魔法つかいプリキュア!第25話感想 悪いことをしちゃいました。さて、どうしますか?

みらいとリコの分も私ひとりで頑張るんだから!

魔法つかいプリキュア! Blu-ray vol.3

(主観的)あらすじ

 今日は家族と友達といっしょに海にやってきました。なにかと魔法を使いたがるはーちゃんに対してリコは「魔法を使うところを他の人に見られたら絶対ダメだからね」 と釘を刺しますが、はーちゃんは聞きません。はーちゃんの魔法のせいで海はハチャメチャ。そのたびにみらいとリコが収拾をつけなくてはいけないので、ふたりともヘトヘトに疲れてしまいます。
 そんなふたりの気苦労には気付かないまま、はーちゃんは疲れ切った様子のふたりのためにかき氷を買いに行きますが、あいにく製氷機が修理中で作ってもらえません。困ったはーちゃんは「洞窟の中に天然の氷がある」というヤモーのウソに騙されてしまいます。
 洞窟の罠の中でヤモーははーちゃんを弾劾します。「あなたの魔法、確かに大したものですが、付きあわされたふたりはヘトヘトでしたねえ」 はーちゃんは自分のしたことにショックを受けますが、しかし「みらいとリコの分も私ひとりで頑張るんだから!」 と自分を奮起させます。さすがにひとりでの戦いは厳しいものとなりましたが、キュアミラクルとキュアマジカルが助けに来てくれて勝利することができました。「もう。ひとりで無茶したらダメだよ」
 戦いのあと、はーちゃんはみらいとリコに謝りますが、ふたりははーちゃんの気持ちをちゃんと理解してくれていました。今度はちゃんとふたりが喜ぶように魔法を使って、みんなでかき氷を楽しみます。

 追加戦士恒例の禊ぎ回。キュアパッションやキュアビートなどと異なり、はーちゃんには忌まわしい過去がありませんが、代わりに子どもの奔放さをうまく当てはめて同様の物語を描いています。プリキュアシリーズの禊ぎの物語は独特で、反省すること、償うことよりも、これからどうするのか、どうしたいのかに重きが置かれます。
 悪いことをしたなら反省しなければいけません。けれど反省しなければいけないのはどうしてでしょうか。反省を生かしてあなたがより良く生きるためです。反省自体は何も生みません。反省したところで迷惑を被った誰かが救済されるわけでもありません。プリキュアはこういうところがとてもシビアです。反省を生かして何かを生みだしたいなら、誰かを救済したいなら、あなたは悔やんでばかりいないで前に進むべきです。こういう生産的な姿勢を子ども向け番組ではっきりと提示するプリキュアを、私は好ましく思います。

 さて一方でヤモー。いよいよ当初の復讐者としての動機は完全に失われ、ミラクルマジカルよりもリンクルストーン・エメラルドに執着するようになりました。どう考えても不自然です。「なるほど、『そのような』策が」「『我らが』悲願、エメラルド」 これはいよいよ“大きな災い”が姿を現す予兆でしょうか。
 もし過去に猛威を振るった“大きな災い”の正体がプリキュアを知らないラブーだとしたら、プリキュアが何を理由に“伝説の魔法つかい”と称されるようになったのかわかりませんしね。
 そんなこんなで次回はヤモーとの決戦となる様子。今や復讐者ですらなくなったヤモーに、敬愛していた主人の最後の形見はどんな結末をもたらすのでしょうか。

言いつけは守っているよ?

 「魔法を使うところを他の人に見られたら絶対ダメだからね」「よーし! 誰にも見られずに海を楽しくしちゃお!」 まるでとんちのようにリコの言いつけをかいくぐったはーちゃん。彼女はどうして魔法がバレてはいけないのかを理解していないので容易にこういった発想に至ってしまいます。

 言葉尻の辻褄さえ合えば言いつけを守ったことになる。あなたも身に覚えはありませんか? 私は「寄り道しないで帰ってきなさい」 と言われて、通学路で2時間くらい遊んでから帰宅してエラく叱られた記憶があります。寄り道(は)していないのになんでこんなに叱られるのかと、理不尽に思ったものです。
 子どもにとって約束ごとは理不尽なものです。言いつける側は当たり前に理解している「どうして」を子どもは知らないからです。寄り道がいけないなら寄り道せずに遊ぼう。けれど言われたことだけ守っていても何故か叱られる。「早く帰ってきてほしい」 という意図まで伝わっていなければ、実は約束ごとは正しく機能しません。

