奇跡の変身!キュアモフルン!感想 孤独をやっつけるヒーロー。

 2回目観に行ってきました。客入りはまだ減る様子がありません。祝日だからか暖房が効いていたからか(?)、初回よりも場が暖まっているようでした。はじめてきれいなミラクルライトの群れを見ることができましたよ。
 子どもたちの歓声があるとやっぱりいいですね。初回よりもフェスティバルの音響がリッチになったような気がしたら、実は子どもたちのはしゃぎ声だったり。モフルンが倒れて大泣きする子どもたちに釣られて、ついついこちらも目が潤んでしまったり。今回も楽しい映画体験でした。

前回の感想
→ 映画魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン! 感想

※このブログはネタバレに配慮していません。

「映画魔法つかいプリキュア! 」オリジナルサウンドトラック

 前回の感想ではみらいとクマタにスポットを当てて、モフルンについてはほとんど触れませんでした。キュアモフルンはあまりにもヒーロー然としすぎていて、物語を紐解く視点としては不向きだと考えたからです。
 例えばドラえもんというアニメの主役はドラえもんですが、視聴者の多くが感情移入する先はのび太くんでしょう。ああいう感じ。物語を動かすキャラクターと物語のテーマを背負うキャラクターは必ずしも一致しません。

 とはいえ今回は2回目ですし、やっぱりこの映画を観るとがんばってくれたモフルンのことも語りたくなるので、彼(彼女)のことを中心に語っていきます。いざ注目してみると、モフルンはモフルンで立派にテーマを背負って戦っていましたしね。

天秤にかける

 結局のところ映画全体のテーマは、クマタが抱えていた「孤独の克服」と、みらいが1年かけて答えを出そうとしている「みんなで頑張る意義」の2つに尽きます。
 願いの石のモデルである(と私が勝手に考えている)インカローズが象徴するものは「バラ色の人生」。幸せに生きるために必要なものは、たくさんの人との豊かな繋がりと、自分が祝福されていることに自覚的になることです。そんな語りを昨夜したようなしていないような。
→ 奇跡の変身!キュアモフルン! モフルンリンクルストーンはどうしてピンク?

 モフルンが願いの石に託した願い事は、みらいとリコとはーちゃんの願い事を叶えることでした。彼にとっては今みんなで暮らしていることが何よりの幸せで、だからそれを永続させるための方法を願いの石に求めたわけです。
 クッキーも大好きだけど、それはみらいたちがつくってくれる。みらいたちと暮らす日々に内包されている。だからこの毎日が続くなら、他にはなんにも要らない。
 そりゃあもう大きな願い事ですとも。モフルンの知る限りの幸福をありったけ内包した、総括的な願い事なのですから。ありふれた日々を幸せに生きるって、そういうことです。「願い事100万個叶えてください」とかによく似ていて、もしかするともっと贅沢なことかもしれません。
 願い事を見つけられなかったみらいとひとつの願い事に決められなかったモフルンは似ているようで全然違っています。「願い事は自分のために使わなきゃ」 みらいはそう言いますが、モフルンにとってはこれが自分のためになる最高の願い事だったのです。

 それだけ大きな願い事なのですから、やっぱり破綻する隙も多いです。みらいたちと離れてしまったら、あるいはみらいたちが少しでも害されてしまったら、それだけでモフルンの願い事は損なわれてします。幸せであるためには、モフルンは身の回りのもの全てを守らなければいけません。

 クマタはモフルンに選択肢を突きつけました。自分とともに暮らすか、みらいたちの元に帰るか。あるいは、みらいたちの元に帰るのを諦めるか、みらいたちが傷つくことを諦めるか。
 そんな選択肢、はじめから破綻しています。選べっこありません。どちらもモフルンの幸せの必要条件です。みらいたちは言わずもがな。クマタも、この時点でモフルンはすでに彼を友達だと思っていました。どちらかを諦めるなんて選択、モフルンには絶対にできません。
 ひとつめの選択肢でモフルンはみらいたちの元に帰ることを告げました。けれど別に選んだわけではありません。ひとりぼっちを拗らせたクマタにとっては排他の選択肢かもしれませんが、モフルンからすると一旦帰って、また遊びに来ればいいだけの話です。みらいたちとクマタ、両方を取っただけです。
 ふたつめの選択肢に至っては単なる脅迫です。どちらを選ぼうとモフルンの願い事は損なわれます。だからモフルンはここでもどちらも選ばず(クマタの意図としては相変わらず自分とみらいたちのどちらを選ぶかなのですが、モフルンはどちらかを選んだわけではありません)、密かにみっつめの選択肢をつくってしまいます。

 すなわち、自分の幸せを諦めるか、諦めないか。大きすぎるモフルンの願い事は、ここまで単純化しないと選択肢を成立させられません。
 そしてモフルンは前者を選んでしまいます。これさえ妥協すれば、せめて魔法フェスティバルで願ったことの上っ面だけでも叶えられるでしょう。どうかみらいとリコとはーちゃんが幸せになれますように。

