トロピカル~ジュ!プリキュア 第29話感想 古い鏡はひび割れたけれど。

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鏡よ鏡。世界で一番美しいのは誰?

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「甦る伝説! プリキュアおめかしアップ!」

活躍したひと

まなつ

 元気いっぱいトロピカ娘。その元気っぷりときたら、ヤラネーダにやる気パワーを奪われてもすぐに自力で復活してしまうほど。今回復活した分もまるっと奪われちゃったけど。だけどそれならそれでみんなのやる気パワーを分けてもらったらいい。

プリキュア

 まなつとローラが中心になり、まなつとローラに触発されて「今、一番大事なこと」をやることに決めた5人組。それぞれプリキュアになった動機は違っても、みんな助けあいながらトロピカる部でひとつのことに取り組んできた。まなつのやる気はみんなのやる気。そして、みんなのやる気はまなつのやる気でもある。

トロピカってたもの

 それはトロピカる部みんなで協力してつくったドレッサー。それはグランオーシャンの女王候補の証となる手鏡。あるいは童話『白雪姫』に登場するキーアイテムでもある。
 現代では自分の姿を見るための道具、メイクの必需品としての位置づけであるが、原初の時代においては姿見ではなく祭具として扱われることが多かった。なにせガラス鏡が出回る以前の鏡といえば石版鏡や金属鏡。実用品として用いるにはあまりにも高価で、そして映りが悪かったのだ。実用の道具としては水鏡のほうがよほど使い勝手が良かった。
 鏡に映るおぼろげな像は間違いなく自分自身の姿でありながらもうひとつの世界に住む別の人間の姿のようにも感じられ、鏡という道具は必然、呪術的・魔術的・神秘的な意味を帯びていくことになる。

 『白雪姫』に登場する継母は日頃から飽きもせず魔法の鏡に同じ問いかけを繰り返していた。「鏡よ鏡。この国で一番美しいのはだあれ?」「それはあなた様です。王妃殿下」 バカバカしいと思われるかもしれないが、彼女はこのルーティンによって確かに国の頂点に立つべき美貌と自信を得ていたのだ。
 「それは白雪姫です」 白雪姫が7つの歳を数え、魔法の鏡の回答が変わってしまった頃から、彼女は身も心もどんどん醜く、邪悪な姿へと変貌していく。そして白雪姫が数々の妨害を乗り越え、いよいよ王太子妃として咲き誇るようになったとき、彼女はついに自ら魔法の鏡を割って醜姿を見ることを拒絶してしまうのである。

 「あなたはだあれ?」

うまくいかなかったこと

 街中が超ゼッタイヤラネーダであふれ、あげくまなつが捕まってやる気パワーを根こそぎ奪われてしまった。

やりきれたワケ

 手づくりドレッサーとローラの手鏡を通じてみんなのやる気パワーがまなつのもとに届き、無事に復活することができた。

 世界各地の神話において、鏡の向こうにはもうひとつの世界があると信じられてきました。昔の鏡はとにかく映りが悪く、現代のガラス鏡と違っておぼろげな像しか映さなかったから、余計に想像力をかき立てられたのかもしれません。
 鏡の向こうには確かに自分の姿がありました。けれど別人のようでもありました。そこで人々は鏡の向こうにこの世界とよく似た別のパラレルワールドがあることを夢想するようになります。

 「鏡よ鏡。あなたはだあれ?」
 「私はあなた。私はもちろん王妃殿下です。でも、もしかしたら白雪姫こそがあなたの占う理想のあなたにほど近いかもしれません」

 「鏡よ鏡。人魚の女王になるのはだあれ?」
 「――やっぱり私だ!」

 「だったら私も。鏡よ鏡。世界で一番トロピカってるのはだあれ?」
 「――それも私!!」

 私はあなたで、あなたは私。
 鏡の向こうの世界でならそういうことがあってもいいかもしれません。

 ・・・それにしてもタナカリオン、久々の登板と思いきや今回もずいぶん凝ったな!!

Broken mirror, a million shades of light.

