ぐらんぶる Season 2 第6話感想 キミはいつも必死だから、私もそこは素直にすごいと思う。

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そりゃ最初は絶望したがな。ライブに参加したら――、全て吹っ飛んでしまった!

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「再びの女子大」

エピソードトラッカー

主人公:伊織

「人が本気でやってることを邪魔すんじゃねえよ」

目標

 青女祭に再び入場し、今度こそナンパを成功させる。

課題

 声優ライブ会場の設営現場でいい感じの女子グループに声をかけることができたが、彼女たちの興味は耕平に向いているらしい。しかし今日の耕平はライブにしか関心が向いておらず、また、そもそも伊織自身も耕平だけモテるのは癪だと思っている。

結末

【失敗】

 耕平を合コンの最初にだけ参加させ、すぐに追い払うことでナンパのチャンスをものにできたところまではよかった。
 しかし女子グループは自分たちより声優ライブを選んだ耕平に腹を立て、悪口を言いはじめるどころかライブのチケットをスるという暴挙にまで出た。伊織はたまりかねて合コンをぶち壊し、その場を立ち去った。

心の変化

【ポジティブ】

 もともと伊織は耕平のオタク趣味を気持ち悪いとバカにしつつ、その熱意にだけはリスペクトを払っていた。
 ライブ会場設営の場で耕平の本気を改めて目の当たりにし、また女子グループの不愉快な言動を受けて、ナンパを諦めるほどに強く、自分のなかの価値観を改めて意識することになった。

キーキャラクター

耕平

 マイペースなオタク野郎。バカだし貧弱だし人見知りだが、自分の好きなことのためなら目を見張るほどのポテンシャルを発揮する。普段から意外と人の話を聞いていないし、そのぶん多少悪く言われた程度ではいちいち根に持たない。
 今話では心から声優ライブを楽しみにする姿が女子グループの性悪さと好対照となり、伊織の価値観を揺さぶった。

桜子たち

 絵に描いたような“オタクに理解のない陽キャ女子グループ”。自分と相容れない価値観を見下し、積極的に攻撃しようとする典型的な悪役として登場した。

ピックアップ

「ファイト! 一発! ヤりたーい!!」

 リポビタンDのCMを元にした、やたらテンポがいいサイテーなパロディ。

 元ネタはムキムキの男2人が過酷なシチュエーションで助けあって苦難を乗り越えるシチュエーションを描いたもの。調べてみると1977年から俳優やシチュエーションを変えつつ、今なお新作がつくられつづけているらしい。

黒い収納ケース

 舞台用の高出力ライトやスピーカーなどが収められている頑丈なケース。高価でありながら頻繁に運搬する舞台用機材を安全に運ぶため、こういうゴツい見た目になっている。枠組みは軽量さと剛性を両立するアルミ押出材、面の部分は耐衝撃性に優れたABS樹脂製、角の部分には特に頑丈であるようスチール素材を貼りつけていることが多い。
 このケースに入っている機材は大抵何十万円もするため、野島たちのように粗末に扱うと叱られるだけで済まない。というか、普通はまずボランティアスタッフなんかに運ばせない。

 今回は設営チーフすら青女祭のスタッフTシャツを着た若い女性であるあたり、そもそも運営チームに学生しかいないのだろう。機材はレンタルだろうか。これで万一壊れていたらそれだけでチケット収益が吹っ飛びかねないが、まあ、学生ってそういうものよね。
 ちなみに原作ではこのような描写は存在せず、野島たちは全員伊織と同じく鉄構造物を運んでいる。アニメ化に際して男手の必要性をよりわかりやすく表現するための改変だろう。

席順

 いいよね、この席順。
 山本の距離の詰めかたがおかしい童貞っぷりと、全く相手にされていない現実とがこの1枚でこれ以上なく伝わってくる。
 ちなみに原作から野島と桜子の位置が入れ替わっている。原作ではフキダシやコマの大きさの都合で、セリフのあるキャラを手前に配置していたようだ。

