キミとアイドルプリキュア 第35話感想 キミを理想のアイドルだと思う、私の理想。

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私、カイトさんに笑っていてほしい!

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「遊園地デートはとつぜんに!?」

大きな出来事

メインキャラクター:うた

目標

 遊園地デートを通して、自分がカイトのことをどう思っているのか考える。

課題

 本当はたまたまその場の流れでなんとなく一緒に遊園地に行くことになっただけの話なのだが、こころたちがデートだデートだと茶化してくる。おかげで自分まで意識してしまう。本当は自分自身が一番、カイトのことをどう思っているのかわかっていないというのに。

解決

 カイトはいい人なんだと思う。そもそも遊園地のチケットが手に入ったのもとっさに蓮じいさんを助けた結果だし、アイドルとしてファンサするだけでなく、プライベートでもいつでもどこでもみんなに親切にしている。みんなをキラッキランランにすることが本当に好きみたいだ。
 一方で、この人はレジェンドアイドルなせいでどこにいても目立ちすぎてしまうし、何やら打ち明けられない悩みまで抱えているようだ。
 レジェンドアイドルであることはこの人に本懐を遂げる力を与えてくれている一方で、同時にこの人のやりたいことを妨げる障害にもなってしまっている。

 うたは、カイトが何の気兼ねもなくみんなを笑顔にできるようになってほしいと思った。そのために自分に何か手伝えることがあれば、と。

バトル

 男の子を素体としたコーヒーカップ型ダークランダー。

苦戦

 遊園地のコーヒーカップそのまま、激しく回転する攻撃をしてくる。なかに閉じこめられたうたの目が回ってしまった。

勝利

 捕まったうたをメロロンが助け、ダークランダーはプリルンがダウンさせてくれたおかげで、うたはダークランダーを浄化することができた。

コイバナ

 「そんなことより。うたちゃんってカイトさんのことどう思ってるの?」
 「そ・・・、そんなのわからないよ」
 「じゃあ、嫌いなんですか?」
 「嫌いじゃない!」
 「じゃあ、好き?」
 「すすす、好きとかじゃ――」

 カッコいい人だとは思います。
 話しかけられるとドキドキします。
 笑顔もすごいステキです。

 考えかたが立派です。
 同じアイドルとして、見習うべきところもたくさんあります。
 憧れの人であることは間違いないです。

 ただ、これが恋かというと、よくわからなくて。

 自分がたまたま田中が持って来た遊園地の雑誌を手に握っていて、カイトがたまたま断りづらいかたちで遊園地のチケットを手に入れてしまって。今回のデートはそういう、本当にただの偶然。別に自分がデートをしたくてこうなったわけじゃ絶対ないですし、カイトのほうも同じ考えだったはずです。なし崩し、なし崩し。

 「相手は自分のことをどう思っているんだろう・・・?」みたいな方面に思考が進まないのが、『わんだふるぷりきゅあ』でくっついた犬飼いろは・兎山悟カップルとの最大の違いですね。
 今話でうたが考えていたのは、あくまで自分が相手のことをどう思っているのかでした。今回の遊園地デートがシチュエーションの割に、意外と最後まで健全な雰囲気で、なんとなくキュンキュンなワクワク感が少なかったのは、うたの関心が自分の気持ちに集中していたからなんだと思います。
 一昔前の少女マンガだったなら、あるいは『ふたりはプリキュア』の美墨なぎさや『Yes! プリキュア5』の夢原のぞみだったなら、たとえまだ自分の気持ちに整理がついていなかったとしても、相手がどう思っているかにより強い興味を抱いていたことでしょう。好きかどうか以前に、相手のことが気になってしかたがないというところから始まる恋は少女マンガのド定番。一番キュンキュンするやつです。
 ・・・もっとも、最近は他の少女マンガでも、相手より自分の気持ちへの興味のほうが強い主人公はそう珍しくなくなっているのですが。なんというか、こういうの、時代ってやつなんでしょうね。数ヶ月前に暴力系ヒロインについて考察してみたときも、時代性って案外アニメの価値観に影響を及ぼしているよなあってしみじみ感じたものです。

 よもやま話はほどほどにしておくとして。いずれにせよつまり、今話は遊園地デートを通してうたが自分自身の価値観を内省していくお話です。
 うたにとってカイトがどういう人物であるかという観点は、そのまま、うたが自分はどういう人間でありたいのかを考察するための叩き台になっています。

