ぐらんぶる Season 2 第7話感想 殺されかけても、恥をかかされても、おぞましいものを見ても、

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もし、みんなで潜るとき、伊織はバカだから、きっとお金がなくて、行けなくて。そしたら前みたいにさびしい思いを――。

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「シャルピー衝撃試験」

エピソードトラッカー

主人公:伊織

「曲を止めろ、千紗。さもなくば揉みしだく」

目標

 いつもどおりの日々を全力で楽しむ。

課題

 ちょいちょい命がけだったり尊厳をブチ壊されそうにはなるが、おおむねいつもどおりの日常であり、伊織には現状特に悩みや不満はなかった。

結末

【失敗】

 伊織自身はそこまで差し迫った金欠感を持っていたわけではないが、酔い潰れた千紗に命令されたため、新しくバイトを始めなければならなくなった。

心の変化

【ポジティブ】

 千紗に嫌がらせの意図や悪意は一切なかった。ただ、これからも伊織にPaBの仲間としてダイビングを楽しんでほしいから、急な出費があっても困らないようにという思いやりが口を突いた言葉だった。
 シャルピー衝撃実験や黒歴史ソング開陳といった尊厳の危機においてすら平常運転だった伊織。それを唯一千紗の真心だけが動かすことができた。

キーキャラクター

千紗

 恋愛感情がなくともツンデレキャラは成立することを証明しつづける剛の者。「伊織への信頼と依存」「バカへの軽蔑」という二律背反だけで素直になりきれないキャラを維持している。バカ兄貴を心配する妹キャラだこれ。なんなら栞よりも妹らしいかもしれない。

ピックアップ

シャルピー衝撃試験

 材料の耐衝撃性(靱性)を定量的に計るための試験。試験片を破壊したらそのぶんハンマーが振り下ろされたときの位置エネルギーが消費される(=持ち上がるときの角度が減る)ため、これをもとに素材の靱性を計算することができる。
 つまり、この試験はゼロ度地点に固定された試験片さえ破壊できれば、別にそのあと90度近くも振り上げさせる必要はない。普通なら(1人目はさておき)あんなに股間を強打するほど勢いをつけなくてもいいはずだった。係数Nがあるから仕方ないね。

 「うむ。いつでも来たまえ。股間の手前1mmで止まる。私の計算の正確さをお目にかけよう!」

 θαの計算が本当に正確なら、股間の手前1mmじゃなくてゼロ度地点(=試験片を破壊した瞬間)で止まるのよ。

挿入歌『地球滅亡』

 ASOBI同盟の曲。WikipediaやSpotifyで検索してみてもこの曲は見つからない。つまり新曲!? これだけのために!?

挿入歌『いつかのBOKUのために』

 原作では伊織の机から見つかった楽譜をもとに伊織の父親が弾き語りした設定。アニメ版では伊織自ら歌唱している。わかりやすさ重視だろう。このヘニョヘニョしたギターなんていっちょ噛みした高校生ならでは。
 現実的に考えても、わざわざ楽譜なんて書かず自分で歌って録音したパターンのほうが多いんじゃなかろうか。残すよね、この手の黒歴史。

ケバ子の心のアルバム

 沖縄合宿のとき(1期第10話)とっくにモザイクだらけになってるやつ。

廃校宿泊

 農業体験や給食の提供があるなら管理人も常駐しているのでは・・・?
 しれっと校舎に血糊とかお札とかつけまくってたけども・・・。自前で校庭にキャンプファイヤー組んでたけども・・・。

使用済み

 自作オナホなんてものが流行ったのは20年以上昔の話だと思っていたが、まだやっている人もいるんだろうか?
 なお、大昔に有識者から聞いた話だと1回使っただけで裂けちゃう代物らしい(彼が見栄を張っていなければ)ので、さすがに「使用済み」の札はフェイクだと思われる。そもそもスリットは縦方向に入れるものだったと思う。

立てない

 原作だと完全に地面に座りこんでいるが、アニメ版ではしゃがみ体勢で耐えている。まあ、実際地面に膝はつけないよね。

それが日常

 「よし。次期教授候補筆頭のこの私、右代宮の講義だ。1分1秒噛みしめて受けたまえ。本日はシャルピー衝撃試験を行う!」

 唐突に現れてとんでもなく悪辣な実験を始めたやたらキャラの濃いこの新キャラは右代宮准教授。
 なんで突然こんな罰ゲームをしはじめたのかといえば、原作では講義中、伊織たちに缶ビールを開けて焼肉を焼くという舐め腐ったことをやられた復讐というそれなりの文脈があったのですが、まあそれはそれとしてこの准教授も最初から人間としてどうかしているので、前日譚を丸ごとカットしてもストーリー上何の問題もありません。他の受講生もいるのに4人しか実験に参加させていなかったり、その伊織たちが堂々と過去レポートをカンニングしても何も言わなかったり(おそらくそもそも実験を監督していない)するあたり、准教授の人間性が実によく表れていますね。

