謎解き戦士!ガリベンガーV 第6回感想 1年のうち1/3を絶食するコウテイペンギンの子育て。

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仕事で失敗したとき布団に潜るっていうことは、この収録のあとは毎回布団に潜ってるということですか?

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ガリベンガー

電脳少女シロ

「やった!」

所属プロダクション:どっとライブ

番組出演回数:レギュラー

カルロ・ピノ

「ビブラート効いてますね。うふふ」

所属:どっとライブ

番組出演回数:15回目(再放送・前後編等除く)

黄花はてな

「見てるー。自分のことー」

所属プロダクション:テレビ朝日

番組出演回数:5回目(再放送・前後編等除く)

特別講師&教官

長沼毅

広島大学教授

直近の科研費研究課題

チョウザメのメタボロミクスに基づいた肉・卵の高付加価値化に関する研究

番組出演回数:11回目(再放送・前後編等除く)

小峠英二

お笑いコンビ バイきんぐ のツッコミ担当

番組出演回数:レギュラー

コウテイペンギン驚きの生態を学ぶ

 5週間ぶりの放送、かつ深夜時代以来のガリベンガーVらしい放送内容。
 やっぱり生活知識よりもこういう学術寄りの授業内容のほうが新鮮な驚きが多くて楽しいですね。
 今回は特別講師も生徒役も番組に慣れていたこともあり、ひな壇芸人的なVTRの添え物としてのコメントに留まることなく、積極的な質問・回答の応酬でガチな授業を組み立てていました。これぞガリベンガーV。そしてさすが長沼先生です。

 深夜時代に比べてVTRの比率が大幅に増えているのは放送時間帯的に必要なことなんでしょうね。個人的には生身の芸能人とバーチャルYouTuberが肩を並べている絵面も好きなんですが、出演者同士の会話時間を確保するためには今回の体勢のほうがいいのかもしれません。

 特別講師の長沼毅先生は『超人女子戦士ガリベンガーV』の第1回から第6回にかけて連続出演なさっていました。この番組のフォーマットをつくりあげた人物といっても過言ではないでしょう。準レギュラー講師陣のなかでも生徒からの発言を引き出すのがひときわ上手な先生です。
 ちなみに専門は極限環境に生息する生物全般。南極だけでなく深海や火山などでも精力的にフィールドワークなさっています。

 名古屋港水族館に取材するテーマでしたが、ひとまず今回は自然状態でのコウテイペンギンの生態に関する話題が主となりました。
 長沼先生のペンギンの授業は深夜時代にも一度あったのですが、内容の重複を極力避けつつ、しかも水族館で観察できるペンギンの生態からうまく授業を展開していましたね。機会があれば自分でも水族館に行ってペンギンを観察してみると、いっそう楽しい学びにできるかもしれません。
 後半は水族館ならではの話題に移っていくのか、それとも今回と同じ感じでコウテイペンギンの生態を深掘りしていくのか。どちらでも面白くなりそうです。

出題1 なぜ2ヶ所でしか見ることができない?

 ペンギンのなかで最も大型の種であるコウテイペンギン。その知名度の割に、実は日本国内では名古屋港水族館と和歌山県にあるアドベンチャーワールドの2ヶ所でしか飼育されていません。
 これはどうしてか? というのが長沼先生からの最初の出題。

 「皇帝って昔から遊び人なイメージがあるので、やっぱりイイ女がいるところでしか育たないんじゃないかと思いました」(電脳少女シロ)

 和牛回の田尻号とかガラパゴス諸島回のディエゴとかですかね?

 さておき、コウテイペンギンが2ヶ所でしか飼育されていない理由のうち、1つには南極条約があります。
 南極では基本的に人間が生態系に干渉することが認められていません。長沼先生の前回の授業でも触れられていたのですが、これは野生のペンギンを直接触ることすらも禁忌とされるほどの強力な制約です。当然捕獲して連れ帰るなんてことはよっぽどのことがなければ不可能です。
 名古屋港水族館がコウテイペンギンを飼育できているのは、アドベンチャーワールドで繁殖した個体を譲られたからです。直接南極から連れてこられたわけではないんですね。

