スイーツにはたっくさん不思議があって、美味しくなるための秘密がいっぱい詰まっているんですよ。
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(主観的)あらすじ
スイーツ語りの情熱を買われて商店街のPRレポーターに挑戦することになったひまり。けれど緊張しいの彼女は人前ではどうしてもうまく喋ることができません。通りがかりのリオくんにも「君ががんばる必要なんてない」と言われてしまいます。
休憩に寄ったキラキラパティスリーで、ひまりはチュロスのギザギザを不思議に思う女の子と出会います。その姿は小さな頃のひまりの原体験と重なるものでした。美味しいスイーツが美味しくなれた秘密、彼女はそれが知りたくてスイーツの知識を集めたのでした。
ひまりは女の子にチュロスの秘密を語ります。わかってくれるまで何度も繰り返し、言葉を変えて工夫して。ひまりの努力は女の子の心に届き、女の子は前よりももっと美味しくチュロスを食べられるようになったのでした。
ひまりかわいい! かわいさほとばしるひまりの当番回。先週から始まった2巡目の当番回は5人それぞれの原体験を辿る物語になるのでしょうか。いちかの原体験の話はどちらかというと先々週でしたけど。
一般に、努力することは良いこととして語られます。じゃあ、どうして努力することはいいことなの? 今話のひまりはそういう素朴な疑問に答えました。努力したら好きなものをもっと大好きになれるんだよ、と。ひまりは大好きなスイーツを勉強して、スイーツのことをもっともっと大好きになれました。毎週何時間もかけてプリキュアの感想文を書いている身としては大いに共感するところです。ジュリオの心にも届け、その情熱。
どうしてがんばろうとするの?
引っ込み思案のひまりがいきなりレポーターなんてやれるはずがありません。確かにレポーターには知識と情熱も求められますが、大前提として必須なのはコミュニケーション力です。八百屋のおじさん、ミスチョイスにもほどがある。
ひまりもそんなことは最初からわかっていました。自分にそれが欠けていることくらい。「こんな街中でレポートするなんて、大勢の人に見られるなんて、ムリです!」 それでも結局引き受けたのは、八百屋のおじさんに頼まれたからか、他に代わってくれる人がいないからか、場の流れか・・・それとも。
「スイーツのこと伝えたいのに、人に伝えるのってとっても難しい」
当然のごとく失敗を重ねに重ね、憔悴しきったひまり。そんな彼女にリオくんが甘い言葉で語りかけます。
「スイーツのPRだって?(注:違います。商店街のPRです) すごくがんばってたよね。でも、もっと他のやり方があるんじゃない?」
「君ががんばる必要なんてない。もうやめなよ。それが君のためだよ」
その努力はムダだ。もっと効率のいい方法がある。君はやらなくてもいい。手きびしいことを言っているようで、現状に疲れ果てた人にとってはこれほど救いになる言葉もありません。もう努力しなくていいんだ。むしろがんばらない方がいいんだ。だったら私は諦めてもいいんだ。言い訳。逃げ道。
がんばらないことは情けないことだとしばしば言われます。けれど、それってそんなに悪いことでしょうか? 努力以外にもっと効率のいい方法があるなら、それは「情けない」んじゃなくて「合理的」というんです。今どき根性論なんて流行らない。
リオくんの言っていることは何も間違っていません。そこらの物陰でこっそり変身して、プリキュアの格好でテキトーにスイーツの食べ歩きでもした方がよっぽど再生数は稼げるはず。再生数3桁なんてしょっぱいことはいわずに、数十万、数百万はアクセスが見込めるでしょう。世の中フリフリのカワイイ女の子大好きな人がどんだけいると思っているんですか。
そういう手段があるのに、あえて引っ込み思案がレポーターのまねごとをするなんて愚の骨頂ですよ。ねえ、そうでしょう?
