徒然チルドレン 第11話の感想兼カップルまとめ

 恋愛って必ずしも甘いものばかりじゃないはずだけど、酸っぱいのも苦いのも、どれを味わった人もみんな、大人になって昔を振り返るときは口を揃えて「甘い恋だった」って言うよね。

徒然チルドレン(1) (週刊少年マガジンコミックス)

難聴系ヒロインペア

「でもちーちゃんが告白すれば・・・」
「しないよ! そんな」

菅原卓郎(赤髪ショート) × 高野千鶴(栗色ツインおさげ)
+ 吉永倫子(ココア色髪デコ出しスタイル)・・・元・当て馬

関係性:思いを伝えたい人と伝わらない人
チグハグ要因:自分が恋愛対象になりうると考えてもいない

 決して耳が悪いわけではないのですが、この娘の言動は明らかに難聴系ラブコメ主人公のソレ。とにかくどうがんばっても好意が伝わらないセメント女子に精一杯好意を伝えようとする男子という構図がほほえましいペアです。とはいえ涓滴岩をも穿つ。セメント女子にも最近やっと変化が表れはじめました。逆に今度は菅原くんの方がセラミック気味に。
 難聴系ヒロインとしての魅力大爆発な高野さんにばかり目がいきがちですが、菅原くんの健気さも注目すべき点だと思います。少年向けラブコメ作品らしく男子側にやたらとヘタレ(と朴念仁)が多いこのアニメですが、そのなかで彼は初期から積極的に告白に挑んでいます。・・・がんばりすぎて達観しちゃったけれど。
 吉永さんはせっかくラブコメ友人枠的に超おいしい立ち位置にいるんだから、もっとガッツンガッツン目立てばいいのにー。

 ・・・と、思っていたらやってくれました。原作ではもっとさりげない描写だったんですけどね。ナイス吉永さん。超苦いです。
 エピソード全体としてはいつもの流れ。ヨチヨチ歩きの恋愛乳幼児・高野さんがゆっくり自分の恋心に向き合っていく過程を描いたお話です。今回もまだ「過程」。
 ですがここで吉永さんがちょっとした苦みを差しに来ます。

 「私も噂で聞いただけだけど――(菅原くんが)ちーちゃんのこと好きって」
 「私もその噂、聞いたこと、ある・・・」

 吉永さんは以前菅原くんに告白してフラれました。他に好きな人がいるからと。しかもそのときふたりの間に仲立ちしたのは、他でもない高野さんでした。
 吉永さんからすると高野さんの立場はズルいです。自分ががんばって、行動して、それでもどうしても手に入れられなかったものが、何もしていないこの子に与えられてしまうなんて。その努力も、結果も、そして原因すらも、すべて最初からこの友人を中心に回っていて、自分は単なる脇役、当て馬でしかなかったんだ。
 けれどこの友人はそういうことをわざと仕掛けるような子ではなくて、結局は運命のいたずら。わかっています。だから憎むことなんてできず、けれど、八つ当たりしようと思えばできてしまう。しないけれど。・・・我慢しなくちゃいけない。
 そんなどうしようもない複雑な気持ちをわき上がらせてくる、ズルい存在。
 大きく描かれた彼女の表情がみごとですね。

 そして高野さんもそのあたりの事情を全部知っています。
 彼女は恋愛の機微に疎いですが、この件に限っては当人たちの口から全部聞かされていたのでさすがにわかります。吉永さんを傷つけてしまった自分のズルさまで、全部。本当に全部。
 全部、今抱いている恋心に繋がっています。別に吉永さんのために告白するとか身を引くとかそういう不純な気持ちはありませんが、それでもこの恋が自分以外の誰かにも繋がっている、意外と大きなものなんだという自覚は芽生えます。
 重たい。
 重たい。
 吉永さんの表情から受け取る気持ちは持てあますほど苦くて、そのくせこの恋をどうするべきか道を示してはくれません。それはあくまで高野さん自身が決めるべきことです。
 けれど、この恋心が大切なものだということだけはわかりました。

 「さ、練習しよ」
 それはそれとして友人の恋心を純粋に面白く思うあたりはなんとも女子高生ですね。ちょっぴりビターぎみだった空気を爽やかに拭ってくれます。
 あと上根さんマジ上根さん。

幼馴染みペア

「私の方こそ謝りたい。お願い、直って。直って。・・・直ってよ」
「やっぱ諦められねえよ! 謝らせてくれよ! 香奈、出てくれ・・・」

内山千秋(茶髪ショート) × 飯島香奈(茶髪ロング)

関係性:長いことツルんできた幼馴染み
チグハグ要因:恋愛観の相違

 夫婦漫才が持ち味と見せかけて意外と重い話だらけのペア。
 千秋くんの言動にいちいちサイテー感が付きまといますが、これ本人の人格に問題があるわけではなくて、ふたりの「好き」の質が根本的にズレているのが原因なんだと思うんですよね。
 千秋くんの恋愛観は、例えるなら自宅でまったり過ごす夫婦みたいな感じ。恋人関係に求めるものは安定した関係性で、飯島さんとはいつまでも気の置けない付き合いがしたい。一方飯島さんの恋愛観はテレビドラマのようなロマン。キスにこだわることからもうかがえるように、彼女は恋人というものに劇的な変化、刺激を求めています。恋愛に求めるものが180度違うのですから噛み合うわけがありません。

