生徒役:電脳少女シロ、燦鳥ノム、神楽すず
あ、なんか、こう、こみ上げるものがあって。すみません・・・。
↓未公開シーンが投稿されているYouTube公式チャンネル↓
↓レジュメがガチなことで知られる私立ガリベン大学↓
出演バーチャルYouTuber
電脳少女シロ
「・・・そっちに変更するね、回答」
“清楚”という言葉の意味を自身の存在圧力をもってねじ曲げた清楚な子。当初彼女のファンは困惑した表情でやけくそ気味に「シロちゃんは清楚だなあ!」と叫んでいたらしいです。ちなみに最近はマジ顔で「シロちゃんは清楚だなあ!」としみじみ頷いています。
やたらと語録が豊富、そしてやたらと逸話も豊富。というのも彼女は多趣味・多芸なうえ、やたらと柔軟な発想力も持ちあわせ、ついでに傍若無人な性格なため、自由にさせると大抵常人に理解できない奇矯な言動をしはじめるからです。彼女の動画を見てなんともいえない気持ちになったときは「シロちゃんの動画は為になるなあ」と、とりあえず納得しましょう。彼女はあなたが為になることを望んでいます。
まるでアブない人のようですが、そして実際アブない人なのは確かなのですが、こう見えて彼女は共演者をよく見ています。聡明です。共演者の対応力を推し測り、ギリギリ捌ききれる程度のムチャ振りを仕掛けるのです。おかげでいつのまにか人脈の輪がずんどこ広がってきました。タチが悪いったらありゃしない。
燦鳥ノム
「あはは。ごめんなさい。悲しくなってしまって・・・」
清楚なバーチャルYouTuberといえば? と聞けば大抵真っ先に名前の挙がる、誰が見ても本当に清楚な子。ゆったり天然気味なトーク回しと、涼やかで愛らしい歌声に心奪われるファンが後を絶ちません。
企業所属が多いバーチャルYouTuberのなかで実は意外と珍しい、広告塔であることを全面的に押し出しているキャラクターです。衣装に堂々とサントリーのロゴが刻まれています。また、公開している動画の途中で毎回サントリーの製品をおいしそうに飲んでいます。夢はサントリーのCMに出演すること。最近ようやく叶いました。
「どうかしてるぜ」というギャグ(?)はお笑いコンビ・ブラックマヨネーズと共演した際に吉田さんにお願いして譲渡してもらいました。同時に相方の小杉さんからも「ヒーハー」を貰おうとしていましたが惜しくも断られました。清楚なバーチャルYouTuberってどうしてこう、要所要所でグイグイ攻めていくタイプばかりなのか。
神楽すず
「褒め言葉だと受け取っておきます」
なぜかこの番組に出演すると普通の子扱いされる清楚な子。よく観察していると言葉の端々に胡乱で不遜なワードがちょくちょく漏れてはいるんですが、飾らない雰囲気と口調とでうまいこと欺瞞されているようです。なお、Youtubeの方では最近すっかり“ボス”という愛称が定着してしまいました。
人気のコンテンツはウクレレ弾き語りとロボットゲーム実況プレイ。あと最近はゴリラも。やたら両極端な並びですが、実際配信のたびにガラッと空気が変わります。歌っているときは深窓の佳人そのもの。ロボットに乗っているときはまるで富野アニメの悪役。なまじっか透き通った声質と豊富な語彙力を持ちあわせているからタチが悪い。いずれも代わりがきかないってくらいよく似合っています。
どうやらバイオリン奏者として楽団に参加しているらしく、そこで培われた鋼の舞台度胸も彼女の魅力。多少固くなることはあってもけっして萎縮しません。いつも威風堂々。転ぶときは上手に転ぶべし。
授業構成おさらい(+ 補足事項)
超難問:タイタニック号沈没の謎を解明せよ!
ショウジ先生はガッチガチの海洋工学者です。ガリベンガーVという番組自体一線級の研究者が頻繁に登壇する贅沢な番組なのですが、この先生もまた相当にガチでマジです。どのくらいガチかといえば、『ショージ先生の船の博物館めぐり(国内編)』という、この先生にしては比較的浮ついた感じの著作名を画像検索してみれば察することができるでしょう。(学術系の出版社から出る本はどういう趣旨でもだいたいこんな感じですが)
基礎研究寄りの研究者で、論文の表題を読んだだけでも“模型実験”だの“算定”だのといったワードがバシバシ出てきます。特に船舶の衝突事故を念頭に置いた研究を熱心に行っているようですね。調べれば調べるほどお堅い印象しか受けない先生なのですが、そんな人に『タイタニック』をやらせた電脳少女シロの度胸よ・・・。
ちなみに先の『ショージ先生の船の博物館めぐり(国内編)』はGoogleブックスで一部試し読みすることができるんですが、ちょっと読んだだけでも「この人本当に船のことが好きなんだなあ」とほんわかしたパッションが感じられましたよ。
トピック1:なぜタイタニック号は造られた?
