でもさ。どうして桜子の部屋やりたいとか、お茶会やりたいとか、知りたくならね?
(主観的)あらすじ
観星中はそろそろ次の生徒会長を決める時期です。ひかるは持ち前の自由な発想をまどかに買われ、生徒会長選挙に立候補することになりました。対するはずっと以前から生徒会長の席を狙っていた桜子。桜子の尋常じゃない闘志にタジタジになりながらも、とにかく、頼まれたのだからとひかるは一生懸命選挙戦をがんばりました。
最初は何も考えず、ただ自分らしくアピールしてみましたが、それでは学校の生徒たちの反応がよくありませんでした。
ひかるはこれではいけない、みんなの望む生徒会長にならなきゃ!と考え、まどかのマネをしてキリッとふるまってみました。今度は人気が出ました。ただ、それはひかるにとってすごく疲れる大変なことでしたが・・・。
一方、桜子のほうは終始一貫して桜子らしい選挙演説をしていました。我も強ければ押しも強い彼女のやりかたに生徒たちはみんな引き気味。選挙戦は目に見えて桜子の劣勢に傾いていました。
自分が支持されていないことをわかってはいましたが、桜子にはそれでも生徒会長になってやりたいことがたくさんありました。毎日学校の見回りをしては改善点を見つけ、自分なりに工夫を凝らした生徒会運営のアイディアが浮かぶたびメモに書き留めてきました。性格のせいで誰にも理解してもらえないだけで、桜子は心から生徒会長の仕事をしたいと思っていたのでした。
自分は何をしたいと思っているんだろう?
お婆ちゃんにがんばりすぎを心配されたひかるは、ふと、今自分がしていることに疑問を覚えました。まどかのマネをするのは自分のしたいことじゃないかもしれないと。すると何故だか桜子が何をしたいと思っているのか知りたくなって、彼女のことを追いかけて、少しだけ彼女の考えていることを知って。けれど桜子はひかるをライバル視しているので必要以上の会話をしてくれなくて。
そうしているうちに、ひかるは今自分が何をしたいと思っているのかに気付いたのでした。
生徒会選挙最終演説会の日。ひかるはなんと、対立候補である桜子を応援しはじめました。
それこそがひかるの本当にしたいことでした。彼女のしたいと思っていることを知って、それから自分のしたいと思っていることも知ってほしい。
つまるところ、ひかるは桜子ともっと仲よくなりたいと思ったのでした。
「私たちは星。姿かたち、何もかも違うけど、使命(いのち)みんな持つ」(EDテーマ『Twinkle Stars』)
「使命」と書いて“いのち”と読むんですってよ、オクサマ。
なんだかすげーこと言っていますが、続く歌詞を聞けば納得です。
「どんな願いもまっすぐ“本当”を聞かせてよ。だって君の夢は、私たちの夢」(EDテーマ『Twinkle Stars』)
要するに第3クールに入ってからずっと掘り下げているテーマのことですね。
それはひとりひとりが心からやりたいと思っていることであり、心からやらなければいけないと思っていること。個人的な願いであり、夢であり、同時に使命でもあり、つまり生きることそのもの。
何のために生まれて、何のために生きるのか? その問いに答えられない生きかたは、きっと、やっぱり、悲しいものですよ。やらなければいけないことは、やりたいことを実現するためにこそあります。そうあるべきです。なにより自分自身のために。幸せに、笑って生きていくために。
「やらなければならない」だけがある日々はただひたすら息苦しいけれど、一方で「やりたい」だけを待ちつづける日々も辛いものです。やりたいこととやるべきことはセットになってはじめて大きな価値に変わります。
前へ進むために。
自分の力で自分の夢を叶えるために。
・・・でもまあ、それが簡単に見つかるようなら誰も苦労しないわけで。
誰かのために
「素晴らしいです! ひかる。その発想力を生徒会長になって生かしてみませんか?」
けっしてお願いしたつもりではありませんでした。
まどかとしては、次期生徒会長にはあくまで立候補してほしいと考えていました。ひかるに立候補を提案したときも慎重に言葉を選んで、あくまで提案に留めたうえでひかるの答えをじっと待ちました。
「私は、自分の思いを持ってこの観星中をより良くしていけるかたに会長を引き継ぎたいと思います」
