魔法つかいプリキュア!第9話感想 自信と絆、魔法つかいにとって大切なこと。

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もうひとりでも、魔法うまく使えるようになったと思ったんだけどな・・・。

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(主観的)あらすじ

 補習最後の課題はリズ先生と戦って勝つこと。今までの補習でなにを学んできたかを試す日がやってきました。自信を身につけたジュン、ケイ、エミリーの3人は勇ましくチームワークで立ち向かいます。一方みらいはひとりで先走りすぎ、リコに至ってはみらいと別れることを思ってやる気を失っています。そう、今日の授業が終わればみらいはナシマホウ界へ帰ってしまうのです。
 ジュンたち3人があと一歩及ばず退場し、みらいとリコも墜落したとき、リコはみらいにどうしてやる気になっているのか問います。その答えは「立派な魔法つかいになるのがリコの夢。だから合格しなきゃ!」 みらいは別れの寂しさをこらえてリコのために頑張っていたのです。お互いの絆を確認しあい、心をひとつにするふたり。リズ先生との、それから不意に襲いかかってきたヨクバールとの戦いも、かけがえのない絆で結ばれたふたりなら乗り越えられます。けれどその戦いは、ふたりがお互いをどれだけ分かちがたく思っているかを改めて実感させるのでした。
 そしてついに訪れる別れのとき。「別れはもう済ませましたから」「平気だよ。また遊びに来ればいいんだし」 それぞれに強がってみせるふたりですが、それでも自分の悲しみはごまかせません。
 けれど大丈夫、彼女たちの運命は次の物語を用意していました。リコはナシマホウ界へ向かうみらいを追いかけます。次のリンクルストーンがナシマホウ界にあるというなら、またふたりで一緒にいることができるからです。ふたりの絆の物語はナシマホウ界へと舞台を移します。

 序章総まとめ回。紙の蝶、魔法のポット、水を操る魔法、閉じたつぼみ(貝)、それからほうきと記念写真、キーアイテムも総ざらいの補習シリーズ集大成ですね。
 深く結びついたふたりの絆の力はこのうえなく証明され、物語は次のステージへ。直近の柴田P三部作では「離れていても、離れはしない」という、自立心と共存した強い絆の姿を描いていましたが、今年のプリキュアはどういう着地をするのでしょうか。
 物語の主線がみらいとリコの成長を描く一方で、第7話のジュン、第8話のエミリーに引き続き、今回はケイをクローズアップ。あくまで脇役としての立ち位置ですが、それぞれにそれぞれの物語を付加されて、いよいよ物語は重層的、立体的な構造を持つ用意を調えました。もちろん実際にそうなるかは今後の脚本の指向性次第ですが。

 それにしてもカタツムリニアの「カタ・・・カタ・・・」は酷い。あんなの笑わずにはいられないじゃないですかー。

自信

 みらいがケイのために描いた絵はTEACCHプログラムでよく用いられる教育手法ですね。

 ピクチャーコミュニケーションシンボルを用いた生活指導の典型例です。元々は言語コミュニケーションが困難な発達障害者向けの教育思想なのですが、近年は言語コミュニケーションが困難という共通点から、保育園や幼稚園などでも幼児教育として積極的、自覚的に取り入れられていますね。
 教育のなにが素晴らしいって、なによりも第一に子どもに自分でできることを増やしてあげられることですよ。自分のことを自分でできる幸せ。それが多ければ多いほどに自分を信じられるようになります。自分はちゃんとできるんだって、その経験が増えるごとに自分を肯定する気持ちが強くなっていきます。大人になってもそれは変わりませんよね。できる仕事が増えるごとに、任せられる仕事が増えるごとに、自分をより健全に愛することができるようになります。仕事が増えすぎると今度は肉体的に無理が出ちゃうので適切に部下を配置していただきたいところですが。

 話が逸れましたが、つまりケイは忘れ物を克服することによって自信を得たのです。ハタから見たらささやかな成長に見えるかもしれませんが、彼女にとっては大きな成功体験。まして自覚していた最大の弱点なのですから、自分を卑下する材料が自分を肯定する材料にひっくり返った、その経験は私たちの想像を大きく超えてかけがえのないものだったことでしょう。
 前回描かれたエミリーのみらいたちへの憧れも、今回までに恐がりを克服する材料として昇華されていましたね。「私だっていつまでも弱虫のままじゃない!」 リズ先生に挑む彼女の瞳はとても力強いものでした。
 ジュンの問題は自信とはまた違ったところにあるようなのでそういった部分での成長はよく見えませんが、人魚たちとの交流を経て協調性を育んでいるようです。こちらの物語は次回以降の新展開に響いてくるのでしょうか。

