魔法つかいプリキュア!第37話感想 あなたの魔法が届く先。

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見て見て。このピーカンミカン、とーってもよく育ってるでしょ。

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(主観的)あらすじ

 お騒がせな校長先生に連れられて、今日はみんなで冷凍ミカンづくりのお手伝い。ところがミカンの育ちがあまりよくないからか、アイスドラゴンがため息をついてくれません。これではミカンを凍らせることができません。3人は思い思いのやり方でアイスドラゴンの力を借りる方法を模索します。
 そこに襲来するベニーギョ。みんなで美味しい冷凍ミカンを食べるため、プリキュアはアイスドラゴンと協力しながらドンヨクバールをやっつけます。
 結局冷凍ミカンをつくることができたのははーちゃんでした。彼女の優しさに惚れたアイスドラゴンは恋のため息をつきます。

 今後の展開に関わるいくつかの設定を開示する繋ぎ回。精霊のミトメールがなかったことからもわかるように、今回の話は単体で特別な意味を持ちません。言い換えるなら誰も成長しません。今年のシリーズ構成さんはやたらと貧乏クジを引きたがりますね。
 今のみらいたちにできることとできないことを確認しつつ、チクルンとの交流、妖精の里、太陽の力の陰り、かつてムホーを封印したもの・・・気になる伏線を抱えて、魔法つかいプリキュア!もいよいよ第4クール、物語を畳みはじめる段階へと突入します。

北風と太陽

 「寒いこの島に住む彼らは温かいものに憧れる」 賢いリコは校長先生の解説をよく頭に入れていて、それをヒントにアイスドラゴンにため息をつかせる方法を思いつきます。
 それが、お風呂。「はぁー、極楽極楽」 たしかに温かいお湯に浸かればため息も出ようというものです。温かいものに反応してため息をつくアイスドラゴンの習性にもピタリと合致しています。ところがその作戦にはひとつ重大な問題点があるのでした。
 お風呂に入り慣れていないアイスドラゴンは熱がってすぐ出てしまいます。そう、知識を元に作戦を考えていたリコは、相手がどういう生き方をしてきて、どう感じるだろうということを全く想像していなかったのです。
 アイスドラゴンはプログラムどおり働く機械ではなく、心を持つ生き物です。表面的な知識にトンチを効かせてみたところで上手くいくとは限りません。それでは思いやりに欠けています。
 ゆっくり時間をかけて仲よくなったみらいやはーちゃんとの閉じた関係に慣れたリコには、実は赤の他人といきなり関係構築した経験がほとんどありません。第10話、みらいの母親との出会いくらいでしょうか。アレにしたって、みらいの母親が無条件に包容力を発揮してくれたからこそうまくいったわけですからね。勝手がまるで違います。

 「ため息じゃなくても凍るなら!」 行動派のみらいが考えた作戦はリコのものよりもさらに強引です。
 湯冷めのくしゃみでモフルンたちが凍ったことを応用して、激しい運動から来る息切れでミカンを凍らせます。またトンチですね。アイスドラゴンの気持ちを思いやるとかそういう問題ですらない下策です。
 もちろん失敗します。冷凍することだけはできても、痛いし苦いしちっとも美味しくない冷凍ミカンになってしまいます。
 考える前にとにかく行動するのが許された時期は終わろうとしています。補習授業で最初にそれを学ばされたのは、それが行動しないよりずっといいことだからです。今はみらいもリコも補習メイトたちも、いちいち立ち止まらずに行動できています。いいかげん次のステップに進まなければなりません。
 リコと同じくみらいもまた、閉じた関係性の輪に慣れきってしまっています。行動派な分、リコよりは他人との関係構築経験もあるのですが、第34話で描かれたまゆみとの出会いからも見て取れるように、そのやり方はとりあえずの行動力に大きく依存しています。「悲しいお別れはもう嫌なの」という閉じた関係性への依存から脱却するためにも、彼女は行動力一辺倒な悪癖からステップアップしなければなりません。

 「見て見て。このピーカンミカン、とーってもよく育ってるでしょ」 結局冷凍ミカンをつくることに成功したのははーちゃんでした。ことは。言の葉。自分で決めたその名前どおり、彼女は言葉でアイスドラゴンにミカンのステキさをアピールします。
 もっとも、先鋒を務めた彼女がいきなり成功させては話が終わってしまうので、凍らせる前に自分で食べてしまうというオチがつくのですが。3人の中で唯一アイスドラゴンの気持ちを考え、ため息をつけないでいる理由にまっすぐ向き合った彼女に、アイスドラゴンは心を動かされます。直接的には戦闘中の「大丈夫ですか? よかった」でしたけどね。
 北風と太陽ですね。無理矢理ため息をつかせようとしてもダメです。だって魔法つかいプリキュア!は手と手を繋ぐ物語なんですから。言葉の力を司り、あまねく命を祝福するはーちゃんは、3人の中で唯一輪の外に手を伸ばすことを得意としている子です。今回彼女がしてみせたことは第32話の壮太や第35話のゆうとくんにしたことと同じことでしかありません。いつもどおり好奇心によって他人との距離を詰め、思いやりによってその心に寄りそってみせただけ。
 みらいとリコの子どもとして登場したはーちゃんは変身してからもしばらくはふたりから学ぶ立場が続いていましたが、最近はすっかり一人前になって、むしろみらいとリコよりも先の物語を歩んでいます。第23話での校長先生の説得も充分ステキでしたが、本領発揮はむしろ第32話以降の精霊シリーズですね。直接手を繋げる距離から言葉で届かせる距離へ。魔法つかいプリキュア!の物語が拡張していく様を象徴するキャラクターです。

