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ドキドキ!プリキュアを見る。第7話

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問:なぜトランプ王国復活のために戦うのですか?

すでに終わった物語

 マナたちが目を覚ますと、そこは荒廃したトランプ王国でした。遠くには恐ろしげなキングジコチューもそびえ立っています。「トランプ王国最後の戦士」と自身の正体を明かした真琴の口からトランプ王国の物語が語られます。
 白亜の宮殿、幸福な国民、祈りの歌を奉じる歌姫キュアソード。かつてのトランプ王国は平和でした。けれど、そこにジコチューたちが現れました。破壊された町並み、怪物と化した国民、散っていった戦士たち。残された最後の戦士キュアソードは王女様を守るべく、ともに別の世界へと逃れようとしますが、ジコチューたちの追撃に会い、逆に王女様に庇われてしまいます。真琴はそうして離ればなれになった王女様を今も探しているのでした。

 トランプ王国の悲劇はマナたちと何ら関わりがありません。他のシリーズと同じく、プリキュアはあくまで日常を守るヒーロー。どれだけスケールが大きくても、トランプ王国のことはあくまで真琴にとっての不幸でしかありません。今の真琴がいるのは他の多くのシリーズにおいての妖精の立ち位置ですね。今回は孤独な亡命者である真琴がともに戦う仲間になるための物語です。

 「トランプ王国の悲劇を繰り返すわけにはいかない。お願い、伝説の戦士プリキュアを探して」 王女様のスタンスがこの悲劇が真琴だけのものだと補強します。
 彼女がシャルルたちに託した願いはトランプ王国の復活ではなく、あくまで「悲劇を繰り返す」ことを避けるためのもの。実際シャルルたちも、これまでマナたちにトランプ王国の復活を願ってはいませんね。
 王女様を守りたいというキュアソードの希望とは裏腹に、王女様はある意味ですでに諦めてしまっています。この時点で王女様とキングジコチューの関係はまだ固まっていなかったでしょうが、その関係を抜きにしても、この状況で彼女の希望が折れることは想像に難くありません。王国を守るため前線で力を振るい、他の世界のことまで思いやる彼女はそれでも立派です。
 けれどこのとき、キュアソードの言葉は王女様のさらに上を行きました。「王国は何度でも蘇る。私たちが希望を捨てない限り!」 王女様からまるで妹のような寵愛を受けて、彼女に全幅の信頼を預けていたからこそ出せた言葉でしょうが、それでもキュアソードのこの力強い啖呵は王女様に新しい希望をもたらします。笑顔を取り戻します。
 「逃げなさいキュアソード! あなただけでも!」 妹のようだったキュアソードが生き残っていてくれただけではなく、この状況下でも希望を捨てずにいてくれた。自分は諦めていたのに。シャルルたちを送った時点で自分の役割を終えたと思っていた王女様にとって、きっとこれほど喜ばしいことはないでしょう。追撃を受けてソードの手を振りほどいたのは諦めたからではありません。愛しい妹分、トランプ王国最後の希望、キュアソードを無事に別の世界へ送るという、王女様自身の希望を叶えるためです。
 「私も必ず後から追いかけます」 それが実現可能かどうかはこの場において関係ありません。ソードの希望の源泉が自分への信頼であったなら、それを失わせないのが王女様の最後の希望。彼女に贈る最後の祝福です。キュアソードは王女様から愛を託されたのです。

 だから真琴はトランプ王国を復活させなければなりません。そのためにまずは王女様を見つけなければなりません。それは彼女自身の希望であり、王女様から託された愛が正当なものだったと証明するものです。王女様の前で啖呵を切った以上は諦めるわけにはいきません。
 多少融通の利かないところはあっても、自分で自分を追い込んでしまう原因であっても、これによって真琴は見知らぬ世界で強く生きることができました。王女様の愛は確かにひとりの少女と、彼女の持つ希望を生かしたのです。そしてその愛は、新たな愛と出会い、増幅されていきます。

希望を繋ぐ愛

 真琴の昔語りを聞き終えたマナは、一緒に王女様を探すことを真琴に提案します。それには大きな意義があるはずだと、みんなで論理による肉付けをしていきます。
 議論のさなかジコチューの怪物たちに襲われたマナたちは、追われる途中で崩れた橋を飛び越えます。ところがひとり足を踏み外してしまい落ちていく真琴。マナたちは迷いなく真琴を掴み上げます。「友達を助けるのに理由なんて必要?」 まっすぐ真琴の方を見つめながら。

 クレバーなドキドキチームの本領発揮。王女の愛によって強く生きてきた真琴でしたが、長い王女捜しにいいかげん疲弊し、希望を挫きかけていました。けれど「きっと王女様を見つけられたら困る理由があるんだよ」 マナお得意の発想の転換が真琴の知識と合致し、六花が補足して、瞬く間にその希望を強固に組み直していきます。
 王女探しは間違いなく意義があること。そう理屈づけることは、真琴が生きてきたこと自体を肯定することに他なりません。真琴はそのために生きてきたのですから。それはつまり、ひいては王女様が真琴に贈った愛すらも肯定されることになります。王女様はそのために愛を贈ったのですから。