 蛇足ながら、憲法問題で法解釈がどうとか話題になるのもこういうことですね。成立当時の社会背景を鑑みなければ条文本来の正しい意図は理解できません。(もっとも、条文の改正より社会情勢の方が容易に変遷してしまうので、ある程度の範囲までは逆に社会事情に合わせて、なるべく法解釈の方を変えて運用しようとするものなのですが)
 大人ですら必ずしも理解しているとは限らない「どうして」を子どもが理解するのはとても難しいことです。

 そもそもそのあたりの理解にギャップがあることに、言いつけた側のみらいとリコからして気付いていないんですよね。
 はーちゃんがヤモーに言われるまで自分のしたことを理解できていなかったのは仕方のないことです。

どうやって償えばいいのかな?

 どうしてかわからないけれど、みらいとリコがクタクタです。→みんなでかき氷を食べれば元気になるかも!
 お昼には直るって言っていたのに、まだ製氷機が直っていません。→洞窟にあるという天然の氷を持ってくればかき氷が食べられる!

 とっても子どもらしい子どもであるはーちゃんはいつも前向きです。なぜかみらいたちがクタクタ、なぜか製氷機が直っていない、そんな(彼女視点での)理不尽に対して、彼女はいつだって自分にできることを探します。
 このあたりの気質は手詰まりになると足踏みしてしまいがちなみらいとリコとは大きく異なる部分ですね。ドキドキ!プリキュアの相田マナがそうだったように、この気質はどんなときでも希望を失わずに周りの人を引っ張っていける強さへとつながります。はーちゃんもこの前向きさがあるからこそ、校長先生を説得してみらいたちみんなとナシマホウ界で生活する権利を得ることができました。
 けれど今回は不幸にして空回り。今のはーちゃんには、相田マナにはあってもはーちゃんにはない、大切なものが欠けているからです。

 もうひとつ、彼女は理不尽に対して前向きな姿勢を示します。
 「あなたの魔法、確かに大したものですが、付きあわされたふたりはヘトヘトでしたねえ」「みらいとリコの分も私ひとりで頑張るんだから!」

 さっき自分は悪いことをしてしまいました。みらいとリコがクタクタだったのはそのせいでした。けれどそのことを知ったのは全てが終わった今でした。
 一連の因果自体はなんら理不尽なことではありません。しっかり反省すべきはーちゃんのあやまちです。けれど反省したからといって敵の罠にかかった今の理不尽な状況は何も変わりません。反省はあとにして、今は自分にできることを探しましょう。
 キュアミラクルとキュアマジカルはいつもあなたを守ってくれていました。あなたの大切なリンクルストーン・エメラルドを渡さないと言ってくれていました。けれど彼女たちは今ここにいません。あなたのせいで。
 そうであるならば、あなたがするべきことはきっとひとつ。キュアフェリーチェに変身して、ミラクルとマジカルの分まで頑張ることです。

本当にひとりでできるかな?

 ・・・いいえ、間違いです。あなたが今するべきことはミラクルとマジカルの分までひとりで頑張ることではありません。だっていくら強いあなただって3人分もの力なんて無いでしょう?
 善戦するフェリーチェでしたが、ヨクバールにあっさり捕まり、絶体絶命のピンチに陥ってしまいます。拘束して丸鋸で切断だなんてちょくちょくグロい戦術をとってきますね闇の魔法つかいさんたち。

 そこを助けてくれたのは他でもない、ミラクルとマジカルです。はーちゃんがキュアフェリーチェになる前からずっと彼女を守ってくれていた、大好きなお母さんたちです。
 「大丈夫? ケガはない?」「もう。ひとりで無茶したらダメだよ」 ミラクルたちは迷惑を被ったことについて何も咎めず、ただフェリーチェの身だけを心配してくれました。

 さっきはーちゃんがすべきだったのは、ひとりでミラクルとマジカルの分まで頑張ることではありません。だって彼女には3人分の力なんてありませんから。あえて言うなら彼女はどうにかして罠を脱出し、ミラクルたちと合流すべきでした。
 今できることを探す前向きさは確かに尊いですが、できないことまでやろうとする姿勢を前向きとはいいません。もしかして責任を感じて自分を追い詰めてしまったのでしょうか。
 先ほど相田マナにはあって今のはーちゃんにはないものがあると書きましたが、それがこのことです。はーちゃんはヘタに万能の魔法の力を持っている分、自分にできることとできないことの区別がついていません。なんでも自分の力でやろうとするあまり、誰かに頼ろうという気持ちが欠けています。
 (ちなみにそのマナも再来週のドキドキ!プリキュア再放送で人を頼らずひとりで抱えこんで失敗します)