「ひかるが立候補だなんて珍しいこと」
「あは・・・。なりゆきというか・・・」
それでも実際のところ、ひかるのほうには自分から立候補したという感覚はあまりありませんでした。
ひかる自身に生徒会長として何かをしたいという気持ちは特にありませんでした。立候補したのは、まどかが困っている様子だったから。他の友達も向いてそうだと言ってくれたから。それだけ。
それだけのはずなのに、ひかるはこれ以上なく真剣に生徒会長選挙に取り組みました。
「はあー。いきなりしくじったかな・・・。みんなが望む生徒会長って何だろう」
うまくいかなければ落ち込むし、うまくできるように悩みもしました。普段の自分らしさを曲げることまでして一生懸命がんばりました。ハタから見ている分には場の空気に流されただけ、みたいなものに思えるのに。
それだけがんばれるということは、――ひかるのなかに、ちゃんと生徒会長になりたい理由があったということです。
その理由というのはもちろん、困った様子のまどかを助けてあげたいと思ったこと。それから他のみんなからも期待されたこと。自分ではない他人のためです。
けれど、少なくともその人たちのためにできることをしたいと思ったのはひかる自身。その思いは間違いなくひかるの個人的なもの。
ひかるが生徒会長になることでまどかが喜んでくれたら、きっとひかるも嬉しい気持ちになれるでしょう。がんばる甲斐があるというものです。だから、今回のことは自分ではない他人のためでありながら、同時に自分自身のためでもありました。
「みんな、ちょっと待って。まだ何も解決してないよ。サボローは友達になりたかっただけなんだ。だけど、このままだとわかりあえないまま行っちゃう。私。私・・・、サボローに謝りたい!」(第34話)
えれなが周りの人の笑顔のためにいくらでもがんばれるのと同じことです。
えれなに本当は「みんなと仲よくなりたい」という個人的な望みがあったのと同じように、そこにはたしかに、ひかる自身にとっての“やりたいこと”がありました。ちょっと回りくどい“やりたいこと”ではあるけれど。
幸いなことに、まどかや他のみんなはひかるが自分の意志で立候補するのを待ってくれました。実質的には半ばお願いしているようなものだったとしても。
そのおかげで、ひかるはこんなにもがんばることができたんです。
「はあ、疲れたー。休んでなんかいられないよ! がんばらなきゃ!」
誰かに強制されたわけじゃなくても無制限の努力を注ぎ込める、力強い目的意識。責任感。
届かない思い
「私は、もっとひかるらしくやってほしいと思っていたんですけど・・・」
当のまどかはひかるにそんな責任感を負ってほしくなかったはずなんですけどね。
けれどそれも仕方ないことです。ひかるががんばっているのはまどかや他のみんなのためであるように見えて、実際は自分自身のためでもあるんですから。人が自分の意志で自分の行動を決める生きものである以上、そう簡単に他人に口出しできるものではありません。
ただただ、まどかの胸の内にだけ申し訳ない思いが降り積もっていきます。この子はこの子で“自分の意志”というものにズレた憧れを抱いてしまっている子です。
自分の思いを他人に伝えるのは難しいものです。
だって、誰しもがひとりひとり違った価値観を持っているのですから。
まどかが前例を覆してまで次期生徒会長を立候補から募りたいと言った切実な思いを理解できた人は、今話の登場人物のなかにひとりとしていません。誰も彼女ほど日々の生活に息苦しさを感じていないからです。
「宇宙規模でキラやばな観星中となって、宇宙からの転校生を受け入れ――。あ、あれ?」
同様に、ひかるの独創的なイマジネーションを即座に面白いと思える人もなかなかいませんし、
「私、姫ノ城桜子が生徒会長として目指す観星中。それは、生徒会による校内風紀の徹底。罰則規定の制定。そして生徒会長・姫ノ城桜子のお茶会の開催。桜子の部屋の開設。桜子の目安箱を各階10個ずつ設置。姫ノ城桜子の、姫ノ城桜子による、姫ノ城桜子のための生徒会長。姫ノ城桜子ですわ!」
桜子のマニフェストの意図をこの演説だけで理解できる人だってもちろんいません。(「姫ノ城桜子のための生徒会長」て)
