるのは誰だっていいじゃないですか。
悪い妖精たちの行動は理に適っています。それに対していちかたちは筋の通った反論を用意することができません。だから「自分の思いを捨てたくない」だとか「戦っているあの子を助けたい」だとか、毎回戦う理由がまちまちだったんですね。
自分の感想文を読み返すと、いやはやまあ、バトル周りの解釈は毎回ブレっブレですね。そもそもバトルを熱心に語るようなブログでもないのですが、それにしてもハハハ。
それが、前回いちかが一旦食べる側に立ち返ったことによって、ようやくキラキラプリキュアアラモードは一本筋の通った戦う理由らしきものを構築できるようになったわけです。
ここまで復習。
孤独なヒーローのように
つくる側が一方的に幸せを生産する。これまでのいちかたちがしてきたことはある意味寂しいものです。幸せを生産する当人が、一方で誰からも幸せを与えてもらえないのですから。
いちかたちはスイーツをつくること自体に個人的な楽しみを見出しているだけマシですが、もしそうでなかったなら・・・そんなの最悪に決まっています。
そいつは古式ゆかしいヒーロー像そのものです。困っている人のために無償で悪党をやっつける正義の味方。道徳の擬人化。観念上の理想。近年では多くの物語において手を変え品を変え、たいていメタクソに否定されているキャラクター像です。
プリキュアの話題から離れて申し訳ないですが、例えばコンクリート・レボルティオに描かれるような、見る人に希望を与える存在としてはアリです。ヒーローとは元々そういう機能を果たすために生みだされた存在です。
ですが、もし自分自身がそういうヒーローになってしまったとしたら。一度そういう視点を持ってしまうと、ヒーローという生き方は地獄です。誰かを救うばかりで誰にも救われない。そのくせ誰よりも辛い役割を背負わされる。ひたすら消耗し、ひたすら不幸になっていくばかりの日々。ヤダヤダ。不健全極まりない。
そういうのが・・・おそらくは昔のジュリオなんでしょう。スイーツづくりの知識があるくせに、スイーツを憎んでいるということは。
ジュリオの頭飾りに使われているヒイラギは魔除けとして使われる葉です。花言葉は「用心深さ」。いずれも鋭いトゲを持つ葉の性質に由来します。近寄ろうとするもの全てを遠ざける心のあり方。
彼は何を遠ざけたいのでしょうか。どうして遠ざけたいのでしょうか。
かつてハピネスチャージプリキュアのレッドという人物は己の愛したすべてに先立たれた孤独に苛まれ、愛そのものを否定しようとしました。病的なおせっかい焼きである愛乃めぐみも自分に愛が向けられないことに一度絶望しかけました。
一方的な思いは当人を摩耗させます。なまじその心根が優しいがために、何かをしてあげられる人がいることそのものを苦痛に感じることがあります。
パティシエとは不特定多数のお客さんのためにたくさんのおいしいスイーツをつくる仕事です。その全てに心を込めていたとしたら。全てのお客さんの「美味しい」の声を必ずしも聞くことができなかったとしたら。パティシエがつくること自体を楽しいと感じられなくなったとしたら。
それはきっと、かつてのヒーローたちと何も変わらないんじゃないかな。
いちかたちにとっても他人事ではありません。今やキラキラパティスリーは大賑わいです。
「昨日は大忙しだったなあ。けど学校がんばらなきゃ。眠い。宇佐美いちかは眠いですぞー」
「新スイーツのひらめきの山はなかなか高く険しく苦戦を・・・」
兆候はすでに出はじめています。スイーツづくりの苦労が「楽しい!」だけで報われる時期はすでに終わりました。苦労の方が飛躍的に増大しつつあります。忙しさに身体がついてきません。楽しさの影に義務感が忍びはじめました。
そろそろ彼女の哲学には次のステップが必要です。スイーツづくりに、何かもっと新しい幸せを。
いちかがジュリオにならないために。いちかがジュリオの心のトゲを取り除くために。
悲しい顔を笑顔に!
