魔法つかいプリキュア!第14話感想 どうして努力しなきゃいけないの?

この記事は約9分で読めます。
スポンサーリンク

どんなことでも頑張る姿をリコが見せてくれたから。

↓dアニメで全話配信中!↓

(主観的)あらすじ

 興味のあることはどんなことでも器用にこなすみらいですが、数学だけは苦手です。それはワクワクできないから。テストで赤点を取ってしまい一週間後再テストを受けることになりましたが、やはり興味を持てないので、テレビドラマやリンクルストーン探しに移り気してしまって集中できません。
 「リコみたいに勉強も運動もなんでも簡単にできるといいんだけどな」 そうぼやくみらいでしたが、あるとき気がつきます。なんでもできるように見えるリコだって、本当は努力し続けているからそう見えているのだと。みらいは努力して数学に取り組みます。
 いつも努力して成長し続けるプリキュアがヨクバールなんかには負けないように、みらいの努力は実を結び、みごと再テストに合格します。がんばる人はみんな花丸です。

 今回のテーマは幼児向けアニメの定番、努力。同じ努力でもみらいとリコでそれぞれ動機づけが違うあたりがこの作品のカラーですね。前回までの「見方を変える」考え方が今回もリコの中でしっかり息づいているように、それぞれ全く違うふたりがたくさんのものを見て、知って、一段ずつ着実に成長していく過程にフォーカスした物語が魔法つかいプリキュア! です。
 それにしてもツッコミどころの多かった今回のテスト。xのフォントが普通のアルファベットだったり、方程式のテストなのに図形問題は方程式を使わなかったり、再テストで方程式は新録したのに図形問題は数値すらそのままだったり。「かっこの中を先にけいさんする」と、さすがリコは生真面目な回答を書くなあと思っていたら、みらいも勉強を教わってうつったのか再テストで「まず小数点をとる」。④の回答がみらい(あみだくじ)とリコでそれぞれ違うのに両方丸がついているのはなんでかなと思ったら、よく見るとそもそも出題ミスだったなんて。ひどいよ高木先生!

「ワクワク」の限界

 いえ、ワクワク自体に問題があるってことではないのですが。
 みらいはワクワクするものに対してしか実力を出せません。ワクワクしない数学に関しては赤点を取るどころか教科書を開いた時点で眠くなってしまいます。これはきっと彼女がまだ夢を持っていないからなんでしょうね。

 「みらいは自分の好きなことは一生懸命なんだけど、興味がないことは全然なんだよね」 リコのため息に気付いたことといい、長瀬さんは人を良く観察していますね。みらいの(数学以外の)成績がいいのは一生懸命だからです。魔法学校でもそうでした。誰よりも前に前に、積極的に挑戦していったからこそ、わずか6回の授業で魔法を使えるようになったのでした。
 なにか特別な才能があるからではありません。なにかの才能を匂わす描写はあっても、それがあるから成功したという描かれ方はしていません。
 自分のワクワクに従って行動しているだけなのでおそらく無自覚でしょうが、彼女は本質的に努力家です。「実験、ワクワクもんだあ!」「違う国の人と話せるなんてワクワクもんだあ!」「ゴールを決めた瞬間、ワクワクもんだあ!」 やりたいことをやってるときって楽しいですよね。けれどそういうときやっているものって、他人からすると案外とんでもなく高度なことだったりします。何千冊と難しい本を読破して広い知識を蓄えている人、スポーツで卓越したテクニックを披露する人、ゲームを何百時間とやり込んでハイスコアを出す人、ブログに何千字もアニメ感想をアップする人。必ずしも辛い苦労の成果というわけではありませんが、そのくせ誰にでもできることではありません。当人でさえきっとはじめの頃はできていなかったでしょう。好きなことをしている時間は、そのままあなたが努力している時間です。努力というのは必ずしも苦しいものではないのです。むしろ大抵は楽しいもの。好きこそものの上手なれ。