ひとりぼっちの英雄

 ひとりぼっちの英雄・校長先生は、第27話でみらいから「できることは何でもやるの!」という心意気を学びました。かつての力を失ってたとしても、無力を嘆かず自分にできることをする。その気持ちは立派です。
 けれど彼は未だひとりぼっち気質を脱却しきれてはいなかったんですね。「校長先生ー! そちらにいらっしゃいませんか」 ピーカンミカンの視察程度の仕事ですら黙って留守にして、周りに無用の心配をかけてしまう困った大人です。
 「あのときも校長先生はひとりで・・・」 手を繋ぐ物語において、彼のような姿勢では相変わらず何も生み出せません。

 それはプリキュアであっても同じこと。
 ひとりぼっちで戦うキュアフェリーチェはドンヨクバールに敵いません。ひとりぼっちで冷凍ミカンをつくろうとしたみらいは手を霜焼けにして戦いの場に出遅れてしまいます。ひとりでできることなんてたかがしれています。だって彼女たちがやっつけてきた敵はみんなそういう人たちでしたから。

 気付かなければいけません。学ばなければなりません。あなたはひとりではないことを。手を伸ばしているのがあなただけではないことを。
 キュアフェリーチェのピンチを校長先生のバリアが庇いました。みらいの出遅れはアイスドラゴンが背に乗せて助けてくれました。彼女たちが助けを求めるまでもなく、主体的に。
 なにも自分から手を伸ばすことだけが手を繋ぐ方法ではありません。あなたが友達に手を伸ばしているのと同じように、他の誰かもあなたに手を伸ばしてくれていることがあります。あとはあなたがそれに気付くだけで、その手と手は繋がります。
 「私でも相談に乗れることがあったらいつでも乗るからね」 第22話、はーちゃんを失って悲しみに暮れるみらいを、彼女の母親はとても心配していました。けれど助けにはなれませんでした。 「母親だから相談できないこともあるよね。リコちゃんにはできてもさ」 いくら手を差し出してみても、みらいがその手を掴んでくれなかったからです。
 手を繋ぐ方法は自分が手を伸ばすだけではありません。向こうから手を伸ばしてくれていることに気付くことも大切です。見方を変えましょう。あなたがひとりぼっちなのは、近くに頼れる友達がいないからではありません。あなた自身が周りから差し出された手に気付いていないだけなんです。

ときどきチクルン

 だからチクルンが今置かれている立場は物語上重要です。
 「チクルンモフ!」「いなくなったから心配したよ」「おいらを? 心配?」 モフルンとみらいたちはすでに彼に手を差しのべています。友達と信じて、無邪気に。
 妖精の里の話題で彼が示した煮え切らない態度から察するに、おそらく彼は故郷で何か裏切りを働いてしまったのでしょうね。自分のことを、信頼されてはいけない子だと思い込んでいるように見えます。実際今もスパイしているんですが。
 みらいたちが彼と真に手を繋ぐためには、ただ手を伸ばすだけでなく彼の心情を理解してあげなければいけません。ただお風呂を沸かせたり追いかけ回したりするだけではうまくいきません。はーちゃんのように相手のことを思いやって、真心から語りかけなければ。
 反対にチクルンは自分からみらいたちの手を掴みに行くことが課題です。彼は自分がそうしてはいけない子だと思い込んでいるようですが、それができなければいくらみらいたちが手を伸ばしたって届きっこありません。せめて勇気を出して自分の事情を告白しなければ、その頑なな心を解きほぐしてもらうことすらできません。
 よく知らない相手でも思いやること、手を差しのべてくれていることに気付いて自分も手を差し出すこと。双方からそのふたつができて初めて手を繋ぐことができます。現実として、さしあたってはチクルンの方から何かアクションを起こさなければどうしようもないでしょうけどね。

 手と手を繋ぐ物語はステップアップを求めています。

今週の魔法文字

エスカーゴの立て看板:「REITOU MIKAN URIKIREDESU」
「冷凍ミカン売り切れです」

映画入場者プレゼント:「MAGIC FESTIVAL INVITATION」「THANK YOU!」
「大魔法フェスティバルにご招待」「(来てくれて)ありがとう!」
 そういえばまだコレに触れていなかったなあと、今さらながら。予告を見た感じ、映画ではこれまでなあなあで済ませてきたみらいの課題を重点的に扱ってくれそうで楽しみです。これってつまりテレビシリーズ終盤のメインテーマもこの部分になるってことですよね。

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