年も暮れようとしているのにまだまだ終わらないフリップフラッパーズ記事。貯め込んだ冬休みの宿題を解いている気分です。楽しいからいいんですけどね。
ちなみに東北は関東と比べて夏休みが短く、その分冬休みが少し長めです。夏の猛暑よりも雪の方がしんどいですから。そのため冬休みの宿題も夏休みと同じくらいたっぷり出ます。
※ なんとか最終話まで完走しました。
第9話 ピュアミュート
「消音」 パピカとヤヤカが言い争う声はココナに聞こえません。それをいいことに双子があることないことを吹き込み、ココナは疑心暗鬼に陥ります。それと同じように、パピカが記憶の混乱によってココナとミミを混同していることも、ヤヤカがココナを監視するために傍についていたことも、ココナは何ひとつ聞かされていません。知らないということは不安や疑念に転じます。自分には何も聞こえていなかったと思い知ることで、これまでココナを支えていた地盤はガラガラと崩れていくことになります。
保健室、病院待合室の絵、中庭、ココナとヤヤカの思い出の花・・・ベゴニア「幸福な日々」「片思い」
ふたりは同じ思い出を共有しているというのに、ココナだけがヤヤカの本当のところを知りません。たとえ幸福な日々が過ぎ去ってしまっていたとしても、それでもなお自分がいかに愛されているか、ココナは気付いていませんでした。それを思い知ったのはすべてが終わったあと。
※ ホワイトボックス
この極端に真っ白な空間は美術館を連想しますね。大概の美術館では展示室を壁も床も天井も真っ白にしています。美術館は絵画など二次元作品や彫刻を初めとした三次元作品、場合によっては映像作品やらパフォーミングアーツやらその他特殊な趣向のモダンアートやら、意外とバリエーション豊かな作品群を定期的に入れ替えて展示しています。だからどんな作品を置いてもそれなりに見栄えのする、ベーシックな展示空間の方がなにかと都合がいいんですね。もっとも、最近は美術館ごとの個性を演出しようとホワイトボックス以外の展示室を備えるところも増えてきているのですが。行ってみると案外楽しいですよ、美術館。あれはおひとり様でゆっくり楽しむべき娯楽です。
ただし全面真っ白なので、作品はもちろん、壁や床もなるべく汚さないように気をつけましょう。パピカやヤヤカのように暴れると、汚れが大変目立つうえになかなか消えなくなっちゃいます。
障子に描かれた花・・・ウメ「忍耐」「忠実」
状況や登場人物の心情には今ひとつ似合いませんね。夢十夜の方では柳の絵とされているので、わざわざ変えたからには何かしらの意図があると思うのですが。
ひょっとして飛梅伝説からの引用でしょうか。平安の大貴族・菅原道真が京を追われたとき、彼が愛でていた庭木たちはめいめいに主人との別れを惜しみました。桜の木は毎日を嘆き悲しみ、ついには枯れてしまいました。松の木は主人を追って空を飛びましたが、途中で力尽きて別の土地に根を下ろしました。梅の木も主人を追って空を飛び、こちらは主人のいる大宰府にたどり着きました。このウメの花言葉のひとつ、「忠実」はこの逸話から取られたものです。
パピカなら何があっても絶対にココナの元に来てくれる。だから信じて待てと、そういうことかもしれませんね。
※ 「食べ物!」
ラーメン、バナナ、おにぎり、リンゴ、ニンジン、トマト。
ええ、かわいかったので書き出してみただけです。
白い机に刻まれたレリーフ・・・ダリア?「不安定」「移り気」
これは正直なところ全く自信がありません。北欧アンティークっぽいので、そっちに縁のある花を見繕ってみただけです。キク科は似ている花が多すぎ。
ちょうどココナが双子に嘘を吹き込まれて不安になっているシーンで画面に映ります。花言葉はウメの対になっていますね。この回は脚本から小道具ひとつひとつに至るまで、全体的にイジワルです。
※ ココナの好物
子どもの頃のココナとヤヤカが「せーの!」で何か言いあうシーン。ヤヤカが「クリームボックス」と言っていて、次の話題が「じゃ、次は嫌いな食べ物な」となっているので、ここは好きな食べ物を言いあっているのでしょう。音声だとココナが何と言っているのか少々聞き取りづらいのですが、話によると海外配信の字幕では「Slimy soba!」となっているそうです。とろろそば。確かにシブいですね。
第10話 ピュアジッター
「電気信号のゆらぎ」 通信時の遅延や欠損によって映像や音声が乱れることを指します。見た目はノイズに似ている気もしますが、発生要因が違います。直訳すると「イライラ」。前回散々ストレス要因を浴びせられたココナが何もかも投げだして心の中に閉じこもるお話です。またもココナに優しくないエピソードですが、これもすべては彼女を自立させるための試練です。すっごいスパルタ式。
※ 途切れた螺旋階段
これホバーサーフでもなきゃ上にあがれませんね。というわけでこれも超芸術トマソンの一種です。似たような画像がwikipedeiaにも紹介されていますね。
欠片がすべて現実側に揃ったからか、混乱していたパピカの記憶は今回から完全回復します。最終決戦の空気。
※ 撤収準備
