トロピカル~ジュ!プリキュア 第38話感想 昔と、ほんの一瞬前の“今”と、それからまさにこの“今”

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悪い。でも今はこの試合より仲間が大切だから。

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「決めろ! あすかの友情スマッシュ!」

活躍したひと

あすか

 白鳥さん相手のときだけ意地の悪い語彙が増える、もうすぐ受験生。普段はむしろ温和な性格で、トロピカる部の部内会議ではさんご以上に自己主張が少なめ。けれどけっして自分のやりたいことがないわけではなかった。譲れないものがあるときだけ彼女は頑固にこだわるし、そして彼女が絶対に譲りたくないと思う瞬間にはいつも白鳥さんが目の前にいた。

白鳥さん

 あすかがいる場ではあすかを挟んでしか話を振らない元生徒会長兼テニス部部長。あすかの前でだけイヤミっぽく笑うため、なんとなくこっちがケンカの原因になっているような印象が強いが、実際のところケンカをふっかけているのは8割がたあすかのほう。そんな彼女が今回自分から摸擬試合を申し込んでいるのだから、その内なる思いがどれほどのものか察せられるというもの。

トロピカってたもの

テニス

 過去のあすかが二番目に大切にしていたものであり、未来のあすかにとってもきっとかけがえないものになるであろうもの。一方で、つい最近までのあすかにとってはそこまでのものではなかった。友達を裏切らないことのほうがもっとずっと大切なことのはずだった。でも、だからこそ、これからのあすかにとってテニスは何より大切なものへと変わっていく。

うまくいかなかったこと

 昔はテニスの名門・フェニックス学院への進学を夢に掲げていたあすかだったが、今の彼女は中学3年生のこの時期になっても進路希望表を提出できずにいた。テニスの夢を捨てたわけではない。正確には、一度捨てたが最近また拾いなおした。進学先はフェニックス学院以外思いつかない。それでも、どうしても正直な気持ちを書けずにいた。

やりきれたワケ

 あすかにとって仲間を裏切らないことこそが何より大切なこだわりだった。テニス部の一件ではそれと競合することになってしまったからこそ、一度テニスを捨てる選択をしたはずだった。けれど、今回摸擬試合を通してかつての仲間にとってテニスがどういう意味を持っていたかを確かめたことで、あすかにとってのテニスが自分の一番大切なこだわりと結びつくようになった。

 地方だとよくあることなんですよね。進学校が勉強でも部活でも地域で一番強い状況。むしろ例外は県外から優秀な生徒をスカウトしてくる金満私立高校がある場合くらいじゃなかろうかってレベルで本当によくある話。
 まあ、普通は地方都市の公立高校がそうなる(※ 成績優秀者は進学先を自由に選べるため、何かに特化している名門校がない地域だと一番通いやすくて学費も安い学校に集まる)はずなので、フェニックス学院みたいにスポーツ推薦枠を持っているケースはレアでしょうが。

 結局のところ勉強をがんばる子って他のどんなことに対してもモチベーションを高く持っているので、一芸特化の子を育てる環境がなければ、同じ子が勉強でもスポーツでも全方位総ナメで活躍しがちなんです。
 地方だと勉強をやる暇がないくらい本格的に人材育成するような学外のクラブや塾がほとんどありませんからね。みんな同じ環境、同じ条件で育つんですから、ひとつのことだけにやる気を出して他のことはおざなり、なんて中途半端はそうそう起きるものじゃありません。まあ、小学校の早い段階でつまずいて萎えてそれっきり、みたいなのならありますが。
 そういうのを見ていると、いわゆる“才能”なんてものは無いんだろうな、あったとしても後天的な環境の差、やる気の差を覆せるほどのものではないんだろうなと感じる次第。

 さておき。

 あすかにとって一番大切なものって、実はテニスではありません。
 さんごにとっては“かわいい”、みのりにとっては物語が「一番大切なもの」に当たるでしょう。だけどあすかにとってのテニスはそういうものじゃないんです。だから初変身回の第5話でもそこまで大きくクローズアップされていませんでした。

 「もういい。私は誰ともツルむつもりはない」(第5話)

 あすかにとって一番大切なものは仲間です。もっといえば、仲間を裏切らないこと。
 テニス部の一件では、あくまで抗議しようと訴えるあすかに同調してくれる部員がひとりもいませんでした。一番の仲間だと思っていた白鳥さんですら味方になってくれませんでした。それがショックで、悲しくて、腹立たしくて、あすかは一度テニスを捨てました。
 その程度のものだった、とは言いません。あすかにとってテニスはもちろん大切なものだったんでしょうが、彼女にはそれ以上に優先されるべき大切なものがあった。そういう意味です。

