トロピカル~ジュ!プリキュア 第19話感想 出会いが革命になる。

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だよね! おいしいよね、トロピカルメロンパン! 私の大好物なの!

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「まなつパニック! 学校の七不思議!」

活躍したひと

まなつ

 実は怖いものが苦手なトロピカ娘。第1話でもまだ見ぬ都会の街に怖い想像をしてひとりでビビっていたあたり、よく知らないものに対して想像力をたくましくしすぎる悪癖があるのかもしれない。素直な性格が災いしたというか功を奏したというか、お供えものを要求してくるお人形さんのところにしばらく日参することになった。

エルダ

 あとまわしの魔女に仕えるちびっ子メイド。他の召使いたちと違って職業人意識が薄いあたり、丁稚か行儀見習いのような立場なのかもしれない。プリキュアとの戦いで敗走中トラブルに見舞われ、山の奥の廃屋に身を隠していた。折よくまなつが怪談の取材に来たためお供えものと偽って食べものをねだったが、顔を見ていなかったため相手がプリキュアであることには気付いていなかった様子。

トロピカってたもの

お人形さん

 廃屋に置き去りにされていた人形。ちょっとした偶然とエルダの悪戯心によって、まるで喋る呪いの人形であるかのように仕立てあげられた。まなつと交流するうち、いかにも怪談っぽい謂われ(※ 設定)が語られていくことになったが、まなつはそれを聞いてむしろ親近感を覚えるようになったのだから不思議。

うまくいかなかったこと

 お人形さんが住んでいる廃屋は近々取り壊されることが決まっていた。また、すぐ傍でゼンゼンヤラネーダが暴れだし、廃屋が巻き込まれそうだった。最初は怖かったはずなのに今は守りたいと思った。

やりきれたワケ

 まなつはお人形さんを守るため解体業者を説得することを誓い、また、ゼンゼンヤラネーダと戦った。その優しさに心打たれたエルダも密かに支援した。
 人形は廃屋が壊される前にエルダによって密かに持ち出され、まなつ視点では「無事持ち主と再会できたのだろう」ということになった。

 地上デジタル放送が開始して久しい昨今において堂々SD画質のCMを流しつづけていたトップ製菓(株)でしたが、このたびコリス(株)と合併したことをきっかけとして、ついに時代に即した画質のCMにリニューアルされました。
 ちなみに両社は合併前から資本面でも経営面でも親密な関係だったため、この合併にそこまで世知辛さを感じる必要はありません。合併直前の損益はまあ、ちょっと笑えない状況に陥っていたようですけどね。今回は親会社子会社の関係性が逆転した構図です。まあ、うん。

 さて、今話は相互理解がテーマの物語になりました。
 まなつが怪談を怖がることに深い理由はありません。理由がないので克服する方法もありません。怖いものは怖い。ですが、お人形さんとは仲よくなることができました。
 お人形さんの正体がエルダだったからではありません。まなつは最後までお人形の正体がエルダだったことに気付きませんでした。なのに、仲よくなれました。怖くなくなりました。いかにも怪談に出てきそうな、曰くつきの喋る人形だったのに。
 相手のことを知ることができたからです。自分と同じ、心に大切な思いを抱いている子なんだって気付くことができたからです。おいしいものをおいしいと感じて、さびしい暮らしをさびしいと感じるお人形さんは、もはや“なんだかわからないけどとにかく怖い”怪談のアイテムじゃなくなりました。
 そしてそれはエルダから見たプリキュアも同じ。

 相手を知るのは大切なことです。知れば恐くなくなるから。相手にも事情はあるので、知ったからといって必ずしも和解につながるとは限りませんが、それでも仲よくなるためには絶対に必要な、最低限の大前提です。
 また、自分を知ってもらうことも同じくらい大切なことです。知ってもらえば恐れられなくなるからです。こちらからは見つけることができなかった和解の可能性を、相手のほうでうまく見つけてくれることもあるかもしれません。
 相互に理解しあうことです。どちらかが相手を恐がっていたら、ふたりともが握手すらできなくなってしまいます。

