ひそねとまそたん 第1話感想 自分にしかできない何かを探しに空へ行こう。

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やっぱり、それだけじゃない気がします。

(主観的)あらすじ

 自分にしかできない何か・・・なんて、あるのだろうか? 自衛隊基地の事務局に勤める甘粕ひそねは、ある日基地内に秘匿されていたOTF(変態飛翔生体=ドラゴン)と出会います。OTFは自身を飛び立たせてくれるパイロット(Dパイ)を必要としており、ひそねはその“Dパイ”として見初められたのでした。
 ひょんなことから特別な役目を与えられたひそねでしたが、自分がそんな大層な役目を果たせるとは到底思えず、すぐさま夜逃げすることを考えます。けれど自分にしかできない何かへの憧れは胸の中に燻っていて、最後にもう一度だけ自分を選んでくれたOTFに会ってみることにするのでした。
 OTFはその場でひそねを飲み込み、大いに暴れながら空へ向かってのびやかに飛び立ちます。雲の上から眺めた朝焼け空のなんと美しいこと。散々な目に遭いましたが、それでも結果としてひそねはDパイとしての初めての仕事を成功させ、ちょっぴり自信をつけた彼女はもう少しだけがんばってみようと心に決めたのでした。

 ジョアはブルーベリー味が好きです。ヤクルト製品全般ならレモリア。飲むだけで気持ち悪いくらい肩の力が抜けます。仕事中だと気分転換するよりカフェイン摂ることで疲れを紛らわせたいのでめったに買わないけれど。

 まさかのヤクルト提供の深夜アニメが登場です。
 となれば私たちが期待するものは決まっている。言わずもがなヤクルトレディの暗躍ですとも。
 これまでいくつかの職場を転々としてきましたが、あの人らどんなオフィスにも当然のごとく出入りしよる。たぶん私なんかよりもウチの課長の個人情報に詳しいはず。もしあの人らが本気を出したら、へっぽこ私の社内での業務・立場・存在感はことごとく飲み込まれて窓際に追い込まれてしまうことでしょう。恐ろしや。
 アニメはどこかの誰かが考えた空想の物語です。であるならば、ここにいる私の抱いたしょーもない妄想だって反映されてもバチ当たらんよ? だいじょーぶだいじょーぶ、ロイヤリティフリーで提供いたしますとももも。
 果たしてこんなにウサンクサい役目が似合う職業が他にあるだろうか。やったね!

自分にしかできない何か

 「やっぱさ、自分にしかできないって何か? 探したいじゃん」
 「あんた美大志望だっけ? いいなー目標みえてて」
 「4年間で見つかるといいんだけどさ、まだ何していいかわかんないし」
 「大丈夫! 目標なんてどんなところにだってあるって。すべては自分次第っていうか?」

 自分にしかできないことって何だろう?
 社会に巣立つ日を指折り数えるタイムリミット、モラトリアムの終わりには誰もがそういうテーマを胸に抱くものです。もちろん主人公の甘粕ひそねも。
 ちょっと考えてみます。けれどこういうのって、たいがいの人にとっては意外とあっさり答えが出るものです。
 「自分にしかできない何か。私にしかできないもの・・・なんて」
 そんなものは無いです。だって、もし何かあったならとっくに始めているはずですもん。特別な人間というのはきっともっとキラキラしてて、毎日がパリッとシャキッとしてて、私なんかと全然違う。つまり私が今こうして悩んでいるのは、今何もせず燻っているのは、結局自分がつまらない人間だから。
 将来を夢見る思考ルーチンは我が身の現実に速やかに帰結し、つまらない人間らしくつまらない答えばかりを出力します。
 ひそねという少女は自分をあまり肯定的に評価していませんでした。

 ハタから見ている私からすると、結構面白い子に思えるんですけどね。
 「素晴らしい! 未知の生物への恐怖よりもリバースされたことを気に掛けている。非常事態への対応力と柔軟な判断力の持ち主」
 後に曽々田司令が彼女をDパイに抜擢したときの言い分は胡乱極まりなく。ですが彼による人物評は案外的を射ているかもしれません。

 自分にしかできない何かを持たないひそねは、自分が凡人であることを理解したうえで、航空自衛隊というちょっと変わった進路を選びました。
 自分がつまらない人間だというのなら、環境にそれを変えてもらえばいい。
 甘粕ひそねは基本後ろ向きで陰鬱な性格でありながら、変なところで突飛かつ適切な行動を取れる人物でした。

私、できません!