 「担任の先生から電話があった。進路希望表が出てないと。フェニックス学院でテニスがしたいんじゃなかったのか?」

 もちろん、できることならテニスはしたいです。大好きです。ですが、それでも、あすかにはテニスができない理由があったわけですね。
 もし推薦枠やら難関試験やらの障害を乗り越えて学院のテニス部に入部できたとしても、そこには白鳥さんがいます。あすかが一度テニスを捨てたことを知っていて、しかもどうやらそのことを未だ根に持っているらしくギクシャクした関係の幼馴染み。彼女とどう向きあったらいいのか、あすかにはどうにもわかりませんでした。

 「行きたかったとしても私の成績じゃ難しいけどね」

 「無理。テニス部やめて試合の実績ないんだから」

 今、一番大事なことをしよう!
 そんな言葉を掲げるトロピカる部部長らしからぬ後ろ向きな言葉は、なにも本気で“難しいから”たったそれだけで出てきたわけではありません。その程度のことで今さらあすかは諦めません。
 ただ、あすかにはテニス以上にもっと大切なものがあっただけです。
 そのことに妨害されたままでは、あすかはどうしてもテニスを再開することができなかったんです。

 あすかにとって一番大切なのは、あくまで仲間を裏切らないことでした。

今の自分への裏切り

 「――ラケット、また出したんだな」

 おそらく直接のきっかけは第34話。まなつのお父さんから子どものころの夢を聞いたことでした。
 帰り道、あすかはふとスポーツ用品店のショーケースに飾られたラケットを見ます。細かなデザインは違っていましたが、自分と白鳥さんの色のラケット。あすかは赤いラケットを、白鳥さんは青いラケットをそれぞれ愛用して、よくダブルスを組んでいたものでした。

 楽しかった。充実していた。大好きだった。テニスも、白鳥さんも。・・・あの日までは。
 今となっては昔のこと。

 だけど、まなつのお父さんは言っていました。

 「まなつと同じだ。だから夢はひとつでもいっぱいでもいい。大事なのは“今!”」

 「とにかく、今なりたいものがあってもなくても、未来には無限の可能性があるってことだ」(第34話)

 その言葉がきっかけで、きっとあすかは愛用のラケットをまた取り出したのでしょう。

 大事なのは今だから。

 過去じゃない。未来でもない。
 消防車になりたいだなんてバカげた夢を見る子どもが本当に将来消防車になるわけがないし、だからといってどうしようもない人間として育ってしまうわけでもありません。むしろまなつのお父さんは尊敬できるステキな人でした。たくさんの夢を見てきた瞳が、今でもキラキラと輝いて見えました。
 大事なのは今。いつでも“今”を大事にしてがんばりつづけているかぎり、きっと未来には無限の可能性が待っている。夢は今をがんばるための原動力。だから何度だって変わってもいいし、どんなバカげた夢でも構わない。夢を持つことそのものに意味がありました。

 今、自分は何をしたいと思っているんだろう?

 あすかにとって、その自問の答えがテニスだったわけですね。

 丸一年近くにもなる大きなブランクがあります。
 一度は捨てたものを拾いなおす気恥ずかしさ、後ろめたさももちろんあります。
 そもそもテニスを再開したところで今さらどうにかなるものでもないかもしれません。
 それに、もしこのことを知られたら何か鬱陶しいことを言ってくる人だって出てくることでしょう。実際、白鳥さんは口出ししてきました。フェニックス学院のコーチも。ああなることはわかりきっていました。

 それでも、あすかは今、もう一度テニスラケットを手に握ることにしました。
 過去に何かあったからって、今さら再開しても無駄かもしれないからって、それを理由に今大好きなテニスをやらないでいるのもまた、間違っていると思うから。

 それがあすかにとっての“今”です。

 トロピカる部部長の引退イベントをやりたいって話になって、
 ネタ出しのためにみんなで市の図書館まで出かけて行って、
 かと思えばまなつとローラが中学校と高校の違いに興味を持って、
 なぜかよりにもよって因縁のフェニックス学院に行くハメになって、

