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ソウルブレイダー リプレイ風のなにか3 女王の治める都・・・海底神殿セントエルズ

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イベントらしいイベントがほとんどないこのゲームでは、女王様の反省はほんの数行のテキストでのみ語られます。そこに彼女の真心を見出すかどうかはプレイヤー次第。

生命賛歌

 青い海、照りつける日差し、異国情緒あふれる南国植物。海回です。
 ・・・残念ながら主人公は男性ですし、海岸にはゴリラ型の魔物が闊歩していますが。

 早くも3地域目、生命を蘇らせる役目にもすっかり慣れて、実のところ少年はここしばらく充実感を覚えていました。敬愛する神様のもとで修行する日々もたいへん尊いものでしたが、初めて出会った地上の生命たちは誰も彼もが少年にはない価値観を持っていて、新鮮な驚きに満ちていて、魔物退治のあと賑やかな街並みを歩くことが少年にとって何よりの楽しみになっていました。初めはただ機械のように与えられた使命を果たすばかりだった少年が、最近はずいぶん表情豊かになっていました。
 神様はいつもこういう気持ちで地上を見守っていたんだろうか。なるほど、生命というものがこれほどステキなものだったなら、神様だって一度の失敗くらい許したくなるよなあ。少年は天上の主の御心に思いを馳せます。憎むべきは人間たちをたぶらかした魔王デストール。心が燃えてきました。
 いくつかの小島を回り、今日も魔物からたくさんの魂を奪い返した少年は、一旦切り上げて街の様子を見てみることにしました。足取り軽く、鼻歌なんかも歌いながら、少年は海の底にある街へ向かいます。

二律背反

 海底神殿セントエルズ。美しいサファイアブルーに彩られたその都は、人魚とイルカたちの楽園でした。彼女たちはそこかしこで歌い踊り、未だ復興途中とは思えないほど賑やかに暮らしていました。
 「あらあら人間の姿のお客様とは珍しいわね」
 「人魚たるもの、踊りのひとつくらいできなくては話になりません」
 「僕はジャンプでは誰にも負けたことがないんだ」
 「海草からつくった薬草があるんだけど持っていく?」
 「あたしはカンナ。女王様にお仕えする踊り子のひとりです」

 女王様。
 ここを治めていたのは人魚の女性だったようです。どこに封印されているやら、未だ魂はこの都に戻っていません。朽ちかけた宮殿跡で、ひとりの人魚が寂しそうに佇んでいます。「ここは女王様の宮殿があった場所。そしてあたしは侍女だった・・・」 他の人魚たちの話も聞いてみますが、どうやら女王様はずいぶん慕われていたようです。
 「ごめんなさい。この先は誰も通しちゃいけないって女王様に言われているの」 街の施設を管理している人魚たちにも女王様の指示はよく行き届いているようで、申し訳なさそうにしながらも職分には忠実でした。彼女たちの女王様への深い敬愛が伝わってきます。

 ・・・と、思いきや。
 「この先にはルーっていう名前のイルカが幽閉されているの。彼を助け出してあげて」
 どきりとしました。まさか女王様の命に逆らう人魚がこの街にいるだなんて。少年に耳打ちしてきた人魚が守る建物は牢獄。そのイルカが何をしたのかはわかりませんが、ここにいるということは女王の裁きを受けたということです。
 もうひとつ少年の心をざわつかせることがありました。少年はルーという名のイルカを知っていたのです。少年は人魚の手引きに応じて牢獄に忍び入ります。噂の女王様が「あの」ルーを投獄する人物だなんて少年にはとても信じられません。どういうことなのか事情を知りたい。混乱する頭が道を進むたびに揺さぶられます。目指す最奥の部屋から、ゴオン、ゴオンと不気味な音が響いてきます。