 なんだかんだのあれやこれやでトントン拍子。やがてひそねはドラゴンのパイロット(=Dパイ)という特別な立場を得るに至りました。
 いつかのあの日には無かった“自分にしかできない何か”。彼女は期せずしてそれを手にしました。

 めでたしめでたし、だなんてもちろんそんな簡単な話にはなりません。
 「私、できません!」

 「15回! 15回断ろうとしました!」
 実際には一度たりとも口に出さなかったけれど。
 「でも、全部スルーされたじゃないですか!」
 なんとなく空気がそんな感じだったので。
 「労働基準法とかそういうのに抵触しまくるんじゃないですか!?」
 知らないけれど。
 「私がtwitter? とかで書いちゃったら大問題になるんじゃないですか!?」
 やらないけれど。
 「私にだって、都合も考えもあるんです!」
 それはどんな?
 「私は、私は・・・」
 そこまで啖呵を切っておいて、結局自分が何も持たない凡人であったことを思い出します。
 「ジョアは! イチゴ味よりオレンジ味の方が好きなんです!」
 負け惜しみ。ひそねの知るひそねらしさといえば、それくらい。

 だって、そもそもひそねは特別な人間じゃないからこそ今のようなダメな自分であったんですから。特別な人間というのは、もっとこう、キラキラしてて、パリッとシャキッっとしてて、風采の上がらない自分とは根本的に違う人種のはずでしょう?
 プレッシャー。場違い感。違和感。異物感。
 ちょっと奇縁に恵まれたくらいで凡人がいきなり特別になれるわけがないでしょうが。棚からぼた餅が落ちてきたとして、それをとっさに受けとめられる人なんてこの世に何人いるのやら。

 だから、しょうがないじゃないですか。

どうしてキミは私を選んだんですか?

 ・・・なんて。
 まあ、要するにひたすら甘えているんですよね、この子。

 進路志望では航空自衛隊を選択しました。
 自分では“自分にしかできない何か”が思い浮かばなかったから。
 誰かに見つけてほしかったんです。自分にしかできない何かを、自分の代わりに。
 だから一風変わった、特別っぽい環境に身を置くことを選びました。

 いざDパイになれそうなときには弱音を吐いて逃げました。
 自分では“自分にしかできない何か”が本当にあると信じきれなかったから。
 誰かに肯定してほしかったんです。自分を好きになれずにいる、自分の代わりに。
 だからどうしようもなくなる寸前までひたすら黙っていました。

 「こうやって小此木さんが励まそうとしてくれるのだって・・・」
 この人がそんな親身に励まそうとしてくれているように見えますか?
 泣いている女の子の前で平気でタバコを吸いはじめるこの人が?
 もちろんそれなりに優しいでしょうしお人好しでもあるんでしょうけれど、どう見ても職務放棄した同僚を捕まえに来ただけですよこの人。言動が完全に塩対応です。まるっきり他人事の構えです。少なくとも「性格に非常に重大な問題があるんです!」だのと(当人にとっては)重たいカミングアウトをしていい空気じゃありません。気づけ。

 けれど、ひそねはまだ自分のその甘えっぷりを自覚していません。
 “自分にしかできない何か”を自分の代わりに見つけてくれたり認めてくれたり、そこまでしてもらえるほど他人はひそねに興味を持ってくれないことを、まだ本当の意味で理解できていません。
 そんなの、そもそも自分にしかできないことですしね。
 今回はたまたままそたんと一緒に空を飛ぶ機会を得て、自己効力感によって再起することができました。
 ですがひそねの甘え癖と、そもそもそういうものに縋ってしまう原因たる自己愛の弱さは未解決のままです。この物語はこれから12話かけてその問題に取り組んでいくのでしょう。
 いつかひそねがちゃんと自分の力で“自分にしかできない何か”を見つけられるようになるために。

 ちなみに公式サイトによると正規のDパイは日本各地に点在しているらしいので、ただまそたんと飛べるだけではまた自己肯定感がベキベキにへし折られることになると思いますよ。ただDパイであるというだけじゃ全然“自分にしかできない何か”たりえません。
 がんばれ、負けるな、甘粕ひそね。

 ただひとつ。それでも私は記憶しておきます。
 そもそもひそねがDパイになれたのは、そりゃまあたくさんの偶然に助けられはしましたが、それでも最初のきっかけは彼女自身が航空自衛隊への就職を選んだことからはじまったんです。あの日のあの行動力がなければ、たとえどれほどの偶然が積み重なろうと、あなたは今日この日の雲より高い青空を眺めることはできませんでした。あなたがこの日に至るきっかけをつかむことができたのは、世界中でたったひとり、間違いなくあなたにしかできないことだったんです。
 あなたには自分にしかできないことがちゃんとあるんです。
 あとは、それを自分で見つけて、自分で肯定してやりさえすればいい。それが何より難しいんですけどね。

 だから私は応援します。
 あなたはあなたが望むことをいつかやり遂げられる人間なんだと、私は密かに確信しています。

 「やっぱり、それだけじゃない気がします」

 いつかその直観を心から信じられる日が訪れますように。

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