 作劇的にこの一連の流れバッサリ省略できね? わざわざつくった図書館の背景美術もったいなくね? ただただ尺のムダ遣いじゃね? ってレベルに目まぐるしく気まぐれに変わっていく、あすかの“今”。
 そんな今、あすかは一度捨てたはずのテニスを、もう一度拾いなおしました。

 “今”は、変わりゆくものです。

かつての仲間の裏切り

 「あなたたちこそ何をしているの?」
 「”まなつたちが”学校を見たいっていうから」
 「あなたもでしょう? フェニックス学院はあなたの夢だから」

 今となってはすっかり犬猿の仲となった白鳥さんが、今日もまたケンカをふっかけてきました。
 いいえ。あすかはたぶん自覚していないでしょうが、実際のところ普段ふっかけているのはあすかのほう。白鳥さんのほうから勝負を挑んできたのなんてせいぜい第24話のクイズ番組のときくらいのものです。(あれはあれでなんで白鳥さんがあんなノリ気だったのか謎ですが)
 まあそれはそれとして、あすかにとって白鳥さんは今日もイヤなヤツでした。

 あすかがテニスを再開して、せっかく過去の呪縛から逃れようとしているのに、この元友人ときたら相変わらず過去に囚われているらしく、あすかがテニスに戻ってきたことがとにかく気に食わない様子でした。

 「コートのこちら側に来たいのならば、ただ見ているだけでは無理よ」

 「――でも、テニスにはまだ未練がある。本当は自分がここにいたはずだって思ってるんでしょ」

 今日もまた理不尽な言葉であすかをなじってきました。
 本当にそんなつもりじゃなかったのに。偶然だったのに。
 なのに、テニスを再開したという恥を知られてしまっていては、そんな“本当”なんて信じてもらえない。

 たしかにまたテニスを始めました。
 だけど、あすかにとってそれは過去に囚われてのことではありません。未来になにか夢を見ているわけでもありません。
 ただ、今の自分にとって一番大事なことをするべきだと思ったとき、たまたまテニスがそれなんだと思えただけ。過去も未来も本当に関係ありません。
 それなのに過去の痛いところを突っつかれたり、未来に抱いている思いを勝手に邪推されたり、言いがかりもいいところです。

 「勝手に話を決めるな!」
 「いいじゃない。コーチにいいところを見せればあなたが推薦を得られるかもしれないのよ。それとも、負けるのが怖い? 逃げる気?」

 白鳥さんは昔からちっとも変わっていませんでした。
 あの日もこっちの気持ちなんて全然考えてくれなくて、一方的に物事を決めようとして。

 「棄権? そんなのおかしいだろ! こっちは何も悪くないのに棄権!? みんなは納得できるのか、こんなおかしな結論を! 私たち仲間で正々堂々戦おう! そうすれば、きっと――!」
 「もし、騒ぎを表沙汰にされたら・・・」「試合に出たいです・・・」
 「・・・え? ――だから、そんなことにならないように抗議するんだ!」
 「――あすか! ・・・棄権します。テニス部の部長として、仲間のために」
 「仲間のため・・・。そんな仲間なんて。仲間なんて、要らない――」
(第31話)

 あの日裏切られて以来、あすかは仲間というものを信頼できなくなりました。

 今年になってようやく立ち直れたのはまなつたちと出会ったおかげ。

 「私には仲間なんて必要ない。夏海はなんで部活をやりたいんだ?」
 「私、地元に歳の近い友達がいなかったから。仲間と一緒に毎日トロピカルぞー!って決めてて」

 「仲間なんて――、意味あるのか?」
 「へ? 意味? ――あ。私たちって、今一緒にメロンパンを食べる、メロンパン仲間? へへっ。なーんて」
(第5話)

 テニス部で起きた事件を知らないまなつにとって、「仲間」という言葉はものすごく軽いものでした。「友達」とほとんど同じ意味でした。
 だけど言われてみれば、あすかにとっての「仲間」も本当はそのくらい気安いものだったはず。難しい問題に巻き込んだり巻き込まれたりすることなく、もちろん裏切ったり裏切られたりなんてこともなく、ただお互い大好きなテニスをして楽しむ。そんな関係。それが仲間。

 それが、あの日起きた事件のせいで、あすかのなかでものすごく重たい言葉になってしまっていたのでした。
 まなつたちと出会ったおかげで、あすかは自分にとって本来の「仲間」という言葉の意味を取り戻せたはずでした。