無知既知未知

 「もー。あいつホント嫌い。やる気とか暑苦しくてオエーってなっちゃう」

 気に食わない相手でした。

 だって、あいつらやる気全開だからです。
 エルダにそんなものはありませんでした。仕事なんてしたくないし、本当はこうして人間の世界に来ることさえ億劫でした。毎日ダラダラ遊んで、みんなにも子どもだからと甘やかしてもらえたなら、それが一番だと思っています。魔女さまの命令だからしかたなく働いているだけであって。

 それを、あいつらときたら魔女さまみたいに命令してくる人がいなくても、自主的に戦いに来るんです。
 面倒くさいうえに、まず意味がわかりませんでした。どうしてこんな億劫なことに自ら進んで手出ししようと思えるのか。他の人間のやる気パワーがいくら奪われたって自分には関係ないはずなのに。むしろ、戦いに出てくることによって自分が危険に晒されるだけなのに。実際、やる気パワーを奪われたこともあったはずなのに。

 「ムキー! あんたたち最近調子乗りすぎ!」
 「ふふん。だって、私たちやる気全開、絶好調だもん!」

 まるで話が通じそうな気配がありません。価値観が根底から食いちがっているように思えます。
 だからムカつく。うっとうしい。「どうして邪魔しに来るんだろう?」 そういう疑問すら思い浮かびません。だって、そもそもが自分なら絶対にやらないことをわざわざやりに来るくらいなんだから。
 理解できそうな気がまったくしない。まず理解したいと思わない。そんなことしても何の得にもならない。ああ、面倒くさい。

 「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! 私、このお屋敷にうめき声を出す人形がいるからって調べに来たの!」
 「はあ?」
 「ほ、本当に調べに来ただけ! だからお願い、祟ったりしないでください!」
 「うーん? ・・・ああ!」

 ひょんなことから人間と話をする機会ができました。
 プリキュアと同じ、なんだか面倒くさそうな女の子。こんな山奥の廃屋に人形があるから何だというのか。どうしてわざわざ調べようと思うのか。相変わらずさっぱり意味がわかりませんでした。
 ですが、プリキュアと違ってこの子なら、エルダにも理解できそうな部分がひとつだけありました。

 「うん、そうよ。私お人形。まあ許してあげてもいいわよ。その代わり、私に何か食べものをお供えして!」

 この子、私にビビってる!
 魔女さまみたいに命令すれば、きっとこの子、何でも言うことを聞いてくれるわ!

 初日はトロピカルメロンパン。
 明くる日はマリングミ(※ 希望小売価格100円)、ケース(※ 同450円)付き。
 その次はお弁当の半分。卵焼きがおいしかった。
 また次はウサギさんカットのリンゴ。

 なかなか見どころのある人間でした。一度命令しただけで一生懸命働いてくれて。センスも悪くありません。
 おかげでこちらは楽でした。気分がよかったので軽く褒めてみたら、思いのほか喜んでくれました。気持ちのいい子でもあるようです。話が弾みました。

 「――というわけなの。わかった?」
 「うっうっうっ・・・。そうなんだ。さびしかったんだね。わかった! 私、がんばってお供えもの持ってくるから! さびしいかもしれないけど、一緒にがんばろうね!」

 おまけに変な子でした。
 話の流れでテキトーにでっちあげた作り話を真に受けて、これまで以上にがんばってくれると約束してくれました。
 最初に命令した立場のエルダにとって悪い話ではありませんでした。勝手に働いてくれるならわざわざ細かい命令を出さないでも済むし、すごい楽でした。エルダは普段そこまではりきることがないのでちょっぴり理解不能でしたが、とりあえず都合いいのは間違いありません。喜んで受け入れました。

 「壊される!? ここが?」
 「うん。でも、偉い人に『やめて』ってかけあってみる。だって、なくなったら人形さん困るもんね」
 「・・・うん。たしかに困る」
 「わかった! 人形さんは心配しないで!」
 「う、うん・・・」

 変な子はさらに、自主的に大事な情報を見つけてきて、解決方法まで提案してくれました。
 エルダにとってはいよいよ理解不能です。だって、そんなのこの子には全然関係ない。むしろ命令してくる自分がいなくなるんだから、放っておいたほうが都合がいいはず。なのにどうしてここまでしてくれるんだろう?
 嬉しいことではありましたが、何を考えているのか全然わかりませんでした。まるであのプリキュアたちのように――。