 そして理由のもうひとつはそもそもコウテイペンギンの飼育が難しいこと。
 ペンギンというのは意外と南極大陸以外でも広く生息している種が多いんですが、コウテイペンギンに限っては南極大陸の固有種なんです。南極の環境でしか生きられません。
 名古屋港水族館では水槽内の気温・水温管理はもちろん、人工照明の点灯サイクルまで南極の環境に合わせてあります。(※ このため、お昼にペンギンを見に行くと水槽内が暗く、夜のほうが観覧しやすかったりします)
 ここまで体制が整っている水族館は珍しいからこそ、国内2番目での飼育が認められたわけですね。ちなみに、基本的に野生ペンギンの捕獲が許可されない以上、展示個体数を維持するためには国内で繁殖させるしか方法がないわけで、感染症リスクや遺伝子多様性を考えると、本当ならコウテイペンギンはもっとたくさんの水族館で飼育できたほうが人間としては都合がいいんです。それなのに実際飼育している施設が国内たった2ヶ所。いかに飼育が難しいか察せられますね。

質問1:オス・メスの見分け方は?

 電脳少女シロからの質問。

 長沼先生によると、外見からではほとんど区別がつかず、遺伝子検査でオス・メスを判定することが多いとのこと。ぱっと見でわからないだけならともかく、遺伝子検査まで用いなければならないというのは不思議な感じがします。
 実はペンギンの性器というのはとても小さいんですね。交尾の際はペニスを挿入するのではなく、オスがメスの体にのしかかって、精子を流し込むようにして受精させるんだそうです。(※ 飼育が難しいというのはこの不合理な生殖方法のせいでもあります。成功率が低すぎて次世代の個体数がなかなか増えないんです)

 ここで長沼先生から逆に質問。ある時期だけオスとメスを簡単に見分ける方法があるのですが、それはいったいどういうものでしょうか?

 「えっと、バレンタインの時期になると殿方がそわそわしはじめたり、ホワイトデーの時期になるといつもよりいっぱい魚をゲットしてくれるのが殿方なんだと思います」(電脳少女シロ)

 正解は繁殖期の鳴き声。多くの鳥類がそうであるのと同様、ペンギンも繁殖期には歌うような特徴的な鳴き声を出します。メスの鳴き声は甲高く、オスの鳴き声は低いといった具合です。
 異性アピールで見分けるという意味では電脳少女シロの回答も当たらずとも遠からずといったところですが、ところでメスペンギンは何もしてくれないんでしょうか?

 なお、パートナーが決まった時点で横恋慕をかわすためにお互い鳴くのをやめるんだとか。「産卵前の沈黙」というそうです。このため、せっかく繁殖期を狙って水族館に行っても時期が遅ければ全然鳴いてくれないというのもよくある話のようです。

出題2:なぜ鳴き声で相手を選ぶ?

 こうやって、偶発的に出てきた話題からさらに発展的な授業へと広げてくれるのも長沼先生らしいところですね。
 ちなみにカルロ・ピノも相当な生き物博士だというのはこの番組ではよく知れ渡っていることなので、こういうやたらマニアックな質問を振られることがちょくちょくあります。

 「人間も声が低くてダンディなほうがカッコいいから、やっぱりペンギンさんも声でカッコいいかどうかを判別するんじゃないですか?」(カルロ・ピノ)

 大正解。
 長沼先生によると、オスは鳴き声で自分の体の大きさ、肺活量の強さをアピールしているんだとか。声というのは声帯だけでなく気道全体を震わせて音にしているので、やはり身体が大きいほうが低音を出しやすいんですね。人間のボイストレーニングでも、高音は訓練次第でいくらでも伸ばせるけれど低音は持って生まれた資質次第だとよくいわれます。
 ・・・とまあ、こんな解説がされていますが、実際のところ野生のコウテイペンギンはオスよりもメスのほうが数が多くなるため、基本的にオス側の買い手市場なんだとか。メスを選ぶ基準のほうも気になるところですね。

出題3:ペンギンが鏡を見つめるのはなぜ?

 「はい! ペンギンが鏡に見とれてる! ナルシスト!」(電脳少女シロ)

 別にナルシストなわけではありません。コウテイペンギンはきわめて寒冷な環境で暮らしているため、仲間の姿を見つけるとお互いに寄り集まって暖を取る性質があるんです。鏡に映った自分の姿を仲間だと誤認しているんですね。
 野生環境に比べて水族館ではどうしても飼育頭数が少なくなってしまうため、より自然に近い環境をつくるためわざと水槽内に鏡を接地しているわけです。

 また、面白いことにこの寄り集まったペンギンたちは、中心部の暖かい場所にいたペンギンが暑がって外側に移動し、周縁部のペンギンは寒がって内側に移動するため、自然と対流のような行動が観測されるとのこと。小峠教官絶賛のかわいさ。

 そういえばアニメ『けものフレンズ』が東武動物公園とコラボレーションした際、ジェンツーペンギンのグレープくんがフンボルトペンギン(フルル)のキャラクターパネルにぴっとりくっついて離れなかったというニュースがありましたね。
 動物公園では彼のために、コラボ終了後も特別にそのパネルの設置を続けることを打診・決定。グレープくんは結局老衰で亡くなるその瞬間までフルルに寄り添いつづけたとのことです。

出題4:なぜ20分以上も潜ることができるのか?

