
みんなのおかげで、心のなかの宇宙が無限に広がっていくルン。
(主観的)あらすじ
今夜は観星町星祭り! おいしい食べものや楽しい屋台、きれいな花火がいっぱい集まります。相変わらずひとりでいようとするユニにも浴衣を着せて、みんなでイザ出陣です!
お祭りの会場には観星中の友達もたくさん来ていました。みんな初めて見る顔のユニが気になるみたいで、ユニはちょっと居心地の悪さを感じます。
けれど、ユニの顔立ちが珍しいのと同じくらい、友達みんなも十人十色。なかには姫ノ城さんやカルノリくんみたいに最初からグイグイ来る子もいて、ユニの感じていた居心地の悪さはたちまちうやむやになってしまうのでした。なにより、目の前にずらっと立ち並ぶ屋台たちがユニやひかるたちを待っています。
ただ、それでもふとしたとき心に思いがかすめます。花火を見て、幸せそうな親子連れを見て、ユニは自分が今何をしているのかどうしても疑問に思ってしまいます。今の私は本当の私じゃないのに。どうして昔みたいにお祭りを楽しんでいるんだろう。ユニはひとりお祭りから抜け出すことにしました。
それをララが追いかけてきました。彼女は言います。最初は自分も同じことを考えていた。でも、みんなと出会って、想い出もたくさん増えて、心の宇宙が無限に広がっていったんだ、と。
ララの言っていることがよく理解できないユニはまたひとりになり、そしてその隙を狙ってきたテンジョウに捕まってしまいます。どうせ裏切り者の宇宙怪盗を助けに来る人なんていない。そう、諦めかけます。
けれど、ひかるたちは助けに来ました。ユニは自分たちと同じプリキュアなんだからと。
ユニはひかるたちと手を取りあってテンジョウを撃退し、今度こそみんなでお祭りを楽しむのでした。
昨日の私は今日の私と別の存在です。同じように、明日の私もきっと別人です。
だってほら、たとえば「今何が一番楽しみ?」って聞かれたら、今日の私は夕方頃届く予定の『ぴのらぼ』と『たまーじゃん』(例によってkonozama)が楽しみだと答えます。昨日の私ならプリキュアを観るのが楽しみだと言うでしょう。明日の私は、たぶん仕事しているあいだずっと『ファイアーエムブレム 風花雪月』の続きをやりたくてウズウズしているんじゃないでしょうか。
考えていることが違うんですから他人です。今日の私は彼らと同じことに対して彼らほどワクワクした気持ちを持てません。たった1日生きている時間が異なるだけで、私は私と違う感情を抱くようになります。
あえて小難しく考えてみれば、私という存在なんてそんなものです。一瞬一瞬生まれ変わっているようなもの。
だから、本当はこんなの、難しく考えなくてもいいんだと思います。
私じゃない
「キャー! 天宮えれな先輩よ!」「香久矢まどか先輩も!」「やっぱり浴衣姿も決まってる!」
人気者のえれなとまどかに挟まれて居心地悪そうにうつむくユニ。私も気持ちはよーくわかる。
「・・・ねえ、あのかわいい子誰?」「さあ。見ない顔だけど」
そっちがでいっぱいいっぱいで、本当は自分にも注目が集まっていたことに気付かなかったのは、はたして幸か不幸か。
「天宮先輩と香久矢先輩と一緒とは・・・、いったい何者!?」
「おお! 新しい転校生? ニャン? ――おお、そうなの。よろしくなニャン子!」
たぶんどっちも。注目していることをはっきりアピールされたらされたでウザったくて、同時にさっきまでのしみったれていた表情がほぐれもします。
どんな物事にも良いところや悪いところ、あるいは他にももっともっと、数えきれないくらいいろんな側面があるものです。
同じように、一言にお祭りの屋台といっても色々なものがあって、まどかが上手な射的、えれなが得意な輪投げ、ひかるとララが夢中になって遊んだヨーヨー釣りや、フワそっくりなわたあめ屋さんなど。世のなかにはいろんな人を楽しませるものが、あるいはいろんな人が、たくさんあふれています。
「こ、これは・・・! おいしそうニャン」
なかにはユニを楽しませるものすらありました。ユニ自身は全然そういうアテがあってお祭りに参加したわけじゃなかったはずなのに。ちゃんと用意されていました。
いろんな人がいます。
いろんなものがあります。
そこにユニがいてもいなくても。
世界はいろんな表情を持っていて、たくさんの人がいて、たくさんのものがあって、多様性に満ちています。
なのにどうして、ユニはお祭りに誘われることになったんでしょうか。
ユニひとりいなくたって、どちらにせよお祭りは賑やかなものなのに
ユニひとりいなくたって、楽しい想い出はいくらでもつくれるはずなのに。
なのにどうして、ひかるはユニのことをあんなにも熱心に誘ったんでしょうか。
ウェルカムパーティのときみたいなおせっかい?
