超人女子戦士ガリベンガーV 第15話感想 研究者のロマンに親しむ知的冒険。

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生徒役:電脳少女シロ、牛巻りこ、ヤマトイオリ

いえ。それを考えるのが天文学者です。

出演バーチャルYouTuber

電脳少女シロ

「現代版の『ジャックと豆の木』ってことは・・・豆を植えればいいんだよ!」

 たとえ大して目立つ扱いをしてもらえそうにないシーンでも細かなボケを欠かさない、周りを引き立て場を賑やかすことに逐一気を配れるスーパーアイドル。・・・いや、それははたしてアイドルか?(自問) とりあえずあなたはあくまで電脳少女シロであって、ホワイトホールではないと思います。たしかに大食漢だけれども。
 やたらと語録が豊富、そしてやたらと逸話も豊富。というのも彼女は多趣味・多芸なうえ、やたらと柔軟な発想力も持ちあわせ、ついでに傍若無人な性格なため、自由にさせると大抵常人に理解できない奇矯な言動をしはじめるからです。彼女の動画を見てなんともいえない気持ちになったときは「シロちゃんの動画は為になるなあ」と、とりあえず納得しましょう。彼女はあなたが為になることを望んでいます。
 まるでアブない人のようですが、そして実際アブない人なのは確かなのですが、こう見えて彼女は共演者をよく見ています。聡明です。共演者の対応力を推し測り、ギリギリ捌ききれる程度のムチャ振りを仕掛けるのです。きわめてタチが悪い。

牛巻りこ

「はい! 牛巻です!」

 一発芸特化型新人芸人ばりにスペシャルな特技(声帯模写)を持ちあわせながら、本業はなぜかブラック企業のプログラマ・・・じゃなかった、アイドルの卵をしている女子高生。オフィシャルな愛称は「りこぴん」です! 「牛巻」じゃありません! でも、はい! 牛巻です!
 プログラマ独特のやたら仕様の限界に挑みたがる好奇心、それから妙に舞台慣れした飄々とした立ち居ふるまいが魅力。YouTubeでの配信内容も毎回コンセプトが明確で事前準備もよく整っており、それでいてアドリブも利き、スズムシの鳴きマネなど不思議な特技まで持っており、エンターテイナーとしてのきわめて高い素養が感じられます。いったいどこでこんな経験を積んできたのやら。今回も八面六臂の大活躍で番組をぐいぐいリードしていきました。
 見た目どおりカッコいい王子様系な言動が似合うキャラクターですが、そして本人もそういうキャラクターを演じたがりますが、その割にボケたがりツッコまれたがりの芸人気質。どちらかというと愛嬌あるかわいい系の女の子ですね。しれっと腰に差してある哺乳瓶に注目。

ヤマトイオリ

「ブラックホールの近くに『ちょっと旅行行ってくるね』って行って帰って来たら――、あの、吸い込まれないくらいギリギリに行って帰って来たら、地球の人たちは100年ぐらい歳取っちゃったりとかっていうことありえるんですか?」

 身のまわりのどうってことない日常の不思議を楽しそうに話しながら、そこに隠れた物理法則ひとつひとつを改めて発見していくプリミティブな物理学者さん。等身大の知識と等身大の発想力で車輪の再発明をする彼女を滑稽と思う人はあまりいないでしょう。その輝かしい好奇心こそ人が学問をする根源的な喜びです。
 最も好評を博しているコンテンツはなんと雑談。雑談配信といえばネタが尽きた配信者の逃げの一手とみなされがちですが、彼女の場合は違います。正真正銘雑談こそが面白い。見てのとおりのおっとりした口調から繰り出されるのは「あのねあのね!」で急転直下のジェットコースター&夢幻ループ。話している内容はごくありふれた日常の出来事のはずなのですが、俗世の垢に汚れていない平和な世界観と幼児のように純朴な好奇心でもって我々を困惑させ、さらに話題がころころと、それでいてとめどなくつらつらとシームレスに移り変わっていくスピード感で我々を翻弄します。「ゆっくりハイペース」「性善説の擬人化」「頭お花畑」などの異名はダテじゃない。
 ちなみに思考の流れが柔軟すぎて誤解されがちですが、実は論理と探究心を重んじる性格です。幼少期のエジソンみたいな感じ。

授業構成おさらい(+ 補足事項)

超難問:宇宙の謎を解明せよ!

