ドキドキ!プリキュアを観る。第6話

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問:どうしてあの子たちが気になるのでしょうか?

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知りたくて

 マナの家が経営するレストランに、真琴が主役の料理番組の取材がやってきました。ところが、実は真琴は料理をするのが初めて。真琴の料理はとんでもない失敗だらけで、ついには料理に心を込めることが信条のマナのお爺さんを怒らせてしまいます。「もっと料理のことを勉強してから行くべきだった」 帰りの車の中で真琴は反省します。

 前回のライブシーンでは笑顔で歌っていた真琴ですが、今日はずいぶん表情が固いです。舞台上ですら笑顔を忘れるほど張り詰めてしまっているのでしょうか。王女捜しはこの頃の真琴の生きる糧になっていますが、さすがにここまで自分を追い詰めるのは不健全が過ぎます。見守るダビィの表情も重いものに。
 そんなダビィが気分転換にと提案したのが今回の仕事。ここで王女捜しのことを一度きっぱり頭から切り離して別のことを考えようとするあたり、真琴も自分がいかに張り詰めているか自覚していますね。マナたちに比べてなにかと未熟なところが目立つ彼女ですが、その分だけ内省に優れた資質を持っています。自分の思いに対してとことん誠実なんですよ、この子。突き詰めすぎて視野が狭くなりがちなのが難ですが。

 そんなわけで突き詰めすぎ、視野が狭くなりすぎなのが今回の失敗の理由。
 「苦手とかそういう問題じゃねえ」「一度まな板に向かったらトコトン食べる相手を思って作る、それが料理ってもんだ」 マナのお爺さんの言うことは案外的を射ています。そもそも今回真琴は料理に全く気を向けていなかったのですから。この仕事に対する彼女の興味は「あの子たちがどんな生活してるか見たかっただけ」。苦手だから、料理をしたことがないから失敗したわけではありません。「もっと料理のことを勉強してから行くべきだった」 事前準備を怠ったのはそれだけ気が疎かになっていた証拠です。
 王女捜しから一旦頭を離すのはいいですが、そこで別の興味にのめり込んでしまうあたりがなんとも難儀な子ですね。

 そして肝心のマナたちへの興味もまだ満たせていません。「本当にそれだけ?」 ダビィの問いかけに心底意外そうな顔を見せる真琴。興味を持つということは、それだけ何か得るものがあると期待しているということでもあります。前回マナに感じた何かステキなもの、握手に応じたくなった理由。そういったものに興味があるということは、裏を返せば自分もそれを得たいと望んでいるということ。単にどんな家で生活しているか知っただけでは目的は果たせないのです。

わからなくて

 料理の練習をさせてもらうために真琴がレストランに戻ると、そこにはマナたちが待っていました。彼女たちも真琴を心配して、力になりたいと思っていたのでした。「付き合ってくれる?」 真琴のお願いをマナは快諾します。マナは真琴の知らない料理のコツをたくさん知っていて、彼女とともに練習することで真琴はみるみる料理ができるようになっていくのでした。
 そして翌日、撮影本番。練習の成果ははっきりと出ました。「やってみせる。昨夜あんなに練習に付き合ってくれたあの子たちのためにも」 その思いに突き動かされてつくったオムライスはとても美味しくできあがります。そして真琴は気がつくのでした。歌に心を込めることを忘れてしまっていたことに。

 料理ができるようになりたい、マナたちのことを知りたい。目的がふたつあるなら、当然向かうべき先はマナの家のレストランですね。真琴は自分の思いに対して誠実です。失敗しても叱られても、それで向かうべき先を曲げることはありません。(虫歯?なんですかそれ?) それが必要なことであるならば、助力を乞うことだって厭いません。
 「付き合ってくれる?」 このさりげない一言はかけがえのないものを真琴にもたらしました。マナが教えてくれたのは卵の割り方や野菜の切り方、ほんのささやかな料理のコツ。けれど真琴はそれを知りませんでしたし、知りたいと望んでいましたし、教わらなければ知ることができませんでした。真琴は誰かを頼ることで自分の求めていたものを得るという、大切な体験をしました。「仲間なんて要らない」 なんて言ってる場合じゃありません。
 そのうえマナたちときたらうまくいったら褒めてくれるし、失敗したら励ましてくれるし、我が事のように応援してくれる、一緒にいて楽しい人たちなのでした。知らず知らず真琴の表情に笑顔が生まれます。マナたちへの愛着、感謝の念は、真琴が求めていた以上のものをももたらしたのでした。