 「あの人間は、――誰だ?」

 まどろみから醒めたあとまわしの魔女の眼窩にこびりつくのは、在りし日の残響。いいえ、“無かったはずの”想い出。
 おそらくは過去の出来事。寝室に設えられた大鏡には今そこにいるバトラーの姿しか映らず、『白雪姫』に出てくる魔法の鏡とは異なり、あとまわしの魔女の疑問に答えてくれることはありません。

 鏡に映るものは、いつだって今の姿だけです。
 それを見たあなたの心に浮かぶものが現在・過去・未来のいずれになるかはわかりませんが。

 「――鏡のなか?」

 夢。

 同じくまどろみのなか。
 まなつはローラの声に導かれ、鏡の向こうの世界へ迷い込みます。
 そこは不思議と海深く。ローラの領分であるべき空間。

 鏡に映るものは、本来、自分の姿であるはずなのに。

 「――まなつ。あれが伝説のプリキュアよ」
 「伝説の、プリキュア?」

 あなたはだあれ?

 「伝説のプリキュアってそもそも何なの?」
 「大昔、世界を魔女の手から救った伝説の戦士のことよ」
 「魔女って、あとまわしの魔女?」
 「それはよく知らないけど・・・。とにかく、そんな言い伝えがグランオーシャンに残ってるの」

 「この世界を救って。そして、あとまわしの魔女になってしまった魔女も――」

 まなつが知らないことは、ローラも大して詳しくは知らないようでした。どうやらグランオーシャンに残る伝承自体、どこか少し間違って伝えられているきらいがあります。
 プリキュアと魔女の関係は本来どういったものだったのでしょうか?
 その答えを、まなつも、ローラも、まだ知ることはありません。

 「ランドハートクルリング!! おめかしアップ!」

 まだ中学生の彼女たちが知っていることなんてそう多くはありません。
 せいぜい昔は鏡が魔術的な意味を持つとされていたことくらい。それから、今の時代において鏡といったらステキなメイクをするために欠かせないアイテムだということくらい。

 今、一番大事なことをするプリキュアは、今、大好きなメイクの力によって大きなパワーアップを遂げました。

 「エクセレントロピカルスタイル!! 5つの力、大地を照らせ! プリキュア・ランドビート・ダイナミック!!」

The old echo fades away.

 「待て、待ってくれ! お前は誰なのだ!? 何故! お前はそんなに、楽しそうなのだ!?」

 その夢はおおよそ今の自分に似つかわしくないものでした。

 だって、夢の少女は楽しそうに笑うのです。こちらに向かって幸せそうに微笑みかけてくるのです。
 夢であるがゆえにその像は曖昧なばかりでしたが、楽しそうなことだけは確かなように思えました。
 そしてそれは、おおよそ“あとまわしの魔女”と呼ばれる今の自分に似つかわしくありませんでした。

 何故、彼女は自分の前で笑っているのでしょうか。

 どうして、自分は彼女と違って笑っていないのでしょうか。

 「ドレッサーもいいけど、手鏡もいいなあ。それって女王候補の証なんでしょ? なんで鏡なの?」
 「さあ。でもほら、鏡って魔力とか特別な力があるものだし」
 「たしかに。魔法の鏡とかおとぎ話でもよくあるよね」

 かつて、おぼろげな像しか映さなかった鏡は呪術的・魔術的・神秘的な意味を持つ祭具として用いられてきました。
 現代のようなガラス鏡が発明されたのは14世紀の出来事。広く一般流通されるようになったのはさらに時代を経て19世紀になってのことです。このころから、「鏡」という語はそのイメージを大きく変えることになりました。
 はっきりした像を映すようになったガラス鏡にもはや魔術的な意味を見出す者はおらず、代わりに「鏡合わせ」「mirroring」など、同じものをありのままに映し出すという新たなイメージで受け止められるようになったのです。

 「――何? あっ! まなつ!」

 ローラの手鏡が映したものは孤軍奮闘するまなつの姿。
 そしてまなつのドレッサーが映したものは心配するローラたちの姿。

 あなたはだあれ?