泡のないビール

 原作ではおいしそうな泡が立っていた1コマ。
 注いだ瞬間にはもっと泡が立っていたことだろう。液量からしてほとんど口をつけていないことも察せられる。話すことに必死で伊織も酒を飲むどころではなかったのだろうか。
 このカット以外にも、今話はよく見ると時間経過ごとに細かく泡の量が調整されている。こういうところ実にナベシン。

角度

 原作ではコップを180度ひっくり返して一気にぶっかけていたが、今話では90度程度に傾け、わざわざ時間をかけて少しずつ浴びせている。
 瞬間を切り取るマンガと時間の概念があるアニメという、メディアごとの特性の違いがよく意識された良改変。

オタ芸

 本来オールシッティングのライブでこれだけ自由にさせてもらえたなら、むしろ良かったんじゃないだろうか。

 オタ芸は目立ちたがり屋の承認欲求といった文脈で語られやすく、実際集団で客席の最前列に陣取ってパフォーマンスしがちなこともあって嫌われることが多い。それを考えると、最後列のカヤ様にしか見えない位置で黙々とひとり踊り狂っている無害っぷりは、いかにも耕平らしい絵面のように思える。

ナンパ対策

 原作では語られることがなかった、梓が具体的に何をしたのかの補完シーン。今期ってこういうのもやるのね。

 手前にちょうどいいビールジョッキを配置しておきながら、わざわざブランブラーンの位置から微妙にズラしているあたりに強いメッセージ性を感じる。

 アニメオリジナル描写の名手ナベシンを連れてきただけでなく、脚本も原作のセリフから細かく言いまわしを変えている箇所が無数にあり、地味ながら熱を込めて制作されたことが伝わってくるエピソード。
 前話から明らかに力の入り具合が違っていたので、てっきり長尺でカヤ様のライブシーンでもやるつもりなのかと思っていたんですが、まあ、それをやるならナベシンは呼ばないかー。

 今話のハイライトが伊織のビールかけにあることを深く理解し、前後の描写で伊織視点から見た耕平の人となりを脚本・コンテ両面でしっかりと描ききった、良い演出でした。

おっぱい

 「ああ・・・、もったいなかったなあ――」

 伊織たち一世一代のがんばり物語は不発に終わりました。2発3発どころか1発もできませんでした。

 一応フォローしておくと、どう見ても桜子たちにはマトモに相手されていなかったので気にしなくても大丈夫です。前半は耕平引換券、後半は耕平に仕返しするついでのサンドバッグ扱いでした。
 どうせ合宿したところでアッシー・メッシー(古語)として便利に使われたあげく、柔肌に触れることすら叶わず終わっていたことでしょう。ケバ子の合コンのほうがだいぶマシ。あっちは最初からその気がなかっただけで、哺乳類としての尊厳だけは対等に扱ってくれてましたし。

 「人が本気でやってることを邪魔すんじゃねえよ」

 伊織にしては珍しい行動でした。

 こう見えて伊織は割と古いタイプの主人公で、基本的に女性には手を出すことがありません。どんなに腹が立ってもです。
 まあ、相手が男性であっても殴っていい相手かどうかの区別くらいはつけるのですが、これが女性となると一律誰にも手を出さないんです。ケバ子のように遠慮しなくていい相手でも、千紗のように向こうから一方的に仕掛けてくる相手でも。
 そんな伊織が唯一女性相手に手ひどい侮辱を与えたのが、このエピソード。現時点では桜子相手のこの一度きりです。

 「で、伊織は中に入って何するの?」
 「ナンパです!」
 「伊織は本能に忠実だねえ」

 そもそも伊織たちが桜子たちに声をかけたのは、性欲のためでした。

 このままではライブの時間を短縮しなきゃいけないかもしれないという差し迫った鉄火場で、汗ひとつ垂らさずペチャクチャ喋ってるだけの、見るからにろくでもない女3人。もうこの第一印象だけで私だったら関わりあいたくないです。女子大だけあって設営スタッフのなかには他にも何人も女性が働いています。別にあえてこいつらを選ぶ理由なんてありません。
 しかし、幸いというかなんというか、彼女たちは耕平に興味を持っているようでした。伊織は考えます。耕平をエサにしたらこいつらを釣れるんじゃないかと。
 つまり、比較的難易度低めでヤれそうだったからターゲットに選んだだけですね。一発ヤる相手としか見ていません。桜子たちがした仕打ちも大概ですが、伊織たちも伊織たちでサイテーでした。