 ヤマオカ先生は国立天文台の広報室所属准教授です。
 宇宙についての学問はどうしても理論や数学の話が多くなってしまって小難しいですね。なにせ生物学などと違ってフィールドワークができませんから。そのうえ何かの製品開発に直接つながるような研究でもなく。
 おかげで研究成果を公表しようにも、一般の人に理解してもらえるようなアピール材料がなかなか出せず、どこも意外なくらい苦労しているようです。研究の意義を専門家以外にまでアピールできないと予算がね・・・。(世知辛いのじゃー)
 たとえばNASAが定期的に珍妙なプレスリリースを出してはネット上でネタにされているのですが、まあ、つまりそういうことです。察してあげてください。

 そんなわけで、好奇心豊かなガリベンガーVファンの皆さんだけでも、国立天文台がどういう活動をしているのか、ぜひとも理解してあげてください。少なくとも“宇宙”という研究対象自体はみんな好きでしょ?
 学校のお勉強がちょっぴりニガテなヤマトイオリも頭を傾げながら一生懸命質問していました。えらい。

トピック1:ブラックホールに人が飲み込まれるとどうなる?

 まずは今年大きな話題となったイベント・ホライズン・テレスコーププロジェクトについて解説。
 このプロジェクトは地球上8箇所の天文台から同時にひとつの天体を観測し、それぞれの取得した観測データをツギハギ繋ぎあわせることで、あたかも地球サイズのレンズを使ったような精緻な観測を実現したものです。これによって今回、単独の観測機では針の穴よりもはるかに小さくしか見ることができないブラックホールを観測することに成功しました。
 ちなみにこのプロジェクトで取得した総データ量は5日間の観測でおよそ3500TB。ブラックホール関連のものだけに絞っても500TB。ちなみに市販のHDDレコーダーの容量はせいぜい2TB程度です。先ほど各地の観測データをツギハギしたと表現しましたが、そのイメージで考えただけでもいかに大がかりで困難な仕事だったのか想像できるでしょう。

 さて、そんな導入からの本題。

 電脳少女シロがジョジョネタを引用して「流された人物は次第に考えるのをやめて、宇宙を構成するひとつとなる!」と全力でボケましたが、実はこのくらいのスケールで認識するのが大正解。
 ブラックホールは(比較的)小さなサイズかつ凄まじい引力を持つ天体なのですが、実は吸い込まれてもただちには地表に到達しません。後の質問コーナーでも話題に上がるように、ブラックホール周辺では時間や空間すらも歪むからです。
 この結果、吸い込まれたものは半ば無限の時間と距離を落ちつづけることになり、そのため吸い込まれた先端と末尾とで異なるわずかな引力差すらも無限に延長されて、(普通なら影響が出る前に地表に落ちて潰れてしまうでしょうに、)全身がスパゲッティのように引き延ばされていくと考えられています。
 また、ブラックホールの絶大な引力を生みだしているのは高密度に圧縮された天体の質量そのものです。このためヤマトイオリが想像したようなキャパシティ限界はなく、むしろ落ちた物体の質量を取り込んでますます強力になって(太って)いきます。
 まさに“次第に考えるのをやめて”、“ひとつとなる”。

トピック2:そもそも宇宙はどうやってできたの?

 このあたりになるといよいよ理論の話になるので、そもそもどうして光(正確には電波)で観測できることがそんなに重要なのか、という部分すら理解するのが難しくなりますね。
 この問題のそもそもの発端は、宇宙に今も現存している宇宙磁場(ざっくりいうと雲みたいなもの)の内部がどうして観測できないのか、という謎からスタートしています。
 やがて宇宙磁場を観測していくにつれて、どうやらこの空間は原子を形成する前段階だから電子だらけになっているらしい、どうやらこの空間はビッグバンによって形成されたものらしい・・・、といった具合にその素性が明らかになっていきました。宇宙磁場を観測していくうちに宇宙の歴史そのものが解き明かされていったわけです。
 天文学者の仕事は宇宙を観測することであり、宇宙の歴史を知るに至ったそもそもの動機が観測不能な空間の存在だったため、「宇宙の晴れ上がり」という概念が彼らにとって重要なわけですね。

 それにしても私たちの生きるこの宇宙、小は素粒子から大は天体の活動まで、どんなものでも何から何まで物質同士の衝突と融合によって説明がつくんですね。わぴちゃん先生が解説していた雲のメカニズムもそんな感じでしたし。人間の営みですら他人同士がくっついて子をなすのが基本原則。
 「一番細かいものからだんだん大きいものになっていく。なんか人類と同じようなものを感じましたね」
 神様は大鍋をかき混ぜるのがよっぽどお好きらしい。

トピック3:宇宙はどこまで広がってるの?

