ゲルニカ・ヴァンダム。この人の名前か。――覚えておこう。俺たちに新しい目標を、選択肢を与えてくれた人の名だ。
ケヴェスのおくりびと ノア
第1話 ウロボロス
Lead Character:がんばったひと
ノア
Major Happening:大きなできごと
ウロボロス化
ケヴェス軍にもアグヌス軍にも属さない謎のエーテル反応を追う軍務を受けたノア小隊と、敵対勢力かつ同じ軍務のミオ小隊は現地で衝突し、双方生き残るため謎のエーテル機械の所有者・ゲルニカからウロボロスの力を託された。
これによりケヴェス・アグヌス双方にある戦争しつづけなければ生きていけない運命から解き放たれた一方、彼らは両軍ともと敵対する立場になってしまった。両小隊6名+αは所属国の枠を越えて運命共同体となり、ゲルニカの遺言に従ってシティと呼ばれる地を目指すことになった。
Sub Questions:小さなできごと
おくりびと
戦死した兵士の亡骸に寄り添い、葬送の旋律を奏でる楽士。成人の儀では楽隊を組んで盛大に葬送する。一生を戦争のために費やすアイオニオンの兵士たちには大切に思われている。地球の感覚でいうと従軍牧師のようなものだろうか。
護衛数名と後方支援担当のノポン族とともに特務小隊を編成する。通常は戦闘行動に参加しないらしいが、ノアとミオは自ら望んで前線に身を置いているようだ。
その職務上、死して何かを残そうとする者、残される者について思索する機会が多い。
色々特別待遇を受けているあたり絶対ただの葬式じゃないはずだが、本人も兵士たちもその真相を知らないのがミソ。裏に何があろうと、彼らが真剣に死者を弔い、それに感謝している事実を忘れてはいけない。
命の火時計
各コロニーに所属している人々が共有している命の総量。コロニーの中核である鉄巨神に貯蔵されており、総力戦に負けるとその全てが流出する。
兵士が生まれつき持っている個人携行武装・ブレイドで人間や原生生物の命を奪うと回復する。人造兵器で殺した場合は回復しない。また、時間経過でも消費されていくのでアイオニオンの人々は常に戦争して勝ちつづけなければ生きていけない。
自家生産できず自然消耗するということはこの世界全体での命の総量も常に減りつづけているということで、地球温暖化すら比較にならない喫緊の環境問題のはずだが、そのあたりはたぶんもう少し後でツッコむべき話。
チュートリアルにまでしれっとダミー情報入れてきやがって!
成人の儀
10歳相当の肉体で生を受け、その後戦争を生きぬいて10年の寿命を全うした兵士にのみ与えられる最高の名誉。女王陛下に看取られて死ぬことができる。
ノア曰わく、「俺には骸の上にいるように見えた。命の上に跪いているように見えた」とのこと。当人は名誉を抱えて死ぬことができるが、残された同胞たちの手には何も残らない。・・・かもしれない。
性の目覚め
アイオニオンの人々は工場生産されており、生殖行動を必要としないため、性知識もない。当然のように男女混浴を行って、もちろんトラブルも起きない。
ノアたちはウロボロス化したことで、人間が本来持つ性的欲求に目覚めたようだ。まずは男性陣が女性の裸体に興味を抱き、同時に女性と同じ場で着替えることへの羞恥を覚えた。
先に性に目覚めるのが男性陣なのは勃起というかたちで自身の性的興奮を自覚しやすいためだろうか。
地球の場合はまず生殖器の成熟があってから性的興味を自覚する流れなので、一般的には女性が先に性に目覚める。それが逆になっているということはつまり、アイオニオンの人々も肉体的には年齢相応の生殖機能が備わっているにもかかわらず、何らかの手段で生殖本能だけ抑圧されているということなのかもしれない。
ゲーム的なこと
ざっくり探索の所感
マップが広い! 最高!