徹夜して組み上げた防衛トラップ、花瓶に仕込んだヤヤカ向きの武器、欠片とココナを護送する算段、セーフハウスの確保・・・まるでこの日に襲撃されることを正確に予見していたかのような完璧な備えでした。欠片争奪戦の勝率は散々でしたが、情報戦では終始フリップフラップ側が圧倒していたように見えます。ソルトにとって想定外だったのはココナがパピカのコントロール下から外れ、心を折ってしまったことくらいじゃないでしょうか。それすら次善策として対ミミのトラップを用意しているんですから、この人さりげなくとんでもないですね。
ミミの部屋に飾ってある絵・・・フジ「決して離れない」
パピカの口癖ですね。「絶対に離れない!」 パピカに影響されたのか、後にミミもココナに対して決して離れないことを誓うようになります。もっとも、彼女の場合はあまりに多くの不幸を経験し続けた結果、執着とでも呼ぶべきほの暗い感情となってしまいましたが・・・。
ソルトの部屋に置いてある植物・・・クワ「知恵」「彼女のすべてが好き」「あなたより生き延びる」「ともに死のう」
おかしいな、不吉な花言葉ほどソルトによく似合いです。
何か青虫を飼育しているようですが、蝶が好きなんでしょうか。
※ 「不思議。ニンジンなのに甘くておいしい」
それつまり、グラッセを食べるまではミミもニンジンが嫌いだったってことですよね。親子ですねえ。ところでパピカは研究所暮らしなのにどこで料理を覚えた・・・というかどこでお弁当をつくったんでしょうね。実験体の子どもたちは自炊制?
※立ったお婆ちゃんの隣に置いてある鉢植え・・・ホオズキ「偽り」
大好きなお婆ちゃんすらニセモノだった。ココナの生活基盤そのものがすべてアスクレピオスのつくった虚構だった。この強烈な悪意がココナの心にとどめを刺すことになります。いやあ、完全に裏切り者役でしたね。
※ ミミの元に集合する欠片たち
パピカのところから飛んでいったものが4つ、ココナの家に降ってきた光が5つ。差し引きひとつ分はアスクレピオスのものか、それともパピカがいつも足輪に入れて持ち歩いているものか・・・絶対重要な伏線だと思って注目していたのですが、その後の展開に何の関係もありませんでしたね、これ。私の展開予想はよく外れます。
第11話 ピュアストレージ
「記録装置」 ハードディスクや不揮発メモリのことですね。今回はミミの凶行の動機、思い出が語られます。いくつか楽しい思い出もありましたが、総じて辛い思い出でした。楽しい思い出も、彼女が一番辛いときに救いとなってはくれませんでした。けれど辛い思い出に囚われた彼女もまた、誰の救いにもなれません。いくらココナのためとうそぶいていても。
ところで今回以降語るべき新しい花が出てこないわけですが。
※ ヒダカとサユリの撤退
ソルトはともかくヒダカは今後もピュアイリュージョン研究を続ける気満々だというのに、端末やストレージを持ち出さないんですね。ヒダカの手荷物はホバーサーフのみ、サユリに至っては手ぶらです。肝心のデータはセーフハウスに転送済みということでしょうか。上にも書きましたが、本当に万全の用意を調えていたんですね。
あと、この期に及んで格闘技かじったアピールとか、テンプレサブカル女子もいいかげんにしなさいよと。
※ ソデ丈の長いコート
ソルトがいつも羽織っているコート。スソはそれほどでもない気もしますが、ソデは明らかに余ってますね。折って着るとかそういうデザインなのかもしれませんけど。
幼い頃のソルトは「見習いだから」と、大きすぎる白衣を羽織っていました。この白衣はやがて成長して一人前の研究者になった頃にぴったりの丈になります。けれど、一人前になってもソルトは自分が一番大切にしているものを守れませんでした。選択を誤りました。
丈の長いコートを羽織っているのは己に対する戒めなのかもしれませんね。研究者としてはどうか知らないけれど、人としては未だ半人前だと。あるいは一人前のつもりだったからこそ誤ったのだと。ミミを失ったあのとき以来、彼はずっと負債を抱えて生きてきました。
※ ELPIS
災厄の箱の底に残った希望。パンドラが箱を開けてしまったことで世界中に災厄が解き放たれました。箱の中には小さな希望も入っていたのですが、驚いたパンドラが箱を閉めてしまったせいで希望だけが封印されてしまいました。この世が苦しみに満ちているのはそのせいです。
「エルピスに入った人間のピュアイリュージョンを開くことができる」 とのことですが、実際のところ全てのピュアイリュージョン(と現実)はなめらかに存在していて、先輩のときのように偶然にアクセスできるホールを見つけられることもあります。人為的にショートカットをつくるシステムと理解した方が正確でしょうね。
第13話ではソルトはこのシステムを利用して、ミミの支配下にあるピュアイリュージョンを自分のピュアイリュージョンで覆いました。個とピュアイリュージョンの関係は相互的なものだそうなので、その気になればエルピス側からもピュアイリュージョンに干渉できるということでしょう。・・・この装置の改良を進めればミミなしでも研究目的を達成できたんじゃないですかね?