 「逃げる気?」

だというのに、この元友人ときたらいつまでも過去に囚われて。

 「テニスをやめた彼女にそこまでこだわる必要があるとは思えんがね」
 「――前へ、進みたいからです」
 「・・・うん?」

今の彼女への裏切り

 「残念だわ。その程度なんて」
 「・・・いいウォーミングアップになった」

 それはけっして強がりなんかではなく。1ゲーム目を一方的な展開で抑えられたあすかでしたが、2ゲーム目3ゲーム目の連続勝利でそのことを証明してみせます。

 「すでに引退した身」。そんな過去なんて、今のあすかには関係ありません。もちろん不利はあるでしょう。本来なら1年分の練習量だけ実力差がついて当然です。
 ですが、それだけの話でもあります。1年間白鳥さんが努力してきたぶんの実力差なら、あすかの努力次第で追いつけないこともありません。過去を変えることは誰にもできませんが、今を変えるというならまた違います。大事なのは今です。過去を言い訳にして挑戦する前から諦めていたら何も変えられませんが、過去を過去として割りきるなら、今ならまだできることがあります。
 難しいことです。今話のあすかのように簡単に取り戻せる話ではありません。向こうも相応の努力は重ねてきたでしょうから、それを覆すだけの膨大な努力量はもちろんのこと、もしかしたら運も必要になってくるかもしれません。

 それでも、できない理由なんてない。

 「先に2ゲーム取るなんて。相当鍛えているようね。――テニスをやめたんじゃなかったの?」
 「やめた!」
 「じゃあ、なぜまた?」
 「まなつたちだ! トロピカる部が教えてくれた。仲間も捨てたもんじゃないって。またテニスができるんじゃないかって。そう思ったんだ!」

 1年間の空白が取り戻されていきます。
 大事なのは今。過去に捨ててしまったものなら、そして捨てたことを後悔しているのなら、今拾いなおせばいい。
 過去に積み重ねるべきだった練習量が足りないというならそのぶん今練習すればいいだけだし、もし他にも大切なものがあったならそれも取り戻してしまえばいい。

 「誰が怖がりよ!」
 「合宿の夜、トイレが怖いって泣きそうだったろ! だから私が一緒についてった!」
 「そっちこそ! 合宿で財布落として泣きべそかいてたでしょ!」
 「泣くか!」

 1年間の空白が取り戻されていきます。
 過去を変えることはできなくとも、今のことなら話は別。
 あすかにとって白鳥さんはつくづくイヤなヤツでした。昔は一緒にテニスを楽しむ仲間だったのに、今は全然。いちいちイヤミったらしいし、勘に障ることばかり言うし、今日だってこうして理不尽に勝負をふっかけてきました。

 「そう! いつだって今が大事だよ! だから、私は大人になったら――」
 「大人になったそのときの私が一番なりたいものになる!」
(第34話)

 だけどそれも、それすらも、今は昔。
 “今”はいつにだってあります。過去のあすかも、未来のあすかも、いつだって“今”を感じながら生きてきたはずです。
 あすかにとって白鳥さんはつくづくイヤなヤツでした。だけど、思い出します。一緒に部活をしていたときの楽しい想い出を。大切な仲間だったときの白鳥さんの姿を。
 あすかは知っていました。覚えていました。ただ、想い出にフタをしていただけで。だから白鳥さんのことをイヤなヤツだって思うようになっていました。

 だけど、“今”なら。
 大切なものを拾いなおした“今”ならば。

 「私だって、思ってた! あなたとずっとテニスがしたかった!」

 その目に映るものは、きっと変わるはずです。
 まなつと出会って「仲間」という言葉の意味が変わったのと同じように。

 「・・・あのときは。あなたを守るため。あの試合さえ棄権すればずっとダブルスを組んでいられたのに」
 「・・・だったら、棄権じゃなくて一緒に戦ってほしかった」

 あのとき、あすかはテニス部の仲間に裏切られた思いを感じていました。
 だけど。白鳥さんたちを裏切っていたのは、あすかも同じ。

 あのときの裏切りを引きずって、過去にこだわって、今の今までずっと変えようとしてこなかったのは、あすかも同じでした。

そして、変わらないもの

 「待って。試合を続けなさい! そうすればあなたが推薦候補にだって――!」
 「推薦? そしたら百合子はどうする気だ?」
 「私の学力だったらフェニックス学院に入れるわ。推薦を使わなくても」
 「大した自信だな」
 「また、一緒にテニスができるわ」

