スタートゥインクルプリキュア 第4話感想 誰もがステキだと思うことを行える人。

この記事は約9分で読めます。
スポンサーリンク

だって先輩の周りはいつも笑顔でいっぱいだから!

(主観的)あらすじ

 “観星中の太陽”と呼ばれている先輩がいます。天宮えれな。笑顔が太陽みたいにステキで、運動神経もバツグン! たくさんの生徒たちに慕われています。このあいだケンカしてしまったひかるとララの仲を取り持ってくれた人でもあります。
 あのときのお礼が言いたくてひかるたちは声をかけようと思いましたが、朝は人垣に阻まれて叶わず、放課後は誰より早く帰ってしまうようでなかなか会えません。彼女の家である町の花屋・SONRISAに行ってみることにしました。

 SONRISAは賑やかな花屋でした。えれなには下に5人も兄弟がいて、お店を手伝うのと弟や妹たちの面倒を見るために早く帰るようにしているそうです。学校でも家でもいっぱいの笑顔に囲まれていて、太陽って呼ばれるのもわかるなあと、ひかるは改めて納得します。
 ひかるのその言葉を聞いてえれなも喜びます。「SONRISA」というのは彼女のお父さんの国の言葉で“笑顔”という意味なのだそうです。

 ひかるたちが帰ったすぐあと、えれなは彼女たちの向かった方角に大きな煙が立ち上っているのを見つけました。心配になって追いかけてみると、そこでは不思議な女の子ふたりが怪人たちに襲われていました。どうやらひかるたちが持っていたぬいぐるみ(フワ)を狙っているようです。
 フワは泣いていました。えれなも怪物が怖くて足がすくんでいましたが、フワの涙を見るとこのまま放っておけないと思えてきて、なんだか体に力が湧きあがってきました。
 走っていってフワを抱きしめます。安心したようでフワが少し笑ってくれます。その笑顔を見ると、えれなはますます自分の体に力がみなぎるのを感じるのでした。

 3人目のプリキュア・キュアソレイユはこうして誕生しました。

 「私の星ではAIが何でも答えてくれるから学校もないルン」
 
先週のコメント欄で茶飲み話くらいのノリで「社会のオートメーション化が進んだら現代ほど長い子ども期間は必要なくなるかもしれない」みたいなことを書いたんですが、本当にそういう設定だったんですね。タイミング良すぎてちょっとびっくり。
 (さすがに初期教育くらいは何らかのかたちで行われると思うので、発言そのまま鵜呑みにしてSF考察するわけにはいきませんが)

 さて、天宮えれな初変身回です。店名の「SONRISA」というのはスペイン語。店先にソンブレロを置いてあることからも察することができますが、彼女のお父さんはおそらくヒスパニックですね。
 冒頭に出てくる似顔絵を見ても兄弟6人+両親という家族構成のはずですが、朝食は7人分だけ。お父さんかお母さんどちらかが不在のようですね。ひかるの家がお父さん不在っぽいので、こちらはお母さんの方かな? (訂正)普通に8人分映っていましたね。なぜか勘違いしていました。

いろんな人たち

 天宮エレナ初変身回ではありますが、今話は観星中学校の様子やえれなの家庭事情、ノットレイダーの残りの幹部など、どちらかというと設定まわりの紹介が中心になっていましたね。
 目撃者タイプのサブキャラにしては異様にキャラの濃い姫ノ城桜子が印象的。ちったぁ他のモブに溶け込め。あとはスマホから手を離さない天宮家長男のとうまくんもいかにも現代っ子ぽくてかわいかったです。加えて次話でプリキュアになる香久矢まどかの顔出しまでありました。

 細かいところでは授業の板書に出てきた小説『私のこれから』と、その作者・宮ノ下裕二もちょっと気になるところ。
 知らない作家だなあと思ってググってみたんですが、どうも引っかからないんですよね。それでいて板書内容も今話のストーリーの流れとは全然関係ありませんし。
 プリキュアシリーズだとこういうちょっとした場面って実在の文豪の名前を使うことが多いんですが、そうせずにわざわざ創作したということは、今後何らかのかたちで登場することもあるということでしょうか。