 であれば、過去にキュアソードが嘆いた王女様の行動すら肯定されるべきです。落下した真琴をマナたちが掴み上げるのはその再現。今度は真琴が王女様の立場、マナたちがキュアソードです。
 「私のことは放っといてあなたたちだけでも逃げなさい」 王女様も同じことを言いました。「逃げなさいキュアソード! あなただけでも!」 それが王女様の愛情から出た言葉だとわからない人はいません。
 「私、逃げたりしない。キングジコチューを倒してトランプ王国に平和を取り戻してみせる!」 これもかつて真琴自身が王女様の前で言い放った言葉と同じものでした。「王国は何度でも蘇る。私たちが希望を捨てない限り!」 キュアソードがそう言ってくれたからこそ、王女様は彼女を守るために行動したのです。真琴が捨てかけていた希望はマナたちが拾い上げました。
 「あなたひとりで何ができるっていうのよ」 そっくりそのままかつてのキュアソードに返してやりましょう。彼女ひとりでいったい何ができたというのか。そういう問題ではないんです。諦めていた王女様の前で啖呵を切ってみせたこと自体が尊いのです。ソードが希望をみせてくれたからこそ、王女様ももう一度希望を胸に抱くことができたのです。
 「友達を助けるのに理由なんて必要?」 真琴自身、王女様を助けるために危険を承知で王宮に飛び込んだではありませんか。王国復活のために王女様が必要だなんて打算はついさっきまで気付いていなかったでしょう。
 だから今真琴が見ているのはかつての自分自身。王女様の胸に希望を奮い起こした、強い少女の記憶です。「まるでブレてない。強いんだな、この子」 今は挫けそうになっているけれど、かつての彼女も王女様にはそう見えていたはずです。王女様の視点に立って、真琴はまっすぐな希望の輝きを追体験します。それを見たからには、今するべきことはひとつ。王女様はキュアソードの希望を守るために手を振りほどきました。真琴もマナたちの希望を守るため、今度は手を取ります。
 「助かったわ。ありがとう」 希望の輝きはいつだって見る人を笑顔にしますね。

これから始まる物語

 もとの世界へ帰るため、マナたちはかつてキュアソードたちが使った魔法の鏡を目指します。しかしそこに現れたのは先回りしていたベール。魔法の鏡を叩き壊し、ベールは勝ち誇って高笑いを上げますが、そんなことでマナは負けません。「鏡なんか無くっても、あなたにもとの世界に送り届けてもらえばいい」と、笑って希望を繋ぎます。
 そしてベールを倒しもとの世界へ帰ってきたマナたち4人は誓います。「お願い、みんなの力を貸して」 真琴の願いを叶え、トランプ王国に平和を取り戻すことを。

 誰かの願いを背負ったマナは強い。(第22話への伏線) たとえそれがか細い道であっても、無謀な悪あがきであっても、希望が残されているなら堂々と笑って示してみせるのがマナです。それは彼女の生来の気質であり、多くの失敗を積み重ねた末の技術なのでしょう。「自分じゃ叶わないからって年上に頼るような卑怯者じゃないもん」と言っていた幼い頃とは取れる選択肢の幅が大きく違います。頑固さと柔軟さが同居しているといいますか。
 彼女の強気の発言は、しかし実際にはあまり結果に反映されません。実際どう考えても無謀ですからね、ベールを従わせるとか。けれど手段は変わっても目的は必ず達成します。その秘訣は絶対に諦めず、頑張り続ける意志。プリキュアの基本ですね。諦めさえしなければ取れる手段はいつだってどこにだって転がっているものです。「諦めない、負けない!」
 マナの場合はその基本をさらにリーダーとして特化したかたちです。彼女の示す希望にいちいち理屈が伴うのは、その方が周囲を安心させることができるからでしょう。行動だけでなく言葉でも愛を振りまくプリキュア。だから自分を奮い立たせる根性論ではなく、誰もが納得できる論理性が必要なのでしょうね。

 「モチのロン!」 剛胆なほどに力強く希望を示すマナの言葉は、実際それ自体が人に希望を与えます。「ダビィ、私もう絶対に諦めない。トランプ王国に平和が戻るその日まで、ジコチューと戦う!」 挫けかけていた真琴の希望は今や輝きを完全に取り戻しました。彼女はもはや孤独な亡命者ではありません。希望のために戦うプリキュアです。

 こうして物語の序章は幕を閉じ、次回から新しい物語が始まります。日常を守るためプリキュアになった少女たちの物語が、大きな目的へ向かっていよいよ動きはじめます。
 トランプ王国の復活はどこまでも真琴だけの願い。ですが、たくさんの愛がそれを拡張します。王女様の愛が真琴をマナたちに巡り合わせ、マナたちの愛が挫けかけた真琴をもう一度奮い立たせ、願いを共有してくれます。
 誰かのために愛を振りまくプリキュアは、例えば真琴のために戦います。

答:それを願っている誰かがいるから。

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