※ ミミの部屋から見える星空
脱出のためにソルトたちが電力供給を止めると、窓の向こうの星空すら消えてしまいます。デジタル窓だったんですね。そういえばミミは花も湖も見たことがないと言っていましたっけ。ふたつとも研究所のすぐ隣にあるにもかかわらず。
彼女が子どもの時分に知ることを許されていた世界は、ココナ以上に虚構に満ちていました。
※ リボンツィーター
ソルトがミミと戦うために用意していた装置。高音域専用のスピーカーみたいなものだと考えてください。
理屈はよくわかりませんが、音波を使ってミミのインピーダンスに干渉しようとしたってところでしょうか。ミミはピュアイリュージョンの万能の力を振るうことができるので、彼女を殺すためにはまずピュアイリュージョンとの繋がりを絶たなければいけません。エルピスを使って介入するときも、ソルトはこれとよく似た発想でミミの力を削いでいましたね。
第12話 ピュアハウリング
「増幅発振現象」 マイクで話しているとたまにキーンと大きな音が鳴るアレ。スピーカーから出した音をマイクが拾って再増幅し、再びスピーカーから出力することで発生します。メガホン型の拡声器がすぐハウリングを起こすのはスピーカーとマイクがくっついている構造のせいですね。ちなみに、だからといってマイクを手のひらで覆ってもかえってハウリングを起こしやすい余計なノイズを拾ってしまうだけなので注意。音場が落ち着くまで一旦マイクのスイッチを切るのが正解です。
作劇的にはたぶんピュアイリュージョンに介入する力の原理そのものを指しているんだと思います。ココナの気持ちがパピカに伝わって、その気持ちがパピカの中で大きくなってまたココナに伝わって、ココナの中でまた大きくなって・・・と、際限なくループさせて無限に気持ちを増幅していける関係性こそが、おそらくはピュアイリュージョンで遊ぶための資格。だからミミとパピカを引き合わせただけでは力が発現せず、ふたりがお互いに好きって気持ちを重ね合ってはじめてピュアイリュージョンに行けたんです。
ココナとパピカは再び関係性を取り戻し、前よりもより強い絆を繋いだことによって、彼女たちの力はより大きくなりました。そしてそれが「気持ち」の力である以上、その成長は現実を戦うための糧にもなります。今こそ母親の保護から脱する巣立ちのとき。
※ ニュニュ
これといった活躍をしていないのでどこで触れるべきか迷う子。ビジュアル的に滾るものがあるのか、チョイ役にもかかわらず全登場シーンで妙に作画に恵まれていました。萌え属性とエロ属性てんこ盛り。
※ 双子
無感動だった双子はお互いの危機を経験して初めて感情というものを理解します。兄がケガしたこと、妹がガレキの下敷きになりかけたこと。第2話でパピカが同じ経験をしていましたね。大好きなココナが死にかけたことで、ようやくパピカはココナが冒険の何を嫌がっているかに気付くことができました。双子もそう。お互いが永遠に失われるかもしれない可能性を肌で感じ、これが嫌だったからヤヤカは組織の意向に背いてまでココナを守ろうとしたんだと得心します。「うるせえ。・・・ヤヤカならそう言う」
※ ヤヤカの変身
宝物は形のないものでも構いません。あくまで気持ちの問題ですから。
前開きスカートとかいうトンデモ衣装を着せられたStudio 3Hzの犠牲者。衣装を恥ずかしがるシーンがないことが残念でなりません。(羞恥フェチ)
※ イディオムモード
ブーちゃんの秘密兵器。マッスルモード。2つのものが合体するからイディオム(熟語)ってことですね。これまたニュニュ並みに作劇上の存在意義が薄いものの、美形ヒダカと合わせて無駄に豪華な作画とテンション高い脚本をゲットします。ネタ要員としてこれ以上ない恵まれた着地点を得たといえるでしょう。
※ 「しつこくて、頑固で、人の中に土足でズカズカ入り込んできて・・・大嫌い! 大大大嫌い!」