 いいおっぱいでした。

 恋愛対象としてどうなのかはさておき、少なくとも一発ヤるだけの相手としてなら、桜子たちのプロポーションは童貞にはもったいないくらい魅力的でした。
 ちなみに原作では野島たちが桜子たちの胸元を覗きこむシーンが2回ほどあるのですが、今話ではそれが無い代わり、隙あらばおっぱいをデカデカと全画面表示してきます。特にそういう話の流れじゃなくても堂々とおっぱいを映してきます。もうね、男どもが性欲でしか彼女たちを見ていないことがカメラ越しにひしひしと伝わってくるよね。バカを追体験できるよね。

 「ええ? アニメとゲーム?」「何それオタクっぽい」「ていうかさあ、そういうのってそろそろ卒業するべきじゃない?」「だよねえ」「耕平くんせっかく顔がいいんだからさあ」「もったいないよ」

 おそらくこのアニメを見ている視聴者も大半はアニメ好きな人でしょうから、彼女たちがオタクを蔑視していると知った時点でさらにイラッときたことでしょう。
 10代20代の大半がカジュアルにアニメを楽しんでいる時代です。今どきここまで露骨に見下してくる人のほうが珍しい。現実にはなかなかお目にかかれないレベルの、コッテコテにわかりやすい悪役ムーブ。

 (お。よく見たらここ背景だけ差し替えて何回も使い回してたのか。上手いな)

 しかし、彼女たちにはおっぱいがありました。
 3人寄れば6つの丘が並び立つ、立派な大山脈を拝むことができました。このナンパに成功すればオマケに2人か3人友達を呼んでもらえるそうです。犬とお呼びください。
 伊織たちはニッコニコでした。冷静に考えたらこんなうまい話があるものか。しかし、冷静に考えないようにしてもこんなうまい話が他にあるものか。童貞の悲しいサガ。肩を揉まされても、顔に落書きされても、何本ビールを奢らされても、こんなの全然屁でもありませんでした。むしろ合法的にボディタッチできて役得ですらありました。

 そこに冷水。

 「北原。俺の整理券を知らないか?」

 「そっちにないか探してくれないか?」

 「時間がない。頼む」

 おっぱいは耕平の大切な整理券を盗んでいました。
 それも、欲しくて盗んだわけではありませんでした。
 ただの嫌がらせ。自分よりもオタ活を優先した彼への腹いせ。カジュアルな復讐。下劣なオタクになら何をしても許されるだろうという傲慢な考え。

 伊織たちは最初からわかっていたはずでした。こいつらがろくでもない人間だということくらい。それでも一発ヤれるなら目をつぶれると思っていました。おっぱいは全てを許す。そう信じていました。
 自分たちもろくでもないバカです。耕平のオタク趣味のことは自分たちだってよく笑っています。まさかドドド童貞じゃあるまいし、品行方正な清純派ヒロインじゃないと勃たないなんてこともありません。清濁合わせ持つ。それはそれ、これはこれ。ちゃんと切り分けられてこそ大人の男というもの。