 とはいえ、世の中好きじゃないのに努力しなければいけないこともままあります。「好きなものを努力できるというなら、嫌いなものだって好きになればいいだけじゃん」 そんな言い方もよくされますが、なかなかそう簡単にはいきません。「嫌いなものを好きになる努力」が好きな人なんて、そうそういるわけがないでしょう。
 けれど、見方を変えましょう。そもそもどうして好きでもないことに努力しなければいけないのでしょうか。それは例えばお金がもらえるから、生活が便利になるから、人付き合いが円滑になるから。要するに自分のためです。みらいのような子どもであれば将来のためという理由も多くなります。それだって結局は自分のためですね。
 人は普通、そうやって努力する理由があるから努力するんです。好きであったり自分のためになったり。理由がなければ努力なんて高負荷な行為、わざわざやってられません。毎日ムダに穴を掘っては埋めるだけの作業が拷問として成立するくらいですしね。心理学でいうところの「動機づけ」ってやつです。
 例えばGO!プリンセスプリキュアの春野はるかは「花のプリンセスになる」ことを動機づけとして、あらゆることに努力していきました。プリンセスっぽいことはなんでも楽しい。辛いことがあってもプリンセスになるためだから頑張れる。そうして努力を重ねていった彼女は最終的に、果てない夢は無限の努力の源泉になるという哲学を得たのでした。

 一方みらいには数学を努力するための動機づけがありません。だって彼女には夢がありませんから。普通、数学を頑張る動機づけは、(それ自体が好きというわけでないなら)良い高校へ進学するためというのが大半でしょうか。良い高校へ進学したいのは良い大学へ進学するため、良い大学へ進学するのはなりたい職業に就くため。ところが、みらいには夢がありません。なりたい職業がなければ良い大学や高校へ進学する必要はありませんし、つまり数学を努力する理由がありません。
 みらいという名前には皮肉なことに、彼女はまだ未来に興味を持っていないのです。
 他の教科のようなワクワクも、将来のためという動機すらも使えないのであれば、数学の成績が悪くなるのも必然ですね。

夢のため

 そんなみらいとは好対照なのがリコです。このふたりはつくづく正反対なんですね。彼女には「立派な魔法つかいになる」という大きな夢があります。そのためにこれまでずっと努力してきました。そしてやはりみらいとは反対に、彼女は今自分が置かれている状況に興味を持っていませんでした。なにせ立派な魔法つかいになりたいのに全く魔法が使えませんでしたからね。
 そのため当初は暗い表情を多くみせていましたが、みらいとの出会いによって魔法が使えるようになり、そして強く興味を引かれる大切な友達ができて、彼女は大きく変わりました。
 気取り屋の割に努力だの根性だのといった泥臭い言葉が好きなのは、彼女にとってそれだけ努力が自覚的に行われるものだったからです。ワクワクするものには自然と一生懸命になれるみらいとは考え方から違います。だから、実のところ今回リコはみらいが数学を努力できなかった理由を認識できていません。

 前回までの「見方を変える」物語は、将来の夢にばかり目を向けていた彼女に現在への興味を持たせるものでした。星空、バーベキュー、四つ葉のクローバー。輝かしい夢以外にも、現在にだってキラキラワクワクするものがたくさんある。みらいという大切な友達を踏まえて、少しずつ段階的に、彼女はよりたくさんのステキなものに目が向かいつつあります。
 文字の書き取りの練習に「みらい」を選んでいるのがなによりの表れですね。どうせ努力するなら好きなものを絡めてやりたいと思うのは自然なことです。先ほど「嫌いなものを好きになる努力」が好きな人なんて、そうそういるわけがないと書きましたが、それができるきっかけがあるならやるに越したことはありません。それはとても幸せなことです。
 「いろいろな経験が魔法を成長させると思うの」「全部頑張りたい。無駄な努力なんてない。どんなことでも一生懸命頑張れば、きっと自分の力になる」 ヒャッコイ島でみらいのおしくらまんじゅうを非難していた彼女は大きく成長しました。夢に向けて一点だけを見据えていた彼女の視野は、今や大きく広がり、どんなものでも夢を叶える糧になるという認識を得るほどになりました。
 かつては未来にしか興味を持っていなかったリコですが、今は未来と現在の両方ともを大切にするバランスのよい精神を養いつつあります。