 現在105話まである原作のなかでも屈指の人気エピソードです。ぐらんぶる(掲載誌:good! アフタヌーン)読者は小学生か?ってみんな言うやつ。

 「機材、準備できました!」
 「測定準備OKです!」
 「よし。実験開始! 一同、英霊に敬礼!!」

 「北原。ここだけの話だが、実は俺はこの実験の過去レポートを持っている。計算書もこのとおり。ここに書いてあるとおりにやれば――」
 「無事に済むんだな!?」
 「ちなみに北原。この過去レポの評価はこうなっている」

 「もしかして」
 「実は山本のほうが足が長――」
 「俺から行こう!」

 「その結果にはな・・・」
 「係数Nをかける必要があるんだ」
 「係数Nだと?」
 「そうとも! 憎しみ係数Nってやつをなあ!」

 はい。いつもどおりですね。

 ハタから見ているぶんには割と洒落にならないことをしているようにしか見えないのですが、伊織たちはスピリタスをイッキ飲みするくらいの気軽さでさらっとこういうのをこなします。誰ひとり逃げるどころか、学務課にも警察にも通報しません。なんで?

 「やっぱ千紗ってどこか変わってるよな」
 「・・・そんなに歌のある曲が聞きたい?」

 ところ変わって、今度はPaBの1年生グループ。
 伊織と耕平という突出したバカがいるものの、他方で千紗とケバ子がそこそこ常識人なぶん、このメンツで固まると比較的落ち着いた空気が流れます。うん。男女比9:1を越えていそうな3年生組の際限ない狂乱騒ぎとの比較でなら。
 伊織は周りがフリさえ出さなければ意外と真人間ですし、耕平も伊織が絡んでこなければ淡々とひとりでボケつづけるだけなので、案外おとなしい瞬間もあるんですよね。このメンツだと女性陣のほうが状況を引っかきまわすことが多いくらい。

 というわけで。

 人体の構造上、こういうときは千紗のように外側から相手の腕を掴むより、自分の両腕を相手の腕の内側に差しこんで弾く動きのほうが力を込めやすいそうです。それでなくとも千紗は見るからに小柄で、力負けしているでしょうしね。
 これで揉みしだかれずに済んでいる時点で伊織もまだまだ本気じゃないってことでしょう。

10年後 20年後 まだ見ぬいつかのBOKUの為
眠れない夜は MIDNIGHT
探し出そう TOMORROW
いつかの いつかの BOKUの為に
10年後 20年後 まだ見ぬいつかのBOKUの為

 「耕平、拘束」
 「もうやっている」
 「放せえ!! でなけりゃいっそ殺せえ!!」

 リアクションを見た感じ、本人にとっては死ぬより辛い辱めだったようですが、それでも車を降りるころには全部許しているあたりがマジ伊織。

 「肝試し。屋上まで来ること。尚、この企画終了まで全員酒を断っている」

 最後にPaB3年生と合流しての肝試し。ちなみにPaBには2年生がいないそうです。
 1年生組の倍以上メンバーがいるのですが、よっぽどウマが合うのかお互いの存在が何の牽制にもなりません。むしろ全員、バカテンションが相互作用で際限なく助長されあっています。
 今話の肝試し、酒が絡んでいないせいなのか時田・寿以外を中心に企画されたのか、ふざけかたの方向性がいつもと若干異なる気がするんですよね。ネットの住人のセンスというか。下ネタの対象年齢が小学生から中学生に引き上げられているというか。若干ノリが違っても全力で悪ふざけすること自体は変わらないあたり本当に仲よさそう。

 「ぎゃー! やめろお!! そんな吊るしかたをしたら首が痛むだろう! フィギュアは繊細なんだぞ。あんな扱いをしたら・・・」

 「どうせこのあたりで――」
 「やっぱりな」
 「この程度のことじゃ・・・」
 「(使用済み)」

 「アレが本物の幽霊なら問題ない。だが偽物だった場合アレの中身は――」
 「近寄るな! こ、この際、女なら幽霊でも・・・!」
 「いやああああ!!」

 普段とはひと味違った、的確に伊織と耕平が嫌がる要素を的確に盛り込んだアトラクション群。見ているこっちの感覚だとシャルピー衝撃試験や黒歴史開陳よりよっぽどマシな気がするんですが、伊織たちの追い詰められた表情はなんだかんだこれが一番だった気がします。
 どんだけ後輩への理解が深いんだ、こいつら。

 これが、伊織の日常。
 絡むメンツごとに三者三様ろくでもない目に遭いますが、なんか意外と平然としています。こういうのがイヤになって逃げだそうとしたり、いいかげん反省して真っ当に生きようと思ったりすることはありません。