 「ルー! 今助けに行くぞっ!!」
 少年が奥の部屋にたどり着くと同時に、けたたましい破砕音が部屋中に鳴り響きました。先ほどから鳴っていた不気味な音の正体は力任せに牢破りをする音だったようです。部屋にはルーの他にもう一頭、おでこを赤く腫らしたイルカがいました。
 赤いおでこの友人をねぎらっていたイルカのルーは、少年の姿を認めると牢を抜け出てきて、ペコリと気取ったお辞儀をしました。「僕の名前はルー。以前、発明家のレオさんのところにお世話になっていたイルカです」 どうにも茶目っ気のある、牢獄には似合わないのんびりした声でした。
 鉱山町グラスバレーで出会った少女に頼まれてレオを探していること、生命を蘇らせる旅の途中だということを少年が説明すると、ルーは難しい顔で話しはじめます。
 「僕がレオさんから預かったブルーストーンは不思議な宝石。それを見つめる者の心を掴み、その性格を変えてしまうといいます。心のきれいな者はより素晴らしい人となり、心の汚れている者は邪悪な者になる。ある日宝石が女王様に見つかり、ブルーストーンは取りあげられて、僕は幽閉される身に・・・」
 この石にそんな力が。少年はグラスバレーで手に入れたブラウンストーンと、グリーンウッドの精霊から授かったグリーンストーンを取り出してしげしげと見つめます。自分の心はどこか変わっただろうか? そんな少年を、ルーは愛嬌のある瞳でじっと観察します。
 誰も答えをくれない静寂を割って、赤いおでこのイルカがぼんやりと呟きます。「ルーの話を聞いて思うんだけど、女王様はそんなに悪い人じゃないと思うよ。ただちょっと欲に目が眩んだだけなんだ」
 少年は驚きました。もともと心が汚れていたからこのような暴虐を働いたのではないのか。女王様の不誠実を目の当たりにして、どうしてなおも擁護できるのか。顔を見るとどうやらルーも同じ考えのようです。音を聞きつけてやってきた牢番の人魚たちも、やはり女王様を慕っている様子。それでいてルーの牢が破られたことを誰も咎めません。少年には彼らの考えていることがさっぱり理解できません。
 「どうか女王様を元に戻し、ブルーストーンを取り返してください」 混乱する少年に、イルカのルーはのんびりした声でそれだけを頼みます。

女王様の復活

 少年は幽霊船の舳先に立っていました。人魚のひとりが、魂を封印されたときここに女王の魂が飛んでいくのを見たと教えてくれたからです。船の位置はとあるイルカの夢で知りました。そのイルカは前世で船が沈む最後の瞬間を体験していたのです。
 一度沈んだはずの船が、今、月の光のもとで再び波間を漂っています。少年は辺りを見回してそれを行っている存在の居場所を探ります。船上のあちこちで鬼火が焚かれ、虚空に無数の人骨が集まってひとつの頭骨を形づくります。
 これは魔物。グラスバレーやグリーンウッドのときと同じく、こいつらは失われた生命の尊厳を冒涜して楽しんでいるのです。少年は鬼火や骨の指先をかいくぐり、月明かりを背にして閃光一閃、外道のしゃれこうべを叩き割ります。

 目の前にあるのはおそらく女王様の魂の封印。それを前にして少年はわずかに逡巡します。この地上を破滅させたのは悪魔に魂を売った醜い欲望だったのではないのか。
 ・・・少年は頭を振ります。自分の使命はなんだ。すべての生命を蘇らせるためにこの地上に降り立ったはずだ。少年は魂を解放します。魂は美しい人魚の姿をかたちどり、セントエルズの水底へと飛んでいきます。

 街はお祭り騒ぎでした。人魚たちはみな踊り、イルカたちは歌い、魚たちは盛んに跳びはねます。彼らが口々に言う感謝の言葉を浴びながら、しかし少年はひとり重い心を引きずりながら宮殿へと向かいます。
 宮殿から声が聞こえます。
 「女王様っ!」
 「ご無事でなによりです」
 「またこうして女王様のそばにいられるなんて夢のよう・・・」