 それは料理に愛情を込めること。気がつけば料理を成功させたい動機は「仕事だから」ではなく「昨夜あんなに練習に付き合ってくれたあの子たちのため」にすげ替えられています。分量もマナたちと自分を含めた4人分。昨日マナのお爺さんを怒らせた理由であり、本業である歌にさえ最近見失っていた要素、今の真琴に決定的に欠けていたものが、彼女の中にごく自然に育まれたのでした。
 「付き合ってくれる?」 そのたった一言が、真琴の世界をことごとく善いものへと塗り替えていきます。
 なんて鮮烈な体験なのでしょう。「仲間なんて要らない」と他人とつながることを拒絶していたのに、実はそれこそが今の自分を助ける鍵だったのですから。思えばそのことに気付くことができたのは偶然ではありませんでした。全てはずっと手を差しのべつづけてくれたおせっかいがきっかけ。「あなたたちのおかげよ」

 「気付き」の象徴であり、マナたちへの思いが込められたオムライスなのですから、それがジコチューに狙われたとあっては黙って見過ごすことなんてできません。
 こうして真琴は王女のためだけではなく、自分自身のためにもジコチューと戦う理由があったことを理解したのでした。
 単純な話、どうして王女を探し、助ける必要があるのかということです。それは誰かに命じられた仕事ではありません。ただ真琴が王女のことを好きだから、王女が助かれば自分も嬉しいから。そういう真琴の愛の表れなのでした。誰かが愛されるとき、必ず愛する誰かもいる。それはごく当たり前の話です。そんな当たり前のことを忘れていたからこそ、自分の愛に無自覚だったからこそ、冒頭の彼女は痛々しく不健全に見えたわけです。
 そのうえで王女への愛を自覚した彼女は、同時にもうひとつの愛に気付くわけです。王女への愛を思い出させてくれた、とびきりおせっかいな人たちへの自分の素直な気持ちを。

同じ思い

 突如現れたジコチューの怪物を浄化するため正体を現したキュアソードに、キュアハートは改めて握手を求めます。今度は「あなたと仲間になりたくて」。今やソードもその思いは同じです。「ありがとう」 ソードが握手に応じようとした刹那、ベールの画策によってプリキュアたちは別の世界へ落とされてしまいます。

 ヴァンドレッドの頃からすでにそうでしたが、高橋ナツコさんの脚本は各キャラクターの現況管理と心情描写が丁寧ですね。語りかたが少々露骨すぎるところと同性愛嗜好は好みが分かれるところですが、それを差し引いてもキャラクターの転機の描き方はピカイチだと思います。ヴァンドレッド2期・シャーリーとの交流を経たバートの成長はそれはもう見事なものでした。
 今回も先述の真琴はもちろん、前回の反省を踏まえたマナのふるまいや、それをフォローする六花とありすに至るまで、彼女たちができるようになったこと、まだできないでいることをキッチリ描き分けていますね。

 マナは基本的に考える前に行動する性質で、そして意外に頑固な人物です。他人の意見を認め受け入れる柔軟さこそありますが、それが彼女自身の言動を変えることはなかなかありません。
 今回もうっかり真琴に握手を求めかけたり、アポなし突撃を目論んだりと、前回の失敗を繰り返そうとします。踏みとどまれたのは、単純に前回同じ場面で同じ失敗を犯した記憶を思い出せたから、それからそばに六花とありすがいてくれたからですね。自信に満ちた表情に惑わされがちですが、実のところマナは一度の反省で何もかもを改善できるほど器用な性質ではありません。この不器用なまでの頑固さは祖父譲りでしょうか。

 「仲良くなるには、ちゃんと相手の気持ちをわかろうとしなきゃダメなんだ」 本当の意味で前回の反省が生きたのは、ひとつは先ほどの料理練習シーン。普段のマナは何につけてもすぐ手を出してしまう、いわゆる「やりたがり屋」。けれどこの練習シーンでは真琴をよく観察して、彼女がどんな手助けを必要としているかをよく考えています。相手を観察することは気持ちを理解するための第一歩。アドバイスを受けてなお肩に力が入っている真琴を見てもぐっとこらえて、彼女が自分で気付くのを見守りました。
 そしてもうひとつが最後の握手。キュアソードが自分たちのオムライスを守るために戦ってくれたこと、ダイヤモンドとロゼッタの表情がソードを歓迎していることを確認して、キュアハートは改めて一歩踏みだします。「私の仲間になってください」ではなく「あなたと仲間になりたくて」
 お互いが対等であること、お願いではなくあくまで提案であること、それでいて自分が相手を大好きであること。ソードの気持ちを尊重して、自分の本当の願いを見つめ直して、丁寧に丁寧に選んだ一言。これこそが誰しもの気持ちを受容しながら自分の気持ちを強く表明する、マナの愛の形です。
 「ありがとう」 こうしてマナが孤独な少女の心にまで届く愛の形を紡ぎあげたことで、物語はひとつめの節目を迎えます。
 たとえ巨悪と対峙したとしても、形の定まった愛はもはや揺らぐことはないでしょう。・・・それが折れるとすれば、きっとそれはまた別の困難によるもの。
 ドキドキ!プリキュアの戦いは、愛の形というひとつの強い芯を得たところからはじまります。

答:彼女たちのくれる愛が、自分にとってもかけがえのないものだから。

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