それを解決する鍵は、例えばこういうところにあるのでしょうか。
キラキラパティスリーに元悪い妖精たちが謝罪しに現れました。
「あのベルトを着けるとなんだか気持ちが大きくなって、暴れたくなって・・・。悪いことをして本当にすまねえ! この通りだ!」
哀れを誘う真摯な謝罪。ベルトに助長された被害者としての側面もあるものの、大本の邪心が自分の内にあったことを彼らは自覚し、心から自分の情けなさと向き合っています。
ですが、そもそもプリキュアというのは伝統的に謝罪を求めない物語です。反省しているならそれで充分。償いなんて必要ない。
償いとはそもそも犯罪者が社会復帰するためにあるものです。被害者からの許しを得るために賠償というものがあり、犯罪者の反省を促すために刑罰というものがあるんです。(ちなみに懲役刑にはそれプラス受刑者に職業教育を施すという目的があったりします) 世の中犯罪者を痛めつけるためだけに牢にぶち込むほど暇じゃありません。そんなくだらないことをするほど非合理的ではありません。
であれば、本人が反省しているのならプリキュアはその罪をあっさり許します。被害者の方はそもそもプリキュアが毎回救っているのですから大丈夫。だから悪いことをした本人が善心に目覚めたならそれで充分なんです。
土下座するほどの真摯な謝罪なんかより、いちかにはプリキュアとしてもっと気にするべきことがあります。
この子たち、笑顔になってない。
歴代のプリキュアはいつもそちらをこそ気にしてきました。いちかももちろんそちらを気にします。
キラキラプリキュアアラモードにはこういうときにぴったりなものがあります。
「みんなでスイーツ食べたらめちゃんこ楽しいよ!」
いわずと知れたスイーツさん。プリキュア6人目(7人目?)の戦士。彼の大いなる力はどんな悲しみに溺れる人であっても問答無用で笑顔にしてしまいます。
「心を込めてスイーツをつくる。そのスイーツを食べればみんなが笑顔になる」
「みんなが笑顔に・・・」
前話でいちかが食べる側に回って感じ取った、つくる側からは見えない幸せのかたちが、こうして改めて外部化します。つくる側として感じ取れるもうひとつの幸せのかたちとして顕現します。
「食べる側の幸せ」は「食べてもらう側の幸せ」にも繋がります。スイーツを憎むジュリオと相反する、スイーツだからこそもたらすことのできる幸せ。
キラキラルを生みだすことができるのは、なにもスイーツをつくる側だけではありません。スイーツを食べる側だってキラキラルを生みだせるんです。つくる人と食べる人は共に幸せを生産する同志です。
あとは食べる側の生みだした幸せがつくる側に届きさえすれば・・・。スイーツを通してキラキラルが循環しさえすれば・・・。そうなれば、パティシエは孤独なヒーローなんかにはならずに済むはずです。
どうしたらそういう状態にできるのかはさっぱりわかりませんけどね。そもそも物語がそういう方向に進むかどうかもわかりませんけどね。
キラキラパティスリーは現在大繁盛していて、えみるちゃんや辰巳さんのときのようにいちいちお客さんの笑顔を見届けるのは難しいかもしれません。そうなるといよいよ困難な課題に見えてきます。
ですが、プリキュアならそこをなんとかしてくれます。私はそうなることを知っています。だって、彼女たちはいつだって孤独とは無縁のヒーローなんですから。誰かを幸せにするからには自分もちゃんと幸せになる。それがプリキュアらしさです。
どうかスイーツに関わるすべての人が、余すことなくみんな一緒に笑顔になりますように。
その他こまごましたこと
プリキュアの正体。毎年のことながらどうでもいい理由で秘密にされますね。過去にはレインボーマンのように正体が公然と知れ渡っているヒーローもいましたが、プリキュアの場合は日常と非日常を分けることが作劇上必須なので、今年もおそらく最終回直前まで秘密のままなんじゃないでしょうか。たぶんね。
「面倒くさい」とひとり面白そうな笑顔のゆかりさんがステキ。
「宇佐美いちかは眠いですぞー」 今話はまた一段といちか訛りが爆発していましたね。「ほぇ」とか「はひ」とか、過去のアニメキャラの珍奇な口癖を総ざらいする気でしょうか。なんにせよかわいい。
パティスリー・シュガー。ジュリオもよりにもよってここの軒先で事件が起こさなくても。新展開になっても受難は続くようです。
いちかのスイーツアイデアノート。長靴をはいたネコがウサギになっています。クッキー、タルトと硬いスイーツが続いたので次は柔らかいもの、という発想はいろんな意味でいちからしいですね。
「どうかした?」「別に」 ゆかりさんさっそくリオの悪意を嗅ぎ取っているのか、案外そうでもないのか、はてさて。今後どっちの展開にもできるようにあえてどっちとも取れるような演出にしている気がします。
クリームのかき混ぜかた指南。最初はむらなく均一に混ざるようにして、ある程度粘度が出てきてからたっぷり空気を抱き込むということですね。初心者向けのレシピブックにはこういう細かい話は出てきません。どちらかというとプロ向けのテクニックでしょうか。趣味の範囲だとここまでこだわる機会ってあんまりありませんしね。リオの知識の深さが感じ取れます。
バトル。いったいどうした。何事だ。・・・と思ったら、どうやら昨年のキャンプ回やベニーギョ最終戦をつくった人がコンテを切っているようですね。5人の個性の描き分け、ハッタリのきかせ具合もスゴイですが、なによりやたらと気が利いたカメラワークがステキ。
黒樹リオ。敵が日常の身近なところにいるというのは女の子向けバトルアニメではたまにある展開ですが、もしかするとプリキュアでは初めてでしょうか。私がぱっと思い出す例はカードキャプターさくらのエリオル。たぶんいちかが「ほぇ」とか言いだしたせいです。
いちかが駆けつけたときカッコつけて背中を見せていなければラストあんな気の抜けたオチにはならなかったでしょうに・・・。こういうシリアスな場面でボケているとそのうちギャグキャラとしてイジリ倒されちゃいますから気をつけましょう。(期待しましょう)
ヒツジカップケーキ。劇中のものと公式レシピ、見た目が全然違うじゃないですかー! 白いクリームどこに挟んでいるんだろうって思っていたんですが道理で。公式レシピは鈴カステラとマシュマロを使うという、子どもに楽しくデコレーションさせるためのアイディアに満ちた一品。難易度星2。
プレーンマフィンならコンビニやスーパーで気軽に買えることですし、デコレーションだけでもぜひ挑戦してみてはいかがでしょう。これ楽しそうですよ奥さん。(誰?)
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