 それは“やる気”と呼ばれるものでした。
 プリキュアにあって、エルダには無いもの。

 廃屋で出会った変な人間のこと、最初は理解できていたつもりでした。
 最初はただ、呪いのお人形さんのことを怖がっているだけだと思っていました。だけど、段々それだけじゃないような気がしてきました。それだけなら絶対にしないようなことまで一生懸命がんばってくれました。
 そして不思議と、自分も悪い気がしませんでした。

 理解できない行動原理のはずなのに。

knock, knock

 「そうだ。人形さん。あなたどうしてこんなところにいるの?」

 不意に、そんな言葉が自分の口から出てきました。

 最初は怖かったはずなのに。
 怪談なんて大嫌いで、聞かされるくらいなら耳を塞いでいたいと思っていたのに。
 不思議と、聞いてみたくなりました。

 「あ。お弁当箱は下。黄色くてふわふわのがおいしかったわ。あと、最初のメロンパン?とかいうのもおいしかった。また持ってきて」

 きっと親しみを感じたんだと思います。
 無理を承知でお弁当箱は返してほしいとお願いしてみたら、律儀に返してくれました。おかずの感想まで言ってくれました。さらには次のお供えもののリクエストも。
 トロピカルメロンパンが好きなんだそうです。わかる。まなつも大好物です。そのことを話してみたら、いい趣味だと答えてくれました。最初に思っていたよりいい人そうでした。話が弾みます。

 そういえばどうしてあんなに怖がっていたんだっけ?
 わかりません。たぶん、なんとなくです。幽霊なんて今回初めて見たくらいなんだから、どうせきっかけらしいきっかけなんてありません。なんとなく怖がっていました。
 なんとなくってだけなら――、今、自分が感じている“気のいい友達”って印象のほうが大事なことかもしれません。

 「――ま、待ってるの! えーとね、えーと。そう! 友達! 前にこの屋敷にいた子で、いつも遊んでたの。すっごく前。その子、私のこと大好きって言ってくれてたのに、ある日突然いなくなっちゃったの。でも私信じてるの。『ずっと一緒』って約束したんだから。いつか必ずまた会えるって。だから私は待っているの。あの子のことを。このお屋敷でずっと。ずーっとね!」

 なんとなく聞いてみた身の上話は、いかにもいかにもな怪談話そのものでした。もうちょっと雰囲気出していたら、あるいは出会ったばかりのころみたいにもうちょっとお人形さんのことを不気味に感じていたら、いつもみたいにガクガク震えていたかもしれません。
 でも、そうはなりませんでした。かわりに悲しくなりました。かわいそうに思いました。まっすぐないい子だと思いました。なんとか手伝ってあげたいと、そう思いました。

 お人形さんが意外といい子だということを知っていたかどうかで、こんなにもまなつの受け取る印象は変わってしまっていました。

 「あなた、なんか変だけど結構いいやつね」
 「ありがと、人形さん!」

 変です。いつものまなつなら、怪談人形なんてもの相手に絶対ここまで付きあいません。
 まなつが変わることができたのは、だから、きっと。

やる気・無敵・ステキ

 「人形さん! 私、外で暴れてる怪物を止めてくる! お屋敷は私が守るから!」

 変な子はプリキュアでした。
 エルダの大嫌いな、あのプリキュアでした。

 どうりで理解できないはずです。
 あの意味わかんないやる気。エルダなら絶対そこまでしない努力。自分に関係ないところでまでがんばろうとする謎の意欲。
 あの子にときどき理解不能なところがあったのは、なるほど、あの子がプリキュアだったからだというわけです。

 依然、エルダにまなつの気持ちは理解できません。
 エルダはまなつみたいなやる気を持ちません。知りません。
 他人のために働きたいだなんて思ったこともありません。仕事はしかたなくやるものです。やらないで済むならそれに越したことありません。わざわざ自分から進んでやろうだなんて全く意味がわかりません。
 つくづくわけがわかりません。敵として対峙してみても、近くでお喋りしてみても、あの子のあのやる気だけは、どうしても理解できませんでした。

