『アリアハンの勇者の帰還を願って』
兜の裏に彫られた祈りの言葉
冒険の章7
商人マソホ記す。
私たちはテドンからさらに南進し、極寒の大地レイアムランドに到着した。
ヒイロはまだ落ち込んでいる。
本人はそう見えないように強がっているみたいだけど、なにせ人にあまり興味がないあの子のことだ。バレバレ。いくら勇者として外面を繕うのには慣れているといっても、毎日顔を合わせる相手のどこがどう違っていれば何がわかるか、そういうところが全然わかってない。
そんなヒイロが珍しく話してくれたんだ。ポルトガで不思議な夢を見たって。
降りそそぐ光とともに神々しい声が聞こえてきて、世界を巡れ。人を助けろ。悪を退けろ。そうすればその手にオーブが集まるはずだって。曖昧にしか覚えていないけど、たぶんアリアハンにいたときにも何度か聞いていた声だったって。
ヒイロが夢の話なんてするのは本当に珍しい。だって、ヒイロって人に話すのはだいたい「自分がこれから何をするか」ばかりなんだもん。誰にも相談しないで何でもひとりで決める子だから、結論が無い話は基本しない。
ほんと、よっぽど弱っているんだろうな。
だから私が提案して、ここに来ることにした。
不死鳥伝説の総本山。うろ覚えだけど、たしか不死鳥ラーミアの神話に祭具として“オーブ”が登場していたはず。
ヒイロが次に何をするべきか、その指針が見つかればいいんだけど。
レイアムランドの神域には双子みたいにそっくりな2人の巫女が仕えていて、私たちを一目見るなり勇者と認めて、祭壇に案内してくれた。
そこには見上げるほどに大きな卵が祭られていた。本物の不死鳥なんだって。世界中に散らばる6つのオーブを集め、この地に捧げたら、そのとき不死鳥は長い眠りから目を醒ますらしい。
かつてヒイロのお父さんもここを訪れたんだそうだ。不死鳥が復活していないということは、お父さんはそもそもその力を必要としなかったのか、それとも探索の途中で力尽きてしまったのか・・・。
私はヒイロに、オーブを探そうと提案した。
不死鳥が蘇ったら何が起こるのかなんてわからない。知らない。でも、ヒイロが見た夢はきっと預言だ。何か大事な意味があるはずだ。
仮にそうじゃなかったとしても――、私はこれ以上ウジウジしているヒイロを見たくない。
ヒイロはいつも私のはるか先を進んでいる子だ。私はそれを見せつけられるたびいつも自分の出来の悪さに落ちこんで、でも、くやしくていつも食い下がろうとしてきたんだ。
さて。次はどこに行こうか。
せっかくこんな世界の果てまで来たんだから、まずは西に進んでグリンラッドに行ってみて、もしそこに何も手がかりがなかったらまた南下して新しい街を探して――。
冒険の章8
戦士シュアン記す。
アリアハンを発って以来、暇をみてはソーリョクに文字を教わってきた。船旅が増えたこの機会にそろそろ日誌を書く練習を始めたいと思う。
齢50にも手が届くこの歳になって読み書きを学ぶ機会に恵まれるとは思わなかった。ありがたいことだ。
あやつはまったく気のいい男だ。1人だけほとんど初対面のような間柄で旅に参加し、ヒイロたちとは歳も少し離れていて、話し相手に困っていたのだろうという事情は察するが、それにしてもやつの教えかたは丁寧だった。
オルテガがこの話を聞いたら、やつめ、きっとまた泣くんだろうなあ。
俺はこの魔王討伐の旅の傍ら、個人的に旧友オルテガの旅の足跡を調べてもいる。
やつが死んだという知らせが届いたときの悲しみはそれはもう大きなものだった。俺だけじゃない。アリアハンの民みんなが暗い顔をしていた。それだけやつは多くの人に愛されていたのだ。
ただ“勇者”だからというばかりではない。長年アリアハンの民を魔物の脅威から守ってきたあやつの働きと、なによりあの人懐こい人柄によるところが大きいだろう。
だから俺は、オルテガがどういう旅をして、どれだけの人を助けていたのかを聞いてまわり、アリアハンに持ち帰るつもりだ。
無論、生きて帰ることが大前提というわけだな。