話上手な人は、他人に何かを伝えようとするとき、まず前提となる背景事情から説明します。(ちなみに私はおしゃべりがニガテで結論しか言わないタイプです)
みんな同じ世界に生きているようで、実際はそれぞれの主観ごとに違ったかたちでものが見えているからです。まずは今何がどういうふうに起きているかの視点をお互いに共有しないと、自分がどういうことを問題だと感じているのかすら、なかなか理解されるものではありません。誰もが最初から共有できている“当たり前”って、意外と少ないものです。
自分の思いを他人に伝えるのってそのくらい大変で、面倒なものです。その苦労を日々の生活のなかでこれでもかと思い知ったうえで、それでも私たちはどうしても誰かに何かを伝えたいと思ってしまいます。
「・・・あ、あれ?」
「みんなひかるを宇宙人を見るような目で見てるルン」
ひかるは自分の演説が学校の生徒たちに全く理解されないことにショックを受けて、せめて何かが伝わる方法を模索しました。
「姫ノ城さんってさ、自分が目立ちたいだけに見えちゃったりするんだよね」
「あー、それ言えるかも。まどか先輩みたいに周りを見てる感じがしないのよね」
そしてひかるもたいがい説明下手な子なんですが、まさかのその下を行った桜子。あの説明する気ゼロっぽい演説をしてしまう彼女でも、何も伝わらないのではやはり悔しく感じるようです。
「なぜですの・・・。私は。私、は――」
選挙に勝てないからというだけでは、きっとありません。
彼女の掲げたマニフェストはどれも生徒会長と生徒たちとのコミュニケーションを密にしようとするもの。この子、こう見えて実は他人と交流を持つのが大好きなんですね。生徒会といえど部活のように楽しく生徒が話せる観星中。言わずとも先回りしてひとりで問題解決してしまうまどかのやりかたと合わないのも、なるほど、そういうことでしたか。
なのに実際には全然うまくできなくて、まるで暗闇のなかひとりぼっちにされてしまったような感覚。それが彼女の歪んだイマジネーションとなりました。
私よ届け!
ひかるは自分のありのままの言葉を学校のみんなに伝えようとして、だけど全然伝わらなくて、別の方法――まどかのマネをすることで、やっとみんなに自分の演説を聞いてもらえました。
生徒会長にならないといけない事情があるからこそ、そこまでやることができました。けれど、ちっとも楽しくありませんでした。辛いとさえ感じました。
自分の“やりたいこと”のために必要な“やるべきこと”のはずなのに。同じ“やるべきこと”の「フワを守る」なら、全然辛いだなんて思ったこともなかったのに。
「ひかる。夢中になってるか? ――小さいころのひかるは何でも自分の好きなことに夢中になってたわ。それこそ周りのことなんてお構いなし。でも、好きなことを話しているときはとっても楽しそうでね。聞いてるこっちまで幸せな気分になったわ」
どうして自分が辛いと感じているのかの答えは、お婆ちゃんが教えてくれました。
要するに桜子と同じです。ひかるは昔からひとり遊びが好きだった割に、誰かに自分のことを話すのも好きな子でした。
「私さ、友達と遊ぶよりひとりで天文台行ったりするほうが楽しかったから。星座とか宇宙人、UMAを調べてるほうがさ。でも、わかったんだ。ひとりでいるのも楽しいけど、みんなとこうしているのもすっごく楽しいんだって」(第26話)
以前、ひかる自身はこんなことを言っていましたが、彼女を外側から見つめるお婆ちゃんからしたら昔からそういう子だったんですね。遼じいにも気に入られるわけです。
そもそもまったく自分の思いを理解してもらえない桜子。
話は聞いてもらえても、それが自分の思いではないひかる。
結局ちっともわかっていませんでした。
自分の本当にやりたいことと、やるべきこと。
最初はまどかや他のみんなを喜ばせたくて生徒会長になろうと思いました。けれど、その思いの奥にはもっと根底となる素朴な思いがありました。
「違う! 歪んでなんかいない! 私、何も知ろうとしていなかった。姫ノ城さんのこと。でも、今は少しだけわかる。私、もっと知りたい! 彼女のこと!」
「同感だ。敵を知れば弱点もわかる。倒すのに好都合というものだ」
「違う! 私は、私のことも知ってほしい!」
