魔法つかいプリキュア!第16話感想 どうして魔法を使えるようになったか覚えていますか?

心配ないわよ、リコちゃん。

魔法つかいプリキュア! リンクルスマホン

(主観的)あらすじ

 魔法界から補習メイトと仕立屋のフランソワが遊びに来ました。ナシマホウ界のまゆみと勝木さんとも合流して、みんなでショッピングモールで遊びます。不用心に魔法を使ったり魔法界のことを話したりする補習メイトたちにみらいとリコは戦々恐々。けれど友達みんなで遊んだ一日はなにより楽しいものでした。
 そこにスパルダがリンクルスマホンを奪おうと襲いかかります。スパルダは闇を生み出し、死力を尽くして攻撃してきますが、日常を大切に思うミラクルとマジカル、そしてふたりの無事を祈るはーちゃんの力によって、スパルダの闇は打ち払われます。
 そしてお別れのとき。魔法界のみんなは口々にリコが変わったと言います。今日一日が楽しかったのは、みらいとリコがふたつの世界の友達を繋いでくれたおかげです。

 スパルダの最期・・・というのはこの物語の敵の立ち位置上さして重大なものではなく、本題はむしろ幼い頃からリコの成長を見守っていた魔法商店街の住民、フランソワによる授業参観。リコは変わりました。初歩の魔法すらろくに操れなかった彼女が、今や立派に奇跡の魔法を行使しているのですから。
 物語上対して重要ではないのですが、今まで意味ありげにドクロクシーの膝の上に乗せられていた謎の本が今回リンクルスマホンと関連付けられました。まるで対の存在であるかのようなふたつの本。いよいよプリキュアと闇の魔法つかいたちとの利害の不一致が激化します。運命がどうとか才能がどうとか、そういった物語背景に一切関わりなく日常の中ですくすくと育ったふたりのもとに、大きな試練のときが近づこうとしています。

自分より先にいる友達

 ごく当たり前のように、ちょっと県をまたいだ程度の気楽さで、魔法界の友達が遊びに来ました。「約束しただろ、遊びに来るって」 今どきちょっと距離があるからって今生の別れになることはありません。障害は新幹線(あるいはカタツムリニア)の切符を買うお金と手間くらい。子どもなら保護者を説得する根気に取って代わるでしょうか。むしろ肝心なのは会おうとする気持ちです。・・・自分で書いててちょっぴりグサッときますね、この話。
 みらいとリコだって当初はお互いカタツムリニアで会いに行くつもりでした。それができることを理解していてなお別れがたかったのが第9話のエピソード。いつでも会えることと一緒に生活することはどうしても別の問題になります。
 なんとなくみらいたちはいつかこのふたつの違いを乗り越えてくれそうな気がしますが、はてさて、それは今後の物語次第。

 今回とりわけ重要なのは、かつてリコの保護者役だった魔法商店街のフランソワと、それからジュン。
 魔法学校2年生に進級したジュンはリコの知らない魔法を使いこなします。例えば、ということで連写写真。それ自体は使えるからといってさして便利な魔法ではないでしょうが、リコにとってはそういう問題ではありません。なにせリコの夢は「立派な魔法つかいになる」ことなのですから。同学年の友達に後れを取っていることに不安を覚えるのも仕方のないことです。
 本来、リコが自分の夢を叶えるために最適な場は魔法学校のはずでした。花のプリンセスを目指す春野はるかがノーブル学園を選んだように。魔法学校で学ぶことが「立派な魔法つかいになる」ための正道であるのはリコ自身が一番よく知っていることでしょう。ノーブル学園が夢を叶えるための学校であるように、魔法学校は魔法つかいを輩出するための学校なのですから。