 女王様の側近の人魚たちでしょう。どうやら涙ぐんでいる者さえいるようです。その喜びのほどに、しばし少年はあっけにとられます。彼女たちの忠心は知っていましたが、まさかこれほどとは。
 やがて人魚たちの声が落ち着くと宮殿の中から少年に向かって美しい声が届きます。
 「私は人魚の女王。どこのどなたか知りませんがありがとうございます。さあ、この宮殿へいらしてください」

 覚悟を決めた少年が宮殿の門をくぐると、そこには何者よりも美しい人魚の姿がありました。透き通った白い肌と七色の鱗、亜麻色の髪に瑪瑙の王冠と黒真珠の瞳、赤珊瑚のふくよかな唇。けれどそのいずれよりも少年の目を引いたのは、臣下の人魚たちを優しく慈しむように見つめる、その視線でした。臣下たちを安堵させようと努めてゆったりと柔和な笑みを浮かべるその口元に、少年が想像していた強欲の影は見つけられません。
 「話はルーより聞いております。あなたが私を元の姿に戻してくださったのですね」
 慈愛に満ちた声が少年に向けられます。
 「事の発端はイルカのルーの持っていた宝石を見たときに起こりました。ブルーストーンを手に取ったとたん、憎しみと欲望の炎が心の中に沸き起こったのです。それからすぐでした。この海底神殿から生き物の姿が消え、魔物が蔓延ったのは」
 女王様の微笑にわずかな陰りが生まれます。ああ、この人は心から己の行いを恥じているんだ。そう思わせるだけの高潔さを少年は感じ取りました。少年は人の嘘を見破る術に長けているわけではありませんが、ただ直感的に彼女を信じたいという願いばかりが心の底から沸き起こるのです。イルカのルーたちが彼女を信頼するのは、きっとこういう心持ちなのでしょう。
 人魚たちの瞳にかすかに芽吹きかけた不安を振り払うべく、己が陰りを優しい微笑で覆い隠して、女王様は少年に頭を下げます。
 「このブルーストーンはお返しします。他の地域の生き物たちも元の姿に戻してあげてください」
 手ずからブルーストーンを下賜する女王様の指はかすかに震えていました。臣下たちに悟られぬよう抑えて、抑えて、それでもわずかに漏れ出してしまう心の弱さ。少年はそれらをそっと受け取ります。

 相反するふたつの心。どうしても存在する己の弱さと、それを律する強い意志。美しいばかりではない心を知って、少年はまた旅立ちます。生命を巡る物語は続きます。

コメント

  1. 匿名 より:

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    懐かしいゲームです。
    幻想的でいいストーリーですよね。音楽も良かったです。
    続きがぜひ読みたいです。

  2. 疲ぃ より:

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     私も何度も遊んだ大好きなゲームです。セントエルズで手に入れるマジックフレアが妙に好きで、最後の魔法を手に入れる直前までずっと愛用していました。
     中断したままほったらかしにしていてゴメンナサイ。

     たしかレオの家までは感想文用のセリフ起こしが済んでいたはずなんですが、長いこと記事を書かないうちに最近ハードディスクがお亡くなりになりまして・・・。
     また時間ができたら再プレイして続きを書きたいところなんですけどね。短いゲームなのでそこまで時間もかからないことですし。

  3. 匿名 より:

    SECRET: 0
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    お返事をありがとうございます。

    最近になってこのゲームを急に思い出して、子育てしつつYouTubeの実況プレイを見て懐かしんでいます。
    脇役の人や動物のエピソードが細かく印象深いものが多いですよね。

    ゆっくり気長に続きを待ちますね^_^

  4. 疲ぃ より:

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     イルカのルーの飄々とした性格とか、犬のターボの「ありがとう」とか、出番が少ない割になんとなく会いに行きたくなってくるリーサとか、キャラ付けがホントいいんですよね。
     短くまとまったセリフのなかにぎゅっとその人の魅力が詰めこまれている良いゲームだと思います。それぞれの街に帰ってきたとき最初に出迎えてくれる、あの優しいBGMたちもステキ。

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