トロピカル~ジュ!プリキュア 第30話感想 勝ち負けだけじゃない未来へ明日を塗りかえてく。

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「大選挙! ローラが生徒会長!?」

活躍したひと

ローラ

 やる気は人一倍、浅はかさも人一倍のミラクル人魚。やる気が本物なので意外と誠実に取り組むしきっちり成果を上げてもくるが、浅はかさも本物なのであんまりうまくいってほしいと思えないし事実うまくいかない。それでもへこたれないガッツの人。今回も人魚の女王になる前段階のノリで生徒会長に立候補した。『エクセル・サーガ』だろうか?

正美

 風紀委員長にして対立候補のひとり。現風紀委員長ということは3年生のような気もするがそのあたり大丈夫なのだろうか? 現生徒会派の候補が有力すぎて他に候補者が出てこないのは良くない、という理由で立候補を決めた野党根性の人。現生徒会長とはお互い信頼関係があったうえでのことなので、本当に本当の意味での野党根性。

トロピカってたもの

ローラの手帳

 ノープランで出馬したローラのため、まなつたちみんなで実現可能な具体案を出しあってくれた議論をまとめたもの。結局活用する機会はなかったが、ローラの決心を固める助けとなり、正美に感心させる結果にもつながった。

うまくいかなかったこと

 校内中の生徒みんなが現生徒会派の候補を支持しているなか、ローラのトンチキな公約に興味を持ってくれる人はいなかった。

 ローラにとって勝負どころだった最終演説と同時にヤラネーダが出現した。まなつたちだけで時間稼ぎを引き受けてくれたが、勝負は劣勢。

やりきれたワケ

 まなつたちが意見を出しあい、ローラのやりたかった公約に肉付けしたり、みんなの興味を惹きそうな新しい提案を考えたりしてくれた。

 最終演説とまなつたちどちらを優先するべきか揺れるローラだったが、そもそも自分が今一番やりたいことを考えると「みんなで楽しい学校生活を送ること」だったので、まなつたちを助けに向かうことにした。

 「そもそも生徒会長とは~」みたいな書き出しから入ろうと思いましたが、あんまり意味がないのでやめました。現実の生徒会長とアニメの生徒会長ってだいぶ立場が違いますしね。政治的リーダー云々、民主主義選挙云々も生徒会長を語るうえではピントがズレていますし。

 「本当にローラがやりたいことをみんなに言えばいいんじゃない?」
 「そうだね。基本に戻って」
 「やりたいことは――、海のなかで学校生活よね」

 この選挙自体がまずノリで参戦したようなものですが、ローラが公約として実現したいと思っていることも「みんなの上に立つリーダーとして」というよりは、ごくごく個人的な願望。みんなも面白いと思ってくれるとは思うけれど、それ以前にまずローラ自身がやりたくて提案するものでした。
 この時点で、今話が生徒会選挙を題材としていることにさほど大きな意味はありません。今話でローラたちが取り組んでいたものはもっとミクロなもの。いかに自分たちのやりたいことを実現していくかの作戦会議です。

 そんなんだからローラは選挙に不戦敗するし、負けて当然だなって思えちゃうし、それでいて、負けてなお「よくがんばったね」「ムダにならなかったね」と感じられる爽やかな結末になるわけです。

うまくいかない!

 「私も生徒会長に立候補しようと思って」
 「残念だったわね。生徒会長は私に決まってるから」
 「ま、お互いがんばりましょう」
 「ええ」

 今話、ローラのライバル役として火花を散らすのは正美です。最有力候補の一条さんではありません。
 ぶっちゃけローラと同レベルの飛沫候補です。風紀委員長としてこれまで幾度も演じてきた三枚目役・当て馬役っぷりを思うと、視聴者も彼女が強力な競争相手になるとは1ミリも思わなかったことでしょう。なのに、ライバルポジションを務めたのはその正美なんです。
 例年だとこのポジションに来るのは最終的に選挙で勝つ子か、勝てなくても良い演説をして一目置かれる子なんですけどね。正美の場合はそういういい感じの見せ場すらありません。フツーに惨敗します。逆に、勝ったはずの一条さんは最終演説すら画面に映らず、なんか視聴者の知らないところで地味に当選して終わります。

 今話の物語において重要なのは、そもそも選挙がどうこうではないんです。

 「当然よ。一条さんは白鳥会長のもとで生徒会副会長をしてたからみんなに支持されてるの。みんな『一条さんに勝てるはずがない』って立候補しようともしない」

 今話において生徒会選挙は、“挑戦してみる価値すらないもの”として描かれます。
 「今、一番大事なことをやろう!」が合言葉の『トロピカル~ジュ!プリキュア』ですが、やってもどうせ何も得られないであろうものが今ここにあるわけです。