 彼女たちそれぞれが今一番見たいと思っていた相手の姿をはっきりと映してくれた鏡たちは、はたして魔術的なものであったのか、それとも現代的なものであったのか。

 「・・・平気だよ。だって、私のやる気は――!」

 「いくらやる気を奪われたって平気だよ。だって私のやる気はジャンジャンバリバリ湧いてくるんだから!」(第10話)

 いずれにせよ、鏡に映されたのはやはり今のまなつの姿。
 以前はまなつひとりで立ち直ることができました。そんなまなつを見てみんなも勇気と希望を湧きあがらせることができたものです。
 ・・・だけど、今回の超ゼッタイヤラネーダはそれを許してくれません。昔は昔、今は今。そう毎回毎回同じことが繰り返されるとは限らないものです。

 だって、そうじゃないですか。

 「幼稚園のときにね、みんなでチューリップの球根を植えたことがあって、好きな色を選べたの。それで私は紫が一番かわいいと思ったんだけど、紫を選んだのは私だけだったの」(第3話)

 「私には無理。できない。空想と現実は違う。私はファンタジー小説の主人公じゃないもの」(第4話)

 「仲間? ・・・もういい。私は誰ともツルむつもりはない」(第5話)

 だって、むしろそのほうが救いがあるじゃないですか。
 鏡が過去を映さず、現在のありようだけを映してくれたほうが。
 そうじゃなきゃ、過去に何か後悔するようなことがあった人は、これから先どうやって生きたらいいんですか? もはやずっと同じ失敗を繰り返すことしか許されないんですか?

 過去は過去。現在は現在。未来は未来。連続してはいるけれど、必ずしも繰り返さず、変えられる可能性があるものだからこそ、救いがあるんです。
 ――きっと、あとまわしの魔女にだって。

 今、一番大事なことをやろう。
 今を一生懸命がんばることで未来もきっとよくなると信じられるから、まなつたちはこれまでずっとトロピカってこられました。

But just you and I can find the answer.

 「――このまま行こう! 学校はあの奥だよ。さあ!」

 以前と同じ展開は許されず、自分のやる気を引き出そうとしたまなつのがんばりはヤラネーダに再び吸い取られて無に帰しました。
 あのときはみごと復活したまなつの勇姿を見てみんなの勇気も鼓舞されたものです。

 だけど、今は違う。

 まなつががんばれなくたって、さんごは勇気を出せる。みんなは勇気を出せる。まなつのためなら!

 「よーし。私たちも!」
 「寝てられないね!」
 「手加減無しでいくぞ!」
 「プリキュアは負けないわ! まなつのやる気は最強なんだから!」
(第10話)

 「オーライ!」
 「急がないとね!」
 「待ってろ、まなつ!」

 今話は第10話のリフレイン。だけど鏡写しのように1点だけが対照的な物語。“もしもまなつが自力でやる気を蘇らせられなかったら?”のifの世界。

 「ときめく常夏! キュアサマー!!」

 あのときは正面から浴びた極光色のやる気パワーが、今話、まなつの背中のほうから降り注ぎます。
 光を届けているのは鏡。ドレッサーであり、手鏡。まなつとローラたちをつないでくれたもの。

 あなたはだあれ?

 まなつはローラたちで、ローラたちはまなつ。
 今、いつも溢れんばかりだったまなつのやる気は、ローラたちのものにもなりました。

 「ごめんごめん。でも、みんなのやる気パワーで助かったよ」

 過去は過去。現在は現在。未来は未来。連続してはいるけれど、必ずしも繰り返さず、だけど望むのなら、それが今一番大事なことだと信じてもう一度挑むのなら、別に繰り返したって構わない。
 それだってひとつの救いのかたち。
 今、どうすれば一番いい結果になるのかだなんて、今のあなたたちが自由に決めていい。

 「この世界を救って。そして、あとまわしの魔女になってしまった魔女も――」

 伝説のプリキュアがやり残した後悔が、今、まなつたちの手に託されました。
 今を、そしてこれからをどうするべきか決めるのは過去の残響なんかじゃありません。今まさにこのときを生きる、子どもたちです。

 「なんとか守りきったな」
 「でも、ヤラネーダはどんどんパワーアップしてきてる」
 「あとまわしの魔女の目的って何なんだろう。やる気パワーを集めて何をしようとしているのかな」
 「わからない」
 「でも! 私たちにはトロピカったドレッサーと、伝説のプリキュアがくれたリングがある。絶対に負けない!」

 鏡は今の自分の姿を映すもの。メイクするために欠かせないステキなアイテム。
 メイクは魔法。勇気をくれる魔法。心に太陽を抱くための魔法。トロピカ娘にだって、プリキュアにだって、きっと何にでもなれる。
 今を生きるあなたたちがそう決めたなら、好きにしたらいい。

