えんどろ~! 第10話感想 夢から醒めた朝、起きぬけに浴びる陽射しのまぶしさときたら。

今のふたりは本当に幸せそうっス。そんなふたりの幸せを邪魔することができるっスか?

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(主観的)あらすじ

 遭難しました。猛吹雪のなかテント1枚を頼りに山ごもり。

 この寒さのなか眠ってしまうわけにはいきません。気持ちを紛らわすため、みんなで将来の夢を語りあうことにしました。
 メイの夢はすでにひとつ叶っていて、もうひとつはカルタードを全種類コンプリートすること。ファイの夢は世界中のグルメ食べ歩き。セイラの夢は部屋の片付け&巨乳になること。ユーシャの夢はもちろん勇者になること。

 そうこうしているうちに、いつの間にか睡魔が忍び寄っていました。睡魔というかモンスターでした。
 4人は先ほど空想したとおりの楽しい夢を見ます。ただ、唯一セイラだけは自分でも巨乳になれるなんてありえないと自覚していたので早々に目を覚ましました。
 残る3人をモンスターの見せる夢から救おうとする過程で、セイラは「夢のなかでならみんな幸せなのに、その夢を壊していいのか?」という問いを投げかけられます。セイラの答えは――、夢のなかで巨乳になれてもむなしいだけ!

 セイラが3人の夢を木っ端微塵にして、みんな目を覚ましました。テントの外はすっきり快晴。案外、夢から醒めたあとの気持ちは晴れやかだったのでした。

 貧乳好きはおおむね3つのパターンに分けられます。
 1つはおっぱいコンプレックスのある子を愛でたいパターン。
 1つは幼さの象徴として胸の未成熟な女の子を好むパターン。
 1つはモデルのようなすらっとしたカッコよさに憧れるパターン。
 1つはアニメキャラによくある極端な巨乳への忌避感の反動からきたパターン。
 1つは屈んだとき胸元にできる無防備なスキマにフェチズムを感じるパターン。
 1つは――・・・きりがないな。
 貧乳、いいですよね。

今見ている夢

 「将来? もちろん勇者になるー。勇者の私が復活した魔王に立ち向かって、カッコよく魔王と戦って――、でもあとちょっとで倒せそうなところで魔法が暴走しちゃって、みんなといっしょにバビューンってどこかに飛ばされちゃうんだよねー」
 さて、どこまで本当なのやら。

 この流れならたぶん直前のセリフにもひとひねり仕込んであるんでしょうね。
 「夢? 私の夢はね、今見てるー」
 ユーシャの夢は本人が言うとおり勇者になることです。
 でもそれ、今の時点ですでに叶ってるといえば叶ってるんですよね。勇者の聖剣を抜いたし、ローナ姫から勇者認定も受けたし、クラスメイトたちからも一応勇者と認めてもらえているし、邪神討伐なんかの勇者らしいクエストも達成できたし、なにより友達といっしょに勇者パーティできているし。
 いったいこれ以上何を望むというのでしょうか。

 「それは“勇者様だから”、ですか?」
 「それとはちょっと違う・・・ぽい? えーと、えと、・・・“私だから”! かな?」
(第5話)
 「お姫さまだからとか、勇者だからとか、そんなの関係ない。ローナちゃんは、――ローナちゃんは私たちの友達だから! だから助けるんだ!」(第8話)
 そもそも彼女自身、意外と勇者らしさには固執していませんしね。
 勇者と呼ばれる人にはなりたいけれど、勇者らしい生きかたがしたいわけじゃない。勇者は魔王を倒すために現れる存在だと知っているけれど、別に魔王を倒したくて勇者になりたがっているわけじゃない。
 だったらなおさら。勇者の証と呼べるものを持っていて、周りの人たちにも勇者だと認められていて、勇者っぽい冒険もできていて――、これ以上、いったい何を望むというのでしょうか?

 「・・・でもあとちょっとで倒せそうなところで魔法が暴走しちゃって、みんなといっしょにバビューンってどこかに飛ばされちゃうんだよねー」
 彼女は気付いているんでしょうか。
 こうして将来の夢を語っているときも、後半で眠りの夢に見ているときも、魔王と戦っているシーン止まりでその後の描写が存在しないことに。

夢の終焉

 「魔王、覚悟! たあー!!」
 「勇者! 勇者! 魔王を倒せ!」
 「死んだ婆さんの若いころにそっくりじゃ・・・!」

 3回描写されて3回とも同じようなシーンまででリフレインしているユーシャの夢。
 どうして魔王を倒したあとのシーンに進もうとしないんですか? 魔王を倒すのが勇者なんでしょう?