 「おはようございます」「先輩みたいにいいお天気ですね」「思いをポエムにしたためました」「先パーイ!!」
 
そんな感じでいろんな人たちが出てきたなか、ひときわ目を惹く褐色の肌とまぶしい笑顔。天宮えれなは誰にでも愛される人物として登場しました。
 いつも笑っていて、きさくでさっぱりしていて度量も深い、おまけにスポーツ万能ときたらそりゃモテる。こんなデキた人物なかなかいるものではありません。今話のなかでは弱点らしい弱点もほとんど見せていませんしね。

 どうしてこんなふるまいができるのでしょうか。
 「太陽は遠いルン・・・」
 
天宮えれなは行く先々に人垣ができるほどの人気者。それは裏を返せば、普通の人にはなかなかできない特別な魅力を発揮できているということでもあります。
 普通ではない“特別”。
 そう、彼女は特別な人間です。本人はそんなことちっとも考えていなさそうですが。
 どうして彼女は普通の人と違う、彼女だけの特別なふるまいができているのでしょうか。

 さっきから今話の範疇ではないところで、ちょっとメンドクサイ話をしようとしています。
 たとえば「天宮えれなは外国人の血が入っているから日本人とはちょっと違うんだ」みたいな。
 たぶん、今後そういう話が出てくるんじゃないかなと思っています。『スタートゥインクルプリキュア』が“多様性”をテーマのひとつに掲げているのであれば。(さすがに↑みたいな露骨にセンシティブな切り出しかたはしないでしょうけど)
 あからさまに肌の色が違う、そしてあからさまに普通の人よりステキなところが目立つキャラクターを登場させる意図って、たぶんそういうことだと思うんですよね。
 “特別”なステキがあるのは、結局その人が“特別”な何かを持っているからなんだ。普通の人間である私は彼女のような人とは初めから違う人間なんだ。私と彼女との間には越えようのない高い壁があるんだ。――って。

 「可能性=無限大 見えない壁をつくらないで」(EDテーマ『パペピプ ロマンチック』)

 誰かに“特別”を見出すことって、日常のなかには意外とありふれています。
 「あ、いた! 天宮先輩ー!」
 「・・・太陽じゃなくて、月!」

 
宇宙人すら受け入れたひかるでもそういうことがあります。今回はうっかり失礼なことを言って顰蹙を買ってしまいました。
 ひかるは人垣といえばえれなだろうと思い込んでいました。えれなの姿を見つけたわけじゃないのに、人垣=えれなと関連づけてしまっていました。人垣ができるなんてそんな“特別”なこと、“特別”な人であるえれながいるときくらいだろうと。
 ですがこの学校にはえれな以外にもうひとり、人垣をつくる人気者がいたのです。観星中の月・香久矢まどか。
 人垣ができるのはたしかに珍しいことですが、それはなにも特定のひとりだけに紐付いた“特別”などではないわけです。

 この香久矢まどか、えれなと対照的なあだ名で呼ばれているだけあって、どうやら色々な意味でえれなとは違った人物のようです。しっとりとした性格ですし、お嬢様ですし、勉強のほうが得意なようですし。
 「あの子・・・?」
 
彼女はこれまで誰も気に留めていなかったララの尖った耳にめざとく目を向けます。あげくフワがカバンから飛び出してきたところを目撃してしまい、なんだか少し警戒しはじめたようですね。
 フワがぬいぐるみじゃないと気付いたとき驚きこそすれ、泣かないでほしいとあっさり抱きしめてみせたえれなとはこの点でも対照的。
 次話が楽しみになるネタふりでしたね。

 他人と違うところがある人ってやっぱりいます。
 肌の色だとか、笑顔がステキだとか、運動が得意だとか、人垣ができる人気者とか。 いろんな人がいます。 いろんな違いがあります。
 その違いって、何なんでしょうか?
 どうして違うんでしょうか?

