そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国憲法 序文
小学校6年生くらいから誰もが一度は学んでいることではありますが、日本国は民主主義の国です。国民主権を謳い、すなわち私たちひとりひとりが平等に権力を保有し、それ以外のありとあらゆる権力は排除されるべきだという立場です。
選挙による権力者
現在日本国の総人口は1億2521万人ほどいます。
国民主権であり、それ以外のあらゆる権力が排除されるということは、私たち1人あたりが行使できる権力はほんの1億2521万分の1だけということになります。誰もが例外なくそれっぽっちの権力しか持ちません。いかな名家の出身であろうと、大金持ちであろうと、平等に。
普通に考えて、いくら主権者といえどこんな砂粒程度の権力しか持たない烏合の衆の集まりでは、国全体を動かす大きな意志決定など誰にもできるはずがありません。だから私たちは選挙を行い、ある程度の人数ごとに意見を集約して議会に送り出す代理人を立てるわけです。この代理人のことを“代議員”、もしくは“国会議員”や“地方議員”などと呼びます。国会議員や各地方議会議員が政治的に大きな力を振るうことを許されるのは、その人が何千何万人分の主権を預かっているからという理屈ですね。
つまるところ、民主主義の基本原則は多数決ということになります。選挙で多数の票を集めた代議員だけが議会に入ることを許され、その議会でもさらに代議員たちにより多数決が行われ、最終的に多くの支持が集まった各種法令や政令だけが施行されることになっています。
多数決というとあんまりいいイメージを持たない人もいるかもしれませんが、小さく平等な権力しか持たない大人数が合議することを考えると必然的にこうなるんですね。もし多数決以外の意志決定を行おうとするならば、貴族や国王など選挙以外の方法で権力を得た、不平等な権力者の存在が絶対に必要になります。
選挙以外による権力者
なお、現実的にはその“選挙以外の方法で権力を得た、不平等な権力者”というのも存在してはいます。官僚、大資本家、官僚、医者や大学教授など社会的ステータスが高い人物、テレビタレントやスポーツ選手といった著名人、卑近な例でいうならtwitterやYouTubeで名が知られたインフルエンサーなどもそうですね。
大資本家が権力を持ちうるのは、彼らが商売上多くの人とつながりを持っているからです。
彼らに従っていれば大勢の人が得をする。その構造が権力を生む。逆をいうなら、何らかの理由により彼らとの取引が利益を生まないと大勢に判断された時点で、大資本家は権力を喪失します。大資本家の権力基盤は本質的には資本ではなく、信用であるといえるでしょう。
官僚が権力を持ちうるのは、その職務上必要なことだからです。だからどんな人でもなれるわけではありません。
日本国籍を持ち、日本の法律を守り、目立った刑罰を受けていない、信用に足る人物だけが税金によって雇われます。そしてこの税金は私たち国民が持つ資本によって賄われており、彼ら官僚の任命権もまた私たち国民が握っています。
“信用”というキーワードが続きますが、社会的ステータスが高い人物の権力基盤などズバリそれそのものです。
彼らはその卓越した能力や深い知見により多くの人々から信用されていて、だから一定の権力を持っています。
著名人は主に広告業に対して強い影響力を持っています。
あとの構造は大資本家と同じ。テレビや新聞などを通じて多くの人から好感を得、多くの人から信用されているから権力を持ちえています。何かのきっかけで信用を損なうことがあればただちに権力も喪失します。
インフルエンサーについては言わずもがな。
彼らの権力はフォロワーの数と名声によって決定されます。フォロワーがつかなければそもそも権力を持ちえませんし、いくらフォロワーが多くても醜聞が知れ渡っていた場合には誰も彼らを信用しません。
すなわち、選挙以外の方法で得られる権力の正体は結局のところ“信用”です。信用が権力を生みます。なぜなら権力とは“多くの人を従わせられる力”だからです。
幸い日本には(法律が守られているかぎり)奴隷が存在しないので、誰に従うべきかは全て従う側の自由意志に委ねられています。信用できない人物は、いかにお金を持っていようと、いかに有名であろうと、権力を持ちえない社会構造になっています。
日本国の現実として、選挙で選ばれていない権力者も確かに存在してはいますが、こちらも実質的には選挙と大差ありません。
彼らが持ちうる権力の実体は、シンプルな話、大勢の人の信用を集められるかどうかに依存しています。
繰り返しになりますが、全ての権力とは信用なんです。
少なくともひとりひとりの国民が平等に権力を握る民主主義国においては。
代議士の権力を軽んじる発言について
さて。長々と誰もが当然に知っている前提を書き連ねたうえで、ここからが本題です。
ウチのブログはあくまでアニメやゲームの感想ブログなのであんまりこういうことに口出しすべきではないと思っていましたが、この件に関してだけは黙っていられませんでした。ひとりの民主主義の信奉者として。
こういう発言をする人物が現れました。
非常に残念なことに、地方議員です。支持者たちの意志を代弁する立場にある代議士です。