 絶対負けるとわかっていて、それでも挑んでみせるのはいかにも私たちの知っている(三枚目で当て馬の)風紀委員長らしい。そしてこういうふうに描かれるのを見てしまうと、なるほど彼女は、誰よりも気高い。

 「燃えるわ。相手が強ければ強いほどね。――私、ローラ・ラメールよ!! 私が生徒会長になったら最っ高なんだから!」

 もちろん、我らがトンチキ努力家人魚も。

 「おはよう! ローラ・ラメールをよろしく! 今日の最終演説よろしくゥ!!」
 「うーん・・・。一条さんに入れるって決めてて。ごめんなさい」
 「どうして? 私に任せた方がステキな学校になると思わない? 休みも増えるし、部費も5倍よ!」
 「そうなればいいとは思うけど、本当にできるとは思わないわ」

 トンチキ人魚のトンチキ公約を真に受ける人はどこにもいませんでした。あおぞら中学校の生徒はみんなしっかりしていますね。きちんと実行力のある候補を選ぶのもまた有権者として正しい考えかたではあります。

 けれど、それじゃいかにもつまらない。それに公約で選ばせないんじゃ民意を汲み上げるためにある選挙システムとしては片手落ち。もし一条さんの掲げる公約を良く思わない生徒がいたら、その子はこの選挙とどう向きあえばいい?
 正美が勝てないとわかっている選挙に立候補したのは、そういう生徒たちの受け皿になる目的もあったんでしょうね。「敵うわけない」「叶うわけない」で挑戦する前から諦めてしまうんじゃ、なんか悔しいじゃないですか。
 ローラもそういう後ろ向きな姿勢が大っ嫌いなうちのひとりです。当然、このまま飛沫候補として終わることを良しとするような子じゃありませんでした。

 「もう最終演説に賭けるしかないわ! 何かこれってアイディアがないかしら」

うまくやるには!

 「本当にローラがやりたいことをみんなに言えばいいんじゃない?」
 「そうだね。基本に戻って」
 「やりたいことは――、海のなかで学校生活よね」

 「本当にできると信じてもらわないとね」
 「じゃあさ、信じてもらえるようなアイディアをみんなで考えようよ」
 「実現するための具体的な方法を考えるということ?」
 「そんな感じ!」

 「あの。校則の話だけど、少しオシャレしてもいいことにできないかな」
 「うん! 気合いを入れるときのリップとかね」
 「校則をなくすのは無理でも、それなら先生たちに相談できるかもな」

 「図書室の本をもっと増やせば休み時間がもっと楽しくなる」
 「うんうん!」

 「ねえ。“海のなかの学校”はどうしよう?」
 「そうだな・・・。あ。ダイビングスーツを着るとか」
 「お母さんの知りあいにダイビングスーツを貸してくれる人がいるよ。あ、そうだ! ダイビングスーツあるならさ、いっそのことスクーバダイビングを教えてくれる授業とか良くない?」

 「それいいアイディアかも! 他には他には?」
 「えーと・・・。うん? って、ローラも何かやりたいことないの?」
 「あ、あるけど! 私の意見は最後にまとめる!」

 やっぱりまなつ、こういう議長みたいな場の取り仕切りかた上手ですよね。視野が広いし、議題もよく整理されています。トロピカ娘とは思えないくらいクレバー。
 このシーンだけ切り取って国語の授業に使えそうなくらいです。さんごみたいに細かく相づちを打ってくれると場の空気が柔らかくなるとか、みのりみたいに最初から議論の目的を意識した視点を持てていると話がスムーズだとか、あすかみたいに折衷案を探る考えかたは大切だとか、他にも見どころがたくさん。
 今話のなかだと私はこのシーンが一番好きです。次点で何故かやたらアニメーションが丁寧だった桜川先生登場シーン。首を傾けてから時間差で髪束が垂れるところとか絶品です。

 トロピカる部の強みがここにあります。
 議論ができる。

 ローラは能力だけ見たら優秀な子ですが、発想がとにかくトンチキです。この子の好きにさせるとろくなことを思いつきません。まあ、自分ひとりの問題ならだいたい根性任せの脳筋戦法で乗りきれちゃうせいなんですが。
 ですが、彼女にはまなつがいます。さんごや、みのりや、あすかがいます。この5人は根本的な部分で価値観がバラバラで、それぞれに得意分野を持っています。知識の引き出しも、思考パターンも。だから、ちゃんとお互いの話を聞きあうことができればどんどん豊かに議論がふくらんでいきます。

 アイディア、身近なところにありました。

うまくやるんだ!