 だけど。

 「さっきムカついたから盗ったんだけど、結果的によかったよねー。いいかげん卒業しなきゃでしょ、ああいうの。これで少しは懲りてくれるんじゃない?」

 目の前に並ぶおっぱいが、急に醜悪なものに見えてきました。

ぼくら(童貞)はみんな(必死に)生きている

 「ちょ、ちょっと! 桜子に何してくれてんのよ!」
 「なんで急にキレてんの!?」
 「さっき自分たちも気持ち悪いって言ってたじゃない!」

 まだ、伝わっていないようです。

 「それがどうした」
 「他人の趣味にどんな感想を抱いても別に自由だろ」
 「けどな。人が本気でやってることを邪魔すんじゃねえよ」

 身勝手な気まぐれといわれたら反論のしようもありません。
 最初、伊織たちはおっぱいに目がくらんで、そのあたりには目をつぶろうとしていました。
 あいつら周りが声優ライブごときのためにあくせく働いているなか、3人だけでヘラヘラ笑ってたんだぜ? わかりきってた話じゃん。
 ご同類といえばご同類。けれど、ひとつだけ決定的な違いがありました。

 譲れない一線がそこにありました。

 「放さねえ、絶対に!」
 「バカな行動って罵られても構わない!」
 「俺たちの友情の名のもとに!」
 「お前たちだけで行かせねえ!!!!!」

 彼らはいつも必死でした。

 その一点において、わかるのです。耕平の気持ちが。
 オタク趣味の何がいいのかなんて伊織たちにもさっぱりわかりません。そこは桜子たちと同じ。
 ですが、童貞を卒業するために必死になる気持ちと、二次元の妹キャラや声優ライブのために人生を捧げることに、いかほどの違いがあるというのでしょうか?

 桜子たちは耕平が子どもじみた趣味のために必死になることをバカにしています。
 必死になることの何が悪い?

 「あいつはあれでいいんだよ」

 伊織は汚いプリキュアです。
 一日の大半を全裸で過ごし、バカみたいに大量の酒をかっくらって、しょうもない飲み会ゲームに全力で挑み、酔い潰れて汚い顔で眠ります。
 どこに出しても恥ずかしい男。カレシだと言っただけで男の趣味を疑われる存在。ニチアサに出したら放送事故です。
 けれど、みんなの大切な日常を守るヒーローであることに代わりはありません。

 何気ない日常。

 くだらない努力。

 どうせ叶わない夢に、報われることのない徒労感。

 ハタから見たらバカとしか思えない滑稽な姿。

 だってしょうがないじゃん。お前らにカッコつけたくて努力してるんじゃない。
 自分のやりたいことのために努力しているんだから。

 「あのとおり気持ちの悪いやつでして」
 「理解できない他人の趣味ってそう見えちゃうものなのかもね」
 「たしかに。けど、だからこそ思うんですよ。あいつってすごいやつだなって」
 「気持ち悪いって言ってたくせに」
 「だからこそです。だってそこまで言われてもなお好きで好きで譲れないものがあるんですよ? それって、本当にすごいことじゃないですか」

 それは要するに、ただリスペクトをしているだけに過ぎません。
 現実世界にはみんなの日常を守ってくれるスーパーヒーローなんて存在しなくて、魔法だかなんだかよくわからない超常的なミラクルエナジーも誰も持っていません。

 けれど。それでも。現実として日常は守られるのです。伊織のような平凡な人の思いやりで。
 誰かの大切な日常が。報われない努力の価値が。バカがバカのままでいられるための、暖かい現実が。
 バカがバカなりに引いた譲れない一線ひとつで、守られている誰かの幸福が確かにあるのです。

 耕平にしろケバ子にしろ千紗にしろ、伊織の周りに集まる人はみんな何かしらに一生懸命な人たちです。
 梓も奈々華も時田も寿も、伊織が尊敬する人は全員大らかな気持ちで誰かの「好き」を応援してくれる先輩たちです。
 野島たちですら、童貞を捨てることに関してだけは並々ならぬ必死さを持ちあわせています。

 伊織を中心に、みんなが当たり前であってほしいと願う日常が守られていきます。いくつものリスペクトが広がっていきます。
 『ぐらんぶる』は第一(いや、酒が第一、裸が第二か?)に、そういうヒーローの物語。

 「伊織くんといえば、梓があの子を褒めてた理由が少しわかったよ。――その趣味自体は全然わかってもらえなくてもさ。夢中になってる自分を認めてもらえるのって、嬉しいよね」

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