ソウルブレイダー リプレイ風のなにか1 いつか帰るところ・・・鉱山町グラスバレー

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最初のボスって実は薬草持って正面から剣を突き刺しているだけで倒せるんですよね。

蘇る生命

 少年が最初に降り立った地は鉱山町グラスバレー・・・と呼ばれていたはずの場所。悪魔にあらゆる生命が捧げられた今はその面影もありません。ただただ一面の草原が広がるばかり。(草、生き残ってるじゃないか!)
 少年があたりを探索すると、岸壁にぽっかりと開いた穴を見つけます。洞穴のそばまで寄ると、そこで偶然災禍を免れていたチューリップが少年に語りかけます。
 「この奥にある採掘場にはたくさんの村人の魂が封印されているの。彼らの魂を解放すれば、町はだんだん元の姿を取り戻していくわ」

 洞穴の奥、採掘場には無数の小鬼が蠢いていました。入口前に巣くっていた数体を打ち払ってその巣を封印すると、巣の中からおばさんの魂が洞穴の外へと飛び出していきます。
 少年がその魂を追いかけて地上へ戻ると、見渡す限りなにもなかった草原に、1軒ぽつんと家が建っていました。先ほど解放した魂はどうなっているでしょうか。気になって家の中を覗くと、そこには身なりのいいおばさんがひとり、寂しげにため息をついていました。
 少年に気付いたおばさんはぱっと表情をほころばせ、早口に身の上を語りだします。
 「うちの人は村長をやっていたんだ。ところがある日突然いなくなり、やがて村人たちも・・・。あたしはひとりぼっちでさみしくてしょうがないよ。どうだい、あんたこの家の子になる気はないかい?」
 少年は天空人です。地上の人間の生活様式を知らず、従っておばさんの提案の意味もわかりません。けれど彼女があまりに真剣な面持ちで言うものですから、思わず「はい」と答えてしまいました。
 「本当かい! じゃあこれからお前のことはキミと呼ばせてもらうよ!(すでにややこしい) 2階はお前の部屋だと思って使っておくれ」 それでもおばさんがあんまり嬉しそうにしているものですから、少年はきっとこれで良かったのだと納得するのでした。

 それから少年はおばさんの家を拠点に、毎日採掘場へ潜りました。
 「キミや。お前はいつもふらふらと歩き回ってばかり。あたしは心配でしょうがないよ」
 おばさんはまた表情を曇らせましたが、少年には神様から授かった大切な使命があります。これ以上気にしてなんていられません。
 道具屋、チューリップ、橋番、ツタ、水車番、おじさん、ヤギ、建築家、チューリップ、ヤギ、道具屋の子ども・・・たくさんの魂を解放しながら、少年は採掘場の奥へ奥へと進んでいきます。存外に人間以外がたくさん混じっていますが、このゲームはそういうゲームです。

リーサ

 気がつけば地上はずいぶんと賑やかになっていました。
 とある小さな小屋に住むおじさんは「女房が病気で死んでからしばらくして、一匹のヤギが迷い込んできたんだよ。俺は寂しくていっしょに暮らすことにしたんだ」 と話しますが、そのヤギの魂はまだ見つかりません。採掘場の魔物はあらかた討伐し終えたはずですが、いったいどこに封印されているのでしょう。

 町の端にある家では、儚げな印象の少女が静かに眠っていました。未だ魂が解放されていないのか、どうやら家族は誰もいないようです。ふと興味を惹かれて、少年は彼女の額に夢を覗き見る道具「ドリームロッド」を当ててみます。

 夢の中で少女は泣いていました。
 「お父さん・・・。あたしを置いてどこへ行ってしまったの・・・」
 どこからともなく、そんな彼女に答える声が聞こえてきます。少女と同じくどこか寂しげな声です。
 「リーサ・・・。お前の目の前にいる人に全てを話しなさい。そして私が使っていた絵筆をその人に渡してあげなさい。彼はきっとお前の力になってくれる」
 その声はどうやら少女の父親のもののようです。少女・・・リーサが父親を呼ぶ声が響きますが、その向こうにあるのは静寂ばかり。

