ソウルブレイダー リプレイ風のなにか2 勇者の眠る場所・・・グリーンウッドの森

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神殿がらみの話はアクトレイザーネタをほんのり絡めつつでっち上げた創作です。

忘れられた神殿

 少年が降り立った地は赤茶けた荒野でした。立ち枯れた樹木がぽつりぽつり残っているのが、辛うじてここがかつて森だったことを教えてくれます。グラスバレー同様、ここにいた生命たちも全て人間の欲のために奪われ尽くしたのでしょう。

 少年は魔物の気配を感じ、沼地へとわけ入ります。泥の魔物やツタの魔物を斬り捌きつつ奥へ進むと、やがて3つの巨大な建造物を見つけました。
 少年はこれらが何であるかを知っています。
 これらは人間が神と共に生きるためにつくった神殿。実りあれば感謝とともにそれを納め、災害あれば畏怖とともに許しを請うた場所。なかには子どもの成長を日々うれしそうに報告してくる夫婦もいたそうです。人間たちが今よりずっとか弱かった時代、彼らが神様の力なしには生命をつなぐことすらできなかった時代の遺物です。
 やがて人間たちは神様を必要としなくなり、いつしか神殿も忘れ去られていきましたが、神様はそれをただ優しく見守っていました。少年が神様のもとで修行していたころ、彼は「どうして人間のために力を使わないのか」 と問うたことがありましたが、神様はその答えを教えてはくれませんでした。その答えを知るのも修行の一環だと。

 今、増長した人間たちは道を誤り破滅しようとしています。けれど、たとえ人間たちが神様を忘れてしまったとしても、神様は今でも人間を見守っているのです。少年は改めて神様の人間への深い愛を知り、敬愛する主と人間との絆の象徴を侵す魔物たちに向かって剣を振り下ろします。

犬の勇者

 「ここはグリーンウッド。ターボという名の犬が開拓した、動物たちの隠れ里です」 とある目的のため一旦森に帰ってきた少年に、蘇ったばかりの樹木がささやきます。
 ターボ。どこかで聞いた名でした。さらに別のところで出会ったリスの話から、少年はその名をどこで聞いたか思い出します。
 「犬のターボは昔レオとかいう人間と暮らしていただけあって、いろんなことを知っていたよ。彼は樹木から木の枝を分けてもらい、なんとイカダっていう沼を渡れる道具をつくったんだ」
 そう、その名はリーサの父レオの置き手紙にあった、彼のペットの名前でした。どうやらターボという犬はレオのもとを離れ、ここグリーンウッドに動物たちの楽園を築いたようです。
 レオの手がかりを求めて、少年はターボについて聞いて回ります。グリーンウッドに蘇った動物たちは口々にカーボへの敬意を語ってくれました。彼は指導者としてずいぶん愛されていたようです。そして・・・どうやら彼はすでに亡くなっていたようでした。

 動物たちの墓所のひときわ目立つところに標がありました。「グリーンウッドの創設者、偉大なる犬のターボここに眠る」
 そしてその墓標に寄りそうように1羽の小鳥が眠っています。少年はターボのことを詳しく知るべく、その小鳥の小さな頭にドリームロッドをかざします。

 少年と小鳥の前に、美しい毛並みをした犬が立っていました。
 小鳥は誇らしげに胸を張り、朗々と彼の業績を語りだします。彼がグリーンウッドの森にたどり着いたときのこと。人間から学んだ知恵を使って瞬く間にこの地を開拓してみせたこと。そして・・・。
 「ターボ様は魔王デストールに魂を抜き取られることを拒み、このグリーンウッドを守るために、最後まで、魔物と戦って、死んで、いったのです・・・」
 語りがかの犬の最期に近づくにつれ、声は消え入るように、鼻をすする音も入り交じり、それでも小鳥は最後まで胸を張ってぽつりぽつりと語りきりました。その言葉に小鳥の深い敬愛と哀惜が込められているのは、つい先日地上に降りたばかりの少年にも痛いほどよく伝わってきました。
 すっかりしょげかえった小鳥を愛おしそうに見つめる犬は、それから少年に向き直り、威厳ある声で話します。
 「光の神殿へ行き、森の精霊を救い出すのです。その時あなたの探しているものがきっと見つかるはず」
 ターボは少年の顔を見ただけで全てを察していました。そして彼は再び小鳥に理知的な瞳を向け、小さな彼女のために目線を下ろして優しく言葉をかけます。
 「チッチよ。この人にイカダの扱い方を教えてあげなさい。私がいなくなった今、お前がグリーンウッドを守らねばならないのだよ。しっかりな」
 死してなお、この偉大なる犬は指導者でした。彼は本当に全てを理解していました。少年が森に戻ってきたのは、最後の神殿への道行きにイカダたちの協力を取りつける必要があったためだったのです。
 残すべき言葉を全て済ませた偉大なる犬はゆっくりと光の中へ溶けていきます。
 「ターボ様待って!」 小鳥の絶叫が、この優しい夢の終わりの合図。少年の瞳に、雄々しくも賢い勇者の姿が強く焼き付きます。

