ゼルダの伝説BotW 近況報告 / 思い出帳 その8

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 長い長い旅路の果て。私とリンクはついに最後の思い出を取り戻しました。

このブログはあなたがプレイ済みであることを前提に、割と躊躇なくネタバレします。

 誰も予想していなかったかたちでの厄災ガノンの復活。それは無才の姫の全てを奪いました。
 ゼルダの名を継ぐ者としての使命は果たされず、代償として心血を注いだ古代兵器はそっくり奪われ、英傑たちの誉れも、白亜の宮殿も、民の暮らしも、ありえたかもしれない親子の雪解けも、全て、全て、全て、全て。無才の姫がもがき続けた17年、そのことごとくが泥に塗りつぶされました。
 あとに残されたものは、この世のどんなものよりも無価値な我が身と、そんなものを守護するために傷つく騎士。

 初めは私が傷つけた。情けない己へのいらだちを彼にぶつけてしまった。
 今だって私が傷つけている。果たすべき務めを果たせない自分がいるから、彼は無用の傷を負っている。
 この人はどんな怪物にも負けない、ガノンだって打ち倒せる、“本物の”伝承の勇者のはずなのに。
 私のせいで。

 目の前に迫る悪意が勇者の命の灯火をかき消そうとしています。この世界を終わらせるために。
 どうせなら先に無才の姫を先に殺してくれた方が、ほんの数秒でも長く世界を存続させられたでしょうに。伝承に謳われることのない無才の姫はどこまでも勇者の足を引っぱるばかり。

 ・・・いいえ。
 この期に及んで、この無才の姫はそんな高潔なことなど考えていません。
 目の前に立っているのは世界を救う勇者?
 いいえ。目の前の人はそんなつまらない人ではありません。
 この人の死は世界の終わりと同じ?
 いいえ。その程度のことでは済みません。
 無才の姫は勇者の足を引っぱることしかできない?
 いいえ。無才の姫にはまだ、守りたい人がいます。

 英傑がひとり、ゾーラのミファーがほんの数刻前に教えようとしてくれていたこと。
 「私、考えてみたの。私が治癒の力を使うとき、何を思ってるんだろうって」
 全ての思い出を取り戻した私とリンクは彼女が言わんとしていた言葉の続きを知っています。
 「あなたの傷を治してあげられるの、嬉しかった。私は・・・あなたを守りたいから」
 彼女はそう言っていました。

 私とリンクが最初に取り戻した思い出。夕陽に染まるサーディン公園。ありし日、愛馬と心を通わせたゼルダ姫は嬉しそうに話していました。
 「辛抱強くなだめてあげれば馬には必ず気持ちが通じる」
 「相手を思う気持ちって、大事なんですね」

 なんだ、あなたもとっくに気づいていたんじゃないですか。

 「だめ!!」
 襲い来る死から騎士を庇う少女。刹那、その身体が金色に輝きはじめます。右手の甲にどれほどもがいても得られなかった紋章が浮かび上がります。

 この子は本当に、何もかもが間が悪い。
 本当は17歳の誕生日までに必要なもの全てが備わっていました。誰かを思う気持ち。その思いを懸けられる誰か。あとはほんの少しのきっかけさえあれば。きっかけを目前にして厄災に出し抜かれてしまったことがこの子の不幸。
 彼女は無才の姫なんかではありませんでした。独力で祈りの力の秘密にたどり着いた、伝承に謳われし“本物の”姫巫女です。

 これが100年前の物語。リンクが失っていた思い出の真相。リンクとゼルダの間に横たわっていた100年の断絶の正体は、無才の姫を襲った冷たい悲劇などではなく、大切な人を守ろうとする暖かな乙女の祈りだったわけです。
 フタを開けてみれば単なるノロケか。150時間の冒険のゴールがだだ甘いコイバナか。上等だ。
 ならばゲーマーのなすべきことは自ずと定まります。遠く分かたれた男と女がいるのなら、そいつらもう一度くっつけちゃえばいい。ゲームとはそういうものです。ハッピーエンドとはそういうものです。ゲーマーが好む物語というのは、いつだってそんなチャチなものです。
 リンクの旅の終着点? バカバカしい。彼には、100年間思いを募らせ、100年間大切な人のために尽くし、100年間再会を待ちわびた女の子がいるんです。彼女の隣以外のどこに帰るべき場所があるものか。

 そうと決まれば、リンク、さっさとやることやっちゃいましょう。全てを知った今の君になら、できないことなんて何もないでしょうが。
 大切なものは「相手を思う気持ち」です。ゼルダ姫はあなたを守るために100年間ガノンを抑えてきました。だったら君のすべきことはひとつ。

 君の大切なゼルダ姫を迎えに行くために、いい加減退魔の剣を抜きなさい!

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