 例えばみんなでナシマホウ界で暮らすことであるとか、例えばいつもよりも美味しくミルクを飲む方法であるとか、例えば部屋をワクワクもんに飾りつけることであるとか、本当は彼女の魔法にすらできないことをたくさん目の当たりにしているはずなのですが、彼女はまだそのことに気付いていません。自分たちがそれらを魔法とは違う奇跡の魔法の力によって解決してきたことに、彼女はまだ気付いていません。
 このあたりのことに気付けないでいる事情はみらいとリコと同じですね。みらいとリコはよくできた大人たちに愛されて育ったので、ちょっと困ったことがあっても大人たちが先回りして手を差しのべてくれていました。はーちゃんも同じく、みらいとリコとモフルンがよく気遣ってくれてなんでも先回りしてくれていました。
 だから彼女たちは協力することの素晴らしさや、親切にすること、親切にされることのありがたみを知っていながら、自分から助けを求めることの大切さを知りません。ある意味とても子どもらしく、ある意味ちょっぴりいびつですね。
 第23話の物語がそうであったように、本来はーちゃんの前向きさはこの問題の突破口になりうるのですが・・・、どうやら彼女たちがそれを自覚するようになるのはもう少し先の様子。

 「ふたりとも来てくれてありがとう」「何言ってるの」「当たり前でしょ」 そう、幸せなことに、それは彼女たちにとって当たり前のことです。たくさんの物語を経て、今や手をつないでくれる誰かはあなたのすぐそばにいます。あとはあなたが手を伸ばすだけ。
 たったそれだけで、ドクロクシーをやっつけた奇跡の魔法の力は、もっとずっと、果てしなく大きくなるでしょう。

それから。では、あなたにできることは?

 今話はちょっとしたくすぶる思いをはーちゃんに残しています。おそらく次回のための伏線でしょうが、さて、このくすぶる思いは追い詰められたヤモーとの邂逅を経て、彼女にどんな成長をもたらすのでしょうか。

 「ごめんなさい! 私、みらいとリコを、みんなを楽しませようと思ってたの。でもそれがふたりに迷惑をかけてたんだね」 ヤモーの弾劾を受けてはーちゃんは謝罪しますが、よくよく見るとこの謝罪にはプリキュア禊ぎ回に付きものの「どうしたいのか」が含まれていません。
 「大丈夫。はーちゃんの気持ち、ちゃんとわかってるよ」「それにこの程度のこと、私たちなんてことないし」 みらいたちの言葉もはーちゃんのあやまちに対するフォローに終始し、はーちゃんがこれからどうするべきかには言及しません。
 「はーい! でも・・・」 ふたりに優しい言葉をかけてもらってはーちゃんは喜びますが、けれど表情に曇りが残ります。

 はーちゃんは魔法という自分の持てる力を最大限に活用して、みんなを楽しませようと頑張りました。けれどその行為はヤモーに弾劾されました。リコも「今日みたいにたくさん魔法を使うのはなしでお願いね」 などとことあるごとに釘を刺してきます。
 さて問題です。もし魔法を使ってはいけないのならば、はーちゃんにできることとはいったいなんでしょう。

 第三者として俯瞰している私たち視聴者にはわかります。彼女にしかできないことがたくさんあることを私たちは見てきました。
 けれどはーちゃん自身にその答えはまだ見えません。自分にできることは魔法だけ。
 みらいとリコのように誰かをフォローしてあげることができません。キュアフェリーチェに変身しなければ誰かを守ってあげることもできません。身体は大きくなったけれど、魔法が使えるようになったけれど、それ以外は小さかったあの頃のまま、何も変わりません。
 さて、あなたにできることとはいったいなんでしょう。

 くすぶる思いに答えが出ないまま、さしあたって彼女はまた魔法の力でみんなを笑顔にします。
 ええ、かき氷だって、砂浜のハチャメチャ騒ぎだって、みんな笑顔でしたよ。いつか彼女がその意味に気付いてくれますように。

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