 だけど。

 「これ以上暴れないで! 約束したの。どうにかするって。人形さんはここでずっと友達のことを待ってるの。ひとりきりで、お腹が減っても、さびしくても、それでも信じて! ずっと待ってるって! 最初は怖かったけど、今はそうじゃないってわかったから! 『一緒にがんばろう』って約束したから! だから、ここは壊させない!!」

 いつものプリキュアのお説教。
 なんだか意味のわからない理屈を振りかざして、こっちに伝わらないこと承知で毎回勝手に語りだして、それで意味不明に自分のやる気を引き出して勝ってしまう。迷惑極まる謎の呪文。
 だけど今日は。今日に限っては、不思議とエルダの心にも響きました。

 自分のために言ってくれているからでしょうか?
 でも、あれは全部嘘っぱちです。その場で考えた口から出任せです。あの子がこの廃屋を守ってくれたところで今さらエルダには何の得もありません。ただの無駄骨。無意味な努力。

 「――だよね! おいしいよね、トロピカルメロンパン! 私の大好物なの!」
 「そうなの! いい趣味ね。あなた、人間のくせになかなかだわ」
 「いやあ。それほどでもないですけど」
 「うん。それほどでもないわ」

 変な子でした。
 単に次のお供えものの注文をつけただけのつもりでした。なのに、そんなエルダにしか得がない話を、あの子は喜んで聞いてくれました。
 エルダも、悪い気はしませんでした。

 「――というわけなの。わかった?」
 「うっうっうっ・・・。そうなんだ。さびしかったんだね。わかった! 私、がんばってお供えもの持ってくるから! さびしいかもしれないけど、一緒にがんばろうね!」

 テキトーな作り話をあの子は感動して聞いていました。
 さびしかったんだねと同情してくれました。エルダは別にさびしくなんかなかったけれど。
 一緒にがんばろうと言ってくれました。エルダはまっぴらごめんだけれど。ケガしているのもあって、自分で働きたくないからこそ、あの子に命令していたのだけれど。
 だけど、あの子のそういう言葉を聞いていて、いいやつなんだなって、思ってしまいました。

 大嫌いなプリキュア。
 “やる気”だなんて気に食わない言葉を振りかざすプリキュア。
 自分に何の得もないのに平気で働こうとするせいで、いつもこちらの仕事の邪魔になるプリキュア。

 だけど。

 「うわーん! お腹痛いー! エルダもう帰る! おうち帰る!」

 今、どうしてもやらなきゃいけないことがあるような気がしました。
 自分のためじゃないのに。
 何の得もないのに。
 誰かに命令されたわけでもないのに。
 いつもそういうことをやってるあの子の気持ちなんか、エルダには全然わからないはずなのに。

 あの子が自分のためにがんばってくれるのを見ていたら、自分もあの子のために何かがんばりたいと思ってしまいました。
 どうしてそう思ったのか、今はまだ、自分でもまるで理解できないけれど。

 「今、一番大事なことをやろう」

 今はまだ“やる気”とは何か理解できていない子でも、やる気を出してみることくらいならできるようです。
 知らないだけなら、これから知っていけばいいだけのことなんですから。

 “理解不能”が“理解不能”じゃなくなる可能性。
 自分と正反対の考えかたをする相手を理解できるようになる可能性。
 その可能性が生まれたきっかけは、あの子が「いいやつ」だと知ることができた、ただそれだけの偶然でした。

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    コメント

    1. 亀ちゃん より:

      今日のトロピカル~ジュプリキュアは、何々などがシックリ着たセリフでした!!☆☆♬
      他にもシックリ着たセリフはありましたが、思い出せないですね(汗)

      • 疲ぃ より:

         私は記事冒頭にも掲げた「だよね! おいしいよね、トロピカルメロンパン! 私の大好物なの!」が好きですね。
         あそこでまなつがちょっとしたパーソナルな話題を投げかけて、エルダも応じてくれたからこそ、お互い相手に興味を持つことができました。『スタートゥインクルプリキュア』のトゥインクルイマジネーションにも通じるコミュニケーションです。
         いやまあ、普通っちゃ普通の会話の流れなんですけどね。でも私みたいなコミュ障にはこのレベルですらなかなかハードルが高い。必ずしも当たり前のことができる人ばかりじゃないからこそ、こういう当たり前の姿を描くことに大切な価値が生じると思うんです。

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