 後悔は託されました。
 哀れな魔女を救う道も見えてきました。
 もちろん実際にどうするかを決めるのはあの子たちだけれど。

 「――そうね。みんなで力を合わせればきっと大丈夫よ」
 「これからも、トロピカってくぞー!!」

 どうせなら、彼女たちの描きうる一番ステキな未来を見てみたいものですね。

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    コメント

    1. 亀ちゃん より:

      今日は超ゼッタイヤラネーダがバトラーの手でデビューしても新しい必殺技が出たトロピカル~ジュプリキュアでした!!☆☆♬
      超ゼッタイヤラネーダが登場すると、暗いシーンばかり続いて、いとこのお姉さんの次女にとって良かったのは必殺技を繰り出すシーンぐらいなモノでしょう
      そんな中でも後まわしの魔女もまなつも「夢か」と事実をこぼしたのにはシックリ着ました
      キュアアイドルギャンブラーがキュアベースボールギャンブラーにキュアベースボールギャンブラーに対するセクハラとパワ(-)ハラ(スメント)が混合した大暴言で泣かしてしまうワケですが、キュアアイドルギャンブラー自身は学園ドラマの撮影かと思いきあ「夢だったのね」と我に返ります
      これは8時30分から10時までに始まる日曜の幼稚園児までの女の子向けのアニメ的にもプリキュア的にも感慨深かったですね!!☆☆♬
      ちなみにプリチャンでは虹ノ咲さんがみんなに「かわいくないです」などと言われるなど避けられる悪夢にウナされていました
      一方、キュアアイドルギャンブラーがキュアベースボールギャンブラーを大暴言で泣かしてしまう悪夢に関しては、学校が始まるとキュアベースボールギャンブラーにはむろん女子寮の寮長(キュアバドミントンギャンブラー)にも言いたくなかったワケですが、キュアホワイトソックスとシャイニールミナスには話しました
      一方、まなつはローラ・アポロドロース・ヒューギヌス・ラメールにはタメラいなく話せる信頼感でしたね
      他にもシックリ着たセリフはだいたいの各キャラが1個ずつ発しましたが、忘れています
      さらに次回もどんな内容だったか忘れましたが、プリキュアはまだまだ観続けるつもりですから!!♪

      >で、今日のラブライブは
      知らないもんねというセリフにシックリ着ました
      ドカベンのプロ野球編の2巻にてダイエー(現ソフトバンク)とライオンズの首位攻防戦が福岡ドーム(ヤフオクドーム→ペイペイドーム)で行われる際、後にライオンズとロッテで監督になる伊東さんが、葉っぱを加えた豪快なバッターにド真ん中へのストレートを投げ込んで、ホームランを打ち込まれた際は、
      『打たれたらオレが責任を取る』
      と社会人野球のキャッチャーと同じように、ピッチャーをカバうつもりですが、ドカベンプロ野球編の2巻に収録されている首位攻防戦の先発ピッチャーは
      『でも成績は(自責点ともなって)俺に付くもんね!』
      と決まり文句を心の声で発しました
      私はこれを見てドカベンの先生が作るマンガの面白さを感じ、2019年の夏の広島大会の高校野球観戦記の中で、女子寮の寮長とキュアレッドアイズを車に乗せて、(広島県福山)市民球場に向かう道中、キュアレッドアイズが
      「ホント☆☆さんは、全国(大会)に出場する前の大会の3年生より強かったもんね」
      と決まりモンクで返しました
      そして今日のラブライブでは「知らないもんね」と言葉を続けたので、京都市中京区のゲーマーズに売られている漫画の作品的に感慨深かったですね
      だから女児向けプリキュアにも「(前略)もんね」と決まりモンクを発する時が楽しみなのです

      • 疲ぃ より:

         「夢」という字は元々“夜の暗がり”を表すものだったそうです。なんだかおぼろげで、はっきりしなくて、よく見えないもの。夢とは、そういう時間、そういう空間で心のなかに描かれるものなんですね。
         きわめて曖昧。朝目覚めると、太陽光に照らされてはっきりと像を結んだ景色の情報量に圧倒され、たちまち雲散霧消してしまうものでもあります。そんな儚いものなのに、夢を忘れてしまうことを惜しんだ経験はきっと誰しも一度はあるでしょう。
         人の心って、夜闇にしか溶かすことができないものなのかもしれませんね。

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