生きて帰らねばならぬ。生きて帰さねばならぬ。オルテガを失い、そのうえ若いヒイロたちまで失ってしまうのでは、俺はアリアハンのみんなに申し訳が立たない。
アリアハンの民はヒイロたちを死なせないことを望んでいる。4年前、ヒイロがたった12歳で勇者として旅立ちたいと言いだしたとき、国王陛下が止めたというのはそういうわけだろう。
ヒイロがよくても俺たちがよくない。たとえヒイロ以上に勇者の称号がふさわしい傑物が他にいなかったとしても、俺たちにも少しは手伝わせてほしかった。そのための時間を誰もが必要としていたのだ。
おおかた察しのいいマソホあたりが先回りして陛下に上奏していたのだろうな。協力してくださった陛下もまた情の深い御方だ。
ここ、ムオルの村にもオルテガの足跡が数多く残されていた。
どうやらやつはこの村でも英雄になったらしい。深手を負って倒れていたところを村の者たちに介抱され、子どもたちのよき遊び相手となってやり、村が魔物の群れに襲われたときはひとりの犠牲者も出さずにそれを撃退してみせたのだという。
村の位置から考えて、やつはポルトガ王から受けた東方見聞の任務の一環として来ていたはずだ。ガルナの塔まで行った俺たちに言えた話ではないが、バハラタを超えて、またずいぶん遠くまで回ってきたものだ。
なにやらやつは「ポカパマズ」などと偽名を名乗っていたのだという。
・・・どういうわけだろうか? やつらしくもない。
魔物の群れを撃退したとき妙に神妙な顔をしていたそうだし、怪我が完治するのを待たず旅路を急いだというのも、その後ポルトガに報告に帰らなかったというのもまた奇妙だ。
もしかしたらやつめ、魔王の手先にでも追われていたのかもしれないな。あやつの旅を支えてやれなかったことが改めて悔やまれる。
幸い、今のところヒイロの周囲に不穏な気配は感じられない。だが念のため、マソホやソーリョクにも伝えて今後はいっそう気を配ることにしよう。
ヒイロを守ることは、オルテガに一人旅をさせてしまった情けない俺にできるせめてもの償いでもある。
ムオルの漁民が、空気の澄んだ日には遠くの対岸にうっすらと高い塔が見えると言っている。次はそこを調査し、そのあとまた南へ舵を向けることにしよう。
情報によればジパングという名の小さな島国があるはずだ。
>ドラゴンテイル:グループ攻撃,ドラゴン特効,戦士も装備可能
だからこんなエグい強力な装備をそこらのフィールドにぽんと置くなと。
キャラクター設定
シュアン(戦士;つよき)
【過去】――何が自分をつくったのかという認識
1【誰の役に立ちたいか】(A+C)
アリアハン王。
シュアン自身はアリアハン王に拝謁したことはないが、聞くところによると王は勇者オルテガを死地へ送ってしまったことを今でも悔やんでいるらしい。ヒイロのことも、才気を示した4年前にはあれこれ理由をつけて勇者の使命を拒み、それとなく旅立ちの用意を整える時間をつくってくれた。
シュアンを今回の旅に直接誘ったのはマソホだったが、実はそのあと王命も届いている。愛弟子であるヒイロを大切に気遣い、最大限の支援を行おうとしてくれる王のことを、シュアンは心から尊敬している。
2【誰に支えられているか】(B+D)
冒険の仲間たち。
シュアンはヒイロとマソホの剣の師匠であり、彼女たちがいかに優れた戦士かよく知っている。ソーリョクについても知りあいの兵士たちから伝え聞く話だと掛け値なしの天才とのことだ。自分が彼らを守る必要はないだろう。
弟子たちに教えた剣は、もともとアリアハンの街を防衛することを想定していたため、守りを強く意識した型だ。ならば経験豊かな戦士として自分が果たすべき役割は、教えた型とはまた違う、仲間たちに背中を預けてひたすら剛剣を叩きつける戦いかただろう。
3【嬉しかった想い出】(B+C)
ソーリョクが一角の人物として大成していたこと。
オルテガがソーリョクの故郷の村の救援に向かったとき、実はシュアンも同行していた。ただ、ソーリョクの救出自体には直接関わっていないため、その後の動向はオルテガ経由で伝え聞くだけだった。そのためオルテガが勇者として魔王討伐に出立して以降はどうなったか知る機会がなかった。
