私エリちゃんのことやっぱ好きだからさ、また友達になりに来たんだ。
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私が高校生のころ、クラスメイトがひとりイジメを苦にして退学してしまいました。その後、その人をイジメていた連中の矛先が今度は私に向かいました。
別に大したことにはならなかったんですけどね。机や教科書一式を隠されたとき、これ幸いと思ってろくに探しもせずそのまま授業に出てやりました。盛大に悪目立ちしてやりました。それでやりづらい相手だとでも思ってもらえたのか、その後は小さなイヤガラセくらいしかしてこなくなりましたっけ。
まあ、本当のところ私は担任にも嫌われていた(集団的調和最重視な人だったのでコミュ障とは相性が悪かった)ので、机がない状態で授業に出て叱られたのはなぜか私だったんですけど。事情すら聞かれませんでした。イジメっ子連中が見当違いに警戒してくれなかったら人生終わってたかもですね。
いろんなことを考えましたね。あいつら一生許してやる必要ねーなとか。だからといってわざわざ糾弾しても私は得しねーなとか。なら私があいつらに復讐することはたぶん一生ないだろうなとか。私は私、連中は連中。たぶん、あのとき私は思想的にいろいろと拗らせました。
point of view of はな
「ふっ。めっちゃイケてるでしょ!」
はなの悲しい過去は終わりました。
「やめて! みんなカッコ悪いよ!」
イケてる大人のお姉さんになりたくてがんばって、なのにうまくいかなかった過去のはな。
「大丈夫。はなは間違ってない。もう我慢しなくていい。はなの未来は無限大!」(第23話)
「はながやったこと、絶対間違ってない! すごくイケてることだよ!」
「カッコ悪いのは誰かの心を傷つける人たち!」
みんなの応援に支えられて、はなはあのとき憧れていた“なりたい自分”が間違ってなかったと信じることができました。
「おっちょこちょいだし、グイグイ行きすぎてヒかれちゃうことも多いし」(第5話)
「私、ずっとエリちゃんに嫌われちゃったんじゃないかと思ってたんだ」
何が心に引っかかっていたかって、誰かのためにがんばったことがかえって余計なおせっかいになっていたんじゃないかという恐れ。
「いつも助けてくれてたのに、私は自分のことが大切でののたんを守れなかった。ごめんって言いたいの」
あのときの友達の本当の気持ちを知ることができて、ずっと心に引っかかっていた自分の汚点をやっと肯定的に受け止められるようになりました。
「私、謝ってほしいなんて思ってないよ。許すとか許さないとかそういうのじゃない。ただ、私エリちゃんのことやっぱ好きだからさ、また友達になりに来たんだ」
だから、はなのなかでこの過去は全部解決。
はなにとって問題の本質はイジメられていたことではありません。はなが向きあうべきは、あくまであのときから現在まで続く、自分の気持ちと自分の行いだけでした。
イジメていた子たちがどうとか、そういうのはもはや関係ありません。
はなは強い子ですね。
point of view of…
ところで、はなへのイジメの中心となっていたチアリーディング部の子たちはその後どうなったのでしょうか?
おそらくは何も変わっていないでしょう。
実際に学校側がどこまで指導できたのかは描写されていません。ですが、そもそものこと、はながいなくなった程度のことがイジメっ子たちのその後の学校生活に何らかの影響を与えるわけがありません。だって普段から無視していたんですから。目の前にいても、いない子として扱っていたんですから。それが実際にいなくなったところで、だからどうしたというんですか。
はなが自分の過去を自分の問題として飲み下したように、イジメっ子たちにとってもこの過去は彼女たちそれぞれの問題です。反省しなくても支障がないなら誰も反省しませんし、そもそも反省すべきだという認識も生まれません。
納得できない人もいるかもしれませんが、そういうものです。思い上がるな。
悪意は必ずしも罰せられなければならないものではありません。罰とは被害者を満足させるためのサディスティックな概念ではなく、あくまで加害者を更正させるためのきっかけとなるべきものです。
加害者に反省すべき理由がなければ、たとえどんな厳罰にだって彼女たちを変えることはできません。
第31話アバンの体育館で。あるいは同話Bパートの控え室で。
エリは今も変わらず他の部員たちに背を向けられてひとりぼっちです。
どんなに楽しく談笑していても誰もエリに声をかけませんし、どんなにエリが思い詰めた顔をしていても誰も気に留めません。
結局何も変わっていません。
「エリ。また元に戻りたいの?」
バカバカしい。
代わりのイジメのターゲットができたからって、あえて仲直りしてやる理由が彼女たちとエリとの間にあるものか。むしろ別に好きでもないナマイキな子とわざわざ親しくしてやる必要がどこにある。
はなにとってのイジメられていた過去は解決しました。
けれど、そのこととエリや他のチアリーディング部員にとってのイジメ問題は関係ありません。
彼女たちにとっての問題は別途彼女たち自身が解決しなければなりません。解決する必要があるなら、ですが。
point of view of エリ
「ののたん・・・」
さて。エリはどうしてはなに会いたいと思ったんでしたっけ?