 まるで一年前の事件の日を繰り返すかのように、白鳥さんはまた仲間のために自分から損を受け持とうとしていました。ちょっと小ずるくて、大人ぶった打算含みの最適解。この試合はそもそもが彼女の計算のもとに仕組まれたものでした。いいように利用されたコーチは怒っていいと思う。

 今となっては笑うしかありません。
 あすかはこんな幼稚な小細工を真に受けて、一年間も仲間への思いを拗らせつづけていたわけです。

 そのうえで、譲りたくないものは今回も譲りません。
 あすかにとって一番大事なものは、テニスじゃなくて――。

 「悪い。でも今はこの試合より仲間が大切だから」

 取り戻せないものなんてありません。
 どんな過去があろうと。
 どんな未来があろうと。
 だからこそ、“今”は過去よりも未来よりも大事なものたりえるんです。

 今、一番大事なことをしよう!

 「今日もフェニックス学院か? よかったな、推薦決まって」
 「ええ。今日はトロピカる部は?」
 「休ませてもらった。本屋に参考書買いにいこうと思って。そっちと違って推薦で高校行けないからな」

 過去と現在と未来は連続しています。そして過去を変えることは誰にもできません。白鳥さんに比べてあすかが学業で劣ることはさすがに否定できません。
 ですが、それだけの話でもあります。過去に足りないものがあったなら、今努力すればいいだけです。もちろん、いうより簡単な話ではありません。周りだって相応の努力は重ねているわけですから、取り戻すには人並みの努力なんかじゃ全然足りないことでしょう。

 それでも、できない理由なんてありません。

 大事なのは今です。
 過去を言い訳にして挑戦する前から諦めていたら何も変えられませんが、過去を過去として割りきるなら、今ならまだできることがあります。
 今、自分にとって一番大事なことがあるのなら、そのために一生懸命がんばるだけです。

 あすかは仲間に裏切られたくありませんでした。
 自分も仲間を裏切りたくありませんでした。
 その不器用で素直すぎる正義感のせいで過去に大きなキズをつくったこともありましたが、今、彼女はここで笑っていられます。

 過去と現在と未来は連続しています。
 ほんの数瞬前の“今”と、今この瞬間の“今”と、ここでまばたきしたあとの“今”ですら、過去と現在と未来。
 今を大事にするのならばこそ、過去も、未来も、そう簡単に捨てるべきではありません。あなたが捨てたくなるほどに辛い思いをしたその瞬間にも、きっとあなたにとって一番大切なものが隠れているはずです。
 そのどれもがいつかのあなたにとっての“今”だから。

 「志望校はとっくに決めてたんだ。ただ、進路希望表には書けなかった。自分に覚悟があるか確かめてからと思って」
 「覚悟?」
 「ああ。おかげで確かめられたよ」

 あすかにとって一番大切なこだわりは、仲間でした。

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    コメント

    1. ピンク より:

      >進学校が勉強でも部活でも地域で一番強い状況
      私の高校受験時代を考えても、たしかにそうでした。
      記事内でおっしゃる理由に加えて
      勉強だけor部活だけ素晴らしいというのは、受験生や保護者から見たらアピールポイントがより少ない=優先順位が下がるってことですしね……。
      さんごみたいに、制服に注目する子もいるわけで、こうして考えたら選んでもらう側も色々大変そうです。

      とりあえずどっちかが落ちたら嫌すぎるので、2人とも受験勉強頑張ってください!

      • 疲ぃ より:

         制服を熱く語る子いましたねえ。私の地域だと制服も進学校ほど人気が高かったので、残念ながら制服で学校を選ぶことはできなかったようですが。(受験勉強をがんばるモチベーションにする子ならいました)

         まあ、そんな全中学生が学力一本で勝負する環境で受験競争を体験してきた身なので、部活のために受験勉強をがんばるあすかにはそれなりに共感できるところがあります。
         地域の私立高校では文化部が軒並み衰退していたので、滑り止めに甘んじることはできないという意味で・・・。

    2. 亀ちゃん より:

      昨日は滝沢 あすかとあおぞら中の生徒会長がテニスをする話でした
      で、本編の序盤では中3である生徒会長が引退会見を開き、全生徒会長がテニスをしながら滝沢 あすかに「誰がこわがりよ」と言い放ったのはシックリ着ました!!☆☆♬
      これはいろんな二次元作品的に感慨深いですね!!☆☆♬
      それから途中で何故を交えるセリフにもシックリ着ました!!☆☆♬
      キュアアイドルギャンブラーが第4話から最終回にかけて断続的に登場するチャンピオンの漫画から始まって、数%プリキュア的に感慨深いですね
      女児向けプリキュアではGo!プリンセスプリキュアにて物語の終盤の中の終盤にディスピアが「ホープキングダムに何故(以下省略)」から始まったことでもあるので、なおさら感慨深いです
      で、次回は涼村 さんごをメインとした話ですね
      今日になって思い出しました!!