 「私たちで考えたアイディア、学校のみんなに伝えて。ローラ! がんばって!」

 無事アイディアは見つかりました。
 ある程度実行性ある、それでいてユニークな公約を話せるようになりました。最有力候補の一条さんに勝てるかどうかはまた別の話ですが、これなら喜んで票を投じてくれる生徒も出てくるかもしれません。

 だけど。

 「生徒会長に立候補したローラ・ラメールです。私は私がやりたいことを、こんな学校だったらいいなってことを、一生懸命考えました。このノートにバッチリまとめたから紹介したいと思います。言っとくけど、私が生徒会長になれば楽しい学校になるのは間違いないんだから安心して投票していいわよ! ・・・でもね、最終演説はちょっと待ってほしいの」

 だけど、今、一番大事なことって何だろう?

 生徒会長になってみたいって思いました。女王様みたいで自分にぴったりだし!
 でも、ひとりじゃ全然なれそうにありませんでした。選挙の結果はみんなが決めるもの。自分ひとりがいくらがんばっても空回りするんじゃどうにもなりません。
 それが気に食わなくて、もうちょっとがんばってみようと思いました。友達に協力してもらえたらもう少し何かが変わるかも。
 変わる気がしました。変われる気がしました。なんだか「勝てるはずない」って空気感に一矢報いることができる気がしてきました。

 だけど。

 「ここに書いたアイディアを一緒に考えてくれた仲間が、今、困ってると思うから。悪いけど私、行かないと!」

 どうして今、一番大事なことができたんだろう?

 自分ひとりじゃできなかった。
 まなつたちがいてくれたから、やっと生徒会長になれそうな見込みが出てきた。
 ひとりだとできないことがある。
 みんなでならやれることがある。

 ローラは、そう、最初からできないって決めつけるような後ろ向きな姿勢が大っ嫌いでした。

 だとしたら、今、一番大事なことは!

 「途中で出てきちゃった。あなたたちを放っておいて『楽しい学校にします』だなんて言えないわ」

 自分に今、できることの幅を大切にすることでした。
 今、できることの幅を広げてくれたみんなを大切にすることでした。

 ローラはとりあえず安易に目立ちたがる子です。
 目の前に楽しそうにしている人がいたら一緒に遊びたいと思う子でもあります。
 誇り高くて、自分にできないことがあるのを認めたくない子でもあります。

 そのためには、何でもできるようにならなくてはなりません。
 自分ひとりではどうしてもできないことがあるというなら、みんなと一緒にできるようにならなければなりません。

 かくしてトンチキ人魚は講堂を飛び出しました。
 トンチキです。前口上だけ語るくらいなら公約の概要だけでも語っときゃムダにならなかったのに、ひょっとしたら白鳥生徒会長や一条さんが興味を持って代わりに実現してくれたかもしれないのに、そんな狡っ辛い後先なんて1ミリも考えないで、まなつたちの信頼も預かったアイディアへの責任も全部かなぐり捨てて、今、自分にできることだけに注力しました。
 たぶんあすかあたりだったらもう少し上手くやれた。
 まなつだと同じことをやったかもしんない。

 「なんで勝手に選挙しちゃってんの!! 待っててって言ったのに!」
 「当然でしょ。演説の途中で抜け出したら失格になるわ」

 ローラの今、一番大事なこと“以外”はもののみごとに大失敗しました。

 でも、これで良かったんだと思います。なんだかんだでこの子の場合は大事なことひとつだけ突き進んでおけば大抵うまくいく。そういう優秀さ、ひたむきさ、負けん気、根気、ド根性を持っています。
 何でもできるようになっておけばいい。
 あなたはどうせ、何でもやりたがる子なんだから。
 それがあなただけの図抜けた個性でもあります。

 「こんなにたくさん、やりたいことが・・・?」

 今回、ローラと正美を見つめる白鳥生徒会長は終始ご機嫌でした。
 対立候補相手にトゲひとつ見せず、むしろ微笑んでいました。あすか相手だとあんなに大人げない白鳥生徒会長が。
 負けの目がない有力候補を擁立したのは自分だとはいえ、きっと彼女にも思うところはあったのでしょう。

 ローラたちの無謀な挑戦、やたらほとばしるムテキのやる気は、きっと学校のみんなのためになったんだと思います。

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    コメント

    1. ピンク より:

      き、きっと風紀委員長は今2年生で、上級生がよっぽどやる気がなかったor特例として素質を見込まれたんですよ多分!