それとも氷の演奏会のときみたいに自分たちだけでは足りないものがあったから?
別にそんなふうじゃないように見えます。
ひかるたちはユニに気を使わず、めいめい好きなようにお祭りを楽しんでいます。
何か頼られるようなこともなく、本当にただユニと一緒に遊んでいるだけ。
なのに、どうして?
どうしてユニがここにいなければならないんでしょうか。
「・・・私、帰る」
ユニにはわかりません。
他の誰でもなく自分がお祭りに呼ばれた理由が、どうしてもわかりません。
私じゃない
「もしかしてお祭り嫌いだったルン?」
「・・・そんなことないわ」
「じゃあ、どうして楽しまないルン?」
楽しいか楽しくないかでいったら、楽しいと感じました。普通に。本当に。笑顔がほころぶくらいに。
特に金魚すくい。キャラが崩れるくらいワクワクしました。ブルーキャットの技を持ってしても苦戦するゲームに心からウキウキしました。
けれど、今のユニはどういう存在だったでしょうか。
「みんなを戻すためならなんだってする。宇宙怪盗でもなんでも!」(第20話)
故郷を蘇らせることのために自分の全てを捧げたはずでした。
地球に来たのもプリンセススターカラーペンを探すため。
けっしてお祭りを楽しむために生きてきたわけではありません。
もっと小さかったころは素直にお祭りを楽しむことができていました。
だって、今みたいに成すべき大切なことを背負ってはいなかったから。
だって、今と違ってオリーフィオが自分のために微笑みかけてくれたから。
幼いユニはお祭りの会場以外にいる必要がなくて、しかもお祭りの会場に自分だけの特等席がありました。
私は今楽しんでいいんだって、納得することができました。
私は今楽しむことを望まれているって、安心することができました。
あのころは自分がそこにいるべき必然性が間違いなくありました。
今は違う。
あのころと違って今の自分には他にやるべきことがある。
あのころと違って微笑みかけてくれるオリーフィオがいない。
「今の私は仮の姿だから」
あのころのユニと、今のユニは違う。
楽しんじゃいけない、とまでは思いません。
惑星レインボーを救うと決めたのは自分自身。オリーフィオの教えのとおり、ユニは誰の都合にも縛られず、自由意志のもと活動しています。
それでも、ここには自分がお祭りを楽しむべき必然性がないんです。
ここには自分がお祭りに参加するべき必然性がないんです。
そういう必然性を持っていたのは昔のユニ。今のユニじゃない。
どうして?
たしかに今のユニは昔のユニと異なります。
惑星レインボーが石化して、彼女は変わることを余儀なくされました。裏切り者だの怪盗だの呼ばれるようになったことを自分でも好ましいとは思っていないでしょう。
昔の自分と今の自分が別の存在だと感じるのも、一度変わったんですから当然です。
だから、今のユニには昔と違ってお祭りを楽しんでいい理由がない?
いいえ。
それは思考停止です。
目の前にある問題を解決するための努力を放棄しています。
こういう考えかたに陥ったとき、もしララならすかさず次にこう思考を動かしはじめるでしょう。
「もしかしてお祭り嫌いだったルン?」
「・・・そんなことないわ」
「じゃあ、どうして楽しまないルン?」
「どうして?」と。
だって、変わればいいじゃないですか。今が生き苦しいのなら。
一度変わったんでしょう? 幼いままでは故郷を救えないからって。だったらまた変わればいいだけじゃないですか。
ロジカルに考えたら誰でも気がつくお話です。ユニは一度変わった。だったら今度もまた変われる。
簡単な解決方法があるのになぜかユニの思考が止まってしまっているので、止まった原因を探ってみます。
「今の私は仮の姿だから」
「宇宙アイドルも、宇宙怪盗も、本当の私じゃない」
どうやらこの考えが原因のよう。彼女はララと反対に、変わることを悪いことだと思っているんですね。目的を果たしたら昔の自分に戻るべきものなんだと。
だからララは自分の考えを伝えます。とびきりの笑顔とともに。
「あなたも私と同じ異星人でしょう。どうして地球人と一緒に遊んでいられるの?」
「・・・最初は私もそう思ってたルン。けど――」
ここのところなんかしょっちゅうこの話題になっていますが、最初のころのララはなかなか気難しい子でした。
大人としてふるまおうとしていたためです。
自分がやると決めたことは責任を持って自分でやりとおす。自分の失態も責任を持って自分が取り戻す。ひとりで何でもできる立派な大人を目指していたら、かえって周りに心配をかけてしまっていました。
彼女は変わりました。
みんなを困らせている自分の姿に気がついて。今よりもっといい方法があることに気がついて。
「みんなといると宇宙が広がるルン」
いろんな人の考えかたを柔軟に受け入れて、いろんな人の助けを積極的に借りるようになって、今では誰よりも柔らかい思考の持ち主に変わりました。