 「――でも、ちょっと待ってほしいっス。ここが夢の世界だとして何か問題があるっスか? ふたりを見るっス。ユーシャさんは魔王と戦っていて、ファイさんはごちそうに大喜びっス。今のふたりは本当に幸せそうっス。そんなふたりの幸せを邪魔することができるっスか」
 勇者になりたいくせに、魔王を倒したあとより魔王と戦っている最中の方をこそ幸せだと考える。
 第999代勇者・ユーリア・シャルデットの勇者物語にエンドロールはありません。
 「こうなったらみんなの夢をひとつにしよう!」
 「魔王を倒したいっていう夢と!」「おいしいものを食べたい夢!」「そしてカルタードの夢っス!」

 どの口が言うか。

 ずうっと。今までずっとそうだったんですよね。
 ユーシャに魔王を倒したあとのビジョンはありません。だって魔王を倒したいとか、平和な世界を取り戻したいとか、そういう“勇者になって何をしたいのか”を彼女は考えていませんから。
 彼女が望んでいるのは勇者としての冒険の日々です。気の合う友達3人といっしょに、いかにも勇者らしい、ワクワクするようなクエストに挑戦してみたいだけ。
 「みんな、今日はありがとう。海に来たいってお願いだけじゃなくて、サバ魚人さんたちも助けることができた。セイラちゃんが海でクエストしようって言ってくれたからこの島に来られて、ファイちゃんがサバ魚人さんを水揚げしてくれたから邪神が復活したことがわかって、メイちゃんのカルタードがあったから海のなかへ行って邪神と戦えて。今日は勇者っぽいことができたと思う。みんな、ありがとう!」(第4話)

 だから、もし魔王を倒してしまったら、その瞬間に幸せな夢も終わってしまう。

 「天地の狭間遍く満ちる精霊よ、ほちゃあき我――あ、ごめん。呪文噛んじゃった」(第2話)
 魔王討伐が成されぬまま時間を巻き戻されてしまったあの出来事。あれで一番得をしたのはきっと他でもない、やらかしたユーシャ自身でした。
 “エンドロールにはまだ早い~!”

 勇者になりたいくせに、勇者としての目的を果たすことは望まない。ユーシャの心は矛盾しています。
 やっぱりローナ姫と似ているんですよね。
 「のう、姫よ。お主はあやつらを危険な目にあわせたいのか?」
 「え? だって“勇者”には危険がつきものじゃないですか。――あら? ですが、勇者様たちにそんな危険なことをさせるのは・・・。あら? あらら?」
(第8話)
 物語の結末ではなく過程に憧れるあまり、自分が本当は何を望んでいるのかを見失ってしまっています。

それから

 「ユーシャさん、どうしたっスか」
 「えっとね。前にも思ったけど、こうやって冒険の準備をするのって楽しいよね」
(第4話)
 魔王を倒せばそれで幸せな夢も終わり。・・・本当に?
 これまでの日々でユーシャが楽しそうにしていたのは、勇者らしいことをしていたときというより、むしろ友達みんなといっしょの冒険そのものだったように見えたのに。
 “勇者になりたい”。その夢、本当に終わらせたらいけない夢ですか?

 たとえばひとり、すでに夢を叶え終わった子がいます。
 「自分の夢はふたつあったっス。ひとつはタルカ村に行くこと。でもそれはもう叶ったっス。今までで一番幸せな時間だったっス。――そしてふたつめの夢、それは、もちろん全てのカルタードをフルコンプすることっス!」
 夢のひとつは前話で達成済み。けれど彼女は今もまた別の夢を抱いています。
 ひとりの胸のなかに生まれる夢がひとつきりとは限りません。ひとつの物語が終わったあと別の物語が始まらないとも限りません。だったら、夢を叶え終わることを恐れる必要なんてないじゃないですか。

 「おいしかったねー!」
 「お腹いっぱーい!」
 「ついつい全部食べちゃった」
 「ホントっス」

 みんなで魔王を食べてしまうという、あんまりにもあんまりな勇者物語の顛末は、意外にも心満たされる幸せなひとときでした。
 そりゃそうですよ。魔王を倒したあとも勇者と呼ばれた人の人生は続くんです。ハッピーエンドを迎えた物語にはエンドロールが続くんです。なんなら2期3期と長く続くテレビアニメだってあるくらいです。ひとつ大きな幸せを迎えたくらいで、その後の人生全部が終わってしまうなんてことあるわけがありません。

 「エンドロールじゃ終わらないんだよ。続くファンタジーのプロローグ。笑いあって、支えあって、まだ知らないストーリーを描いてこう」(OPテーマ『えんどろ~る!』)
 「僕らが目指した世界なんだ。誰の地図にもない場所へ行こう。踏み出せたなら、その瞬間が冒険のドアを開けるよ」(EDテーマ『Wonder Caravan!』)
 たとえ勇者になりたいという夢を叶え終わったところで、その後もユーシャには幸せな日々が続くはずです。
 なにせそもそもこの子、本質的には勇者であることに大して執着していませんから。むしろもっと別のことの方がよほど大切だと思っているような子ですから。
 勇者になることだけがユーシャの夢ではありません。
 それだけが幸せではありません。

 だから、安心して、今度こそエンドロールへ進んでくれていい。

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