オルテガの旅立ちから6年後、シュアンはソーリョクが史上最年少で宮廷魔術師に抜擢された話を、王宮勤めの兵士たちの口から聞くことになる。
シュアンはオルテガがこの朗報を知ることがないことを残念に思い、また、旧友が気にかけていた青年の成長を我がことのように喜んだ。
4【傷ついた出来事】(A+D)
13年前、オルテガに置いて行かれてしまったこと。
シュアンはオルテガの旧友であり、10年来の冒険仲間だった。
彼がアリアハン大陸を出立するにあたり、当然シュアンもついていくつもりでいた。だが、オルテガはロマリア大陸まで海を泳いで渡る決断をした。シュアンはそのような超長距離の遠泳などできない。彼の強行軍の最初の第一歩すら同道できなかった自分の不甲斐なさを、シュアンは今も恥じている。
以来、いつかまたあるかもしれない旅立ちの日に備えて、実は密かに水泳の訓練を重ねていた。いざないの洞窟を開通させる手段があると知ったときは腰が砕ける思いだった。オルテガ・・・!!
【現在】――自分は何者なのかという認識
A【がんばっていること】(1+4)
勇者オルテガの足跡を辿る。
シュアンはオルテガの旅に同行できなかったことを恥と感じており、また彼と最も親交が深かったひとりとして彼の旅の軌跡に人一倍強い関心を持っている。
アリアハンの人々もまた郷土の英雄オルテガのことを愛してくれている。もし各地に残るオルテガの足跡をまとめ、彼の武勇伝を故郷に持ち帰ることができたなら、きっと多くの人が喜んでくれることだろう。
シュアンは魔王討伐の傍ら、世界各地の町や村に滞在するたび、現地の人々にオルテガのことを尋ねてまわっている。
B【任せてほしいこと】(2+3)
若者たちを生きて帰すこと。
シュアンは旅の仲間の3人を高く評価している。今年49歳にもなる自分などより、彼らはアリアハンにとってはるかに重要な者たちだ。
その思いはアリアハンに残る多くの人たちにとっても同様だろう。彼らはもう二度と勇者を失いたくないからこそ、ヒイロの旅立ちにしっかりと時間をかけて準備させてきた。
そんな若者3人の旅に同行させてもらう唯一の老兵は、アリアハンに残り無事を祈る全ての人々の代表と見なして差し支えない立場だろう。シュアンは自分のことをそのように考える。何があろうと無事に3人をアリアハンへ連れて帰らなければならない。
C【よく気がつくこと】(1+3)
誰かを気遣う人の良心。
シュアンは人間の本質が善性であることを知っている。たとえそうではないと言う者がいたとしても、シュアンの知る限り確かにこの世界はそのようにできているのだ。
人が誰かを思うとき、そこには必ずどこかに慈しみやいたわりの気持ちが篭もっている。シュアンはそのように信じている。必ずそこに“有る”と確信しているわけだから、シュアンは誰よりも人の良心の有り様を鋭敏に捉えることができる。
D【耐えがたいこと】(2+4)
力不足で仲間の期待に応えられないこと。
旅の仲間たちは皆優秀だ。特に、ヒイロはすでに自分を超えている。それはわかっている。
だが、シュアンにも年長者としてのプライドがあった。頼られたいと思う。期待に応えたいと思う。それは必ずしも最も優秀なものにしかこなすことのできないことではないはずだ。仲間たちが自分よりも若く優れていることを言い訳に努力を怠るというのはシュアンの本意ではない。
いつまでも自己研鑚を欠かしたくないと思う。少なくとも、仲間たちに置いて行かれてしまうまでは。
【未来】――これまでの総括とこれからの夢
α【自分の手で守りたいもの】(1+2+3+4)
未公開。
β【自分にまだ足りないもの】(A+B+C+D)
未公開。
γ【いつか叶えたい理想の自分】(α+β+1+A)
未公開。
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