謝りたかったからでしたね。
じゃあ、どうして今さらになっても謝る必要があったんでしたっけ?
「知り合い?」
「あ、うん・・・。前の、学校の・・・」
「お友達ですか?」
「え。・・・えっと」
久しぶりに再会したときのはなのぎこちない反応に、エリは涙を浮かべて逃げだしました。
エリのこの不思議な行動については後ではなが理由に気づいてくれましたね。
「私エリちゃんのことやっぱ好きだからさ、また友達になりに来たんだ」
彼女ははなと仲直りしたかったんです。過去のことを謝って、友達としてやりなおしたかったんです。
その気持ちに気づいたからこそ、はなの方も自分が彼女に嫌われていなかったんだということを理解できました。もう一度友達になっていいんだと理解できました。
転校して行ってしまった友達と仲直りすることに果たしてどのくらいの意味があるのかといえば、まあそれも本人の気持ち次第でしょう。少なくともエリにとってはわざわざ足を運ぶ程度に重要なことでした。
チアリーディング部、見るからに居心地が悪そうですからね。もしかしたらわざわざ転校して行った友達を頼りたくなるほど寂しかったのかもしれませんね。
それでも部活を辞めることは簡単なことではないでしょう。その選択は自分の大好きな活動まで諦めてしまうことですから。いっそ彼女も転校してしまえたら楽なのかもしれませんが、子どもにとってその選択はさらに重いもの。はなだってお母さんが助けてくれたからこそできたことですしね。
たぶん、そのあたりがどうにもならなくて、だからエリははなを頼ったんだと思います。
転校して行ってしまった友達と仲直りすることに果たしてどのくらいの意味があるのか。
ありますよ。きっと。とてつもなく大きな意味が。
「そうかもね。けど、これが私たちなの。みんながいてくれたから、私は今日、前に進めたんだから!」
たとえばはなは転校先で新しい友達をつくって、自分のことを好きになることができました。
同じくさあやも、ほまれも、えみるも、ルールーも。
「夏休み明けもがんばるぞ! フレフレみんな! フレフレ私!」
友達をつくることにはステキな価値があります。友達をつくることで、今の自分を好きになって、昔の自分も好きになって、そしてきっと未来の自分までも好きになれるんです。
「いつでもがんばり屋さん。誰かのために一生懸命になれるところ。失敗してもガッツで乗り越えるところ。素直で表情がクルクル変わって、見ているだけで元気になれるところ。まだまだいっぱいあるよ。私が憧れた、はなのステキなところ」(第11話)
なにせ友達はいつだってあなたのステキなところを知っていてくれるんですから。たとえ自分で自分を嫌いになってしまったとしても、友達は変わらずあなたを好きでいてくれるんですから。
だから友達がいてくれたら、私たちはどんなことがあっても過去・現在・未来に渡る全部の自分を丸ごと好きになることができます。
「伝えたいことあるんだ。たくさんの『ありがとう』。君の笑顔はみんなを結ぶ。友達になれたね」
「笑顔。笑顔。涙。涙。ぎゅっとして強くなる。みんな未来輝く」
実際のところエリの現在の境遇がどんなものなのかははっきりしません。いちおう描写に基づいて考察してはいるつもりですが、まあ半分くらい(半分以上?)私の想像による補完です。
ですがもしエリがまだイジメの問題で苦しんでいるんだとしたら、どうかはなと改めて結んだ友達関係が彼女の救いになってほしい。
エリの問題は結局のところエリが解決しなければなりません。ですが、同じような問題をはなは友達との出会いによって乗り越えることができました。だから、きっとエリも。
「ふっ。めっちゃイケてるでしょ!」
どうか、どんなことがあっても自分を好きになれますように。
きっとあなたは絶対にステキな人なんですから。
「ののたん――」
「エリちゃーん!」
フレフレはな。フレフレエリ。フレフレみんな。
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