「敵に自分を? はっ。何のためだ」
「わかりあうため!」
まどかたちが自分を推してくれているのがわかって嬉しかった。だからこそ、今度は自分も彼女たちの喜んでくれることを、自分のうれしさが伝わることをしてあげたかった。
自分の言葉での演説を聞いてもらえなかったことは悲しかった。まどかのマネをしての選挙活動もなんだか辛かった。自分の思いを伝えられず、向こうからも自分への思いが返って来なかったから。
桜子の思いがわかる。だから今度は自分の思いも彼女に知ってほしい。全然違う性格のようでいて、きっと自分と彼女はよく似ている。きっとわかりあえる。まどかたちとも思いを通じあえたように。
だから。
「『わかりあう』だと? くだらん。そんなことに意味はない」
「意味なくなんかないよ、きっと。そこからきっと生まれるんだ。キラやばー!なものが!」
ひかるの本当にやりたいことは生徒会長になることではありませんでした。やるべきことでもありませんでした。そちらもひかるにとって大切なことだったのは間違いないですが、それよりももっと大切な思いがありました。
元来説明下手なひかるは、まだそれをうまく言語化することができません。キラやばー!としか表現できません。それはトゥインクルイマジネーションと呼ぶにはまだまだ未熟でか弱い思いです。
「どんな願いもまっすぐ“本当”を聞かせてよ。だって君の夢は、私たちの夢」(EDテーマ『Twinkle Stars』)
“本当”って何だろう? きっと自分ひとりじゃわからないから“本当”と“本当じゃないもの”があるのでしょう。
「こうしてさ、パジャマでみんなとおしゃべりだなんて、みんなに会う前、ちょっと前の自分からじゃ想像できなかったよ」(第26話)
「自分のことって自分じゃよくわからないんだね。私たち、自分で自分を決めつけてたのかも」(第28話)
その答えを見つけたくて、きっと私と君はお互いの思いを必要としているのでしょう。
だから、今はまずわかりあいたい。
「観星中の金星・・・。へー! 私は何かなあ」
「あなたは、そうね――。観星中の銀河におなりなさい!」
ほら、この人は私の知らなかった私をまたひとつ教えてくれた。
これが今のひかるの本当に“やりたいこと”で、“やるべきこと”でした。
みんなと一緒に知ろうとする思いは、いつかきっと使命(いのち、ねがい、ゆめ)にも届くでしょう。
コメント
桜子、最悪でもカルノリのようなリアクションを想定してたんでしょうか。
あのマニフェスト……ウグイス嬢もびっくりの名前連呼に最早呆れを通り越してかなり笑えましたよw
ひかるは観察力高いタイプのはずなのに、気配り上手なまどかのやり方はどうやらダメだったみたいで。
いやなんとなく人としての在り方が微妙に違うのは分かるのですが、ちょっとまだ自分の中で言語化できてないですね。
次回はユニのターンですか。
少し前まで、分かり合うことを全力で放り投げてきた彼女の行く末や如何に。
ひかるは観察する力こそあれ、誰かの役に立つこと最優先な子じゃないですからね。
もちろん誰かの役に立つことが嫌いなわけじゃありません。今回もまどかたちの期待に応えたくて(喜んでほしくて)生徒会長を目指しました。
ただ、それよりも優先することがあるというだけです。誰かの役に立つこと最優先の子なら、あの超が付くほどの説明下手は不便すぎるので自主的に問題意識を持つはずですから。実際のひかるはそのあたり改めようとする気配すらありません。
ひかるにとっての最優先はもっと別にあって、それがお婆ちゃんの言う「夢中」であったり、バトル中に自分で言った「わかりあう」だったりするようです。そのあたりの話はおそらく彼女の本当の当番回(というかトゥインクルイマジネーション完成のエピソード)で語られるんだと思います。
今話のひかるはなんだかんだで“やりたいこと”と“やるべきこと”はちゃんと噛み合っていたんですが、そもそも“やりたいこと”が彼女にとって何よりも優先されるべき、ってほどのことじゃなかったんです。
ひかるがやることちゃんとやっている割に、なんともいえないチグハグ感が出ていたのは、おそらくそういうことだと思います。
本来あの子は誰かのために役立とうとするより、まず自分の好きなことをしたいと思う子です。