 体が大きいだけあってコウテイペンギンはペンギンのなかでも特に泳ぎがうまく、深さ500m以上の水圧に耐え、連続20分以上の潜水を行います。
 特に潜水に関しては鳥類特有の気嚢という特別な器官に多くの空気を蓄えられるうえ、さらに血中ヘモグロビンの性質も哺乳類のものに比べてより多く酸素を吸着し、よりスムーズに分離できる高性能なものを備えています。これらは本来、鳥類が酸素濃度の低い高高度を飛行するために獲得した性質です。ペンギンは空を飛べなくなった代わりに、まさしく海中を飛んでいるわけですね。

 さて、これらの特徴以外にもうひとつ、コウテイペンギンには長時間潜水するための特徴的な機能が備えられています。

 「いっぱい潜ってたり運動してたりすると、心臓がバクバクして苦しくなっちゃうと思うんですけど、ペンギンさんはそれを最小限に抑えることができるって聞いたことがあります。本当なんですか?」(カルロ・ピノ)

 この回答もまた大正解。
 コウテイペンギンの心臓には、潜水が長時間に及んだとき徐々に心拍数を減らす機能が備わっています。平常の心拍数が1分あたり70~80回程度なんですが、20分潜水した最低の心拍数は6~7回まで落ちるんです。
 もちろん、心臓が拍動する主目的は全身に酸素を送り出すため。激しい運動をしているなら筋肉により多くの酸素が必要となるはずなんですが、どうやらコウテイペンギンは血管も特別性らしく、潜水中は泳ぎに必要ない器官への血流を絞ることができるようです。運動量の多い胸筋などは酸素代謝が活発で体温37度程度を保っていますが、激しく動かすわけではないヒレなどは潜水中一気に体温が下がって7度程度になるんだとか。ほぼ海水温と同じですね。このおかげで、心臓自体の酸素消費量を抑えつつも活動に必要なだけの酸素を供給できるわけです。
 生き物ってつくづくすごいですね。(※ 小学生並みの感想)

出題5:エサを獲る以外の「潜る」目的は?

 「仕事でミスをしたからじゃないかなって思います。シロ、今年ちょっとミスしたときお布団かぶって潜ったので、きっとそうだと思います」
 「仕事で失敗したとき布団に潜るっていうことは、この収録のあとは毎回布団に潜ってるということですか?」
 「また! また! 失敗なんてしてないですからね! なんですか英二」
 「全員よ、全員。シロちゃんだけじゃなく」
 「・・・みんなで潜ろう。絶対、英二もそうだって!」
 「僕もだいたいこの収録のあとは毎回布団かぶって寝てますよ。このスタジオにいる人みんなこの収録のあとは布団頭からかぶって寝てるんですから。誰も成功しちゃいませんよ! 全員ですよ!」
(電脳少女シロ&小峠教官)

 この日のお昼に開催された神回同時視聴イベントで花京院ちえりも同じようなことを言っていましたね。小峠教官のイジりは意外と的を射ているのかもしれません。

 「シロさんもやはり失敗したことを洗い流そうと思ってるんですよね。実はね、ペンギンもそうで、ペンギンは羽を洗うんですね」(長沼先生)

 そして拾いに行く長沼先生。

 このあたりは前回の授業でも触れられていた部分ですが、ペンギンというか鳥類全般、羽根をコーティングするための皮脂腺をお尻に持っています。いわゆるボンジリですね。ここから出る脂を羽根に塗って撥水機能を持たせているんです。
 水をはじくということは、(まるでダウンジャケットのように)ふかふかの羽根が水中でもぺしゃんこにならないということであり、羽毛の間にたっぷり含んだ空気の層が断熱材の役割となってペンギンの体温を守ってくれます。
 ただ、脂は脂なのでどうしても酸化して寄生虫などの温床になりますし、埃などを吸着して次第に汚れてきてしまいます。なのでときどき水浴びをして古い脂を落としているわけです。

 余談ですが、近年地球温暖化の影響で、南極でも雪ではなく雨が降ることがあります。↑で書いたように大人のペンギンは羽根を脂でコーティングしているので耐えられるのですが、生まれたばかりのヒナは皮脂腺が未発達。羽根がズブ濡れになって体を冷やしてしまい、そのまま死んでしまう例が多々あるそうです。

質問2:なぜ過酷な冬に産卵するの?