 ・・・普通と違うのって、“特別”だからなのでしょうか?

観星中の太陽

 「どうして“太陽”って呼ばれてるルン?」
 「それは、太陽みたいに明るくて、笑顔がとってもステキだから!」

 「先輩が“太陽”って言われてるの、わかった気がする。だって先輩の周りはいつも笑顔でいっぱいだから!」
 
この感性型主人公、まーた変なことを言いだしました。えれなが太陽と呼ばれているのは本人の笑顔がステキだからという理由だったはずです。周りの人がどうだとか関係なかったはずです。
 どうして今さらになって、こんなたった今初めて気付いたみたいなこと言うんでしょうか。

 意外とえれな当人はこのひかるの気付きを喜びます。
 「ありがとう。――笑顔、か。ほら、店の名前。『SONRISA』。パパの国の言葉でね、“笑顔”って意味なの。花でみんなが笑顔になればいいなあって」
 
我が意を得たり、といったところでしょうか。彼女はまさにひかるの言うような人物になりたいと思う人だったようです。
 みんなを笑顔にしたい。みんなの笑顔が好き。だから笑う。

 天宮えれなは行く先々に人垣ができるほどの人気者。他の人とはちょっと違う、みんなを明るく照らしてくれるステキな笑顔の持ち主です。
 そういう笑顔を持てる理由が、これ。

 その笑顔は生まれついての才能なんかではありません。
 その笑顔は他の誰とも違う“特別”なんかではありません。
 「ステキルン」
 「うん。みんな笑顔が一番だよね」

 
その笑顔はただみんなを笑顔にしたいという気持ちから生まれてきたもので、そしてその気持ちですら、実は誰もが共感するようなありふれた思いでした。

 なのに、彼女は誰にもできないことをすることができます。

 「地球人がなぜ? この状況を理解していて?」
 「よくわからないけどそんなの大した問題じゃない。あんたたちが誰だろうと、この子がぬいぐるみだろうとね。――それよりさ、この子を泣かせるってのが大問題だよ!」

 
行動するからです。
 望みを叶えるために必要なことを実行するからです。

ジョニー・アップルシード

 「それは、太陽みたいに明るくて、笑顔がとってもステキだから!」
 
天宮えれなの笑顔がステキだということは誰もが知っています。
 「先輩が“太陽”って言われてるの、わかった気がする。だって先輩の周りはいつも笑顔でいっぱいだから!」
 
みんなで笑顔になれることがステキだということも。
 だからこそ誰もが彼女を慕います。
 彼女のしていることの価値を誰もが理解していて、彼女がそれをしている目的すらも誰もが共感できます。どちらもすっごいあたりまえのこと。きっと誰にでも簡単に想像できること。
 なのに、実際にそれができているのは彼女だけだから。

 どうしてえれなだけができているのでしょうか。
 「守るものが増えればそのぶん注意は散漫、力は分散。弱点になる」
 「あーら。また守るものが増えちゃったわね。弱みがまた増えた」

 
難しそうからです。大変そうだからです。
 せっかく自分が笑っても、たとえば他の人が笑ってくれなかったらどうしよう。みんなに自分の笑顔を見てもらえなかったらどうしよう。あるいはガッカリされたらどうしよう。嫌われたらどうしよう。逆に依存されちゃったらどうしよう。
 怖い。
 思うは易し、行うは難し。行動すべき理由はひとつきりなのに、行動すべきではない理由は後から後からどんどん増えていきます。最初はうまくいっても後から後悔することもあるかもしれません。
 怖い。
 怖い。
 足がすくみます。
 だから、普通の人にはなかなかできないことっていうものがあるんです。

