魔法つかいプリキュア!第17話感想 魔法が使えなくたって魔法つかいになれる。

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お婆ちゃんも魔法使ってみようかしら。

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(主観的)あらすじ

 お婆ちゃんの思い出話を聞かされ、それに登場する思い出の人に興味を持ったみらいたちは、魔法の水晶の占いを頼りにその思い出の人を探しに出かけます。けれどたどり着いた先は煎餅屋さんにバラ咲く公園。思い出の人につながる思い出のもの、あるいは場所でした。偶然にも思い出の出来事を再現していくみらいたちの姿は、お婆ちゃんに再び思い出の記憶を揺り起こします。
 たくさんの思い出はリンクルストーン・ガーネットとなりますが、プリキュアとヨクバールの戦いのさなか、ガーネットはガメッツの手によって奪われてしまいます。

 前回に引き続き妙にせわしないストーリー運びが続く幹部退場シリーズ。ガメッツさんも次回撃破されそうな雰囲気を漂わせて、どうやら間もなく中盤の山場といったところでしょうか。
 けれど魔法つかいプリキュア!が描くのはあくまで日常のステキさと、そこに確かに息づく奇跡の魔法。お婆ちゃんが新聞紙で窓ふきの魔法を使ってみせたように、杖なんか無くたって私たちの世界には魔法があふれています。

ナシマホウ界の魔法つかい

 思わせぶりなショールを肩にかけておいて結局魔法界とは関わりがなかったお婆ちゃん。ですが彼女は確かに魔法つかいでした。
 新聞紙を使った窓ふきの知恵はみらいのまだ知らない、この世界に隠されているたくさんのワクワクものの不思議のひとつです。お婆ちゃんはそういう不思議をたくさん知っていて、ワクワクするものが大好きなみらいの好奇心をいつも充足してくれます。子どもはお婆ちゃんには敵いません。
 お婆ちゃんはそういった不思議を「魔法」と称します。どうしてそんな突拍子もない単語を好んで使うのか、今回はそのルーツを探る物語。

 結論から言えば、そのきっかけはお婆ちゃんが過去に魔法つかいと出会っていたからでした。風のように現れ、空飛ぶほうきで木から下りられなくなっていた仔猫を助け、そしてまた風のように去って行った銀髪の青年。魔法学校の校長先生ですね。彼と出会った思い出が、お婆ちゃんの世界観において「不思議なもの」を「魔法」とラベル付けしたのですね。
 けれどそれはあくまできっかけ。ナシマホウ界では「ほうきに乗って空を飛ぶ」 ような魔法は認知されていません。普通であれば「魔法」が存在する世界観は「常識」によって塗り替えられて幻覚だの物理現象だのといった物語に置き換えられることでしょう。
 しかしお婆ちゃんの世界観に宿る「魔法」は「常識の物語」に負けませんでした。「だって、その方が楽しいじゃない」 たったそれだけのメルヘンな感性によって。それは現実を否定するものではありません。

 例えば新聞紙が窓をきれいにするのは、インクの油分が油性汚れを吸着するからだと、物理学的には説明されます。けれどそれがどうしたというのです。そこに物理現象があったからといって、そこに魔法の力が介在しなかったと否定することはできません。そこに魔法があるかもしれないことを否定できる常識なんて、本来どこにもないのです。
 「目立つの、それが嫌なの。空飛ぶとかマジ危ないし」 もしほうきで空を飛ぶ魔法つかいがいるとしても、目立つし危ないし、いいことなんてあんまりありません。けれどだからといって、その常識はほうきで空を飛ぶ魔法つかいの存在自体を否定しきれるものではないのです。「でも君だけかけちゃおうか。魔法つかいプリキュア!」 あなたは魔法つかいの存在を信じたっていいのです。あなたは魔法つかいと出会ったっていいのです。だって魔法つかいが現実にこの世界に存在したっていいのですから。

 みらいとリコがお婆ちゃんを慕うのは、彼女にそういった「否定できないなにもかも」を受け入れる度量があるからです。ある意味「常識」以上に現実をあるがまま受け入れ、魔法のような、子どもがワクワクする夢をあるがまま肯定し、背中を押してくれる存在。
 彼女は魔法つかいです。子どもの夢を「そういうものがあったっていい」と現実の中に息づかせてくれる、子どもの願いを叶えてくれる、立派な魔法つかいです。

 ・・・完全に余談ですが、なんとなく勝木さんもお婆ちゃんのような人になってくれそうだと思わなくもなかったり。若い頃のお婆ちゃん、見た目も境遇も勝木さんによく似てますしね。

思い出が人をつなぎ、人が思い出をつなぐ

 みらいとリコが行使する奇跡の魔法の正体が「人と人とをつなぐ力」だという認識は・・・ええと、今まではっきり書いたことがありましたっけ? とりあえず私はこの物語をそういう物語だと認識しています。そういうふうにこの感想を書いています。もちろんこれは私の個人的な世界観であり、もし他の人にとっては全く別の物語だったとしても、私に否定できることではありませんが。
 今回もまた、彼女たちは知らず知らずに人とつながっていく奇跡の魔法を行使していきます。