モグラの勇者

 「こ、ここをどいてほしけりゃモンモってモグラの女の子の持ち物を、も、持ってくるんだな!」
 小鳥からイカダを操る方法を教わった少年が沼地に向かう途中、彼は一匹のモグラと出会いました。とても臆病そうな目をしたモグラは、しかしその小さな身体をめいっぱいに広げて、道を阻もうとしています。
 またいで超えるのは容易ですが、少年は彼の必死さが気に掛かり、しばしモンモという名のモグラを探すことにしました。

 モンモは森の片隅にひっそり立っていました。少年が近づくと彼女は焦点の合わない瞳を少年に向けて話しかけます。
 「あたしはモグラのモンモ。モグラは地上だと眩しくて目が見えないの。あなたの気配についていくから家まで送ってくれないかしら?」
 少年は彼女に先ほど出会ったモグラのことを話しますが、どういうわけか彼女は全く関心を示しません。繰り返し繰り返し、家に送ってほしいと頼むばかり。
 少年が彼女を連れてそれらしい巣穴を探し出すと、彼女は「なにかお礼をしなくちゃね」 と、少年を待たせて巣穴に潜りました。ところがいつまで待ってもモグラの少女は戻ってきません。少年が巣穴に向かって声をかけると、どういうわけか先ほどの少女とは別のモグラが顔を出します。
 「えっ? ここにモグラの女の子が入って来なかったかって? ここにはずっと俺ひとりだったよ」
 キツネにつままれたような顔をする少年とモグラ。モグラはふと、ある噂話に思い当たります。
 「そういえば前にこんな話を聞いたことがある・・・。このあたりに住んでいたかわいいモグラの女の子が人間に殺されたとか。俺、なんだか恐くなってきた・・・」
 青ざめたモグラがもう一度巣穴に潜ると、不思議なことにそこにはさっきまではなかったリボンが落ちていました。心底気持ち悪そうにするモグラからリボンを預かり、少年は最初のモグラのところに戻ります。

 「そ、そりゃあモンモのリボン! わ、わかった!ここをどくから、そ、それを俺にくれよっ!!」
 モグラは少年の手にあるリボンをめざとく見つけると、それを強引にむしり取り、そしてまるで空気に溶けるようにその場から消え去ってしまいます。モグラの姿もリボンも、どういうわけか目の前にはなにも残っていません。
 と、先ほどまでモグラがいたところの後ろから、また別のモグラが顔を出します。彼は驚いたような、納得したような、複雑な面持ちで彼とモンモについて語りだします。
 「あいつが幽霊だったなんて・・・。モンモって女の子は俺たちふたりのマドンナだった。あるときモンモが人間に捕まり、あいつはその後を追っていったまま、ずっと行方不明だったんだ。それがふらりと戻ってきたもんだからどうしたのかと思ってたけど・・・」
 彼と彼女の無念を、少年はほんの少しでも晴らすことができたのでしょうか。自問する少年に、モグラは話を続けます。
 「さあ。この腕輪を使ってグリーンウッドを蘇らせてくれ。あのふたりもここが本当に平和になることを望んでいるだろうから。マドンナをあいつに取られちまってちょっと悔しいけど、僕はふたりの冥福を祈ってるよ」
 鈍く光る古めかしい銀の腕輪は、臆病そうでありながら勇気を振り絞っていた、あのモグラの瞳と同じ色の輝きを纏っていました。

 最後の神殿の最奥、元々は祭壇の間としてつくられたであろうその部屋に、グラスバレーで見たバケモノよりもさらに巨大な石像が3体、縦横無尽に暴れ回っていました。
 巨大な重量物が所狭しと暴れ回るその光景はとても恐ろしくありましたが、少年はそこに、雄々しく立ち向かう1匹の犬の姿を幻視します。その隣に並び立つとなんともいえない心強さが胸に湧き上がってきて、なんだか石像たちがひどくちっぽけに見えてきました。右腕につけた腕輪は暖かく、剣を握る手に力がみなぎってきます。
 少年は剣を大上段に振りかぶり、勇ましく雄叫びをあげて石像に突進します。

 精霊を取り戻した森は瑞翠色に蘇り、そして少年はまた次の地へと旅立ちます。生命を巡る物語は続きます。

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