努力自体に何の意味もないのだとしたら。
あなたのことはあなたにしかできない
「はいはーい! 私やります! やりたいです!」
「面白そうかも」
「スイーツのことなら、私もお手伝いしたいです」
「おお! ひまりちゃんなら適任だな。よろしく頼むぜ」
ダチョウ倶楽部メソッドっぽく見えますが、別に誰かがひまりを罠にはめたわけはありません。いちかもあおいもひまりもそれぞれにやる気を出しただけで、八百屋のおじさんがそのなかでも特にひまりに期待していただけです。
レポーター役を割り振られたことは想定外でしたが、元々ひまりは自分の意志でこの活動に参加したのでした。
じゃあ、どうして参加しようと思ったの? 緊張しいのくせに。八百屋のおじさんに頼まれたから? 他に代わってくれる人がいないから? それとも場の流れ? いいえ、最初に立候補したときはまだそんな条件はついていませんでした。
ひまりにはこの活動を通してやりたいことがありました。
「スイーツのこと伝えたいのに、人に伝えるのってとっても難しい」
そういえばそんなことを言っていましたね。・・・だからこれはスイーツじゃなくて商店街のPR動画だってば。
スイーツのことを伝えたい。誰に? みんなに。
幼い頃のひまりはそういう情熱に燃えていました。第2話、教室でプリンのことについて大熱弁を振るい、「その話要るか?」とトラウマを植え付けられたあの頃の話です。
元々彼女にはこの方面に関して熱意がありました。トラウマのせいで長いこと燻らせていましたが、それが久しぶりに復活したのが今回、PRレポーターというチャンスです。ひまりにはレポーター役を務めなければいけない理由が、自分自身の中にちゃんとあったんです。
有栖川ひまりは語りたい。スイーツのことを語りたい。
それは商店街のPRとは関係ない、ごく個人的な都合、欲求。
そういうものがあるなら、確かにひまり自身が努力する必要がありますね。個人的な都合である以上、これはたとえプリキュアに代わってもらっても達成できない問題です。緊張しいだろうが人見知りだろうが、どれほどの努力を支払うことになったとしても、あなたがやらなければ意味がないことです。
でもね。ところでそれは本当に今ここで取り組まなければいけないことなんですか?
だって、スイーツ語りならいつもいちかたち相手にやっているじゃないですか。冒頭のウンチクが始まったとき、いちかだけでなくあおいまでウンザリした顔をしているのを私は見逃していませんよ。たしか第2話以外では今のところ長広舌を振るっていませんでしたよね。ということはあなた、どうせカメラが回っていないときにしょっちゅう語っているんでしょう?
もしも「みんなに」を諦めたら、努力なんてするまでもなく思うさまスイーツ語りを楽しめるはずです。いちかたちに語るのも楽しいってことは語りはじめたときの表情を見れば一目瞭然です。
それでも「みんなに」と「人見知りに打ち勝つ努力」って、本当に釣り合っていますか?
「みんなに」語ることって、ひまりにとってそんなに大事なことなんでしょうか?
私は有栖川ひまり。スイーツ大好き中学二年生です。
ひまりがスイーツの知識を蓄えはじめたきっかけは、幼い頃に頭をよぎったちょっとした疑問にあります。
「うーん。どうしてプリンはまん丸なのかなあ?」
たったそれだけ。
そんな、人によっては心底どうでもいいような疑問のおかげで、今のひまりがあります。
人によってはどうでもいいような疑問かもしれませんが、しかしひまりにとってはそうではありませんでした。彼女はプリンが大好きだったからです。
「すごく不思議で、その答えを知りたいと思って、一生懸命調べて研究した。大好きなスイーツの秘密を解き明かしたくて」
好きなものについてもっと知りたいと思う気持ちは自然なものです。
「あの子がスイーツの不思議に気づいた気持ち。スイーツにもっと興味を持ってくれた気持ち。『大好き』へ繋がっていく大切な気持ちなんです!」
その気持ちは好きなものをもっと大好きにしてくれる、ステキなものだから。だから私たちは知ろうとします。好きだから。もっともっと大好きになりたいから。
ひまりは知ることが「大好き」に繋がることを知っています。知ることがどれほどステキなことか知っています。
「そんな私が今できること。私自身がスイーツを調べて感じたことを、ただ、あの子に教えてあげたい!」
だから、ひまりはそのステキをみんなに伝えたい。スイーツが好きな誰もに、もっともっとスイーツを大好きになってほしいから。そのためならたとえどれほどの努力を費やすことになったとしても厭いません。