 煎餅屋さんでは道に迷った買い物客と出会います。道を尋ねられたみらいたちは、魔法を駆使してまで一生懸命に煎餅屋さんの場所を探し出してあげます。
 「って、私たちなにやってんの?」 リコの疑問ももっともなこと、こんなの彼女たちの探しものとは何の関係もありません。「わかりません」と一言断って別れたっていいはずです。
 けれど、彼女たちの奇跡の魔法にとってはこれは大きな意味のあること。煎餅屋さんを見つけだしたみらいたちは「ありがとう」と買い物客に感謝されます。「わかりません」と断っては得られない人とのつながりを得ることができました。さらには偶然居合わせたお婆ちゃんと買い物客とまでもが新しいつながりを結びます。「あらあなた、服にゴミが」 それはほんの些細な、ささやかなつながりですが、きっとみらいたちが頑張らなければつながることはなかったでしょう。みらいたちが期待したような思い出の人との再会ではありませんでしたが、むしろ全く新しい出会いのきっかけをつくったという意味では同じくらい尊い価値のあることです。
 「いいことしたわね、ふたりとも」 その価値を見落とさずしっかり祝福してやるお婆ちゃんもステキ。

 公園では魔法の水晶をのぞき込んだ少年と出会い、そしてその子の手によってお婆ちゃんの絵画の先生とも出会います。たぶん魔法の水晶は絵画の先生ではなくではなくバラの公園を示したのでしょうけれど。
 みらいたち-買い物客、お婆ちゃん-買い物客、みらいたち-少年、みらいたち-絵画の先生と、ここまでですでに4つもの人と人とのつながりを築きました。みらいたちの目的はお婆ちゃんの思い出の人を探すことなのに、それとは関係なしに人と人とがつながっていくのは不思議なものですね。きっとお婆ちゃんに話せば「それは魔法だ」と祝福してくれることでしょう。みらいたちは今それだけ尊いことをしています。

 そして極めつけ。ほうきに乗ったみらいたちは偶然にもお婆ちゃんの思い出を再現します。過去の校長先生がそうだったように、木の上から降りられなくなった仔猫を助けるという、とびきりの善意とともに。「だって、その方が楽しいじゃない」 魔法の存在を受容するお婆ちゃんの世界観を築いたきっかけは、そう、この善意でした。魔法が善いものだったからこそ、お婆ちゃんはそれが「あってもいい」と思えるようになったのです。見間違いだとか勘違いだとか、そういう常識の物語で塗りつぶさず、「その方が楽しい」と思い続けられたのは、きっと彼女の見た魔法が善意によって行使されたものだからでしょう。
 「あのときと同じこの場所で、もう一度魔法つかいを見られるなんて。魔法ってやっぱりステキね」きっと彼女はこれからもナシマホウ界で魔法をふるい続けるでしょう。「だって、その方が楽しいじゃない」 と、特別な呪文を唱えながら。
 きっかけは校長先生の善意。そしてそれをみらいたちの善意がまた増幅しました。善意による魔法は、また別の新しい魔法を芽生えさせるのです。

 逆をいえば、そういう人と人とのつながりを築かず、人に何かを与えもしない闇の魔法なんか恐ろしくもなんともありませんね。たとえ闇の魔法がどれだけ強い力を持っていたとしても、プリキュアたちがつないだ人と人との絆、つないだ手と手の間からは常に新しい力が生まれてくるのですから。人と人とをつなぐ力は究極の魔法です。

 バラの花言葉は・・・お婆ちゃんの思い出を辿る物語に則るなら「ロマンス」と解すべきでしょうか。
 結局みらいたちはお婆ちゃんの思い出の人がどういう人か聞けずじまいでしたが、「お婆ちゃんの思い出の人は魔法つかいかもしれない」というロマンチックな夢にたどり着けたのですから。「だって、その方が楽しいじゃない」

 ガーネットの紅色は血の色を象徴します。そのため恋人や友人と交換し合うことで何よりも濃い血のつながり、つまり永遠の愛情や友情を得るための願掛けに用いられてきました。大切な思いは永遠に。あなたが思い出の永遠に色あせないことを願うならば、思い出はきっとあなたの血肉となり、あなたとともに永遠に生き続けるでしょう。

今週の魔法文字

校長先生の机に積み上がった本たち:「ABCDEF(鏡文字)」「ABCDEF」「OPQR VWXYZ 567」「QWR8 73-」「-YAHO -L5Z -CGUKERU -OKI」「GAND-」「ENKA-」「FIN-」
 作画が省力化気味なときは魔法文字も雑になりがちですね。観る側としてもここに力を入れるくらいなら別のところを充実させてほしいくらいですし。

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