ウェルカムユニ! かんぱーい!!
(主観的)あらすじ
フワが増えました。
原因はユニの持っていたマタークッキー。うっかり食べさせてしまったユニは責任を感じ、ひとりで増えたフワたちを追いかけます。
ここのところユニはずっとこの調子でした。せっかく一緒に地球に来たのにひかるたちと離れて生活したがり、何かするときもいつもひとり。本当なら今日はウェルカムパーティにかこつけてユニとみんなで楽しい時間を過ごそうと思っていたのですが・・・。
ひとりでフワを追いかけるユニに、えれなが追いつきました。えれなは「ひとりで抱えこまないで」と言います。今まではひとりで何でもできていたかもしれないけど、それでもみんなで分けあうのはいいものだよと。
ずっとひとりでやれていたユニにはその物言いがなんだか不思議に感じられるのでした。
途中でフワがカッパードに捕まるトラブルもありましたが、それもユニとえれなとひかるたちとで協力して助け出し、なんのかんのでフワ増殖事件は終息しました。
「ひとつ借りができちゃった」とだけ言って、またひとりで帰ろうとするユニ。そんなユニの手を捕まえて、えれなはさっそくこれからすぐその借りを返してもらうことにします。
そういえば今日は元々ユニのウェルカムパーティをするつもりだったのでした。みんなでひとつのドーナツを分けあい、みんなとひとつの時間を過ごします。
バッタの仲間は通常、群れるのを嫌い、同族を見かけてもお互いなるべく離れて暮らそうとします。体の色は普段そこらでよく見かける緑や茶色。羽は短く、移動の際は発達した後ろ足で跳ねて動きます。この性質を「孤独相」といいます。
しかし、何かの要因により限られたスペースでたくさんの仲間と暮らさなければならなくなると、同じ種のなかでも次第に体色の黒いバッタたちが生まれはじめます。この黒いバッタたちは親と違ってむしろ集団で活動することを好み、しかも羽が発達して遠くまで飛べるようになります。これを「群生相」といいます。
いわゆる“蝗害”。旧約聖書にも記され、世界的に恐れられた昆虫による大災害、イナゴの大群というやつはこうして発生します。イナゴというか、実は体の色が変わったバッタなんですね、アレ。
なお、集団で大移動をはじめ、道すがら植物を根こそぎ食い荒らしつつやがて新天地へたどり着くと、彼らは緑色や茶色の子を生みはじめて再び「孤独相」へと回帰します。
なんといいますか、ハタ迷惑な仲よしさんたちですね。
なんでいきなりこんなゲンナリするような話をしたかって? や、今回は感想文の内容にカケラも関係ありません。だってあんなフワたちの飛びまわる様子を見ていたら連想しちゃうじゃないですか、誰だって。ねえ?
「お腹空いたフワー!」
“責任”
ユニは他人をアテにしたがらない子です。
これはブルーキャットだったころからもそうでした。ひかるたちの協力を求めるには求めるのですが、実際のところ協力に応じてもらえなくてもドジをふまれても一向に気にしません。それならそれでと独力で問題を解決してしまいます。そういう二段構えができるだけの優れた実力を彼女は持っています。
それは、ひょっとしたら自種族の歴史やその指導者・オリーフィオに遠因があるのかもしれません。彼女の種族は宇宙じゅうから疎まれ、隠遁を選んでいましたから。
また、自分たちだけで不毛の惑星を豊かな楽園に変えられたという成功体験もありました。それをメチャクチャに滅ぼしたのがまた、同胞ではない外から来た他人でしたし。
「ありがとう。――でも、気持ちだけで充分ニャン」(第19話)
同胞たちがみんな石になってしまった今、彼女には信頼できる誰かというものがそもそもいなかったのかもしれません。
「あなたには関係ない! 何も知らない他人でしょ!」(第20話)
なにせ、他人というのは自分たちを理解してくれないものだから。思いを共有してはくれないものだから。
「わからない・・・。星のみんなは救いたい。でも、その前に。・・・倒れているんだ。目の前で。この子たちが!」(第20話)
ユニはプリキュアへの変身を果たしましたが、それで彼女が抱えている心の問題全部を解決できたわけではありません。
彼女は自分が何をもってプリキュアに変身できたのか、まだ自覚できていません。
