ひそねとまそたん 第2話感想 あなたが特別だと思ってくれた私がいた。

そして私の願いを聞き入れたまえ! おとうふ! おとうふ!!

hisomaso.png

(主観的)あらすじ

 私だけの何かが見つかったのかも。そう思いながらも、Dパイの仕事はやっぱり悪戦苦闘で、初めて会うパイロットスーツの開発担当者はあからさまに変態で、ひそねは慣れない日々に困惑混乱困憊していました。
 そんな毎日のなか、ひそねは同僚の貝崎名緒の真心に触れます。Dパイ候補生の先輩である名緒はひそねと違ってOTFには選んでもらえずにいましたが、持ち前のガッツと負けん気でそれを乗り越えようと日々努力し、それでいてひそねに対しても先輩として何かと世話を焼いてくれるのでした。・・・まあ、実際には鈍感なひそねが名緒のイビリを良いように解釈していただけなのですが。
 ともかくひそねは名緒こそDパイにふさわしいと思い、Dパイとしての地位を彼女に譲り渡そうと考えます。当然名緒はプライドをいたく傷つけられて大激怒。基地から脱柵して行方をくらましてしまいます。おまけにOTFにまでそっぽ向かれてしまいます。
 ようやく自分の間違いに気がついたひそねは改めてOTFに向き合い、一緒に名緒を追いかけます。そしてDパイとしてOTF(=まそたん)の思いを知ることで、名緒を彼のもうひとりのDパイとして認めさせることに成功するのでした。

感想

 ヤクルトのヨーグルトといえばソフールだろ! いつの間にヨーフルンなんてけったいな名前にリニューアルしたんだよ!
 ・・・と思って公式サイトを見に行くとやっぱりソフールでした。なんなんだ! (やり場のない怒り)
 危うく信じてしまうところでした。なにせあの会社、クロレララーメンの特徴的な緑色麺を普通の黄色にリニューアルしてしまうという暴挙を働いた前科がありますからね。何をおっぱじめるかわかったものじゃない。(クロレラに関しては健康効果が学術的に否定されたので仕方ないのですが)
 あ、ところで最近は食べるジョアなんてシロモノもあるんですね。おいしそう。

 「だから、おとうふ。申し訳ないんだけど私よりも名緒さんを乗せてあげてくれないかな」
 「私はそこまでDパイになりたいわけじゃないし、ああ見えて優しい人だから。おとうふも食わず嫌いはよくないと思うのな」

 第2話にしてさっそく増長全開なひそねのダメっ子ぶりが際立つお話でした。第1話から薄々感じてはいましたが、この子ってば放言癖だけでなく、何かにつけたいがいろくでもない性格なんですね。今までは内気な性格が幸いして目立たなかっただけで。
 いっそ愛らしくすらある。というか愛らしい。愛でたい。
 でも今のあなたの背筋を伸ばしてくれているその自信はあくまでDパイとして選ばれた自己効力感によるもので、もしDパイの職を辞したらまた元のぱっとしない生活に戻るしかなくなると思うのですが・・・。そこのところちゃんと自己分析できているんでしょうか? (←絶対できていないと確信して書いてる)

 ひそねのこのダメな諸々はいったいどこから来ているんでしょう。
 「運命的な何かを感じたんです」
 ここまで言うほどの出会いだったにもかかわらず、よく考えずにその座を他人に譲り渡してしまうなんて。
 「あんなに悪態をついていても私はわかっている。貝崎さんは苦手なひき肉の替わりにコロッケをくれたり、ホームシックにならぬよう励ましてくれたり、本当はすごく大人で優しいのだ」
 いくら結果的に益があったとしても、相手の向けてくる悪意くらいは普通なら感じ取れるものでしょうに。
 「おや、わかりませんか? OTF。オー・ティー・エフ。おー・とぅー・ふ。おーとーふ。おとうふ! ですよ!」
 おまけに、まさかあんな安直なあだ名をあそこまで誇らしげに解説してしまうだなんて。
 いったいどんな育ち方をすればこうなってしまうのでしょうか。
 ・・・まあ、そういう私も似たようなことはちょくちょくやらかしちゃっているんですけどね。

