きっかけがなければ変わることはできませんから。これを機に、自分の考えを改められるなら、それで――。
元、自然主義者たちの長 ユズリハ
第4話 命 その2
Lead Character:がんばったひと
ユーニ
Major Happening:大きなできごと
生まれる前の記憶
アナイアレイターのもとでノアたちを待ち受けていたのは、執政官ジェイ(ヨラン)と執政官ディーだった。
執政官ディーは、ユーニがコロニー18の古戦場で見た幻視において、過去のユーニを殺害したと思しき人物。ユーニは恐怖に身をすくませて一時戦えなくなるものの、ディーの慢心を逆手に取りひとまずこの場を凌ぎきった。
自分でも記憶にないトラウマがあることを知ったユーニは、その不快感から脱するため、この世界の秘密を知りたいと望む。
なお、脱出途中で、今度は執政官エヌに相対したノアが謎の頭痛に襲われた。これもおそらくはユーニと同じ、無意識下の記憶が原因なのだろう。
Sub Questions:小さなできごと
インタリンクの制限時間
ヨランによると、執政官ピーとオーがあのような最後を迎えたのはインタリンクの制限時間を無視したせいらしい。
つまり、長時間インタリンクしつづけていると消滅現象が起きるということになる。アイオニオンの大地が消滅現象を起こしつづけているのも同じ事象によるものか。巨神界と機神界、そしてアルスト。アイオニオンは2つの世界が融合してできている。
魔剣ラッキーセブンが斬り裂くもの
絶対破壊できないはずの命の火時計すら唯一断ち切ることができる、この世界のルールブレイカー・魔剣ラッキーセブン。
裏切り者のヨランを殺すため、ランツはラッキーセブンに比肩する力を求める。しかし、リクは「あれはそういうものじゃない」と協力を断った。
また、ノアが女王メリアに向けてラッキーセブンを抜こうとした際はランツがそれに疑義を呈した。
なお、モルクナ大森林・下層にて魔剣ラッキーセブンの関係者だと思われるノポンと出会った。
命のゆりかご
プレイヤーにとってはすでに明らかだったが、今回ノアたちはケヴェス兵士が培養槽で生産されていることを知る。
また、プレイヤーならユーニの幻視から予測できることだったが、死んだはずのエセルがここで再生産されているところも目撃する。
女王の正体
シリーズファンの間では発売前から予想されていたことだったが、ケヴェスの女王はメリア・エンシェントその人だった。ノアたちもその名前を知ることになるが、彼らはその名を持つ者がどういう人物なのかをまだ知らないし、そもそも身代わりを誤認して女王の正体が機械人形だったと思っている。
女王メリアはウロボロスに関連する何らかの希望を信じているらしい。
執政官エヌとの因縁
これもシリーズファンの間では予想されていたことだったが、他のメビウスたちとは雰囲気が異なる執政官エヌは、ノアの同一存在だったようだ。ミオの同一存在である執政官エムとともに何らかの目的のため活動している。ただし、現時点でノアには自分と何らかの関わりがある、程度のことまでしか明かされていない。
ロストナンバーズ
ゲルニカが所属していた一団はメビウスたちからロストナンバーズと呼ばれているらしい。ケヴェス兵士の培養槽を強奪するため、キャッスルを襲撃した。
10期を超えて老化する彼らでも自然繁殖は困難ということだろうか。それとも短期間で数を増やしたい、もしくは人々をケヴェスから解放したいと考えている?