 それでいて、自ら正道を外れた結果として得たもののひとつ、ナシマホウ界の知識ですら決定的な差を示すことができません。ジュンはナシマホウ界に憧れていて、よく勉強していたからです。自動車、ショッピングモール、自転車。本の知識だけでよくもまあこう細かい知識を仕入れたものですね。プリント機を見つけたのも、事前にそういう知識を持っていたからでしょうか。
 これもリコが「立派な魔法つかいになる」ためには必ずしも必要な知識ではありませんが、努力家のリコにとってはプライドの問題です。だって新しい魔法に代わる何かしらの成果を自分自身に示せなければ、まるで自分がサボっていたかのようではありませんか。

 さらに3つ目。ジュンは夢すら語ります。「ナシマホウ界のことをもっと知りたいんだ。だから学校を卒業したら来るつもりだよ」
 ある意味でリコの自尊心を支える最も大きな要素が「夢」でした。魔法を使えず補習、ひいては退学の危機に、それでも諦めきれずにリンクルストーンを求めたのは夢のためでした。魔法が苦手という恥をみらいにさらけ出したとき、それでもみらいが尊敬してくれたのが、夢を持っていることでした。
 「立派な魔法つかいになる」夢があるからピンチのときも頑張れたし、友達や周囲の人に愛された、というのがリコのキャラクターです。もちろんそれだけの子でないことは視聴者や今のみらい、フランソワあたりからすると明らかなことなのですが、彼女の視点からするとおそらくそんな自己評価でしょう。褒められたいときに限って彼女は夢を語りすぎです。
 けれど、実はジュンにも夢がありました。魔法でも、知識でも、あげく夢ですらも、リコはジュンに敵いません。あれだけ自分を褒めて、尊敬してくれたみらいですら「すごいなー」「ジュン、詳しいね」「ジュンにはそんな目標があったんだね。すごいなー」 とジュンの方ばかりを褒めています。・・・この子はこの子でそろそろ成長する必要がありますね。

 ひょっとして自分はとんでもない堕落をしているのかもしれない。みらいと一緒にいるために魔法学校を出たのだからそこに後悔はないとしても、自分の夢に対しては不誠実なことをしているかもしれない。今回の物語はそういうことですね。
 最近は未来の夢に向きすぎていたリコの視点を現在の幸せに向けることが主なテーマだったわけですが、そうすると今度はカウンターとして、本当に夢以外に目を向けていてもいいのか、それで後れを取らないのかという不安が押しよせるわけです。

選んだ道の先

 幸いなことに先駆者がいました。「私もこっちにいたときはちょっぴり不安だったわ。魔法界のみんなより後れを取ってるんじゃないかって」 まるでリコの心中を言い当てるように自分の経験を語り、そのうえでフランソワは優しく語りかけます。「でもね、こっちでは魔法学校では教わらない色んなことが勉強できてよ」 まさに今リコが経験していることそのものです。
 ナシマホウ界への留学という、自分の選んだ道の先に、自分の尊敬している大人のひとりが立っているのであれば、これほど心強いことはありません。
 それを受けてみらいも、それはリコも言っていたことだと指摘します。「無駄な努力なんてない。どんなことでも一生懸命頑張れば、きっと自分の力になる」 この子、こういうところは聡いんですよね。リコの隣でジュンを褒めちぎったあたり、またしてもリコの悩みに気づけていないのでしょうが、そのくせフランソワのアドバイスの本質はしっかり捉えてきます。とても賢い子です。この子の問題はあくまで、子どもじみたヒーロー信仰でリコを色眼鏡かけて見てしまっていることだけ。

 魔法商店街のフランソワと友達のみらい、大好きなふたりに肯定されて、リコは安心します。
 「立派な魔法つかいになるってリコみたいに」 今一度自分の夢をみらいに示されて驚くリコをきっちり描くのがプリキュアシリーズの老練さですね。そうですとも、みらいの目から見てこの道の先にリコの夢があるというなら、それはリコにとって信じるに値する根拠となります。