「星のようなかたちにすることで均一に加熱し、破裂することを防いでいるのです」
子どもには難しい言い回し。伝わりません。でも諦めません。ひまりは努力します。
「チュロスはね、星形じゃないと爆発しちゃうんです。ボンって」
今度は伝わりました。興味を持ってくれました。けれど好きになってもらうにはまだ足りません。ひまりは努力します。
「お星様がね、爆発の元となる熱をまんべんなく吸ってくれるからなんです」
このあたりは物理学の教養が必要なので子どもには難しいです。けれど不思議を愛する気持ちは伝わりました。女の子はチュロスの星形に夢を持ってくれました。
「お星様はチュロスが美味しくなる、秘密の形なんです」
スイーツの不思議。何が不思議って、ただ知っただけなのに同じスイーツがもっと美味しくなるんです。私がスイーツをもっと大好きになったから。
チュロスを食べた女の子の心にキラキラルがふくれだします。いうまでもないことですが、これはつくる人がいつもより心を込めた特別なスイーツだからではありません。同じスイーツのはずなのに、食べる人の気持ち次第でキラキラルはいくらでも増えていくんです。
いちかの目にお母さんのケーキがキラキラして見えたのと同じことです。お父さんが身を挺して守ったケーキが美味しかったのと同じことです。今、女の子はチュロスのことを知って、チュロスが今までよりもキラキラして見えました。チュロスが今までより美味しく感じました。
キラキラルを生みだすのはつくる側だけの特権ではありません。食べる側だってキラキラルを生みだします。スイーツを通じてみんなが幸せになるのは、つくる側と食べる側、みんなの共同作業の結果です。スイーツはキラキラルの容れ物なんかじゃありません。
「お菓子はミラクル、笑顔キラキラル。みんなの気持ちが今ひとつになる」
ひまりはこれが見たかったんです。彼女はみんなを笑顔にするために、みんなにスイーツのことを伝える努力を必要としていたんです。
PR動画のレポーターはやはり彼女でなければいけません。有栖川ひまりはスイーツへの情熱を語らずにはいられません。(商店街のPR動画なんですけどね) 緊張しいでも、人見知りでも、それは彼女自身がやりたいことで、だから彼女自身にしかできません。
ジュリオは努力を否定しました。がんばらない方がひまりのためだと。
いいえ。ひまりはがんばって、彼女自身の努力によってのみ得られる戦果を勝ち取りました。彼女は知識によってスイーツを食べる側からキラキラルを引きだしました。スイーツをつくる側でもある彼女にとって、これほどありがたいこともありません。
その大いなる価値はおそらく、5人の当番回が一巡したときに改めて語られることでしょう。個人的な(いつもの / 当たらない)展開予想でしかありませんが。
いつかジュリオがたどり着く場所が、食べる側の幸せとつくる側の幸せ、その両方の調和の取れた世界でありますように。
今週のアニマルスイーツ
こまごましたことコーナーは廃止します。色々と茶々を入れたい気持ちは多々あるのですが、あれを書きはじめると私の性格の悪さがにじみ出ちゃうので。
フラミンゴチュロス。難易度は意外にも星1つ。油を使うのに。
今回もレシピと劇中のデザインが全然違うのは気にしないようにしましょう。揚げ物があんなドぎついピンクになるわけがありません。というかチュロスがあんなにぎっちり詰まっていたらそもそも揚がりません。破裂します。
表面積を増やして速やかに熱を通す工夫というのは料理ではよくあるテクニックですね。ドーナツとか、シフォンケーキとか、しゃぶしゃぶとか、煮物の隠し包丁とか。昔のインスタントラーメンがみんなちぢれ麺だったのもそのあたりの都合。
チュロスの場合は生地の粘度が高くて中心部に溜まる水蒸気の逃げ場がないため、脱水が進む前に手早く中心まで加熱する必要があります。どこで買ってもだいたい同じ太さで長さだけが違うっていうのもそれが理由です。
あと単にギザギザの食感が美味しいからって理由もあるんですけどね。美味しいですよね、あのカリカリ。カロリーは気にするな。
ちなみにプリンが丸いのは型から抜きやすくするためです。それ以上の意味はありません。
なので型からはがしやすいプッチンプリンはもうちょっと凝った形をしていますし、業務スーパーのゼラチンプリンなんか牛乳パックに入っていますし、なかには大きいバットでつくって四角く切り分けるプリンなんてのもありますね。
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