 あれだけサイテーの底を突いちゃった次の回でなおもロミオってる千秋くんは本当にもうね。
 けれどそんなダメ男にこそ必要だった充電期間が今話です。視点は飯島さん側で進行しますが、今回大きく成長したのはむしろ千秋くんの方です。
 これまでの彼は基本的に受け身でした。本人の性向は受け身なのにも関わらず、飯島さんからひたすら能動的になることを期待された結果が一連のサイテーっぷり。要は自分がどういう風に飯島さんを好きなのかを自覚しないまま、ガワだけ彼女に合わせて必死に恋愛ドラマを演じようとしていたんですよね、この子。

 けれどそれを当の飯島さんから拒否されてしまった今、千秋くんは自分がどれだけ彼女に焦がれているかをようやく思い知ります。
 諦めない。どうしても諦めがつかない。
 どれだけみっともなくても、どれだけ女々しくても、連絡せずにはいられない。
 今、ある意味初めて、彼は恋に目覚めたんだと思います。

恋に恋する両片思いペア

「ここで俺がシャー芯あげたりしたら下心があると思われんのかな」
「ここで私が女友達ではなく高瀬にシャー芯もらおうとしたら下心があると思われるのかな」

高瀬春彦(黒髪ショート) × 神田沙希(茶髪ボブ)

関係性:すれちがい片思い同士
チグハグ要因:自己完結型恋愛観

 見た目もフツー。性格もフツー。ラブコメとしてのシチュエーションもド定番。ラブコメオムニバスたる本作を象徴するかのようなペアです。
 お互い相手の気持ちはわかっているのに何故か恋人関係になれない。片方が踏ん切りをつけようとすればもう片方がすかさずインターセプト。全ての原因はやたらと「告白」という儀式にこだわりすぎていることにあります。たぶんふたりとも恋愛そのものへの憧れが強いんでしょうね。かわいいカップルです。
 最近はインターセプトすらしないこともありますが、それでもなぜか恋人にはなれないまま。もはやこのノリに慣れきったふたりの間の空気そのものが告白を妨害しにかかっています。

 最終回に向けて周りのカップルが重くなりゆくなかで相変わらずゆるゆるなこのペア。これまでも1話に1エピソードは軽いのが入っていたので、意図的に構成を組んでいるのかもしれませんね。

鬼畜眼鏡&流され乙女ペア

「私が手とかあげたら他のヤツに変な目で見られるんじゃねえか? 『ヤンキーがテスト受けてる』『大学行こうとしてる』 そうだよな。私なんかが、いくらがんばっても・・・」
「――私も応援してますわ」

赤木正文(黒髪眼鏡) × 梶亮子(脱色ロング)

関係性:支配する側とされる側
チグハグ要因:要求がいちいち率直すぎて戸惑ってしまう

 テンプレ生徒会長キャラとテンプレ不良キャラです。シチュエーションもこの組み合わせのテンプレ。今後も全く期待を裏切りません。このアニメにおいてテンプレは褒め言葉(のはず)。
 赤木の梶さんへの態度は完全に固定されているので、梶さんがどこまで相手の要求に応えられるかがこのペアのお話の核になります。何気にふたりとも思いやり深く献身的なのでチグハグ感はあまりありません。
 赤木の要求全部を受け入れたらR-18になってしまうので、梶さんにはどうにかがんばって抵抗してほしいところ。

 ところで今回登場した「ですわ」のクラスメイトさん。口調以外はまともに見えますよね。口調以外は、まともに見えますよね。ねー。

 高野さんも千秋くんも、要は恋愛を通じて自分を成長させようとしているわけです。恋は到達点であり、きっかけでもあります。
 半ば強引に口を奪われて始まった梶さんの恋。いつも理不尽な彼に振り回されてばかりの梶さんの恋。これまで梶さんは赤木にされるがまま受け入れてばかりで、自分から何かをしようとはしてきませんでした。
 けれど、そんな恋を楽しく思うようになりました。特に何かをしてきたわけではないけれど、気がついたら、“思う”ことくらいはするようになっていました。
 それで何かが変わるわけではないけれど、たったそれだけで世界の全部を変えられます。

 梶さんが赤木との恋をこれからも続けたいと思うのなら、彼と同じ大学に進まなければなりません。大学に進むためには、赤木にばかり頼らず自分の力で勉学に打ち込まなければなりません。勉学に打ち込むためには、ヤンキーとしての不真面目な態度を改めなければなりません。態度を改めるためには、周りの好奇の目をどうにかしなければなりません。
 だから彼女は思いました。赤木と一緒にいるために、大学に進むために、勉強するために、今までの態度を改めるために・・・変わらなければいけないと、心から思いました。
 変わらなければいけないなら、人は自ずと変わるものです。
 そしてあなたが変わろうと努力するなら、最後の一手くらいは周りの世界の方から手助けしてくれるものです。だって、この世界は優しいから。みんなコイバナが好きだから。

 恋から始まり恋を追う物語は、必然として、恋する誰かの成長譚でもあります。

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