「私とあなたは同じよ。あなたがフワを救いたいように、私もこの星のみんなを救いたいの!」(第20話)
あのときはじめてひかるという“他人”と思いを共有できたのに。
「ちょっとそのペン預かっておいて」(第20話)
あのときはじめてフワという“他人”を心から信頼できたのに。
その自覚がないものだから、ユニという名の少女は今日もひとりを好みます。
「ユニいつもひとりで何してるルン?」
「ちゃんとご飯食べてるの?」
「・・・なるほどね。それで急に歓迎会って言いだしたわけ」
プリキュアの仲間とはいえ、あくまであなたたちは“他人”でしかないというのに。どうしていちいち干渉してくるのか。
「フワは――私がなんとかするニャン!」
「湖ならひとりで行ける!」
「観星町のことは調べたし、湖の場所もわかってる。本物のフワは私が保護するから!」
そしてあなたたちにとっても私はあくまで“他人”でしかないんだから。
だから、自分が起こした騒動は自分で解決するべき。
今話におけるユニの思いを正しく理解するには、まず彼女の心にある壁を認識する必要があります。
「待って。どうしてひとりで行こうとするの?」
「決まってるでしょ。私の“責任”だから。私のせいで起きたことだから、誰にも迷惑はかけたくない」
彼女は“責任”と言いました。いったい誰のために負った責任でしょう。フワでしょうか? ひかるやえれなたちでしょうか? それとも街の人たち?
そのあたりだけは、ユニは自分のことをよく自覚しています。いったいこの“責任”とは何なのか。
「“責任”って・・・。あのね、責任だとか迷惑だとか、そんなこと思ってない。みんなフワが心配で探してるんだよ」
自分が口にした“責任”の意味を自覚しているからこそ、彼女はえれなのこの言葉を聞いても少しも動じません。
誰も責任を求めていないことくらい、最初からわかりきっています。
この“責任”に何の意味もないってことくらい自分でもわかっています。
そして、だからこそ続く言葉にはうろたえることになります。
「フワだけじゃない。あなたのことも」
ユニの言う“責任”というのは方便です。彼女は誰かに対して本当に責任を感じているわけではありません。
これは拒絶の言葉です。
誰かの思いやりを。おせっかいを。優しさを。干渉を。
“他人”でしかない誰かが勝手な都合でこちらの領分を侵そうとしてくるのを止めるため、「ここから先は自分のナワバリだ」と警告しているに過ぎません。
だから「責任なんて求めてない」と言われても聞きません。この“責任”を必要としているのは他でもない自分自身なのだから。
だから「あなたを心配しているんだ」と言われて面食らいます。自分は目の前の人にとって“他人”でしかないのだから。
私は私。
あなたはあなた。
干渉してこないで。
干渉
「フワだけじゃない。あなたのことも。――今まではひとりで何でも解決してきたかもしれないけど、ひとりで抱えこまないで。みんなで分けあうっていいものだよ」
それは彼女が今までずっと心に思いつづけてきて、けれど、これまでずっとうまく言えずにいた言葉でした。
えれなは太陽でした。みんながえれなと一緒に笑顔になってくれていました。えれなもみんなを笑顔にしたくて、そのために自分も笑顔でいることを心がけていました。
えれなの笑顔をみんなが喜んでくれていました。みんな、えれなと一緒に笑顔になることを望んでくれていました。
そういう相互に思いが一致した関係性のときであれば、えれなの笑顔はまるで太陽のようにみんなを照らすことができました。
「一緒だ! お前たちみんな聖なる骨が目当てなんだろ。俺たちから見ればお前たちもあの男も、まったく一緒だ!」(第8話)
「僕は普通の家がよかった。こんな家大嫌い! パパもママも大嫌いだ!」(第14話)
えれなは相手に譲れない思いがあると知ったとき、言葉に詰まります。
彼らにとっては笑顔になることより、そちらの問題のほうがよほど大切だからです。そういう切実な思いを抱いていることがえれなにもわかるからです。
だから、えれなは彼らに対してはいつもの調子で「笑顔になって」と言ってあげることができませんでした。
笑顔になってほしいのは、あくまでえれなの都合だから。
自分以外の“他人”にとっては、必ずしもそれが大切なこととは限らないかもしれないのだから。