 カイトは気遣い上手で大人な男の人でした。
 向こうからどんどん話題を振ってくれますし、それでいてこっちがお気に入りのエピソードを披露すると、全部面白そうに共感してくれます。子どものころを思いだして懐かしんでいたらわざとヤンチャなことをして楽しませてくれたり、そうじゃないときはキリッと表情を一変させて、子どもの自分ではまだ上手にできないことをさらっとカッコよくやってみせたりします。こっちが自然体で何をしていても、それに合わせて一緒に楽しんでくれるんです。

 ああ、やっぱりいい人だなあって改めて、もう何回目かわからないくらい、改めて思います。

 たまたま目の前を通りがかった男の子の帽子を、風が遠くに飛ばしてしまいました。
 もちろんカイトはそれを捕まえにいきます。自分の被っている帽子が地面に落ちたって気にもかけません。そのまま微笑んで男の子に帽子を返してあげます。すっごい親切。

 ただ、カイトの帽子は本来変装のために被っているものです。これが脱げた姿を不用意に周りの人に晒してしまうと、この人はあっという間にファンに囲まれ、もみくちゃにされてしまうことでしょう。
 そして、この人はたとえそんなことになっても怒ったりせず、嘆いたりせず、いつもの爽やかな笑顔で応対するに違いありません。響カイトは365日24時間、いつでも響カイトなんですから。

 でも。

 「ていうか、カイトさんここ来てていいんですか? 活動再開して忙しいんじゃ」
 「だからだよ。おいしいハーブティー飲んでゆっくりしたいときだってある。ここならそういう時間が持てるから」(第23話)

 でも、そんな身も心もレジェンドアイドルなこの人だって、本当は「響カイト」じゃない時間を必要としていることを、うたは知っています。
 一度ついラジオで喫茶グリッターのことを話しちゃって、そのときはお店の迷惑になっていないか心配したり、自分のファンでごった返している店内の様子を見てハーブティーを諦めたりしている様を、うたは見ています。
 今話の冒頭で蓮じいさんがうっかりバラしてしまったときなんか、カイト本人よりうたのほうが慌てたくらいです。

 なんだかな。
 難しいなって、うたは少し思うのです。

 「カイトさん。これ、誰かわかりますか?」
 「キュアアイドルだよね。うたちゃん、ファンなの?」

 うたの場合、自分は変身するまでキュアアイドルと別人です。誰もその正体に気付きません。必然、アイドルしている時間とは別に、しっかりプライベートの時間が確保できています。

 「そうなんだ。俺も注目してる。大勢を笑顔にしてて、すごいよね」

 「うわあ、カイトさんが褒めてくれた! カイトさんこそみんなを笑顔にしてるのに――!」
 「ん? 何考えてるの?」
 「え。ええっと、カイトさんはやっぱりすごいなって。ステージじゃないところだって、誰でもキラッキランランにしちゃうから」

 本当に、心からすごいと思っています。尊敬しています。
 自分もいつか、あんなふうになれたらいいなと思っています。

 ――でも。

 だったらどうして、誰よりもステキなレジェンドアイドルで、みんなを笑顔にしたいという自分の夢を現実にできているこの人が、365日24時間いつも笑顔ばかりではいられないんだろう?

 憧れの人で、つまり自分もいつか辿りつくべき到達点だと思っているからこそ、どうしてもそこが心に引っかかるのです。

トリプルデート

 「うた先輩とカイトさん、なな先輩とメロロン、プリルンと私の、トリプルデートです!」

 いやあ、行き先がバラバラなのは普通トリプルデートって言わないんじゃないかなあ。

 うたがカイトとデートしているあいだ、こころたちもこころたちでデートを楽しんでいました。
 どのカップルも同性同士、ただの友達としてのお出かけではあります。でもまあ、うたも相手との関係ではなく自分自身のことばかり考えていて、くっつくとかくっつかないとか以前の話みたいですから、性別なんてきっと大した問題じゃないでしょう。

 「こうしてみるとまるで――。キュアアイドル、キュアウインク、キュアキッス!」
 「心キュンキュンしてます!」
 「でも、こうなったらキュアキュンキュンとキュアズキューンも見つけて、アイドルプリキュアを揃えよう!」