タイタニック号は大西洋を横断するために造られた巨大な客船です。客船なのでもちろん人を運ぶことが主目的です。
ちなみに、一等客室向けの豪奢な設備がよく知られていますが、実は乗船料金の安い三等客室まで設えてあったようです。飛行機のファーストクラス、ビジネスクラスに対するエコノミークラスのようなものですね。三等客室は石炭ボイラーに近い船底の方に配置されていたので、同じタイタニック号といっても居住性はかなりアレだったそうな。
「いろんな大陸を見てまわる。なおかつ船のなかで豪遊をする」
「地上を追われた人間が逃げ込むための楽園シェルター」
そんなわけで、神楽すずと電脳少女シロの予想がそれぞれ半分ずつくらい正解。“いろんな大陸”というかイギリスとアメリカの往復ですし、元いた地を追われた人間が逃げ込もうとしたのも客船ではなくアメリカ大陸。ただし、上流階級も下層民も色々な立場の人が乗り合わせていたという点では彼女たちの予想どおりです。
なお、魚人が乗っていたという話はさすがに聞きませんが、一部では密かにミイラが運ばれていたという珍説もあるようです。沈没したのはファラオの呪いだとか。
「どういう状態なんだよ。俺とシロちゃんが海にって」
テレ朝夏祭りで配布されたウチワですでに一緒に泳いでいたはずではー?
トピック2:タイタニック号の秘密は?
「答えはわからないんですけどおかしなところが1カ所あって・・・、ひとつだけ煙が出てないんですよ」
燦鳥ノムがナイス着眼点。4本ある煙突のうち1本がダミーだったというのが正解です。
一応厨房などのダクトとつながる換気口ではあったらしいのですが、この煙突のなかにお客さんのペットを預かっていたという話もあるらしく、まあ、やっぱりダミーですね。少なくともこんな大げさな煙突にする必要はありませんでした。
煙突が多いということは、それだけ大規模のボイラーを持っているということであり、それだけ無理のない馬力を持つ、信頼性の高い船としてアピールできたものと思われます。実際には煙突3本にボイラー6基で充分(同型艦のオリンピック号も同じ仕様で運航されていた)なのですが、そのあたりはイメージ戦略ですね。
「やっぱり煙が出てないと『あれ?』って思う方がいると思うんですけど、バレたときはどう押し切るつもりだったんでしょうか」
現代でもそうですが、こういうのはあまり詳しくない人向けにアピールするのが目的であって、知識のある人ならダミーに気付いても同時に“なぜダミーが必要なのか”を察してくれるものなので、結果的に大した問題にはならないものです。別にダミーだからって誰かが損するわけでもないですし。
トピック3:なぜタイタニック号は沈没した?
今回の授業のメインですね。ショウジ先生の専門領域でもあります。
「ボイラー室の下にぶつかっちゃった? こう、お腹のあたりをガリガリガリっと」
「とても尖った氷山で、下の部分をグサッとカッターのように切り取ってしまったんでしょうか」
ボイラー室だから問題だったわけでも、尖っていたから切り裂かれたわけでもありませんが、とにかく側面からぶつかって船体に広く穴が空いたのが原因です。
もしこれが正面からぶつかっていたのなら、あるいは沈没を免れていたかもしれません。(正面衝突の衝撃でどのみち死者は出たでしょうが) 同型艦のオリンピック号は大戦中、攻撃してきたドイツの潜水艦に体当たりを敢行し、五体無事に敵艦を撃沈せしめたという記録が残っています。そのくらい、本来なら丈夫な設計のはずでした。
側面からぶつかったにしても、船舶というのは「バルクヘッド」と呼ばれる隔壁によって船体をいくつかのブロックに区切る構造が取られていて、多少穴が空いたくらいでいきなり全体が浸水 / 沈没には至らないよう設計されています。
ここで最も正解に近い予想を立てることができたのは電脳少女シロでした。
「バランスっていうのが船って大事かなって思うので、どちらか右側か左側の船体に穴が空いて、水が入ったことに気付かないような、ちょっと簡単に確認できない場所に穴が空いたのかなって思います」
前述のとおりタイタニック号にはバルクヘッドがあるので、左右側面に多少穴が空いた程度で致命的にバランスを崩すということはありません。また、船員が浸水に気付けなかったわけでもありません。
そうではなくて、ここで重要なのは“バランス”です。
タイタニック号は氷山に側面から接触し、前方隔壁数ブロック分を一度に浸水させてしまいました。その結果、水の重さで船体“前後”の重量バランスが崩れ、船体が水面に対して斜めの角度に傾きはじめたんです。こうなると今度は甲板の上から無事だった隔壁のなかにまで海水が流れ込むようになり、ますます前後バランスが崩れていきます。前方と後方で重量バランスが著しく崩れた船体はてこの原理で真っ二つに折れ、わずか2時間半の異例の早さで沈没することになってしまいました。
もし複数の隔壁に渡る横に長い穴じゃなかったなら、あるいは前方側面ではなく正面か、もっと船体中央付近で氷山に接触していたなら、もしかしたらタイタニック号は沈没にまでは至らなかったかもしれません。
「いわゆる、もう本当に、当たり所が悪かったわけですね」
小峠教官の言うとおり、およそ考えられるかぎり最悪の位置に穴を開けてしまったわけです。
トピック4:氷山に衝突して沈没までの時間は?
