ドキドキ!プリキュアを観る。第5話

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問:握手をするためには何が必要ですか?

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いざキュアソードのもとへ

 ありすからもたらされた手がかりにより、キュアソードの正体がアイドル・剣崎真琴だと当たりをつけるマナたち。さっそく真琴に会いにテレビ局を訪れますが、いつの間にかマナの姿が消えています。

 あれやこれやの現実的な障害を踏み砕いて物語を滞りなく走らせる四葉財閥驚異のマネーパワー。私服が毎日同じでも茶器は数パターンあるのもマネーパワー。でもこの口が狭くて背の高いカップは紅茶よりもコーヒー向きな気がしますマネーパワー。

 「きっとマナちゃんがなんとかしてくれますわ」 自分にできる以上のことではすぐマナに頼ってしまうありすと「ま、マナ!? マナー!」 マナに気をとられて周囲に目を向けられない六花。プリキュアに変身できたからといって己の弱さまで克服できたわけではありません。彼女たちはまだ一歩目を踏みだしただけ。成長するための試練はまだ始まってもいません。
 それゆえに、ちょっとしたヤケドをしてしまう子がひとり。

差しのべた手のひらの向こう側

 一方、真琴は楽屋でひとり張り詰めた表情をしていました。彼女には何か大切な目的があるようです。「疲れてる暇なんてないのよ」 そう自分に言い聞かせます。
 そこへ不意に訪れるマナ。「私、キュアハートです。私の仲間になってください!」 プリキュア同士のつもりで気安く自分の気持ちをまくし立てますが、真琴はキュアソードであることを認めず、どころかプロのアイドルとしてマナの身勝手な行動を厳しく責めます。

 剣崎真琴というキャラクターは心を閉ざした姿から語られはじめます。ひとりでジコチューと戦い、マナとの握手を拒否し、パートナーのダビィにすら弱音を吐きません。彼女は敗北と喪失を経験した亡命者です。
 「私の歌を待ってくれている人のためだもの」 この時点ではまだ明かされていないことですが、彼女が歌を届けたい相手はファンだけではありません。行方不明のアン王女を探すためだからこそ彼女は歌以外の仕事にも精力的でいられます。ファンのことは「みんな」や「ファンの人たち」と言い表す彼女にとって「待ってくれている人」という特別なひとりはとても大切な心の支え。彼女自身がそのことを忘れない限り、彼女は強い意志を持って生き続けることができるでしょう。保護者役のダビィもとりあえずは一安心です。過去に縛られているようなもので多少不健全ではありますが・・・。
 「でも、あなたへの熱意は感じたわ」 大丈夫。彼女の手を引こうと一生懸命な子がいてくれるのですから。

差しのべた手のひらのこっち側

 楽屋を出たマナたちは反省会。「仲良くなるには、ちゃんと相手の気持ちをわかろうとしないとダメなんだ」 大切なことを忘れていました。改めて真琴の歌を聴いてみると、その歌には大切な願いが込められていることがわかります。「あなたにもそういうの、ない?」 マネージャーの言葉と真琴の歌が、マナの心に強く響きます。

 さて。やらかしちゃった側のお話。
 失敗したから、反省したからといって、人はまるきり別人にはなれません。完璧なように見えるマナとて、ときには幼い頃に犯した失敗を繰り返します。
 前話で幼い頃のマナが男の子たちから攻撃されたのは、彼女が自分の正義を彼らに押しつけすぎたためでした。だからマナは何につけてもまず友達になることを覚え、悩みや問題点を共有しようとする態度を身につけました。第1話を見る限りではそれで彼女の問題は解決したかのように見えます。
 けれど。「ウザい」「出しゃばり」「おせっかい」「目立ちたがり」 幼い頃にぶつけられた中傷の言葉は、実は今のマナにもそっくり当てはめることができます。昔のマナと今のマナは連続しています。人は別人にはなれません。
 今回マナが犯した失敗はこれによるもの。相手の気持ちをわかろうとしなかった。一方的に自分の気持ちだけまくし立てた。それは「よってたかって女子をからかうなんて最低よ!」と自分の正義を振りかざしていたころとなにが違うでしょうか。
 こうなると「手と手をつなげばお友達」以前の問題です。これまでのように困っている人相手なら相手の気持ちなんて考えるまでもありませんでした。なにせ「困っている」気持ちはわかっているんですから。けれど真琴はまだマナの前で困っているそぶりを見せていません。ならどうすれば相手の気持ちをわかることができるか。それは、相手が大切にしていることを知って、共感することです。