えれなとしてはもちろんみんなに笑顔になってほしい。
けれどその思いは、人によっては押しつけがましく感じることがあるかもしれない。「笑顔になって」と言うことで、かえって笑顔になれなくなる人がいるかもしれない。
他人の事情を無視してまで笑顔を押しつけたくはない。みんなには心から笑ってほしい。
だから、えれなは理由あって笑顔になれずにいる人に対しては、これまでずっと、何もしてあげられずにいました。
「――それよりさ、この子を泣かせるってのが大問題だよ! 弟たちを笑顔にしてくれたこの子は泣かせない! うん。いい笑顔だね」(第4話)
本当は、彼女はそういう人をこそ笑顔にしてあげたいと思っている子なのに。
今回もえれなはユニに対してかけるべき言葉をなかなか見つけられずいました。
追いかけたところで何も言ってあげられないから、放っておけないユニを追いかけるだけでも、いちいち自分を納得させられるだけの理由が必要でした。
コピーフワたちに食べさせるパンの耳。ひかるからの手分けしようというお願い。ひとりでは明らかに手に余る状況。
ユニに置いていかれそうになるたび、えれなはいちいち追いかける理由を探しました。
本当は必要があって追いかけていたわけじゃないくせに。
ただ、ユニを心配していただけのくせに。
その程度の干渉すらも、この子はどうしてもためらってしまう子なんです。
優しくて。暖かくて。思いやり深くて。――そして実は、臆病で。
それでも、誰かからの干渉がないかぎり自力では笑顔になれない人というのはいるものです。
ケンネル星のドギーがそうでした。弟のとうまもそういう子でした。
彼らが困っていたとき、えれなからはなかなか思うように言葉をかけてあげられなかったけれど。
「待って。どうしてひとりで行こうとするの?」
「ひとりで抱えこまないで。みんなで分けあうっていいものだよ」
やっと、言いたいことが言えるようになってきました。
私はあなたじゃない。
あなたは私じゃない。
それでも、私はあなたに笑ってほしい。
コスモシュート!
ユニは他人から干渉されることを拒み、えれなは他人に干渉することに抵抗を感じていました。
“他人”といっても、ふたりとも具体的な誰かを想定しての忌避感じゃないんですけどね。
ただ、なんとなく恐いから。不安だから。迷惑をかけてしまうかもしれないから。
前話のひかるのお爺ちゃんと同じです。実際に目の前にいる人ならどう思うかとか考えもしないで、ただ自分のなかにある一般論だとか常識だとかに引きずられて、勝手に居もしない“他人”という虚像を怖がっていただけです。
だから、一度話しあってみれば、あとは拍子抜けするくらいスムーズ。
なにせふたりとも優しい良い子ですからね。もちろん他のみんなも。
「フワを取り戻して」
「任せるニャン!」
こういう流れになると、レインボーパヒュームの全プリンセススターカラーペン対応というギミックってすごくいいものだなと感じます。
前話のように怪盗らしく勝手に拝借するのも面白かったですが、それを踏まえたうえで、今話のように誰かからペンを預けられて技を使うっていう手続きがユニらしくてすごくいい。ペンの貸し借りというかたちで信頼関係が象徴的に描かれていくんですね。
「ひとつ借りができちゃったわね」
「なら、これからその借りを返してくれない? ウェルカムパーティで!」
今話の物語を経ても相変わらずユニはひとりになりたがり、えれなのほうもいちいちもっともらしい理由を必要とします。メンドクサイ子たちです。人はそこまで急に変われません。
ただ、それでもゆっくりとは変わりました。変わりつつあります。自分と違う誰かに触れて。“他人”を恐れる気持ちを乗り越えて。自分ひとりではできなかった新しいことを、ふたりで、みんなで、できるようになりました。
いつか7等分のドーナツがぴったりつながる日が来たら、そのときはいったいどんなステキな変化が起きるんでしょうね。
(知らんのか? 箱モノの高額オモチャが投入されるんだ)
コメント
AIがなかなか原因と解決策をつかめない中、まどかがあっさり「しゃっくりでは?」と推理してしまいました。
いや本当びっくりですよ。
サマーンから遠く離れ交流もない日本の国語教育にまで対応可能なAIが、まさかしゃっくりを知らないなんて(でも横隔膜は分かるのか)