むしろミミはパピカのそういうところを好きになったように見えますけどね。だからこそ、その気持ちが今のミミではなく「優しいミミ」とココナにしか向けられないことが悲しいのでしょうけれど。こういうところ、何から何までココナそっくり。親子ですね。
※ 最終フォーム
ヒーロー番組のお約束。オモチャや衣装が発売されないのでどんな無茶なデザインでも許されます。制作費が許す限り好き勝手し放題。
という冗談はともかく、注目すべきは髪型と色、侵食しあうような足の黒ずみなどの変化がなくなったことです。ココナの慎重で優しい性格、パピカの活発で楽観的な性格、ふたりはそれぞれ違うものを持っていて、それぞれ少なからずお互いに憧れを抱いていました。だからこそパーソナルカラーを交換し、互いに侵食しあうようにそれぞれ右足と左足とを黒く染めていました。今の自分にないものを求めて「変身」していたんです。だから、背伸びの証として髪も伸びる。
今度はそうではありません。ふたりは等身大の自分のままに強くなりました。自立しました。もう色を交換したり髪を伸ばしたりする必要はありません。仲を深めるってことは、ふたりの性質を交換したり同質化したりすることではありません。それぞれ違うところを認めて、お互いを鏡にして、それぞれに成長していくことです。他山の石ってヤツです。これこそボーイミーツガールの真骨頂。
第13話 ピュアオーディオ
「音響機器」 これまでの電子機器/音響用語の総まとめにふさわしく、またネタとしても期待されていたタイトルです。全13話、3ヶ月に及ぶ豊かな冒険譚はたったひとつのありふれた物語に収束することになります。すなわち、巣立ち。たったひとりの少女が自分の行きたい道を選び、誰かに用意されたゆりかごから笑って出ていくためだけに、あらゆるものが用意されました。幻想的な異世界も、壮大なSFも、悲しい人間ドラマも、運命づけられた出会いすらも、全てはただ、ココナが進路を決めるためだけに存在しました。
それでいいじゃないですか。私たちは100万円という誰もが羨む紙束を、スピーカーという名の小さな木箱と交換することができます。多くの人はその取引をあざ笑うかもしれませんが、だからどうした。私は紙束よりも木箱の方が好きなんだ。
私にとって大切なことは私が決める。「あなたには、世界はどう見えているんだろう」 その答えを知るのはあなただけです。
※ 「ふたりなら寂しくないよ」
幼いココナはそう言ってそっぽを向き、パピカに見えないところで寂しそうな顔をします。考えてみればこの時点でミミは一度消滅していて、ココナはパピカと同じように長い時間をずっとひとりぼっちで過ごしていたわけです。なにも親切心だけでパピカに寄りそっていたのではなかったんですね。そりゃあ宿縁のひとつも生まれますとも。
※ シュルレアリスム
ピュアイリュージョンの侵食が本格化した現実側ではシュルレアリスムの絵画をモデルにした奇妙な光景が広がっています。シュルレアリスムは写実的な詩歌や絵画が流行していた当時の潮流に反発し、無意識的、幻想的な題材を通して超自我のかたちを描きだそうとした運動です。(あんまり詳しくないので間違っているかも) つまりはこれもイデアの探求、ペンや絵筆を用いたピュアイリュージョンの冒険です。
ミミは当初、現実をココナ色に染め上げることを目的としていましたが、この光景はココナが望んでいたものとはだいぶ違っていますね。娘に反発されて混乱しているのがこの光景からもうかがえます。
※ 「ピュアイリュージョンへヨウコソ! ピュアイリュージョンチェッッケラーァァァ!!」
何言ってんだお前。
「チェケラ」とはヒップホップ音楽で多用されている成語で、正確には「chech it out」と綴ります。無難に訳すと「調べてみて」。実際のニュアンス的にはもうちょっと情報量が濃くて、「ちょ、ちょ、お前これクッソヤベーからマジ要チェックだべヨロシクゥ!」くらいの意味合いで使われているようです。
※ ソルトの世界