増田かおる 松戸市議会議員 無党派
2期目の当選である平成30年度松戸市議会議員一般選挙(有権者数406,185名、有効投票数144,950票)において2,125票を集め、全44枠中第39位で当選。
現在、全国フェミニスト議員連盟の共同代表に就任しています。現職議員・元議員合わせて約200名が加盟しているという大きな団体です。
そういう立場にある人間がtwitterで「まさか地方議員が警察に圧力かけて動画削除? できるはずないでしょう」と発言しました。
Facebookでは上掲の文言に続けて「私を含めて、世話人も会員も地方議員が多いのだけど、みんな砂つぶみたいに小さな存在の集まりなんですけどね」とまで発言しています。
ことの発端は、千葉県警がとあるバーチャルYouTuberに製作依頼した広報動画を、全国フェミニスト議員連盟が公開質問状によって公開停止に追い込んだことに始まりますが、そのあたりの経緯は適当に調べてみてください。少し検索すればいくらでもニュース記事が見つかるはずです。
ここではその事件自体について言及しません。
私はバーチャルYouTuberを好んでいますが、当該キャラクターについてはこの事件で初めて知りました。
また、私はフェミニストではありませんが、ジェンダーフリー思想を支持しています。
よって、事件そのものを語ろうにもいずれかの立場に立つことはできません。
この記事では増田かおる氏の政治的立場に論点を絞って言及します。
彼女の上掲の発言は、民主主義国の主権者のひとりとして絶対に許すことのできないものでした。
いったい何のための代議士か。何のための選挙か。彼女の持ちうる権力とはそもそも誰の持ち物だったのか。
彼女はこの国の主権者の意志をまとめ、政治の場で議題として奏上するために、公平な選挙の場で代議士として選出されました。彼女の代議士としての発言と行動は、全て2,125名の支持者の信任のもとに行われています。
すなわち、その発言と行動は2,125名の支持者が求めて行わせたことであり、その結果には2,125名の支持者が責任を持たなければならない、ということになります。この国の主権者はあくまで国民ひとりひとりなのですから。
もし彼女が支持者の意向を無視し、個人的な思想によって権力を濫用したというわけでもないかぎりは、そういうことになります。
彼女には間違いなく権力があります。
誰が否定しようと、彼女自身が否定しようと、その前提は覆りません。ここは民主主義国で、彼女は選挙によって選ばれた代議士なんですから。
総人口1億2521万分の得票数2,125と聞くとたしかに砂粒のように小さい存在とも思えるかもしれません。しかし、1億2521万分の1の権力しか持たない国民ひとりひとりが、それでも政治の場に声を届けたくて議会へ送り出した人物なんです。それこそ砂粒のように無力な権力者が、それでも自分たちの権力に実効力を持たせたくて寄り集まった、そういう集団意志の代理人が彼女なんです。
増田かおる氏は2,125人の信用にふさわしい権力を持つべきですし、現実に2,125人分の権力を持っています。もし、そのことを自覚しないというのであれば、これは彼女の支持者に対する明確な背信行為です。
議員連盟などという集団を率いていたならばなおのこと。名簿が公開されていないので実際に何名が現職議員であり、総計何票分の支持者を背負っているのかはわかりませんが、どう少なく見積もっても増田かおる氏個人の100倍の支持者はいるはずです。
それだけの公権力が、千葉県警及び松戸市警察署に向けられました。
上で官僚云々の話としても少し書きましたが、公務員というのはそもそも税金(※ 国民が持つ資本)によって雇われ、国民に任命権を握られている立場です。日本国憲法においては「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」とも規定されています。
議員からの陳情があったら一定の配慮をしないわけがないじゃないですか。
増田かおる氏は地元議員なので、すなわち彼女の名義で出された発言は2,125人もの地元住民の民意です。
全国フェミニスト議員連盟全体となると支持基盤こそ全国に散らばりますが、さらにものすごい数の民意が彼女たちの活動を信任しています。
国民の意見を聞き入れるのは、公務員たる警察職員の義務でもあるんです。(もちろん、警察職員本来の業務もまた雇い主である国民から与えられたものなので、これが1人2人のクレーマー相手だったならはねのけて継続する判断も必要だったでしょうが)
増田かおる氏と全国フェミニスト議員連盟はその支持者の数にふさわしい権力を保有していますし、事実、行使しています。
それを無力だなどと、砂粒同然だのとは言わせません。あなたがたはむしろ、支持者のためにも一層の権力を得ようと努めなければならない立場です。
あなたはこの国の主権者たちに唾吐きました。
自身の支持者たちからの信任を軽んじました。
民主主義を支えるシステムの根幹を嘲弄しました。
私は民主主義国の主権者のひとりとして、あなたを絶対に許しません。
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