ユニの話よりそっちの方がよほど気になった次第ですw
でもこれ、基本的に万能選手だったAIの弱点をさらすことで「どんなに優秀な人にも他者が補うべき点はある」描写になってるんですかね。
あのAI、ロケット修理のとき自分で直接全員を指揮していたはずなのに、なぜかまどかにも現場監督役をやらせていたようなポンコツさんなので・・・。
私はあのシーンをララの成長の成果として受け止めました。
最初のころは自分で全部やろうとして視野を狭くしていた彼女。それが周りの人に頼ることを知って、どんどん知見を広げていっています。
ユニとレインボー星人の価値観って、レインボー華やかなりし頃の回想シーンを見る限り、むしろ天宮えれな(と天宮家)の価値観とかなり共通しているように思えます。「同胞は助け合い支え合うべき」と。
ところが同胞を奪われ、救出の為に裏街道をひた走る生活を続けていく中で、ユニは子供の頃から無条件に信じてきた価値観が揺らいでしまい、何よりもまず自分自身を信じられなくなってしまうーーーーーー結局のところユニは「自分しか信じられない」のではなく「自分が信じられない為に他人も信じられなくなっている(「他人を信じる自分」が信じられない)」んだと思えるんですよね。
えれながそんなユニに干渉しようとするのは、ユニが”「他人を信じたい。もう一度皆と支え合う生き方に戻りたい」という本音に嘘をついて、露悪的な態度で無理に自分を誤魔化そうとしている”ことに感づいたからなんだと思います。
そもそもえれなはかなりクレバーな人間で、自分と違う価値観で生きている人間に干渉することは避ける傾向がある。星奈家のすったもんだを目の当たりにしたときには(心情的に一番近いであろう)春吉に肩入れしてひかると対立する形にならないよう一歩退いた立ち位置を保っていましたし、「綱渡り」生活でまどかが苦境に陥っていたときも、あくまで彼女の負担を一部肩代わりすることを申し出ただけで、香久矢家の家風や事情(えれなには相当思うところがあるはず)に口出しすることはしていないんですね。とうまクンのときは……あまりにも身近過ぎる存在ゆえに彼の苦悩に対して鈍感に、あるいは臆病になってしまった、かな。
さて、話をユニに戻すと……どうにも毎度毎度自分で自分を孤立に追い込んでいく姿に、やはり彼女が猛烈な”罪悪感”を抱えている様子が透けて見えるんですよね。この”罪悪感”の正体が何なのかずっと気になっていたんですがーーーーーーもしかすると彼女はレインボー星人の中で自分一人だけ生き残ってしまったことで「サバイバーズ・ギルト」に陥ってしまったのかもしれません。「皆が死んでしまったのにどうして私だけ生き残ってしまったんだろう」という自責の念。
今回のエピソードで何気に圧巻だったのが「ユニがマタタビ入りクッキーのみを常食している」という”日曜朝の子供向け番組でギリギリ許されるレベルのアルコール依存性描写”が為されたことなんですが、「アイドル/怪盗/執事のトリプルフェイス」「ケモナー歓喜の獣人設定」に加え「酒びたりプリキュア」という強烈過ぎる属性を持つ新メンバーを、果たしてえれなやひかる達は「更正」させることが出来るのか?!じっくり見守っていく必要がありそうですね。
ユニのあの他人に対する一線の引きかたは、私も自己評価の低さから来ているんじゃないかと思うことがありました。だからレインボー星からひとりで脱出するとき、何か悔いが残るような重いエピソードがあったんじゃないか、って予想していたんですよ。自分がまだ半人前だってことも気にしているようでしたしね。
自分に自信を持てない人ほど周りの人を素直に認められなくなるというのは、それこそえれなの弟のとうまと同じ心理です。
・・・と、いいつつ。逆にえれなは自分の弱さを友達との関係性で埋めようとする子って印象です。
えれなの場合の「みんな笑顔がいい」というのは、笑顔になれたことを喜んでくれる誰かがいてはじめて成立します。観星中の太陽はひとりでは笑顔を輝かせられません。“笑顔”に賛同してくれる誰かがいてはじめて輝くことができるんです。
ある意味で他人に依存しているからこそ、他人の価値観に干渉することができないんでしょうね。自然に湧きあがってくる感情じゃなければ「私を認めてもらえた!」って感じになりませんから。