およそ2時間半だったといわれています。
この問いに関しては、船舶工学に詳しくない人にとって時間のスケールがピンとこないので数字にあまり意味がありません。先ほど「異例の早さ」と書いた私もぶっちゃけネットの受け売りで書いています。
なので、生徒たちが興味を持ったのは時間そのものではなく、補足資料。生存者たちの証言をまとめた、沈没までの2時間半の船内の動向が詳細に記された記録です。
乗り合わせた乗客、スタッフともにジェントルマンだったようで、救命ボートには女性や子どもが優先して乗せられていました。
ちなみにこのときタイタニック号に乗船していた人は2000人弱。これに対して、救命ボートに乗ることができた人数はたった499人。混乱のせいで全てのボートに限界まで収容できなかったとはいえ、実は半分にも達していません。当時は全ての乗客乗員を収容できるだけの救命ボートの装備が義務づけられていませんでした。乗客のなかに明確な階級差があったので当然といえば当然だったのかもしれませんが・・・。
タイタニック号に乗り合わせたジェントルマンたちは、自分たちが逃げられないのを理解していながら、それでも女性と子どもを優先していたわけですね。
しかも、それにしたって男性の収容人数が極端に少ない。きっとなかには高貴な身分でありながら、自分より三等客室の子どもを先に行かせてあげた男性もいたんでしょうね。高い金を払った上客として当然の権利だとは考えずに。
「どう見ても男性は1人か4人とかで、各ボートもう20人30人子どもや女性が降りてて、なんかいろんなやりとりがあって乗せてあげたり送ったんだろうなって思ったら、なんかこみ上げるものがありますね。すごい記録だあ」
ちなみに映画『タイタニック』でも印象的に描かれていた、沈没する最後の瞬間まで演奏しつづけていた楽隊は実在したようです。そういう証言があります。
混乱した乗客を落ち着かせるために、自分の命をなげうってまで音楽を奏でる。・・・プロフェッショナルとしてはひとつの本望だったかもしれませんね。自分の仕事が明確に誰かの救いになると確信できるだなんて。自分がここまで生きてきたことには意義があったんだと確信できるだなんて。
少し不謹慎に聞こえるかもしれませんが、私は、彼らの勇気ある善意が、演奏を聴く者だけでなく死にゆく彼ら自身にとっても救いであってくれたら良いと思います。どうか、すべての人が人生の終わりに充実を抱いてゆけますように。善き人すべてが善き人生を送れますように。
彼らの死を悼むなら、死に臨む彼らにも何らかの幸福があったことを祈らずにはいられません。
トピックex:先生に聞いてみよう!
タイタニック号のエピソードに涙をこぼす燦鳥ノムの隣で、あえてボタンを押さず静かに挙手した電脳少女シロが質問しました。
「この事件が起きてから、ボートとか船っていう点で、何か改良されたりはしたんですか?」
この痛ましい事件を受けて、当時の人々からは船舶の安全管理を向上させようという声が大きく吹き上がりました。
特に救命ボートの数。それから通信設備。
先にも書いたように、タイタニック号が装備していた救命ボートの数は乗員数に対してまったく足りず、そのせいで犠牲の数が拡大してしまいました。ちなみにこれでもタイタニック号は他の船より余剰にボートを用意していた方だったそうです。以後は乗員全員を収容できるだけの救命ボートを用意するのが当たり前のことだと認識されていくようになります。
また、この事件では、周囲を航行する船舶がタイタニック号の沈没に気付いて救命に向かうまでの時間もずいぶんかかってしまいました。もし完全に沈没する前に到着する船があったなら犠牲者数は半減していたかもしれません。このため、この事件のあとすべての船舶に無線設備の設置が義務づけられるようになりました。
その他、より安全な船の構造を国際的に広めていく取り決め、貨物の過積載を取り締まる新基準、秩序立った避難誘導の徹底など、様々なルールが整備されるようになりました。
大きな事件のあとには大きな社会の変化が訪れるものです。なんだかんだで人はできるかぎり人の死を無駄にしたくないと考えてくれるものです。死を悼み、死を厭い、次の誰かが同じ不幸を繰り返さないで済むよう、たくさんの人が意見を交わしてより良い世界を目指していきます。
「後世にいろいろ引き継いでいくのも大切ですし、あとはこう、当時の人の思いというのをすごく想像して、日々大切に生きていきたいと思いました」
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