未熟
アイオニオンの常識はプレイヤーたる私たちといろいろな部分で異なっています。
これまでもことあるごとに設定開示され、プレイヤーとノアたちとの知識のすりあわせが進められていましたが、今回は逆にノアたち側にプレイヤーにとっての周知の事実を開示するかたちですりあわせが行われました。
これで感情移入するにあたってのややこしさがだいぶ軽減! まあ、女王の正体とか執政官エヌとの因縁とか、重要そうな部分はまだまだ伏せられているけどな! それでもノアたちが何を知っていて何を知らないのか、かなり整理されたので、これまでより楽しみやすくなったでしょう。
それにしても、まさか比喩じゃなく女王の胎から生まれてきたものと思い込んでいたとか。君たちは蟻か。蟻だって卵生じゃなきゃあんな多産成立しないって。
「こうなったら・・・」
「ノア! 本気か、女王だぞ!?」
「今はこれしかない!」
「けどよ!」
第4話ではノアたちの未熟さ、不完全さが強調して描かれました。
「たしかにこの刀はすさまじい力を持ってるも。その気になればたくさんの命を奪えるも。だから、その怖さを知る者だけが持つ資格があるも」(第2話)
「君たちが関与することで関わった者の運命は大きく変わる。その重さ、知ってからでは遅いかもしれん」(第3話)
ノアは自分の手で人を殺してしまう怖さを知っているからと、リクに魔剣ラッキーセブンを譲られました。
また、エセルからは自分たちの行いが他人の運命を変えてしまう恐ろしさを忠告されてもいました。
人の命が軽いアイオニオンの世界において、ノアたちに殺人を躊躇させるものは、その取り返しのつかなさにあります。
ちょっとしたことでも判断を誤れば、そのときは自分の運命だけでなく周りにいる誰かの運命すらも変えてしまう。人生わずか10年。普段から自分が死んだ後のことを考えずにいられないノアたちにとって、他人に悪い影響を及ぼしてしまうことは厳に戒められるべき行いでした。
まして、人を殺してしまった場合はなおさら取り返しがつきません。
自分の命の危機だからといってよく考えずに女王を殺してしまうのは、果たして正しいことなのか、本当に後悔しないことなのか、今のノアにはわからないはずでした。
わからないのであれば、殺人を容易にしてしまう魔剣ラッキーセブンは今ここで使うべきではありません。
他の手段でも殺人は可能とはいえ、それを容易にする手段を安易に使おうとしてはいけません。思考することを放棄したと言っているようなものですから。
問い直しと成長可能性
「やっぱり、あんな命の使いかたっておかしいよ。もっと別の使いかた、なかったのかな」
「命よりもっと大事なもの。それを得るために2人は戦った」
「名誉? 誇り?」
「もしくは充足感。いや、違うな。言葉にできない何かだ」
「それって何? そんなに大事なものなの?」
「得られたのかな。その何か」
「だといいけどな・・・」
「本当に? 俺には、悲しいよ。そんなの」
エセルとカムナビが殺しあった理由を理解できていなかったように、ノアたちはまだまだ不完全な存在です。
特に、これまでずっと哲学者然としていたノアとミオがひときわ理解を拒んでいるのが面白いですね。
彼らはそれぞれ、自分が死ぬときは誰かに何かを残せる人でありたいと殊勝な思いを抱いています。しかし、彼らは不完全。その優等生みたいなお題目が本当に正しいものなのかどうか、今一度私たちプレイヤーの前で問い直してみる必要がある、というのが今話の大筋の流れ。
私もおおむね正しいとは思いますけどね。ただ、消極的な選択だというのが少し気になりますが。
彼らを殊勝にさせているのは、その寿命の短さです。わずか10年、しかも戦場でいつ散るかわからないからこそ、彼らは長生きすることよりも何かを残せることを重視しているんです。長生きすらも成人の儀で名誉を残すことに直結しています。
自分のために人生を使うという考えかたを、彼らは生まれつき選択肢から排除しています。それ自体はまあ、私たちプレイヤーの感覚でもやや不道徳な生きかただとは感じますが。でも、私たちなら選びうるんです。実際に選ぶ人もいるんです。アイオニオンの人たちと違って。
ウロボロスとなり、命の火時計の呪縛からは解放されました。選べる選択肢が大きく広がったはずでした。だというのに、ノアたちの価値観はコロニー9にいたころからほとんど変わっていません。意外にもまだ何の成長もできていません。
そんな彼らの人生についての結論は、はたして本当に正しいのでしょうか?
「お前、前に会ってんな? くく。その目。怖えんだろ、この俺が。わかんだぜ。何度でも殺してやるよ」
メビウスは理不尽な敵です。ノアたちには知りえない世界の秘密を知っており、しかもそれをカサに着てノアたちの無知をあざ笑ってきます。
今回、彼らはユーニの知らないユーニの過去生を利用して恐怖を煽ってきました。
それでもユーニは歯を食いしばり、恐怖に苛まれながらもなんとか勝利をもぎ取ってみせたわけですが――。
「てめえ、最初っからそれを!?」
「――お前、私を舐めてたろ。ビビったと思い込んで状況の変化を見落とした。ああ、ビビったさ! ・・・だからって、諦めたりはしねえ!!」
ここでひとつ、彼女は過去の自分に打ち勝ったわけです。
変化しない者を相手取って、成長することによって出し抜いてみせたわけです。
今回の勝利はユーニの成長によってもたらされました。
ノアたちの成長の乏しさ、不完全さを浮き彫りにした第4話でこれを成した意味は大きい。
ノアたちはやはり、成長していくべきなのでしょう。
今の彼らのありかたから大きく変化していくべきなのでしょう。
何かを残すために生きるべきか、自分のために命を使うべきか、どちらが正しいのかはわかりません。私が勝手に決めつけていいことでもありません。現状同様、最終的に前者を選ぶのでもそれはそれでいいことのはず。
重要なのは、ちゃんと一度考えてみることです。
思考を放棄しないことです。
ここにあるのはノアたちの人生です。
それをどう生きるのか。ノアたち自身が選択すべきことです。
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