今作はエリア制を継承しながらも、細かく区域せず地方単位で大きな1枚のマップになっているようで、ほとんどオープンワールドのようなプレイ感を楽しむことができます。
ゲームスタート地点のアエティア地方は最初ということもあり起伏の少ない地形になっていますが、面積だけでいうならおそらく上層下層合わせたガウル平原並み。ストーリーそっちのけでお腹いっぱいお散歩を堪能できました。
ちなみに私の場合、第1話終了までに約5時間。
無意味に高レベルのエリアに突っ込んでは死に、突っ込んでは死に、今埋める必要がないマップを一生懸命埋めようとしていたせいです。ゼノブレイドシリーズはこれができなくちゃいけない。これをやりたいがためにゼノブレイドファンをやっているまである。
戦って勝てるわけがないのでプレイ時間のほとんどは経験値も何も得ていません。コレクションアイテムをそこそこ拾い、いくつか物資を回収しただけ。効率でいえばマジでムダそのもの。だけどこれが楽しいんだ。
なお、今作は1のように行ったことのある場所しか地図に表示されない仕様に戻っています。探索しがいがありますね。
スキップトラベル可能なのはランドマークの他、休憩ポイントと、さらに名を冠する者の墓まで。何度も足を運びたい場所にはアクセスしやすい工夫がなされていつつ、いつものようにほどよく疎らに散らばっています。高レベルエリアにムリヤリ突っ込んでモンスターを避けながら歩いてもランドマークなんてそう簡単に見つからないわけで、割としょっちゅう徒労に終わっては結構な距離を戻されます。効率度外視でバカなことをやっているのは自分の責任なのでこの仕打ちはむしろ良い。
一方、未回収の物資が地図上に表示されず、ユーザーマーカーも1ヶ所にしか打てないところはマイナスポイントです。
地形の接地判定はおおむね見た目どおり。脇道に入るとときどきジャンプで越えられるような越えられないような微妙な地形があります。
今回ストーリー上の都合で侵入できないエリアはざっくり見えない壁で仕切られているんですが、逆にいえばフィールドスキル不足で入れない程度の問題なら強引にシーケンスブレイクできるであろう見込みがあるということです。まだ私は試していませんが、クロスのノリでTOZANルートを開拓する楽しみがあるかもですね。
ざっくり戦闘の所感
実は今作、マップの広さに対してユニークエネミーの数が少なくなっています。というか、前作までにいた割とどうでもいいようなユニークがエリートという区分けに整理された感じです。私が第1話の範囲で倒したユニークはたったの2体。それ以外に見つけたユニークもほんの数匹です。
エリートはおおむね出現エリアが決まっており、墓にならない代わりにリポップも早め。手強さもややヌルめのユニークエネミーくらいのものなので、バトル好きのプレイヤーにはそこらじゅうに強敵がいる今作の仕様のほうが嬉しいかもしれません。
発売前に注目されていたラッキーエネミーは思ってたよりリザルトがおいしくない印象。むしろ経験値ボーナスが入るエリートのほうが狩りがいがあります。まあ、クラフト要素が解放されたら印象も変わるかもしれませんが。ちなみにラッキーの出現は完全ランダムで、なおかつエリートと共存することがあります。
今回倒したユニークエネミーは2体とも特殊な攻撃はしてきませんでした。代わりに周囲のザコモンスターが続々群がってきます。
ユニークと戦うときは先に周りの掃除をしておくこと! 最初のマップだけあって、このシリーズの定石をしっかり教え込みにきたかたちですね。
事前情報どおり各クラスにはアーツが5つずつあり、そのうち3つをセットして戦います。なお、今回アーツごとにポイントを振って成長させるシステムはなくなりました。代わりにクラスの成長に連動してアーツがパワーアップする仕様に。2(※ 特にDLC導入後)の時点でだいぶ面倒くさいことになっていたので個人的には嬉しい仕様変更です。
2に大量にあった(※ そして使わなかった)種族特効効果のアーツはごっそり減ったようで、アーツごとの有用性はバランスが取れている印象。代わりに1にあったような補助系のアーツが大幅に増えて運用のしがいが増しました。ただ、第1話時点だとアーツ枠が3つしかなく全然足りてないので、補助系アーツを入れるより普通に3つとも攻撃アーツにしたほうがプレイしやすかったりはします。クラスチェンジ解放後に期待。
そのほか大きな仕様変更としては、アーツからアーツへのキャンセル攻撃ができなくなったことくらいでしょうか。オートアタックからアーツ、アーツからタレントアーツにしかつながりません。オートアタックの使用機会が過去作よりは増えました。