      「何がダメって、そりゃ単に目立ちたいだけな態度がバレバレ。しかも公約がいくらなんでも実現不可能=自分たちの利益になりそうもない候補者に投票したい生徒なんかいないだろうよ」と思いました。
      トロプリ的に言えばトロピカれない、ですね。

      風紀委員長もアレはアレで、支持されようとしたら余程の工夫が求められるでしょう。
      規則が増えることを喜ぶ子供はレアです。SSRです。
      スマプリのれいかみたいに前提条件として信頼されてるならともかく。

      ところでさんご、あなたが通う中学校の服装規定は多分相当緩いです。
      私の地元だと、特に女子は滑り止めでしか受験しないとすら言われる厳しい私立校
      (※誤解されないように言っておくと、偏差値は成績が中の上の生徒が推薦受けられるかどうか程度に高いです。私はギリギリ届きませんでした)
      もあるくらいですし。

      • 疲ぃ より:

         私、中高生当時は正美みたいな子にばかり投票してましたよ。日頃悪ふざけばかりしているやつらが気に食わないからっていう、実に根暗な動機でしたけど。あと自分は素行大丈夫だったので多少厳しくなろうと不都合なかったというのもあり。性格悪うございました。
         私みたいなのはどうかと思いますが、まあ、そんな感じでいろんな候補から選べるのはやっぱりいいものですよ。

         ちなみにこんな記事を書いてはいますが、私の高校時代には1年生の図書委員長がいたことがあります。なんか普通に立候補で選ばれたとかなんとか。(珍しい話かなあと思って棚上げして記事書きましたが)

    2. 亀ちゃん より:

      前週のトロピカル~ジュプリキュアはローラ・アポロドロース・ヒューギヌス・ラメールが生徒会長に立候補する話でした
      理由はどうあれ途中で抜け出すと失格になるとは全然知る由もなかったとは、トロピカル~ジュプリキュアのローラらしかったですね(苦笑)
      私はYes,プリキュア5GoGoとフレッシュプリキュアの時のオーディションがダブりました
      いずれも途中で抜け出した後で戻っては、本末転倒ですからね
      ちなみに私は女児向けプリキュアにおいてオーディションの話が4回目にあった時は、全員をかき集めてはプリキュアを始末しようとする敵幹部が「さぁ、出て来いキュア○○」と言い放つが本能的にすごく楽しみなのです!!☆☆♬
      それもウエスタ―がフレッシュプリキュアにおいてキュアパッションのデビュー戦に向けて、「さぁ、出て来いイース」と生理的に歯切れの好い声だとなおさら充実感も味わえるはずなのです!!
      生徒会長に立候補といえばスマイルプリキュアのれいかがダブる?というような他の投稿者の声もあり、キュアホワイトソックスと同じようにそのれいかが「いけません!マンガもゲームもケーも!!」と言いつけたことで白けた大人のプリキュアファンも多かったでしょう
      しかしれいかには圧倒的な逆転現象を引き起こす説得力もあったのがスマイルプリキュアでした!!
      ちなみにキュアホワイトソックスも私が作り上げたプリキュア小説の中で、生徒会長ではありますが、漫画もゲームもケーキも“厳正な条件付き”で校舎に持ち込むことは認めていますよ!!
      但し、授業中に漫画もゲームもケーキも楽しむと当然担当の教師に没収されても世話はないというのもキュアホワイトソックスです!!
      一方、キュアホワイトソックスはキュアベースボールギャンブラーに強く説得力のある大推薦で生徒会長になりました!!☆☆♬
      で、ローラ・アポロドロース・ヒューギヌス・ラメールはまなつらから意見をかき集めフェアな意見を述べたのはみのりちゃんだけしょう

      >そんなこんなで
      今週のプリキュアは私のお父様の方のおばあ様のおめでたい記念日明けのプリキュアなのです!!☆☆♬
      既に10月に入っていますが、今秋の四国地区大会は有観客が決まると、愛媛の県庁所在地の東横インにて、この日のトロピカル~ジュプリキュアを視てから、決勝がある同じ地域の坊ちゃんスタジアムにて、プリキュアも高校野球も楽しめた!!と、2016年の明治神宮大会の決勝と魔法つかいプリキュアの秋の映画をセットで楽しめた!!と言わしめられたので、その再現になることを10月最後の日曜にて願いたいです

      • 疲ぃ より:

         選挙って効率よく名前を売るのにも有効な手段なので(※ あんまりやりすぎるとアレですが)、あれだけ目立ったんですから来年があれば今度こそローラが生徒会長かもしれませんね。

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