憧れ

 ではみらいもリコのように夢を持てば解決・・・とはいかないのは誰もが実生活で感じているとおりです。夢なんてそう簡単に得られるものではありません。それは「嫌いなものを好きになる努力」と同義です。簡単にできるものではないからこそ「動機づけ」が心理学の世界で重要視されるのです。リコだって現在のキラキラワクワクするものに興味を持てるようになるまで1クールを費やしました。

 だから、みらいはワクワクとも夢とも違うものを動機づけに用いました。
 リコです。みらいは元々夢を追いかける彼女を尊敬していました。(下手ながら)魔法を使うことができて、魔法界のことならなんでも知っていて、面倒見がよくて。魔法界にいた頃のみらいはまるで「引越した先の公園でたまたま会ったお姉さん」のようにリコに甘えていました。どんなときでもリコがいればきっとなんとかしてくれる。一度ひとりぼっちになればとたんに不安に思えてくる魔法界で、それでもみらいが積極的に行動できていたのは、いつも隣にリコがいてくれたからでした。
 みらいはリコがどれだけすごい子かを知っています。大きな夢を叶えようとしている子だということも知っています。リコがみらいの行動力を好きになったように、みらいもまたリコのなんでもできるところを好きでいます。
 だからみらいはリコに憧れました。「リコみたいに勉強も運動もなんでも簡単にできるといいんだけどな」 けれどそれも本当は違っていました。長瀬さんが教えてくれました。書き取り練習のノートを見ることもできました。リコは本当ははじめからなんでもできる子なんかではありません。みらいと一緒に魔法の練習をしてきたように、本当のリコは夢のためにずっと努力を重ねてきた子だったのです。
 だからみらいはリコにいっそう憧れました。リコが「どんなことでも一生懸命頑張れば、きっと自分の力になる」 と言うならば、それはきっと事実なのでしょう。なにせそれはきっとリコ自身が実践したことなのでしょうから。そうであるなら、みらいだって一生懸命頑張ればリコみたいになんでもできるようになれるかもしれません。

 果たしてそれは真実でした。リコの真似をして努力してみると、あれだけ苦手だった数学の再テストにみごと合格することができました。みらいは数学が好きになったわけでも、なにか夢を得たわけでもありません。ただリコのようになりたいという憧れの力で努力することができたのです。

 同じくひたすらに努力し続けていたはーちゃんの花丸から生まれたムーンストーンは、一般的には恋の石として扱われます。けれどムーンストーンが働きかけるのは恋は恋でもそっと月に思い人のことを祈るような、とりわけ奥ゆかしい恋心。自分から告白したり美しく着飾ったりすることによって愛されるのではなく、自らを研鑽しながら思い人がこちらに気付いてくれるのを待ち続けるような、そんな恋のあり方にパワーを発揮します。月はあなたのひたむきな努力を祝福するでしょう。

 繰り返しますがみらいにはまだ夢がありません。けれど、夢に向かって努力するリコを通して、彼女は今回少しだけ未来に目を向けました。リコが現在に興味を向けたように、みらいにもいつかきっと未来に興味を持つ日が来ますように。

今週の魔法文字

リコのテスト:「B」「RIKO」
 名前欄を一度魔法文字で書いて消した跡がありますね。
 魔法文字って装飾が多くて書きにくそうだなとたまに思います。

ヤモーの報告書・上:「PRECURE DATA」
角印:「GOKUHI!」
下三行「HITO NI HISENAI」「NUKASANAI」「YABUKANAI」

「プリキュアデータ」「極秘!」「人に見せない」「抜かさない(無くさない?)」「破かない」
 !マークはなぜか公式の一覧表に載っていませんが、変身時の魔法陣には使われてあります。
 下三行の上段は正確には「ヒセナイ」ですが、おそらく「見せない」だと解釈しました。魔法文字のHとM(とW)って似てるんですよね。でも日本語の間違いは頻出しても魔法文字側のミスはたぶん今回が初めて。
 中段「抜かさない」でも意味が通じなくはないですが、この流れだとたぶん「無くさない」が適当だと思います。
 下段。ガメッツさん・・・。

よろしければ感想を聞かせてください

    記事の長さはどうでしたか?

    文章は読みやすかったですか?

    当てはまるものを選んでください。

    コメント

    スポンサーリンク
    タイトルとURLをコピーしました