 どうしてえれなだけができているのでしょうか。
 彼女だって本当は普通の人で、他の人と同じくやっぱり足はすくむのに。
 「『守るものが増えればその分弱点も増える』って言ってたけどさ、違うよ。――守るものがあればあるだけ強くなる! 力が湧いてくるんだ!」
 
それは、いうほど彼女ひとりしかできていないわけでもないからです。
 彼女が笑えばみんなが笑顔になります。けれどその一方で、みんなの笑顔を見て彼女も嬉しくなります。また次もみんなと笑いたいと思えるようになります。
 「弟たちを笑顔にしてくれた。この子は泣かせない!」
 
彼女は知っています。本当は誰もがステキな笑顔ができることを。
 彼女は知っています。本当は誰もが笑顔になりたいと望んでいることを。
 だから先陣切ってまず自分が行動します。みんな後に続いてきてくれることはわかっているから。

 見る人によっては彼女が特別なことをしているように見えるかもしれません。
 けれど彼女からしたらきっと、みんなと同じことをしているだけでしかないでしょう。

 天宮えれなは行く先々に人垣ができるほどの人気者。
 彼女の行くところにはいつだってみんなの笑顔があふれています。

よろしければ感想を聞かせてください

    記事の長さはどうでしたか?

    文章は読みやすかったですか?

    当てはまるものを選んでください。

    コメント

    1. 東堂伊豆守 より:

      SECRET: 0
      PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
      ……私の見間違いかと思って確認しましたがな。プリキュアチームの中に親の消息が不明なメンバーが二人もいたらさすがにシャレにならんと思いますが。
      で、その消息不明中な星奈ひかるの父なんですが……、もしや(公式サイトによると)「政府の高官」だという香久矢まどかの父がひかる父失踪の原因をつくったんじゃないか?とヒヤヒヤしておるところだったりします。まどかがひかるの顔と氏名を把握していたのも、父親から星奈父娘の事を聞かされていたからーーーーーーとか……。なんか「Xファイル」とか「MIB(メン・イン・ブラック)」みたいになってきたなぁ。
      ところで、「サマーンにゃがっこうも、しけんもなんにもない」ルルルンのララ太郎なんですが、「AIが何でも答えてくれる」環境って(私の推測とは逆の方向で)ヤバそうな感じがしますね。「メディアの回答を鵜呑みにして人々が自分で考えることをしなくなった社会」ってディストピア作品の定番ネタだし、少なくともイマジネーションを膨らませる力を育てるのには向かない環境だよなあ、と。
      今話において、地球の学校に対して旺盛な好奇心を示すララの"良い意味での"子供らしさを存分に描写してきた辺り、東堂いづみ先生も惑星サマーンの教育環境を決して肯定的には捉えていないように思われるんですが、はてさて。

    2. 疲ぃ より:

      SECRET: 0
      PASS: 83849cf6295498c96deb555e00f4c759
       確認しました。8皿ありました。
       ・・・該当シーンで一時停止しながら書いたはずなんですが、先週の私はいったい何を見ていたんでしょう? どうも最近見落としが多いですね。気をつけます。

       もしも本当に学校教育が一切ないのならいくらAIが発達していてもマズいというのはそのとおりで、最低限思考する訓練を受けていなければ、せっかく調べて得た情報を理解できなかったり、そもそも目の前の事物に疑問を持つことすらできなかったりすると思われます。どんなに社会が発達したとしてもさすがに初等教育くらいはずっと残るだろうというのが私の考えです。それが現在の地球同様学校による集団教育か、国から教育プログラムだけ配布されての家庭教育に移行するのかはわかりませんが。
       少なくともララの言動を見るかぎり、惑星サマーンはそのあたりちゃんとしているように思います。ララは聡明ですし、与えられた情報から考察もしますし、自主判断もできています。細かい話ですし、子どもにとって夢のない話でもあるので、劇中で詳しく補足される可能性は少ないでしょうけれど。

    スポンサーリンク
    タイトルとURLをコピーしました