キラリンたちだけ楽しくても、そんなの楽しくない! あなたを悪者になんてさせない!
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(主観的)あらすじ
なんと、ゆかりがネコになってしまいました! クリスタルアニマルと一緒にお散歩していたところ、不慮の事故によって心が入れ替わってしまったのです。
ネコになってもマイペースなゆかりは街のノラネコたちに頼られ、ネコと妖精たちのケンカに巻き込まれることになってしまいました。ゆかりがケンカの現場に行ってみると、そこにはディアブルの闇の気配が見つかります。せっかく妖精たちが仲直りのためのスイーツを用意してもこれでは何の解決にもなりません。そこでゆかりは自ら悪役を演じることによってネコと妖精たちの気持ちをまとめることにしました。
悪役としての仕上げ、ゆかりは崖から身を投げて姿を消そうとします。ところが元々心優しいネコと妖精たちはその結末を良しとせず、協力しあってゆかりを救い出してくれます。すべての原因であるディアブルも追い払い、ネコと妖精たちは仲直りしてスイーツパーティを楽しみます。
毎年1度はあるカオスなネタ回。状況設定の突飛さを差し引いても普段とノリが違うなと思っていたら、案の定いつものメンバーと違う脚本家さんでした。森江美咲さん。ざっと調べてみた感じだと企画畑出身で、現在はウルトラマンジードやアイカツスターズ!の脚本家として活躍している方のようですね。かわいいエピソードをありがとうございます。
現在のキラキラプリキュアアラモードは悪意との戦いの真っ最中。なかなか思うようにスイーツを食べてもらえません。ある意味においてはスイーツの限界を描いていると言えるかもしれませんね。けれど悪意の闇を追い払う破邪の力もまたあくまでスイーツ由来。この物語の果てにどのようなスイーツ賛歌を描いていくのか、今から楽しみです。
ダークヒーローネコ
「私は私よ」
今話のゆかりは古典的ヒーローです。彼女自身の悩みが一段落し、またいつもと違う脚本家なこともあって、今回は珍しく迷いません。間違えません。敵の気配だってすぐさま察知します。そして黙っています。ゆかりだし。
演出たっぷりに崖から身を投げていましたが、ゆかりさんいくらなんでもネコの身体能力を過信しすぎだと思うの。死ぬ気はさらさらなかったように見えましたが、実際のところあの高さで本当に助かります? いえまあこっちも「ゆかりだし・・・」と安心しきって観ていましたが。
ディアブルの悪意の闇は人の心にある「大好き」を「大嫌い」に反転させてしまいます。
「ずばり、同じ皿のスイーツを食べればわかりあえるって」
キラリンの提案は普通のケンカのあとになら効果絶大ですが、闇の影響下では逆効果です。
「闇」というファンタジーな設定なしでも、凝り固まった憎しみが残っている限りは仲直りできっこないものですよね。学校の先生なんかにムリヤリ「お手々つないで仲直り」とかさせられると返ってイラッとするあの感じ。あなたにも覚えがありませんか?
現在いちかたちが戦っている「悪意」とはそういう性質のものです。「大好き」がどうやっても伝わってくれない心理状態。スイーツパワーのゴリ押しが通用しない相手。先に悪意そのものを取り除いてやらなければ。
「妖精もネコも人間すらも追い出してやるニャ。この町は私だけのものニャ」
そんなわけでゆかりは自分にヘイトを集めたのち姿を消すことで、ネコと妖精たちの心に巣くう悪意をまとめて取り除いてしまおうという、手っ取り早くも荒っぽい作戦を敢行します。
ぶっちゃけ私はこういうヒーロー的自己犠牲スピリットが大嫌いなんですが、ゆかりの場合はネコの姿、ネコの世界が仮初めのものでしかないのでこういうやり方もアリといえばアリ。後腐れがありませんからね。昔のヒーローたちもみんな仮面で素性を隠して活動していたものです。
勝手に全部抱えて、勝手に全部自分で解決しようとするのはゆかりの悪癖ですが、今回に限っていえばそこまで悪い判断ではありません。抱えたところでゆかりが苦しむことになるようなものでもありませんからね。彼女が吐き出せずに苦しむ物語は第25話で終わりました。
「あなたまで落ちたら私のやったことがムダになるニャ」
けれど、ここまで美しいヒーロー譚すらもプリキュアは許しません。