 こころとプリルンは定番の海辺デートに出かけました。
 最初は砂のお城をつくったり、ビーチバレーやビーチフラッグをしたり、2人で楽しめることをいろいろ考えてきていました。
 でも、たまたまプリキュアカラーの貝殻を見つけて、興味はあっという間にそっち方面へ。

 この2人の場合、いかにもふたりきりって感じの時間を楽しむよりも、いつもどおりアイドルプリキュアの推し活を楽しむこと、みんな一緒にいるときのことを考えているほうが性格に合っていたようです。

 「ありがとう、つきあってくれて。・・・なんでそんなにご機嫌なの?」
 「メロロンがうれしいときは、私もうれしいの。友達ってそういうものでしょ? ――どうしたの?」
 「メロロンがうれしいから、なながもっとうれしくなって、そしたらメロロンももっとうれしくなったのメロ!」

 一方、ななとメロロンは図書館デートだったようです。
 とはいえ今日図書館に用事があったのはメロロンだけ。ななは実質ただのつき添いです。それなのに妙に満足げな顔をしています。一緒にいて、うれしい気持ちを共有できることそのものが最高にうれしいんだとか。
 そういわれてみると、メロロンも たしかにその通りだと感じます。

 この2人の場合、こころたちとは反対に、誰かと深く親しく心を通わすことのほうが性格に合っているようでした。

 どちらのカップルも相手との関係を意識しているわけではありません。
 デートを通して再発見したのは、あくまで自分自身の気質です。そのあたりは今回うたがやっていることと何も変わりません。
 パートナーを叩き台に使っているところまでまるっきり同じ。うたにとってのカイトはアイドルとしての理想の姿でしたが、こころたちにとってのそれぞれのパートナーは自分と似たもの同士。現在の自分とそっくりな姿。違うところがあったとしても、そのくらいのものでしょう。

 大事なのは、デートでは自分を外部化して見つめなおせるということです。
 キミと私、私とキミ。今回プリキュアの5人がやったことはあくまで自分自身についての理解を深めることだったわけですが、そういう営みですら誰かと一緒にやることで新たな発見が見つかることもあるのです。
 結局のところお互いに「好き」とか「見ていて元気が出る」とかって気持ちを交換しているだけに過ぎないアイドルとファンの関係性が、お互い交換しあっているうち、その暖かい気持ちが何倍にも増幅されていくんだっていうのと同じことです。

 感じて、You and I キズナリボン。

理想のアイドル

「♪ カイトさんなら笑顔に 絶対できるよ 絶対! アイドル! ステキな人だから!」

 だから、応援せずにはいられませんでした。

 この人はもしかしたら、未来の自分でもあるかもしれないから。

 暗い顔なんてしてほしくありません。未来はバラ色だからこそ輝くんです。今よりもっと、いっぱい、一生懸命がんばっちゃおうって思えるのは、その先に幸せな未来が待っていると信じられるからこそです。
 カイトにどんな事情があるのかは知りません。この人の笑顔が陰るなんて、きっとよほど難しい問題を抱えているんでしょう。・・・でも。いつもみんなを笑顔にしていて尊敬するこのレジェンドアイドルに、笑顔になれない瞬間があるだなんて、そんなのうたはイヤでした。

 なんとしても目の前のこの人に笑顔でいてもらえないと、うた自身が困っちゃうのです。

 だって。気付いてしまったんです。

 いつも、どんなときでも見せてくれるこの人の笑顔。
 いつ見ても同じ笑顔。

 この人の笑顔は、必ずしもいつも自分自身が楽しくて笑っているとは限らないんだ。
 ファンのため、あるいは歳の離れた妹みたいな子のためにも、努めてみんなを喜ばせる笑顔をつくれる人なんだ。

 イヤでした。

 アイドルとしてのその姿勢をうたは深く尊敬します。
 それでも。
 もし仮に、いつか自分がこの人と同じ立場になるとしたら。自分もいつかこんな笑顔をつくる日が来るのだとしたら。――そんなの、絶対にイヤでした。

 「♪ あっぷっぷ! かわいい赤ちゃん お顔を見せてね あっぷ ぷっぷ いい子 いい子」

 「キミの歌すごくいいね。“また会いたく”なりそう」(第4話)

 うたはまだ知りません。
 カイトが実は、うたに自分にはない特別なアイドルの才能を見出していることを。

 「サインを書くとき、黙って下ばかり見てたでしょ。目の前にファンがいるのにただサインを書いていた。ファンは君のことが好きだからそれでも喜んでくれると思うけど。・・・考えたほうがいいかもね、それでも“アイドル”って言えるのか」