北風と太陽

 「たく。こうして介抱してんだから少しは感謝しろよな」
 「しない! する気ない!」
 「なんでだよ」
 「伊織には貸しがあるから!」

 日頃から理不尽な目に遭い慣れている伊織です。酔っ払いの戯言など屁でもありません。まあもっとも、貸しがあることに関しては事実なので何も言えませんが。千紗にしては珍しい絡みかたということで。

 さて。ところがここで千紗が言うのです。

 「はあ・・・。何をして返せばいい?」
 「そんなのもわからないの? いい? これから伊織はね、バイト始めてお金貯めるの」

 つながりが見えない不思議な発言。
 一応、借りを現金で返せという意味かと聞いてみましたが、さすがにそういうわけではないようです。でも、だったらどうして貯金するのが千紗への借りを返すことにつながるのかよくわかりません。

 続く言葉で真意が明らかになります。

 「・・・もし、みんなで潜るとき、伊織はバカだから、きっとお金がなくて、行けなくて。そしたら前みたいにさびしい思いを――」

 それは想像していたよりもずっと優しい言葉でした。

 以前、PaBで沖縄合宿に行ったとき、伊織だけオープンウォーターダイバーライセンスを取り損ねて一緒に潜ることができなかった、という出来事がありました。そのときのことを踏まえて言っているようです。

 「あのね、伊織。みんなと潜れないのは残念だけど、これが最後ってわけじゃないから。明日は体験でも行ける浅めのスポットにも行くらしいし。・・・そ、そうそう! この前のバイトで水族館の入場券もらったから、よかったら――」(1期第12話)

 その日の伊織は別行動。たまたま同じ船に乗り合わせた団体客の体験ダイビングに混ぜてもらって、休憩時間だけPaBと合流するかたちでした。海中で撮った写真を見せあい、楽しそうに感動を語りあう仲間たち。
 千紗の目にはなんだか伊織が落ちこんでいるように見えたようです。もっとも、実際のところはただ船酔いでテンションが下がっていただけなんですが。

 みんなと一緒に潜ることができず、残念な気持ちがあったのは本当です。ただ、伊織は伊織なりに沖縄の海を楽しんでいましたし、移動や休憩の間だけでもPaBの仲間たちと同じ体験ができたことにも満足もしていました。
 船酔いさえなければそんな気を使われずに済んだであろう程度には、態度に表れるほどでもない、ほんのささやかな心残りでしかありませんでした。

 だからこれは完全に千紗の空回り。取り越し苦労。
 ただ、嬉しくはありました。
 いつもそっけない千紗がこれほど本気で心配してくれたこと。人づきあいはあまり得意なほうじゃないのに、精一杯、拙い言葉で励まそうとしてくれたこと。

 「・・・お節介なやつだな。まったく」

 あのときちゃんと説明したはずなのに、彼女はまだ気に病んでいたようです。
 海のことが大好きで、みんなにも海を好きになってほしくて、だから、なんだかんだいってもこちらのことを気にかけてくれる、不器用な妹分。

 伊織がちゃんとダイビングを楽しむことが、千紗にとっては貸しを返してもらうことになるんだそうです。
 伊織が自分の楽しみのためにがんばることが、千紗にとっても喜びになるんだそうです。
 なんて優しい子なんでしょうか。

 ――先日、伊織は青女祭で性悪女のグループにひどく腹を立てました。
 いつもなら自分が殺されかけても次の瞬間にはケロッとしているくせに、耕平が楽しみにしていた声優ライブの整理券を盗んで笑っている彼女たちを見て、許せないという思いを抱きました。

 あいつはあれでいいんだよ。
 好きで好きで譲れないものがあるっていうことは、本当にすごいことなんだ。

 伊織が激情を露わにする数少ない心の琴線。
 それと同じ色をした思いを、千紗もまた持ちあわせていたのでした。

 もし好きになってくれるなら、とことんまで楽しんでほしい。

 「あれ。今日伊織は用事?」
 「ええ。アルバイト始めたみたいなの」

 かくして、我らが日常の守り手・伊織は珍しくいつもの日常から逸脱します。

 殺されかけても動じない。恥をかかされても動かない。おおよそ思いつくかぎり最大級のおぞましさを目の当たりにしても踏みとどまる。
 だけど、千紗の命令ならしかたない。

 借りがあるから。一応はカノジョだから。妹みたいなものだから。それから、心の深いところでしっかりとつながった、同志でもあるから。
 そうすることで千紗が喜んでくれるなら。

 それが誰かの喜びにつながるというなら、ついでに自分も楽しい思いができるというなら、バイトだって何だって始めてやろうじゃないか。

 何かを新しく始めるということは、誰かと新しく出会うことであり、楽しいばかりとは限らない波乱に満ちた明日に足を踏み出すということでもあるのだけれど。
 そうするだけの動機を、今日、伊織は手に入れました。

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