 ケイたちが善戦する一方で、みらいとリコは奮いません。当然です。彼女たちはいつだってふたりで課題に取り組んできたのですから。ほかの3人がそれぞれ独自に自信を育んできた一方で、彼女たちだけはお互いがお互いを信頼していることを担保にして自信としてきたのですから。別れを前にした今、つまり担保としてきたものが失われようとしている今、彼女たちが自信を維持できるわけがありません。
 自信がなくて動けないリコ、リコのためという目的意識だけで無鉄砲を繰り返すみらい。補習がはじまる以前に逆戻りです。
 これまでリコの物語が中心だったので、リコはともかくみらいは一見何も変わっていないようにも見えますが、リコがそばにいることを前提として行動しているかどうかが大きな違いです。名前呼びイベントの第5話以降、みらいの行動力は「困ったことになっても誰かがなんとかしてくれる」から「いざとなったらリコが助けてくれる」へと、支えとなるものに対してより自覚的になっていました。
 今回帽子を落としかけたときのリコの助けを驚いた様子で見つめた彼女の表情は、最近の彼女からするとらしくない表情です。そばにリコがいることをすっかり忘れてひとりで課題に取り組んでいます。だからこそ周りから「早く帰りたいんだろ」と誤解されたり、後ろにいたリコを巻きこんで墜落したりするわけですね。

 そうであるなら、状況を改善する特効薬は気持ちをぶつけ合うことです。プリキュアの伝統として。「そんなに早く帰りたいの?これが終わったら私たち、お別れなのよ!?」「立派な魔法つかいになるのがリコの夢。だから合格しなきゃ!」「だから私、今は試験のことだけ考えようって。寂しいとか考えてちゃダメだって」
 たったそれだけでふたりはいつもの調子を取り戻すことができます。だってお互いのことを思いやっているのも同じ、お別れのことを考えるだけで体が震えてしまうのも同じ、本来ふたりの気持ちはいつもひとつに重なっているのですから。そういうふうにふたりの絆を育んできたのですから。それを思い出したなら、ふたりはいつもひとつです。

 自分を信じる自信を得たケイたちと違って、当初ふたりは力を発揮できませんでした。お互いの信頼を忘れてしまうと自信まで失われてしまうのが今のみらいたちの弱さ。けれどその形で成長してきた彼女たちだからこそ得られたものも確かに存在します。
 それが手と手をつなぐ、絆という奇跡の魔法。お互いを信頼しているという自信は、ひとりずつの自信を重ねるよりずっと大きな力を生み出すでしょう。単純にふたり分の力を重ねているからではなく、それぞれが自分ひとりよりもはるかに大きなものを信じているからです。
 ふたりがふたりを信じているなら、ふたりの力は1+1=2倍ではなくて2*2=4倍ですね。よかった。ケイたちの1+1+1=3倍に僅差で勝ってる。

魔法つかいにとって大切なこと

 「自信」と「絆」。思えばアイザック先生の授業はいつもいずれかを育むためのものでした。
 「行動力」「集中力」 それを発揮できるということはそれだけ自分の行動に自信を持てたということです。「相手に気持ちを届けること」「相手と打ち解けること」 絆を結ぶための大前提ですね。そういえば前回は「自分を信じて飛び出せば、きっとできますよ」と、より直接的なアドバイスをもしていました。魔法つかいにとってこのふたつはシームレスにつながっているのかもしれませんね。

 自分を愛する気持ちと他人を愛する気持ちはつながっている。プリキュアシリーズのなかでも(思想的に)ひときわ未成熟な主人公を据えたハピネスチャージプリキュアはそういう物語でした。
 当初めぐみの人助けは感謝はされても彼女の愛を伝えられるものではありませんでした。むしろ自己犠牲に近いもので、彼女を大切に思う人々からはむしろたしなめられるほど。彼女が本当の意味で他人に愛を伝えられるようになったのは映画、あるいは最終決戦に挑むときでした。

 補習生たちの実力に懐疑的だった教頭先生が彼女たちの力を認め、魔法学校を巣立つみらいに生徒手帳を託したのは、彼女たちの身につけた心が正しくアイザック先生の言う「魔法つかいにとって大切なこと」だったことの証明です。「いかなるとき、いかなる場所でも我が校の生徒として恥ずかしくないふるまいをするように」 そう言ってみらいを魔法学校の生徒として認めたのは、つまりみらいが魔法学校の生徒として恥ずかしくない心性を得たことへの祝福に違いないのですから。

 「前の私だったらそうしてたかもしれない。でも」「この春休み、私たちふたりでいろんなことを乗り越えてきた」「一緒だったからくじけずに頑張れた。だからこれからもどんなことだって」「ふたり一緒なら諦めたりしない!」 ひとりでは冷凍ミカンの解凍すらおぼつかないように、みらいたちはひとりひとりで見たなら未だ半人前です。けれど手と手をつなぐ絆の力によって自信をつけた彼女たちは、ついに立派な魔法つかいになるための入口に立つことができました。
 彼女たちの物語はこれからどこへ向かうのでしょうか。直近三部作のように自立して物理的な距離に惑わされない強さを得るか、はたまたもっと前の世代のように分かたれない関係性を前提として無限につながる絆の連鎖を構築するか、あるいはもっと別の絆の形を描いていくか。オールスターズのソルシエールの物語はこのいずれとしても解釈できるのですが、果たして。(適当に含みを持たせてぶん投げ)

 ビックリ花のモデルになった花は特徴的なおしべと斑点からしてオニユリでしょうか。その花言葉は「賢者」。絆をもって自信とする、奇跡の魔法を行使するふたりはいつかきっと立派な魔法つかいになれるでしょう。

今週の魔法文字

合格証:「LIKO MIRAI」
生徒手帳の表紙:「MAHO SCHOOL」

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