 うれしそうだったね」
 「カイトさん――! そうなんです。キラッキランランになってくれて、私までキラッキランランになっちゃいました!」
 「キュアアイドル。・・・ここで何かあった?」(第23話)

 うたはまだ知りません。
 あの日、カイトがキュアアイドルの急成長に驚いた、その本当の理由を。

 多少人気があるだけでアイドルとしての意識に欠けた、どこにでもいる新人が、たった一日でカイト自身すら持ち合わせない才覚を現した驚き。
 ――喫茶グリッターの素朴な看板アイドルだけが持っていると思っていた、あの本物の笑顔の輝きを、なぜかキュアアイドルまで持っていたという衝撃。

 「あの。カイトさんは、誰でも笑顔にしてると思います! ・・・さっき、観覧車で、なんだか寂しそうだった気がして。気のせいかもしれないですけど」

 ああ、やっぱり。
 この子は自分には無いものを持っている。
 誰よりも成功した、レジェンドアイドルである自分にまでも、心から笑顔になってほしいと本気で願ってくれている。
 彼女はただの“ファン”ではなく、“アイドル”だ。アイドルの前ですらアイドルであろうとする、自分なんかとは違う本物の“アイドル”だ。

 アイドルとはファンに“また会いたくなる”と思ってもらえる存在であるべき。それがアイドルとしてのカイトの哲学です。
 そこに、カイト自身の喜びの有無は関係ありません。かといって何の楽しみもなくアイドルをしているわけではありませんが、それでも、カイトにとってアイドルとは、ファンに対して単方向的に推す喜びを提供してあげるための存在です。

 ・・・本当は、うたがカイトに見出しているような、うたにとっての理想のアイドルの姿とは違うんです。

 レジェンドアイドル・響カイトはそこまで立派じゃない。そこまですごくなんてない。
 それほどのことができる可能性を持つのは、カイトの知るかぎり、うただけ。あるいは加えて、キュアアイドルだけ。

 うたが「イヤだな」と感じたそのありようこそが、ありのままの響カイトの姿そのものなのです。本当は。

 「・・・ありがとう。元気出たよ。やっぱりいいね、うたちゃんの歌」

 自分が持ちえないまぶしい輝きに、今にも目が眩んでしまいそう。

 「あの! ええっと、その・・・。“また会え”ますか? “また会いたい”です!」

 だというのに、この子ときたら“また会いたくなる”レジェンドアイドル・響カイトを今でも慕ってくれているようです。

 まったく。敵いません。

 「ああ――。みんな。わかったよ。カイトさんへの気持ち。私、カイトさんに笑っていてほしい!」

 うたの前でいつも笑顔のこの人は、だけど、本当に笑ってくれているのかどうか、うたには区別がつきません。

 でも、どうか――。

 本当は、いつでも心から笑っていてほしいんです。

 本気でその願いを叶え、さらにそのことで自分自身までもが笑顔になれるアイドルがいるとしたら――。そのときはもはや、うたこそがレジェンドアイドルを超えた理想の“アイドル”。

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    コメント

    1. ピンク より:

      カイトはどうやら友達を大事にする人にも関わらず、いつも1人なのが前々から気になってましたけど……何やら訳ありだったようで。

      ただ私にしてみれば、今のところカイトをひとりぼっちにしてまで嫌いになる理由が浮かばないんですよね。
      アイドルになってほしくなかったか、あるいは出世しまくる親友の姿がプレッシャーにでもなったか。あそこまで突き抜けられると、最早どうでもよくなりそうなもんですが。

      • 疲ぃ より:

         第4話で「ニューヨークに行くまではいつも秘密の場所で空に歌を聞かせていた」と言っているので、カイト自身は親友のことを死んだと思っているっぽいんですよね。
         そのうえで第23話では親友の「お前の歌、好きだよ」という言葉をきっかけにアイドルを目指したみたいなことを語っていて、今回ジョギも遊園地に苦い記憶を持っているような発言がありました。
         ベタな考えだと、カイトが予想以上に売れっ子になってしまったから、昔からの親友のジョギが嫉妬してしまったってところでしょうか? ジョギが勝手にアイドル事務所に応募したみたいな話が前提にあって、「あのとき自分が応募しなければ・・・」みたいな行き場のない思いも抱えているのかもしれません。

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