よしわかった、ののか。手伝わないであげるから福引き券をくれ。
テコ入れ、あるいは幸せの青い鳥
「カラーズの新メンバーを探そう!」
カラーズには足りないものがあるそうです。
カラーズにはツッコミが足りないそうです。
「ツッコミなら私得意じゃん!」
結衣では話になりません。
クレイジーにツッコミ役なんて向いてるわけねーだろ。
よもやこの子が引っ込み思案だからツッコミ下手なんだと思っているヤカラはおるまいな。
「えー、そんな勝手に動くわけ・・・動いたー!」「あーっ! 琴葉まで!」「あ! 映像の琴葉が!」「映像琴葉が映像さっちゃんを倒した!」「ああ! 映像琴葉踏んづけた!」「映像琴葉、勝ち誇ったー!」「おーっ! おーっ!」
こんなスラスラっと小気味いい実況が湧いて出る子が引っ込み思案なわけがない。
この子がツッコミに向かない理由はそうじゃない。
「あはっ。何あのポーズ!」
骨が怖いだの克服しただの押し問答していた矢先に人骨を指差して笑う、斜め上のジェット思考。本来我々一般人の側に立つべきツッコミ役に、クレイジーでは役不足だと言っている。(もちろん本義の方で)
私は見た。
さっちゃんがロケット・ランチャに侵入しようとしたあのとき、琴葉と違って一瞬もためらうことなくさっちゃんの尻を押し上げていた結衣の姿を。
ああっ、あの場にあの子さえいてくれれば!
皆さん、重要なメンバーを忘れてはいないでしょうか。
カラーズにはいたではありませんか。
優秀なツッコミが。
今作4番手のクソガキが。
そうとも、すくすく育ったおっきな同類。いっちょ前に制服着込んだオトナコドモ。
結衣さっちゃん琴葉の小学生ズと対等にやりあえる貴重な人材。
斎藤がいたではないですか。
結衣がいつツッコミ役してたよ。
三ツ星カラーズの主力ツッコミは斎藤です。
そんなわけで、カラーズの飢餓感を煽るためにも今話は斎藤の出番がないのです。
5番手
ところで福引きのチラシをよく見ると対象店舗に黄瀬フルーツも混ざっているわけですが・・・。
まあ、さっちゃんのお母さんは身内にゆるゆるなタイプじゃなさそうですもんね。あの人意外と冷めているというか、ちゃんと大人らしい分別をわきまえているっぽいです。
一方ゆるゆるなののか。
「福引き券? そうだよ。ウチ対象店舗だよ」
これ言っちゃうとダメです。第一声からビシッと渡す気がないことを明確にしておかないと、第一印象で抱いた期待感はいつまでもズルズル引きずられてしまうものです。「違うよ。配ってないよ」と見え透いたウソっぱちを言った方がまだマシです。それがウソだと理解できる子なら、同時に渡してもらえる見込みがないことも察せるからです。
子どもを舐めてはいけません。ヤツらはちゃんと相手を見ています。甘えていい人、遊びに巻き込んでいい人、つけ込んでもいい人、相手を吟味してそれぞれに相応の態度を取ります。
「結衣がどうでもいい話にどうでもよさそうにするからだ」
「だってどうでもよかったんだもん」
たとえばオヤジはあくまで保護者的な立場からものを言うので、ものをせがまれることはあっても攻撃されることはありません。
たとえば斎藤はオトナコドモなので大いに見くびられますが、一方で自分の意見を頑として曲げないところもあるので、小学生並みの尊厳くらいは認めてもらえます。
ののかは根っからのゆるゆるです。
「ガラガラのところに女の子いたでしょー。アレ私の学校の友達なんだ。すばるっていうの。バイトしすぎて留年しそう。あはは」
「カラーズちゃんに手伝ってもらうとエラいことになりそうだし。だってパン屋でおにぎり食べたりする人たちだしねー」
公と私の区別がついていません。この子絶対誰が相手でもキャラを変えられないタイプです。たぶん自分では冗談を言っているつもりなんでしょうが、冗談にしては相手をどう楽しませるか、その冗談が相手にとってどういう意味を持つのかをまるで考えていません。完全にもうひとりの自分相手に会話しています。だから「どうでもいい」。
そういう、何事に関してもいちいち線引きが曖昧な態度ばかり取るから、ゴネればそのうち態度を曲げるだろうと値踏みされてしまうんです。
「私たちがパン屋のお手伝いをする。お手伝いしたら福引き券くれるか?」
「ならないよ! いいことになる!」
「よしわかった、ののか。手伝わないであげるから福引き券をくれ」
別に琴葉たちが特別賢いからやり込められたわけではありません。
そもそもののかのなかの「ダメ」と「しかたない」の線引きがゆるゆるなのが問題なんです。
ちなみに「ダメでしょー」と「しょうがないなあ」の境界が曖昧という点で、結衣も割とこのタイプに近いですね。
ののかと結衣の将来がとても心配です。
ハタから見ている分にはかわいくて好きなのだけれど。ハムスターみたいで。
「うん。細かいこと考えるのはやめよう」
超心配。
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