灰色の空、ひび割れた大地、立ち枯れした樹木で構成された世界。見た目だけでいうならミミよりもはるかに病的ですね。この人本気で贖罪のためだけに今まで生きてきたんじゃないかと感じさせます。やることなくなったら急激に老けこむか妄想の世界に旅立つタイプなので、サユリさん、なんとか彼に生きがいを押しつけてあげてください。
※ ユクスキュル
ココナのために参戦するのかと思いきや、唐突に現れて唐突にヤヤカとのフラグを立てていった緑色のウサギ。ココナの身の回りの何もかもが虚構だと判明していくなかで、唯一最後までココナの知るままの存在であり続けました。さすがはココナの大切な宝物。でもフラグを立てるのはヤヤカ。
※ ミミの変身
他の誰のフリップフラッピングよりも髪が長く、足は両足ともが黒ずんで・・・というか足首から先がありません。彼女は自己肯定感がきわめて低いため、変身願望も他人に依存したい気持ちも相当強いのでしょう。変身直後はまだミミ(あるいはココナ?)の面影のある青い髪色をしているのに、直後誰にも似ていない黒ずんだ色に変わるのがまた悲しい。
※ オフィーリア
ミレーの絵画。元の絵はもっと色彩鮮やかで幻想的に描かれています。劇中の絵は色彩がくすんでいて、ココナのいうとおり「恐い」ですね。ココナが美術部の先輩と知り合うきっかけになった絵であり、ミミが元のミミに帰るときに模すことになります。
「すてきな花輪を垂れた枝にかけようと柳によじ登ったとたん、意地の悪い枝が折れて、花輪もろとも真っ逆さまに涙の川へと落ちました。裾が大きく広がって、人魚のようにしばらく体を浮かせ・・・その間あの子は古びた小歌を口ずさみ、自分の不幸が分からない様子。まるで水に暮らす妖精のように。けれどそれも長くは続かず、服が水を吸って重くなり、かわいそうに、あの子を美しい歌から泥まみれの死の底へと引きずり下ろしたのです」
『ハムレット』の劇中でオフィーリアという少女はこのように語られます。夢見る少女を泥の中へ引きずり込む不幸な現実。けれどミミはオフィーリアと違って起き上がります。ココナの全身全霊をかけた親離れは彼女自身だけでなく、自ら泥に沈もうとしていたお母さんをも救ったのです。
泥から起き上がったミミは寒いのか身震いしています。そんな彼女の心を暖める最後の一手もまた、ココナからの贈り物。
※ もうひとりのソルトの誘惑
自分の中に別の顔を持っているのはなにもミミだけではありません。誰だってそうです。ミミのような悲劇をもたらすかどうかは、単にその人が何を大切に思うかにかかっています。
金色に輝くシロツメクサ。ここでの花言葉は「約束」と取りましょうか。「私を止めて」というミミとの約束を愚直に貫いたことが、彼をぎりぎりのところで繋ぎとめたのかもしれません。
※ サブカルガールのお部屋探訪
アニメに洋画にティーンズ向けテレビドラマ・・・節操のない趣味のポスターに、出しっぱなしの化粧道具やら扇風機やら洗濯物やらのコントラスト。来客がいるのに部屋着ももっさり無防備。サブカル女は外では服やら小物やらにやたらとこだわる割に、自分のテリトリー内の生活臭はちっとも隠そうとしない傾向(という偏見)があります。
※ 「ミミと一緒に甘いお菓子食べてたから」
ミミが幸せそうで何よりです。どうせハッピーエンドにするなら全方位をハッピーにしなくっちゃ!
※ 絵を描く先輩
そもそもが彼女、おばちゃんのことでトラウマをつくる以前から絵を描くことが大好きだったはずなんですよ。そのうえでおばちゃんに褒められて絵をより好きになれたんですから、トラウマはむしろ絵を描けなくなる方向に作用してもおかしくありません。けれど彼女のトラウマはなぜか暗い絵を描き続ける方向に作用しました。彼女は根っからの絵描きです。トラウマがなくなったって、暗い執着から解放されたって、結局彼女は絵を描かずにはいられません。
願わくば今度は「彩いろは」の名にぴったりな、鮮やかな青空を描いてくれますように。どうせハッピーエンドにするなら全方位(ry
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