願い事を叶えるのは誰か

 なれません。幸せになんかなれませんとも。これまで何人のヒーローがそれを選んで失敗してきたことか。今どき自己犠牲なんて流行りません。自己犠牲の権化だった頃の愛乃めぐみは相良誠司を幸せにできましたか? 大好きなマナを諦めてキングジコチューの孤独を癒やそうとしたレジーナはそれを果たせましたか? ナンセンスです。
 この映画中唯一のモフルンの失態は即座に否定されます。テレビシリーズでは今もちょうど同じ選択肢を選んでしまっている、みらいによって。
 「私が楽しいときはいつもモフルンが一緒だった」 バラ色の人生を象徴するインカローズの、パワーストーンとしての具体的な効能はそのほとんどが人間関係に関わるものです。誰かの幸せを願うために自分の幸せを諦めるだなんてナンセンスです。だって私とあなたは繋がっているのですから。だからみらいはダークマターに何を言われようともモフルンを諦めません。「嫌だ」と切って捨てて、モフルンに手を伸ばすだけです。
 モフルン自身が言ったことではありませんか。みんなが幸せだとモフルンも嬉しいと。モフルンが悲しんでいてどうしてみんなが幸せになれましょうか。

 誰かを幸せにするためには自分が幸せになるべきです。自分が幸せになるためにはみんなを幸せにするべきです。
 我ながらすっごい理想論を書いていますが、実際そうですしね。それが果てしなく難しいから、現実的にはほどほどのところで諦めて、ほどほどのところで妥協しているだけであって。諦め、妥協したところからは不幸が這い寄ってきます。100%充足した幸せを、おそらくは私たちみんな、誰も享受できていません。
 だからこそ私たちはヒーローを創造し、ヒーローを応援して、ちょっとずつその生き様を自分の人生に反映させていくんです。あるいは子どもたちに見せて、彼らがよりよく生きられるように祈るんです。

 だからキュアモフルンはヒーローとして、理想をそっくりそのまま体現します。100%充足した幸せのために戦います。
 彼女はたったひとりでダークマターと対峙しながら、たったひとりでは戦いません。みらいからの援護。リコから借りて、みらいが飛ばしてくれた魔法のほうき。それからキュアフェリーチェとフレアドラゴンも合流します。
 たったひとりの頑張りでは誰も幸せにはなれません。みんなで力を合わせて、みんなで幸せを目指して、そうしてようやく幸せに手が届くものです。それを体現するかの如く、キュアモフルンはひとつのほうきを無数に増やしてみせます。
 たくさんのほうきを束ねて、またひとつの大きなほうきに変えて、いざ、イジワルな選択を強いるダークマターを懲らしめよう。

諦めない、負けない

 それでいて、敵対しているからといってクマタを諦めるでもありません。
 「クマタ。モフルンはちょっと怒ってるモフ」 ダークマターと名乗ったはずの相手に、彼女はあくまで「クマタ」と呼びかけます。この戦いはあくまでちょっとしたケンカ。あるいはクマタの中に宿ってしまったイジワルな心との戦いです。

 クマタはあくまでモフルンの友達です。みらいたちを守るだけではなく、クマタをも救ってはじめてこの戦いは終わります。モフルンの願い事を叶えるにはそれしかありません。
 だからクマタの心を救うのがどれほど困難だろうと、キュアモフルンは諦めません。先ほど自分の幸せを諦めてしまったときとは違って、今の彼女にはみんなの力がついていますしね。
 クマタの拒絶によって、モフルンは一度喪われます。けれどそうなってしまってなお、モフルンは戦い続けることができます。
 どうやって? みらいやクマタ、魔法界のみんなを奮い立たせることによって。
 誰と? クマタに巣くっていた孤独な心と。
 なんのために? 自分の願い事を叶えるために。つまりはみんなで幸せになるために。
 「キュアップ・ラパパ! 魔法よ、止まりなさい!」

 みんなの願いがモフルンに集まります。「孤独」のカウンターたる我らがヒーローに再び肉体を与えます。
 モフルンリンクルストーンはハートフルリンクルストーンへ。みらいたちと一緒に暮らしたかっただけのたったひとりの願い事は、クマタを巻きこみ、やがてみんなの願い事となって、それを邪魔する「孤独」を打ち払います。
 手を繋ぐ物語はかように際限なく連鎖していくから大変ですね。テレビシリーズの最終回はどんな規模になるのやら。みらいたちの戦う理由がおそらくすっごい素朴なものになるだろうこととは裏腹に。

 孤独を払うヒーロー・キュアモフルンは他のプリキュアと手を繋いで連続変身、次いで先ほどほうきを増やしたように、今度はプリキュアの数を増やして4人プリキュアオールスターズ。みんなで力を出しあい、みんなと一緒に戦う「孤独のカウンター」らしさをこれでもかと体現していきます。
 彼女が戦っている「孤独」の来歴は、はじめ自分から手を差しのべていたクマタが何度も拒絶され、やがて自分から手を差しのべることを諦めてしまったという、とても根の深いもの。けれどキュアモフルンは諦めません。クマタが幸せになれなかったら、自分も幸せになれなくなってしまいます。
 手と手を繋ぐ奇跡の魔法は他者救済と個人主義を統合します。だから絶対に諦めない、負けない。

 「出会えた奇跡と、惹かれあう魔法と、そこから紡がれる幸せを、諦めないモフー! プリキュア・ハートフル・レインボー!!」

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