 たぶん、自分と他人の関係性にあんまり目を向けていないんですよね。
 自分がこういうことをすれば相手はどう思うか。相手がああいうことをしてくるのは自分に何を求めているからなのか。そういう、普通なら真っ先に考慮すべきことに対して思いをめぐらす想像力が足りていないんです。
 だから、せっかく自分を選んでくれたまそたんの前で平気で身を引くようなことを言ってしまう。
 だから、名緒の悪意に気づかずに純粋な親切として受け取ってしまう。
 だから、小此木が首をひねった対象がクソダサいネーミングセンス自体ではなく安直極まりない由来の方だと勘違いしてしまう。()

 たぶん、ちょっと前まで自分に特別なところがないと思っていた自信のなさがそういう性質をつくってしまったんでしょうね。
 善きにつけ悪しきにつけ他人はそこまで自分に興味を持ってくれないという、経験から来る確信。
 どうせこの人は私なんかのためにそこまで強い感情を向けてくれるはずがない。
 どうせ私なんかの気持ちをこの人がちゃんと酌み取ってくれるはずがない。
 そういう一方的な心の壁が、現実以上に自分と他人を隔てているように感じさせてしまうんです。

 思ったことを何でも口に出してしまう悪癖も、案外こういうところから来ているのではないでしょうか。
 “どうせみんな私なんかのボヤキにそこまで興味を持たないでしょ” なんて。
 実際には周りのみんなの耳に届いてしまっていること、痛いくらい思い知っているはずなのに。

 そんなひそねに初めて特別な気持ちをぶつけてきてくれたのが、そうか、前話のまそたんだったわけですね。
 誰も飲み込もうとしなかった子が唯一自分だけを受け入れてくれた。そういう、どう解釈しても自分だけを見てくれていると認めざるをえない鮮烈な出来事。
 それがあったからこそ、ひそねはまそたんとの出会いに特別な何かを感じ取ったんですね。

 「ど、どうしちゃったの? 名緒さんを探しに行きたいんです。お願いだから」
 まそたんのツレない態度を通して、ひそねはようやく名緒の気持ちに想像力が至ります。
 名緒含め他の誰かが急に気を悪くしたなら自分以外に原因を求めることができますが、まそたんの機嫌を損ねることができるのはきっと自分だけだからです。
 「もしかして、おとうふと名緒さんは、同じ気持ちで・・・」

 かくして、まそたんが自分を特別に思ってくれているという確かな信頼が、ひそねに過ちを気づかせます。
 自分に特別な思いを向けてくれた相手に真摯でありたい。今度こそはひそねの方からまそたんに特別な気持ちを返してあげたいという気持ちが、このとき初めて生まれます。
 「ごめんなさい。私、Dパイになりたいかといわれればやっぱりまだ能動的に激しくなりたいとか思えない」
 「でも! ずっと探してた私だけの何かが見つかったかもって思ったのは本当なんだよ! 謝罪します。中途半端な発言を許してください」
 「そして私の願いを聞き入れたまえ! おとうふ! おとうふ!!」

 そして、まそたんを信頼する今のひそねだからこそ気づけることがこのときひとつ生まれます。
 「無理だよ。――コイツは私を飲まねえよ」
 「そんなことありません。何故ならまそたんは、名緒さんの匂いを覚えてくれていたから、ここまでたどり着けたんですよ」

 ひそねは知りました。この特別な出会いはまそたんが真摯に自分を求めてくれた結果だと。
 ひそねは知りました。まそたんは他人に真摯な思いをぶつけられる子なんだと。
 だったら、この真摯な相棒は、匂いを覚えるほどに気にかけている名緒を受け入れてくれないはずがない。

 まあ、ここまでのこと、ひそねがどこまで明確に理解できているかというとちょっと怪しいところですけどね。なにせ“特別な出会い”がどんなに自分にとって大切なものなのかも理解できずにいたダメっ子ですし。
 この子はこれから少しずつ、自分のこと、他人のことを学んでいくのでしょう。まそたんと一緒に、空で。

 「“コイツ”じゃないです。まそたんです」
 ひそねは今日初めてまそたんの相棒として歩みはじめました。

シェアする?

フォローする!