奇跡の魔法

 リコの道行きをめいっぱい肯定した上で、さらにみらいは自分の夢について語ります。「いっぱいいっぱい色んなこと経験して、たくさん頑張ってみたら、何か目標が見つかるかなー、なんて」 将来の夢について考えたこともなかった彼女が、リコの夢に憧れ、今や自分も夢を持ちたいと願うようになりました。これはリコの手柄です。リコが努力して見せたから、みらいとともに生活したから、魔法学校を出てナシマホウ界へやってきたからこそ得られた、彼女だけの成果です。
 春映画でソルシエールが得た究極の魔法は歌でした。死に別れた先生と心をつなぎ直し、歌を聴く誰もの心に愛や勇気を与える魔法。リコがやってみせたのはそれと同質のものです。ただ行動するだけで、言葉を語るだけで、誰かの心を動かすことができる、誰かの未来を変えることができる。これはそういう、時間や心の垣根を超越するただひとつの力です。

 みらいだけではありません。魔法界のジュン、ケイ、エミリー、ナシマホウ界のまゆみと勝木さん。違う世界のみんなを引き合わせて、みんなで楽しい時間を過ごすことができたのもリコとみらいがいたおかげです。強大な闇の魔法つかいたちの魔法だって、心を持つ者に作用させることはできません。けれど、リコやみらいにはそれができるのです。だからきっと、これは奇跡の魔法。
 この奇跡の魔法を行使していること自体が、リコが魔法学校を飛び出して別の道を歩み始めた価値の証明です。

 そもそもが、ひとつ思い出してみてください。リコが氷の魔法を成功させたときのことを。あのときは姉であるリズ先生への思いを込めて初めて成功したではありませんか。リンクルストーン・ダイヤを目覚めさせたときだってふたりで心をひとつにしたから。ほうきだってお互いを助けるときはいつもよりもずっと上手に扱えていました。
 手と手を繋ぎ、心と心を繋ぐ。彼女たちの使う魔法はもともと心に宿る力なのだと思われます。そうであるなら、今自分たちの心を育んでいるリコは立派な魔法つかいになるためのむしろ正道。回り道をしているようでいてしっかりまっすぐ夢へと進んでいます。

 リコは自分がどれだけすごいことをしているのか、まだ気付いていません。かつて自分のことだけで手一杯だった頃と変わって、友達と一緒にいることを喜べるようになった自分に気付いていません。
 その価値を正しく理解できているのは、今はまだ大人であるフランソワだけ。ふたつの世界の友達と遊べる機会があるなら引き合わせ、知らないことがあるなら教えてあげ、迷っているなら導いてやる。大人はそうやって子どもにたくさんの祝福を与えてやることができます。けれど、価値あるものにたどり着くことができるのは子ども自身です。だからこそ、大切な子どもがそこにたどり着いたならせいいっぱい抱きしめて、またたくさんの祝福を贈りましょう。
 どうかこの子が夢を叶えますように。どうかこの子が幸せになりますように。

 リコの私服にデザインされている花はスミレ。花言葉は「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」です。
 もともと大言の割に謙虚で誠実な努力家だったリコですが、大きすぎる夢を追うあまりそのステキな本質はなかなか発揮できずにいました。ナシマホウ界にやってきて、身の回りの小さな幸せにようやく気付けるようになった彼女に祝福を。

今週の魔法文字

光るキャンディ:「A」「V」
 そのつもりでデザインされたのかはきわめて疑わしいですが、魔法文字に見慣れているとこういうのも文字に見えて仕方ありません。魔法文字のAとVは同じ形を半回転した関係なので、ピンクのキャンディはA、ブルーのキャンディはVと読むことになります。

ナシマホウ界最強ガイド:「’95 NASIMAHOKAI JY?? TEN」「’95 NASIMAHOKAI -? THI」「KETTEIBAN」
 ここに来て全く読めない文字が出てくるとは・・・。ところで95年って書いてありますが魔法界の暦はどういう体系なんでしょうね。あるいは20年前の古書?

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