 地球上で最も過酷な産卵をすることで有名なコウテイペンギン。
 繁殖期は真冬。気温-60度、風速60m/秒という極限環境下で卵を産みます。
 ちなみに他のペンギンは小石を並べて巣を形成し、そこで卵を温めるところ、コウテイペンギンは自分の足の上で温めます。卵も、ヒナもずっと足の上です。厳寒期の氷上で子育てするため、地べたに直置きするのでは凍死してしまうんですね。

 さて、ではどうしてそんな大変な時期にあえて産卵するのかというのがカルロ・ピノの質問。

 「とってもいい質問ですね。結局、卵から孵ったヒナがある程度大きくなって、ひとり立ちするときにちょうど夏であってほしいんですよ。そのころ海にはエサがいっぱいあるんでね」(長沼先生)

 なお、コウテイペンギンの産卵が過酷だといわれる理由は季節の問題だけではありません。

 コウテイペンギンはオスが卵を温める習性を持つ珍しいペンギンなのですが、というのも産卵したメスが長期間繁殖地を離れるという事情があるからなんです。
 コウテイペンギンは南極大陸の内陸部で卵を産みます。エサ場である海からは実に100kmも離れることがあります。沿岸では足場の氷塊が割れてしまう危険性があるからだといわれています。

 産卵には体力を使うので、滋養をつけるためメスはエサを獲りに海へ向かうのですが、ここで問題になるのが距離。片道100kmをペンギンの足で往復するので、60日近く留守にしてしまうんです。この間オスは1羽で卵を守り、温めます。
 加えて、そもそも繁殖のために沿岸から内陸部へ移動したときかかった日数、到着してから交尾・産卵までの日数も合計すると、およそ100日間。その間オスはずっと絶食することになります。雪を食べて水分補給する程度です。

出題6:ヒナが生まれた場合オスはどうする?

 ここでもう一問。
 このメスが留守にしている期間に卵が孵化してしまった場合、ヒナに食べさせるエサは手に入りません。このときオスはどうするでしょうか?

 「自分の体に蓄えてるやつを子どもたちに食べさせるんですよね」(小峠教官)

 ペンギンミルクと呼ばれるものです。
 もちろん母乳ではありません。これはオスが自らの胃の粘膜などを溶かして工面する食料です。口から分泌してヒナに食べさせます。
 ただし、オスもすでに100日近く絶食しているわけで、この時点で体重は平常時の60%まで減少。ペンギンミルクを与えるにしてもせいぜい10日間しか保ちません。それまでにメスが帰って来なければ親子共倒れです。

 胃のなかに魚やオキアミをたっぷり蓄えたメスが帰ってきてようやく人心地・・・、と思いたいところですが、このときメスが海から持ち帰ってくるエサはあくまでヒナの分だけです。
 子育てを交代し、今度はオスが長い時間をかけて海に向かい、自分が食べる分のエサを自分で獲る番になります。最終的にオスの絶食期間は120日に及ぶことになります。

飼育係さんが教えるコウテイペンギンの意外な一面

 最後に、水族館での取材ならではのちょっとしたこぼれ話。

 コウテイペンギンの羽(フリッパー)はたいへんに力が強く、はたかれるとコンタクトが飛んでいってしまうとのこと。
 調べてみると実際はそれどころじゃない威力らしく、犬を遠くまで吹き飛ばすだの人間の骨を折ることができるだのという話が出てきます。

 ↑で散々書いたとおりコウテイペンギンの繁殖は大変難しいため、名古屋港水族館では繁殖期に毎週体重測定をしています。当然ペンギンが素直に体重計に乗ってくれるわけはないので、飼育員さんが抱っこして連れて行きます。
 参考までに、コウテイペンギンの成鳥の体重はおよそ30kg。人間でいうと小学4年生くらいの重さですね。

 他の鳥類と同様、コウテイペンギンにも換羽期があります。夏毛と冬毛、みたいな感じではなくて、年に1回だけ新しい羽毛に生え換わるかたちのようですね。全身の羽根が生え換わるので大量の羽毛を処分することになります。
 ただ捨てるだけではもったいないということで、名古屋港水族館ではこの羽毛をマフラーやクッションに加工して販売するというユニークな取り組みを行っているようです。

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