今のララは知っています。人は変われるものだと。変われることってステキなんだと。
その喜びををユニにも伝えてあげたい。
「みんなのおかげで、心のなかの宇宙が無限に広がっていくルン」
“無限に”というところがポイント。ララは変わりました。そしてこれからも変わっていきます。だって、変われることってステキなんだから。
だから、ユニもまた変わればいい。
ユニにはどうしてもわからないことがありました。
いいえ。そもそもわかろうとしていませんでした。
だって、その答えを認めてしまえば今のユニのままではいられなくなってしまうから。
また変わってしまうから。
“本当の私”からますます遠ざかってしまうから。
いったいどうして自分がお祭りに誘われたのか。
今の自分も昔のようにお祭りを楽しんでいいのか。
その答えは――。
「お仲間ごっこじゃないルン。コスモは私たちと同じプリキュアルン!」
「この広い宇宙で出会えた大切な仲間だから!」
「仲間のためなら何度だって立ち上がってみせます!」
「コスモは私たちが守る!」
答えは“友達だから”であり、“友達はそう望んでいる”。
故郷が石になって以来、ずっとひとりぼっちで生きてきた女の子。
今、彼女は“友達がいる女の子”に変わろうとしています。
コメント
あの言い方だと、惑星レインボーが復活した暁にはプリキュアも宇宙アイドルも捨てちゃうつもりだったんですかね……もったいない。
プリンセススターカラーペンが無いことを指摘されたシーンで思ったこと。
ユニはめっちゃ切れ者です。
必要なら善悪の区別を切り捨てられます。
……そんなに1人がいいなら予めひかるたちの持つペンを1本くらい盗ってしまえばいい(譲渡だと多分ひかる辺りが制止する)
と、このくらい私でも思いつくんですが。なーんて。
たぶん本人はそのつもりなんだと思いますが、変身のきっかけが「倒れているんだ。目の前で。この子たちが!」なお人好しガールなので、たぶんムリですよねー。(どっちも)
あと復活したらしたでオリーフィオがアイドル業もひかるたちとの友好関係もめっちゃ喜びそう。ズルズル続けることになりそうです。
むしろひとり=守るべきものがないってことなので、そもそも戦わずに逃げちゃえばいいと思うんですけどね。それならプリンセススターカラーペンも必要ありませんし。
ううむ……どうにもやっぱりユニの「惑星レインボーを戻すためなら何でもする」責任感の基盤には「”死に損ない”の自分に対する罰」という意識が根深く存在している感じがしますね……。まさにサバイバーズ・ギルトにとりつかれている感じが。故に、レインボー復活に直結しない(と彼女が考える)行動を(自分への罰として)自制してしまう、と。
実のところ、ユニが「仮の姿」と断じる「宇宙アイドル」「宇宙怪盗」「キュアコスモ」の方が「他者に力を与え、支持を受けている」点でむしろ実体を伴った存在と言えるもので(「執事バケニャーン」すらノットレイダーの”仲間たち”にとっては”実像”)、「死に損ないのレインボー星人」という彼女の自己認識の方がよほど思い込みの生み出した”虚像”なんですが……。
ところで、ユニとは対照的に地球人たちと遊びに興じる「羽衣ララ」こと惑星サマーン公務員・ララですが、彼女は別に「公務員の職責・大人の責任を忘れた」わけではなく、むしろ「現地の実情を自分の目で確かめて認識を深め、現地の人間と心を通わせて信頼・協力関係を醸成していくことが、より良く職責を果たしていく上で重要」だと気が付いた、ということなんだと思います。つまりララの「責任感の強い公僕」という基盤が”バージョンアップされた”のであって”変わってしまった”わけではない。
結局、ユニがなかなか孤立主義的な立ち居振舞いを改められないのは、「死に損ない」というネガティブな自己認識を基盤に据えてしまっているためではないかと。
そんなユニに、ララ達が「キュアコスモは私達の仲間」という”新たな”基盤を与えることで当座の危機を乗り越えた今回のエピソードだったんですが……やはり、究極的には「自分はレインボー星人として胸を張れる存在」だとユニが再確認することが必要なんだと思います。その為に為すべきことは……さて。
ララは“子どもがイメージする大人”から“大人が尊敬する大人”になったって感じですね。どちらも大人であることには変わりなし。やることが合理的になったなと思っていたらいつの間にか思考パターンまで合理的になっていました。あんなにかわいいのにカッコいい・・・。すごい!
ユニは宇宙アイドルや宇宙怪盗などが実像であるのと同様に、ひかるたちの友達としての姿も実像だというのが大事なんだと思います。いろんな自分のありかたを受け入れてくれたらステキだなと思っています。そろそろ虹の足に手が届くかな・・・?(元ネタ的には届いちゃいけない)
というわけで、バケニャーンとしての姿をただの裏切り者で終わらせないためにもそろそろアイワーンさん再登場しないかな、と。