 幸いなことに真琴は歌という形で自分の大切な願いを発信しています。「自分の歌を聴いてくれた人が笑顔になってくれること」 楽屋ではアン王女を案じて険しい顔をしていましたが、マナに見せたアイドルとしての怒り、そして回想での楽しげな表情を見るに、これもまた彼女の本心だとわかります。実は本人はそのあたりの自覚が薄いのですが、それはまた後のお話。
 「あなたにもそういうの、ない?」マネージャーことダビィは、マナにこれに共鳴するような強い願いを持っているか尋ねます。共感するにも自分の中に同じだけ強い思いが必要です。人は自分の経験に照らし合わせて他人を推し測ります。感動したことがない人は他人の感動を理解できません。
 そうしてマナは真琴の気持ちの一端を理解しました。ファンとして憧れていただけだった思いが、大切な願いを持つ同士としての敬意に変わります。先ほどは届かなかった手のひらが少しだけ向こうへ。

それでも差しのべつづける手のひら

 真琴の収録現場にジコチューの怪物が現れます。怪物はプリキュアを圧倒して真琴へ襲いかかりますが、間一髪のところでキュアハートが食い止めます。「ここはまこぴーの大事なステージなんだから!」 そしてハートの思いに呼応するかのように現れるキュアソード。彼女はあっという間に怪物を浄化してまた去っていきます。
 数日後、マナは真琴の握手会に来ていました。マナはまず先日の非礼を謝り、そして自分の大切な願いに気がついたことを伝えます。それは「みんなの笑顔を守ること」。マナの差しのべた手のひらは今度こそ握りかえされるのでした。

 プリキュアの戦闘シーンは大抵その回のまとめとして機能しているので、私のような視点から感想を書こうとすると、実はあんまり書くことがありません。星ジコチューのキャラの濃さとか、回転攻撃の省略作画の妙とか、ハッタリの効いたパースの取り方とか、見所はたくさんあるんですけどね。そこらへんまで全部語りつくすには筆力が足りません。
 キュアハートが真琴の「みんなが笑顔になる歌を届ける」ことを守ろうとするのはこれまでの流れからすると自然なことですが、その気持ちが真琴にまで伝わるのはここがはじめて。だから真琴はキュアソードとして助太刀に入り、去り際の言葉も第2話から比べるとずいぶん刺々しさがなくなっているわけですが、さりとて今度はハートの方に握手を求める理由がありません。一方的な気持ちの押しつけは反省したばかり、そして謎めくキュアソードの気持ちを理解するためにはまだきっかけがつかめません。少し臆病になっているともいえるかもしれません。ハートがまごついている間にソードは姿を消してしまいます。今はまだお互いを知り合うための時間が必要です。

 一方で真琴になら握手をしてほしい理由があります。彼女が歌に込めている大切な願いを知りました。そしてそれをきっかけに自分の大切な願いにも気がつきました。その報告。あなたには何のことかわからないかもしれないけれど、私はあなたに感謝しているし、だからあなたが大好き。そんな素直な気持ちをあなたにまっすぐ伝えたい。
 結局は一方的に気持ちを打ち明けたにすぎません。楽屋に突撃したマナと今のマナは連続していて、生来の性質は変えられません。けれど今度は真琴を理解しようとする気持ちと、大切な願いを持つ人への敬意が込められています。誰かのことを思う気持ち、愛。
 そんなまっすぐな彼女だから、今度は真琴にもマナのステキさが伝わります。気になる相手。もしかしたら友達になれるかもしれない。真琴自身はまだ自覚していませんが、そんな気持ちが彼女の心に芽吹きます。ダビィの本願成就。だから今は、ふたりの仲をつなぎ止めるために手のひらをつなぎあいましょう。

 こうして猪突猛進系愛の伝道者、相田マナは自身のスタンスを固めます。好き好き大好きととにかく愛を表明して、相手の愛をも引きだしていくスタイル。当時の視聴者をして「マナこそジコチュー」と評されたのはあながち間違いではなく、けれどその言動には今回得た「相手の気持ちをわかろうと」する思いが確かに息づいています。
 彼女が手を差しのべるとき、それは誰かが愛を求めているときであり、そして愛に満ちた彼女の手のひらだからこそ、誰もがその手を握りかえしたくなるのです。果てしなく続いてくラブリンク。今はまだその手が届く範囲は狭く、いくつかの失敗をまた繰り返しもしますが、相田マナはこれからも「みんなの笑顔を守るため」手のひらを差しのべていきます。

 あー・・・、ようやっとこのエピソードを自分の中で消化できた気がするー。

答:相手の気持ちをわかろうとする思い、そして相手にも自分を知ってもらうための願い。

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