どんなにカッコよくとも、誰も傷つかずとも、それでも自己犠牲なんてまっぴらごめん。子どもが観ているところでそんなものを賛美してやるものか。
「あなたを悪者になんてさせない!」
アンチヒーロー / アンチマリス
「キラリンたちだけ楽しくても、そんなの楽しくない!」
ヒーロー的自己犠牲スピリットの何がダメって、ヒーローが傷つくだけでなく救われた側にすら苦みが残ることですよね。
そんなのまっぴらごめん。ということで、悪意に蝕まれていたはずのネコと妖精たちの良心が、ゆかりの想定を越えて輝きだします。
「どうやら私の負けニャ。ここを出て行くのは私ってことニャ」
「そんなのいいキラ! 出ていく必要ないキラ!」
ゆかりはネコと妖精たち両方のヘイトを集めて姿を消すつもりだったようですが、ところがどっこい、そもそもネコと妖精たちの悪意はこの時点でほぼ抜け落ちていたんですよね。リーダー同士の決闘に決着がついたときも、悪役を演じるゆかりを追い詰めたときも、誰ひとりとして喜んでいませんでした。むしろ不安げに脂汗を流し、声も震わせていました。
誰も、ゆかりがいなくなることを望んでいませんでした。
悪意の闇を払う破邪の力・キラキラルクリーマーは6人の個性の輝きを束ねて生み出したものです。まるでバラバラの個性がそれぞれの心の隙を守りあうかのように。
今回ゆかりが取った行動は、ネコと妖精たちの心にキラキラルクリーマーと同じような作用をもたらしていたのでした。
悪意に操られて対立して傷つけあって、あとに残されるものは昨日まで傍にいた誰かが明日にはいなくなるという結果だけ。リーダー同士の決闘に際してゆかりが提示したルールはそれをわかりやすく示します。
ネコが勝っても妖精がいなくなるだけ。それどころか実際はどちらも町を追い出されてしまう。あるいはゆかりがいなくなってしまう。
そんなもの、ネコも妖精も、誰も得しません。誰も望んじゃいません。
「なんでこんなことになったニャ。ちょっと前までみんな仲よくやってきたのに」
悪意がもたらすもののなんとうつろなことか。
嫌だな、と誰もが思います。
ネコと妖精の垣根を越えて、みんなの気持ちがひとつになります。
それこそが破邪の力。
「こんなのダメペコ!」
悪意なんて要らない。
けれど、自分たちの身代わりに悪意を引き受けて去っていくヒーローだって、要らない。
ゆかりが自分を犠牲にするまでもなく、ネコと妖精たちは自らの力で悪意をはね除け、そしてみんなで協力しあって身勝手なヒーローを救出します。
人の心には結局のところどうしたってどこかに隙があるものです。悪意の干渉からは逃れられません。
けれどもしあなたがその悪意に振り回されるのを嫌だなと思ったなら、そのときはどうか、隣にいる誰かと一緒にスイーツを食べてください。誰かと「大好き」で繋がったとき、あなたはきっと悪意から身を守れる破邪の力を手にしているはずですから。
その力はもしかしたら、いずれヒーローすらも救うことができるかもしれません。
ゆかりマジメンドクサイ
・・・もっともこのヒーロー、ある意味ネコ以上にネコらしいマイペースな子なもので、そういう美しい流れもガン無視して結局ひとりで帰っちゃうんですけどね。
三つ星ニャンコさん最後まで落ち込んでいましたが、あなたは悪くありませんよ。あえていうならこんなメンドクサイ子をプリキュアに抜擢した東堂いづみが悪い。
「こんなところで何してるの?」
「ちょっとね。散歩よ」
「――どうかしたの?」
「別に」
今回もノッケから無意味にミステリアスお姉さんっぷりをカッ飛ばしていましたが、もはやこの子の場合はこれでいいんです。きっと。
これでも少し前までのように溜め込んだり自分を嫌ったりはもうしないでしょうしね。
「はっきり言わないからホントわかんない!」
何考えているんだかわかりにくい人ですが、いちかたちやスイーツのことが好きで、お互いに「大好き」を受け渡ししあえるステキな仲間であることは間違いありません。
それさえできるならキラキラプリキュアアラモードのプリキュアとしての資質は充分で、そしてそうであるならば、このきわめてメンドクサイ気質も輝く個性のひとつとして受け入れられることでしょう。
私もこの子、大好きです。
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