 まどろみから醒めたリーサの目の前にあったのは、見知らぬ少年の顔。
 「きゃあーっ! あなた誰よっ!! 勝手に人の家に入ってこないでっ!」
 当然の反応ですね。少年はおばさんとの反応の違いに理不尽なものを感じながら家を出ようとしますが、辛うじて先に冷静を取り戻したリーサに引き留められます。
 リーサは夢で聞いた父親の声に従って、少年に父親の置き手紙を見せます。父親の名はレオ。天才発明家と呼ばれていました。彼は急に家を出なければ行けない理由ができたらしく、そして二度と帰って来られないことを予感していたようです。手紙の終わりには、困ったことがあれば村長を頼れ、4匹のペットたちと仲よくやってほしいと書いてありました。
 リーサはこの手紙を見つけたショックで身体を壊したようです。彼女には母親がおらず、村長さんも今は不在です。少年の他に頼れる人は誰もいません。
 「見ず知らずのあなたにこんなことを頼んで悪いんだけど、お父さんを探してくれないかしら」
 申し訳なさそうに暗く沈む少女の声に、少年は初めて受けた頼み事の重みがズシリと胸の奥に落ちていくのを感じるのでした。

『悪魔の世界』

 不気味な絵の噂を耳にしました。飾ったときは何も描かれていなかった絵の真ん中に、いつの間にか寂しそうな人の顔が描かれているというのです。少年はその絵を調査しようと持ち主の家を訪れますが、何気なくその絵に触れたとたん、突如絵の中に吸い込まれてしまいます。

 そこは魔物が蠢く気味の悪い宮殿でした。火吹きトカゲ、動く鎧、金属でできた歯車のような怪物・・・。たくさんの魔物が巣くい、つまりはたくさんの魂が封印されていました。もしかすると村長さんもここに封印されているのかもしれない。少年の脳裏に浮かぶのは寂しそうなおばさんと儚げな少女、ふたりの顔。少年はこのとき初めて魔物を「憎い」と思いました。
 魔物を斬り裂き駆けた宮殿の最奥、そこには巨大なバケモノが悠然とたたずんでいました。燃えるような赤髪に青い皮膚、曲剣のごとき鋭い爪、焼けつく吐息。
 少年は街の人に聞いたこの絵のタイトルを思い出します。蒸発した天才レオが描いたというこの絵の名は『悪魔の世界』。今目の前に立っているバケモノは人間の飽くなき欲望の権化か、それともそれを真似て嘲る下種な悪魔か。少年には判断がつきませんでした。
 今の少年にわかることはただひとつ、今自分が怒っていることだけ。焦熱の炎を突き破り、蒼刃の嵐をくぐり抜け、少年は剣を構えてがむしゃらにバケモノの胸へと突進します。

 村長さんは自宅の2階の部屋で少年を待っていました。そこは少年がしばし滞在していた部屋。少年の胸にようやくこの町を元に戻せたんだという実感が湧いてきます。あの恐ろしいバケモノが封印していたのは村長さんの魂だったのです。
 村長さん(それにしてもここは町なのか村なのか)はレオに頼まれたと言って、少年に茶色い石を手渡します。それは魔王デストールの居城へつながる道の欠片、ブラウンストーン。少年はありがたく受け取り、天に戴く神様の命に従って次の土地へと向かうことにします。どこか後ろ髪を引かれる思いを感じながら。

 町を出る道すがら、少年は奥さんを亡くしたというおじさんの家にヤギが1頭いるのを見つけました。この動物もまた絵の世界での戦いで解放された生命のひとつなのでしょう。
 ヤギは少年にこっそり語りかけます。
 「人は死ぬと生まれ変わるっていう話があるけど本当だったのね。言葉は通じないけど、私はあの人と一緒にいられて幸せよ」
 そういえばあの病弱な少女も幼いころ母親を亡くしたと言っていました。彼女の母親がいつかどこかで生まれ変わるためにも、少年は魔物たちからあまねく生命を取り戻さなければなりません。

 生命の営みを間近に見た少年は決意も新たに一路グリーンウッドの森へ。生命を巡る物語は続きます。

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