      >で、プリキュアとは完全に無関係なことで言いたい雑談は
      愛媛県松前(マサキ)町のエミフルMASAKI限定で売られている高価なたい焼き屋=銀のあんのふんわりたい焼きはまったくを以って普通な味わいでしたが、頭がクラっとするような感覚が一瞬で晴れるほど好い要素があったので、今度、その店でふんわりたい焼きを買い食いもしくは30スタンプで3匹交換した際に食べた時は、普通以上にシックリ来る感じも、旨味まで感じられるようにもなっていて欲しいです!!

      • 疲ぃ より:

         あのふたり、お互いのことが大好きなくせに相手の本意を確認することすらなく対話をうち切っていましたからね。そりゃ聞きたいでしょうよ。語りたいでしょうよ。むしろ今までどれだけ意地を張っていたのか。
         プリキュアの赤いお姉さん、だいたいコミュ障拗らせている説。

    3. 東堂伊豆守 より:

      他所の学校のテニスコートを占拠して敢行された、かつての名ダブルス·滝沢あすかVS白鳥百合子の痴話喧嘩……もといシングルス決戦。――――どうもこの試合、「仲直り」というより「円満離婚」「発展的解消」の儀式という感じが強いんですよね。
      今後、滝沢あすかが一般入試でフェニックス学院に入学し、推薦入学組の白鳥百合子と同様テニス部に入部し、そして再度「シラタキ」ペア(元ネタはバトミントンですが)が結成されるとして……あすかと百合子が「ヨリを戻す」のか、再び百合百合イチャイチャするのかというと、どうも違う気がするんですよ。「離婚した後も一緒に舞台に立ち続ける夫婦漫才コンビ」とか「百合子とは今でも友達です。コァーッ(元ネタは「(野際)陽子とは今でも」なんだけど分かる人いるんか?)」みたいな感じになりそうに見える。
      そもそもあの日、二人が決裂してしまった後、いっそ完全に関わりを絶ってしまった方が良かったと思うんですよ。お互いの信念·決断を尊重し最大限の敬意を払うために、これ以上お互いの生き様に干渉しないスタンスを徹底すれば良かった。
      ところが、実際の二人はあの後いちいち相手の揚げ足を取りに行ってネチネチイヤミを言い合う、誠にみっともない関係に成り下がってしまう。たぶんその様な態度を二人して取ってしまった理由は、相手に対する甘え·依存·そしてそんな依存関係を続けたいという未練がましさがどちらにもあったから……なんだと思うんですよね。
      だから、こういう甘えた依存関係を拳で……もといラケットで清算することが、かつて名ダブルスとして鳴らした二人が再び「前に進」むために必要なことであった――――のだと、私には見えたんですが。
      ま、今後のエピソードでしれっと百合百合イチャイチャしまくるあすかと百合子を見せつけられる羽目になるのかもしれませんが……それならそれで、別にまあ、いいか、美味しそうだし。

      • 疲ぃ より:

         お互い相手に甘えていたところはあったでしょうね。言わなくても伝わると思っていた部分が伝わっていなかったから余計に拗れてしまったところはあります。今回の白鳥さんの小細工も最初はあすかに全く伝わっていませんでしたしね。
         特に白鳥さん、あすかの賢さを過大評価しているきらいがあります。ここ1年で何度も出し抜かれているので気持ちはわからないでもないですが、実際のあすかは(自分が動くことに関しては)力押ししか知らないバカです。どうせ力押ししかやらないので、今回の受験にしても素直に正攻法で猛勉強して、順当に学力を伸ばすことでしょう。大学受験ならともかく高校受験は余計なことを考えず勉強に集中できる子が勝つ仕様です。

         話がズレましたが、要するに彼女たちのすれ違いなんてそういう単純な理由でしかないので、割とあっさり元ザヤに戻るんじゃないかと予想しています。

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