また、アグヌス側のクラスではキャンセル攻撃でアーツのリキャスト速度が向上します。ケヴェス側にはこの恩恵がないので、第1話時点ではミオたちのほうがアーツの回転が体感で倍くらい速くなっています。これはまあ、アーツ枠が6個になればそれだけでケヴェス側の仕様の使い勝手がよくなる(※ オートアタックの使用機会が減る)はずなので、今だけの話でしょうね。
第1話では操作キャラクターを自由に選べず、ストーリー進行によってノア→ユーニ→ミオの順に操作することになります。要はアタッカー、ヒーラー、ディフェンダーそれぞれのチュートリアルですね。操作に不慣れでもテキトーにアーツを使っていれば勝てるキャラクターたちなので初心者でも困ることはないでしょう。ノアのタレントアーツがダウン特効でダメージが跳ね上がることだけ少し気付きにくいか。
チュートリアルといえば、今回いつでも読みかえせるTIPSのほか、「訓練」として実際の操作を体験しながら学べるシステムが追加されました。アクションゲームによくあるやつですね。とはいえストーリー内でもひととおりのチュートリアルは入るので、ある程度ゲーム慣れしている人なら触る必要はないでしょう。
継承
「お前が死んだあとはどうする。誰がそれを止める」
「そのためにあんたたちがいるんじゃないか。そしてそれを一緒にやり遂げるのはオレじゃない、誰かだ!」(『ゼノブレイド2』第9話)
「なぜそこまでする! 誰のために。何のために!」
「誰のためでもない! そうすることでみんなが笑えるなら、命がつながっていくなら、それがオレの役目だからだ!」(『ゼノブレイド2』最終話)
『ゼノブレイド3』の物語は『ゼノブレイド2』が出した結論をそのまま引き継いで始まります。
私たちはいったい何を為すのか? 有限の時間しか持たない、おそらくはほとんどの人が具体的な何かを成し遂げきれずに死んでいく、そんなちっぽけな私たちが、それでも生きていく理由。
彼らはその答えを絆に求めました。ほんの一歩でもいい。着実に歩みを進めるなら、誰かと意思をともにするのなら、次の一歩はきっと誰かが継承してくれる。私たちが誰かの願いを引き継いできたのと同じように。
私たちが今生きているこの場所は、幾万幾億幾兆の屍を積み上げた山の先端にあります。全ての先人たちの生と死にはきっと意味があって、意味があるからこそ、私たちはその全てを引き継いでここに立っています。そうありたいと願っています。
「昔見ただろ、成人の儀」
「受けられたとして何が残る?」
「称えられていただろ、大勢に。あの輝く台の上で」
「俺には骸の上にいるように見えた。命の上に跪いているように見えた。俺たちが残すものって、それでいいのかな・・・」
「今日でちょうど残り3ヶ月。あと3ヶ月で私はこの世界から消える。ずっと考えてたんだ。私に何ができるのか、何を残せるのか・・・、って。そんな思いの人、たくさんおくってきた」
「それであの人の言葉を信じたのか。もっと生きたい?」
「どうかな。どっちでもいい。でも――、君と私、こうして一緒にいられる。これってすごいことだと思う」
ケヴェスとアグヌスからの逃亡者6人、そのなかでもノアとミオのふたりは最初からシティを目指す理由が明確でした。
彼らはおくりびと。このアイオニオンにおいて誰よりも死を身近に置いて生きてきたふたり。
誰よりもアイオニオンにおける生と死の実情を目にしていながら、いいえ、だからこそこの世界の生と死のありかたに疑問を抱いてきたふたりです。
アイオニオンにおいて人は鉄の筒から生まれ出でて、人を殺しながら死ぬか、生き長らえた名誉だけを抱えて死んでいきます。
私たちは何かを残せるのだろうか?
だって、私たちは何かを引き継いで生まれてきたわけじゃないのに。
「――それでも生き延びたいと願うのなら、目指せ。大剣の突き立つ大地。我らが希望。シティーを。お前らの“本当の敵”を倒すために。そして取り戻せ、世界の秩序と命を。いいな? その命、たった10年で終わらせるな。命を紡げるのはウロボロスとなったお前たちだけだ」
ところが不思議なことに、今、ノアたちは生きています。
故郷を追われたのに。
命を軛いてきた瞳の火時計は変質してしまったのに。
およそ9年、短い生なりに積み上げてきたものことごとくを失ってしまったのに。
それでも彼らは今、生きています。
ゲルニカ・ヴァンダムが残したものを支えとして。
「何かを残せた人は満足だったのかな」
「残された人はそれを受け止められたんだろうか」
「興味深いね、それ」
「ずっと考えてる。残す者と残される者、そのつながりが示す意味を」
「つながり、か。重いよね・・・」
「命、だからな」
彼らは誰かの願いを引き継ぎました。
ゲルニカ・ヴァンダムの、あるいはもっと他の、たくさんの友人知人、顔も知らない先人たち、数多の思いを。
だからこそ、彼らは今、生きています。
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