 宇宙を観測すると、遠いところにある銀河ほど赤く見えるそうです。これが何を意味しているかわかるでしょうか?
 赤方偏移です。ドップラー効果です。すなわちそれぞれの銀河は現在お互いに遠ざかりつつあり、しかもその傾向は元々距離があった銀河同士であるほど大きいという意味です。
 パームルッターらのノーベル物理学賞受賞研究成果はこうして発見されました。

 ヤマトイオリの「宇宙の広がっていく速度はどのくらいなんですか? 秒速何平方メートルみたいな」という質問に対して、先生が「秒速っていう表現のしかたではなくて、何年経ったら1割大きくなるとか何年経ったら2割大きくなるとかって言いかたがいいと思います」と回答したのはそういうわけです。
 単純にスケールが大きすぎるという不都合もあるのですが、そもそも宇宙は全体として膨張しているので、宇宙全体の大きさがわからないかぎり答えようがないわけです。今のところの試算だと130億年で倍に膨れあがるとのことですね。

 ちなみにトピック冒頭でちょろっと飛び出ただけで終わってしまった「ダークエネルギー」という用語ですが、これはその名のとおりエネルギーです。
 宇宙が膨張しているということは、それだけ何がしかのエネルギーがどこかで消費されているはずなんです。ところが現在の人間の科学ではそのエネルギーが何物で、どこに存在しているのか観測することができずにいます。
 このよくわからない謎のエネルギーをとりあえず理論上で扱うため、仮想的に名付けたのがダークエネルギー。数学でいうところの虚数みたいな概念ですね。
 牛巻りこの「もはや天文学的な数字すぎて、もうどれだけ広がっているかというのは誰にもわからない」という発言に対して、先生が「いえ。それを考えるのが天文学者です」と答えていましたが、まさにこのやりとりこそ「ダークエネルギー」という仮想概念の存在意義。人類はまだ考えることを諦めていません。

トピックex:先生に聞いてみよう!

 電脳少女シロの質問からスペースコロニー建造、軌道エレベーターの話題に発展しました。たしかに宇宙へ移民するならまずは地球近郊、太陽系、それで足りなくなったら外宇宙へ、というのがスジですね。
 宇宙に建造物をつくるにあたってなぜ軌道エレベーターが必要になるのかといえば、簡単な話、いちいち資材をロケットを使って運ぶのではお金がかかって仕方がないからです。高層ビルの屋上までわざわざヘリコプターで上るなんて普通しないように、宇宙にものを運ぶなら大気圏外まで届くエレベーターを使ったほうがよっぽど安上がり。
 理論上は相当昔から建造可能だという話が出ていたそうなんですが、これだけのサイズの構造物を実現するに足る強度を持った素材が当時存在していなかったため、久しく研究が頓挫していました。カーボンナノチューブの発見によって現在は実現に向けた研究がにわかに活気づいています。もちろん、あくまで今はまだ理論上での研究段階なので、本当に建造されるのは相当未来の話でしょうが。
 ちなみに電脳少女シロが軌道エレベーターから『ジャックと豆の木』を連想していましたが、この喩えはマジで実在しています。もしかして何かのSF小説かアニメあたりで耳にしていたんでしょうか。

 ヤマトイオリからは宇宙人が存在するかどうかの質問。これは科学者なら当然「いる」と答える質問ですね。
 恒星との距離が適切な惑星があれば当然地球のように生物の発生に適した気温になるでしょうし、生物の発生に必須の窒素や水も火星など地球以外の惑星でも生成されることが確認されています。ならば、神様的な存在が地球だけ特別にえこひいきしているとか、そういうよっぽどの条件でも存在していないかぎり、他の惑星でも生物は発生していると考えるのが自然でしょう。

 牛巻りこからはベテルギウスの寿命について。
 この星は直径が太陽の1000倍ほどもあるのですが、その一方で質量は太陽の20倍程度でしかありません。超新星爆発の前兆として星が膨れあがっている状態です。いつ爆発してもおかしくない状態だとされています。

 ヤマトイオリから質問がもうひとつ。ブラックホールに行って帰って来た場合の、地球で暮らしていた人との相対時間のズレについて。
 相対性理論の話題ですね。ブラックホールなど高重力下では時間の流れが歪むとされています。また、光速に近い速さで移動することでも時間の流れは遅くなるとされています。私は相対性理論について勉強したことがないので、どうしてそうなるのかという原理は正直あまり理解できていません。本を開くと数式とその解説文がずらっと並んでいて目眩が・・・。

感想

 最近感想的な内容まで授業まとめの方で書くようになってきたので、あえてこっちで書くべきことが少なくなってきました。

 今回のような難度の高い授業になると、電脳少女シロが普段からやっている謎のジェスチャー遊びがありがたく感じられますね。生徒役の出演者がうまく回答できない場面でもとりあえず画面を華やかにしてくれます。もっとも彼女の場合普通に発言しても場をつなげられそうなものですが。でもそうしちゃうと他の共演者の活躍の機会を奪っちゃうか。
 牛巻りこはやっぱりうまい。知識も広く持ちあわせているようで、どう発言すれば授業内容が広がるか考えながら喋っていましたね。
 ヤマトイオリはいつもどおり自然体。各トピックの結論部分でも正直に首を捻るものだから見ていてズッコケることもしばしばなんですが、彼女の好奇心はやはりステキですね。こういう難しい授業のなかでも普通の人が興味を持つようなキャッチーな話題を先生から引き出すことができていました。

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