ちなみに、その視点で考えるなら桜子は本当にやりたくてやりたくて、本気であのマニフェストを出してきたんだと思います。まず自分が目立ちたい。マジで目立ちたい。心から目立ちたい。そこだけはたぶん誤解じゃなかったんだと思います。
ただ、その“やりたいこと”を本気で実現させようと考えているうちに、“やるべきこと”としてみんなとコミュニケーションを持つことが組み込まれていったという流れだったんでしょう。周りから讃えられるには、まず周りに好かれなきゃいけないわけで。
「責任」も「使命」も誰かに押し付けられたネガティブなイメージが付きまとう言葉です。
ですが、それが自ら望んだやりたいことなら背負う価値のあるものちなります。
ひかるは言ってしまえば、積極性のあるただのオタクです。オタクゆえに周りの顔色を窺う子です。
ひかるはしたいことがあってそのためなら責任を背負うことも厭わないけど、自分のしたいことと周りからの期待がごっちゃになってしまうんですね
さて、ひかるが本当に背負いたい責任って何なんでしょうね。
周りの期待に応えることも、ひかるのやりたいことのひとつではあったんだと思います。ただ、他にもっとやりたいことがあって、“周りの期待に応えること”のほうを今話でやっていたくらい全力で打ち込んでしまうと、一番やりたいことと両立できなくなるだけで。
ほんと、性根はあくまでオタクなんですね。周りの人の気持ちを察する力はあっても、それはあくまで自分がしたいことをするために獲得した力であって、周りの期待に応えるためのものじゃない。ゴーイングマイウェイ。
今話、おそらくトゥインクルイマジネーションの萌芽と思われる輝きがひかるの心に生まれましたが、残念ながらまだ完成には至りませんでした。
ひかるはもっと他にやりたいこと(同時に、背負いたい責任)があるということですね。
今回のエピソード、実は現生徒会長・香久矢まどか氏の”弱点”が露呈した事が一番大きなトピックだったような……。香久矢会長、「部下の資質とか心情が見えてない」「後継者の育成に注力してこなかった」と、管理職としての資質にかなり疑問符がついてしまった感じがしますね。
おそらく彼女、自分一人で全ての方針を決めて仕切ってしまうタイプで「部下に裁量を与えて任せる」ことが出来ないんだろうと思います。だから、部下に「後事を託せるだけの力量」を養わせることも出来なかったし、まどか自身の「部下の資質を見抜く眼」も養われなかった。
結局、姫ノ城桜子という「力量ある野心家」が”幸運にも”部下の中にいてくれたお陰で後継体制の確立にこぎ着けたわけですが……まどか氏、思い付きで「外部からの招聘」を目論んだ事で、危うくこの”幸運”を潰しかけたんだよな……。
で、さらに厄介なことに、この次期生徒会長・姫ノ城桜子氏が前任者に輪をかけて「自分一人で全て仕切りたがる」タイプだったりしまして(だから他者と認識を共有し理解を得ることの大切さが見えてない)……。この”ワンマン生徒会長”路線がこのまま観星中生徒会の悪しき伝統として定着しないことを祈りたいものですが……。
まどか、おそらくは自分のこれまでしてきたことに自信がないんでしょうね。自分の立場も能力も考えかたも、全部お父さんに与えられたもの(だと本人は思い込んでいる)だから。
周りにいる人からするとまどかこそが「完璧な生徒会長」なんですが、当のまどかにとって本当に完璧な理想は「自分の思いを持ってこの観星中をより良くしていけるかた」。そこに齟齬がありました。だから今話のまどかはこれまでの自分の実績を根こそぎ否定するかのように独断で伝統を変え、かつ後継者に自分のカラーが残ることを嫌がったんでしょう。
もっとも、まどかが思うほど他の生徒会役員(というか桜子)はまどかのカラーに染まっていなかったわけですが。
言ってしまえば今話のまどかの動きは無いものねだりです。その一言に尽きます。持ってるのにね、本当は。
今話はひかるもたいがい自分の本心を理解できていませんでしたが、まどかはそれに輪をかけて自分の本当の姿が正しく認識できていませんでした。今話におけるまどかの弱点はそっちです。周りが見えていないんじゃなくて、自分が見えていない。