少女終末旅行 第7話感想 ラブリーチャーミー・ちーちゃんさん。

「あ。ユーは今お腹空いてる?」
「空いてるが」
「でもいつも空いているよね?」
「いや、いつもよりメチャメチャ空いてる」
「・・・。(会話終了)」
―― 思考の迷路

少女終末旅行 1 [Blu-ray]

材料・・・芋の粉、砂糖、塩。以上。
調理法・・・水を入れて、こねて、焼く。以上。

 どんなことになるかなと試してみました。
 芋の粉なんて持っていないので薄力粉で。でもグルテンが出るといくらなんでも別物になりすぎちゃうでしょうから、半分は片栗粉にしました。砂糖は目分量で粉の1/3程度。塩はフィーリングで。
 水入れてー、よく練ってー、とりあえず耳たぶくらいの硬さにー。というかグルテン出ないからどれだけ練ってもまとまらないー。まとまらないけど砂糖が馴染んできたせいかモチモチ感だけは出てきたのでこれで良しとするー。
 そしたら弱火のフライパンにぶち込むー。保存食ってことで、水分が抜けやすいようにフタをせずじっくりのんびり焼くー。

 見た目は・・・まあ、真っ白なホットケーキ的な? 触るとガッチガチに硬いけど。
 焼きたてを食べてみると・・・あれ、意外と悪くはー、ないー・・・か、な? 砂糖を多めに入れたおかげで底の焦げ目がカリカリと香ばしい感じ。塩も意外といい仕事をしていて後味のキレも悪くない。ちょうど縁日のベビーカステラをもう少し味気なくしたみたいな。ただし油脂もベーキングパウダーも入っていないので気泡が全く無く、超硬い。アゴを鍛えたい方にオススメ。
 一旦冷ましてから残りを食べてみると・・・うん。石だな。温かい飲み物必須。口がパサパサになるとかそういうのじゃなくて、単純にふやかさないと噛み砕けない。
 でもまあ、全体的には焦げた砂糖の香味に助けられて、思っていたよりかは食べられるシロモノでした。未精製の芋の粉を使うなら粉自体の風味も乗るでしょうし。

 ・・・あ、念のために言っておきますが、美味しいとは一言も言っていないので、マネして後悔しても私に文句言わないでください。

答えは出てる

 今話はちーちゃんかわいい回。同時にユーかっこいい回。つまりはいつもの『少女終末旅行』。けれどちーちゃんとユーの立ち位置が逆転しています。いや、やっぱりいつもどおりか?

 「もー。しょうがないなあ。ここを通るしかないってちーちゃんが言ったんじゃない」
 「いや、まあ、そうなんだけど。・・・これはムリだわ」

 あの足場不安定なパイプの上で走るとかユーすごいな。あげくちーちゃんの後ろに回り込んでみせるとかもうね。さらっとやってますけど、いっぺんあのカットの足元映してみろ。たぶん視聴者阿鼻叫喚だから。
 つくづく肝が据わってる・・・というか、割と命というものを軽く見てるフシがありますよね、この子。
 「絶望と、なかよく」って、たぶんこういうことなんだと思います。ある種の諦念。
 どうせなるようにしかならないし、逆にいえばなるようにはなる。生きられるときは生きられるし、死ぬときは死ぬ。望みは叶うかもしれないし、叶わないかもしれない。しゃーない。ならばネガティブ思考なんて邪魔なだけ。ぽいっと捨てたら残るのはポジティブオンリーだぜベイベ。

 逆にちーちゃんはそのへんちっとも割り切れない子。
 終わってしまったことならどうせ今さらできることなんて何ひとつないのに、燃えてしまった本を嘆き、飛行機の墜落にへたり込みます。
 今回もパイプから落ちたときのことを考えると足が震えて動けません。
 死んだらそれまでなんだから、考えたってしょうがないのにね。
 けれどそう簡単に割り切れないのも人間。そしてちーちゃんがこんな子だからこそ、たくさんのモノたちの終末を見て回ることには意義がある。絶望となかよくないのも悪いことばかりじゃありません。

 まー、少なくとも今目の前にあるシチュエーションではユーの考え方の方が役に立つんですけどね。
 「ヘタレだな」
 結局死んだらそれまでなんだから。

 今、ちーちゃんたちは食料生産施設を目指して怖ーいパイプの上を歩いています。
 さて。今ちーちゃんが考えなきゃいけないことは何でしょう。
 「だって、イシイが書いてくれた食料生産施設への地図には『この先に行けばわかる』としか書いてなかったし」
 違います。今さらそんな恨み言を吐いたって事態は好転しません。
 「あーあ。何も食べずに生きていけたらなあ」
 違います。いくらぼやいたって人間は機械の身体になれません。

 「だけどこの先にまだ食料があるっていうんだから。だったら行くしかないじゃん」
 「そんなの生きているっていわないゼ。ほら行こう」

 そうとも。答えは初めから出ています。行くしかないんですよ。今考えるべきはそれだけです。なにせこれは他でもない、ちーちゃん自身が決めたことなんですから。最初に答えを出したのはあなたです。

 「ほら行こう。大丈夫だって」
 「・・・うん」

 保育園に行きたくなくてグズる子どもか。

 今話のユーはちょっぴりお姉さん。というかもはやお母さん。
 「ちーちゃん好きだねー、これ」
 あんまり意味のない命綱にも付き合ってあげる。
 「だいたい私たちって、そもそもすごく高いところで暮らしているワケじゃん」
 その怖れが道理に合わないことだと諭してあげる。
 「あ、そうか。つまりちーちゃんはメチャメチャ怖いんだね」
 自分で例え話を切り出しておいて何が言いたかったのかわかんなくなっちゃっても、かわりに答えを見つけてあげる。
 「あらあら。今日は引き返す?」
 「いっそのこと今日はここで寝るってのは」
 「じゃあ――とにかく進むしかないねえ」

 先回りして選択肢を提示して、思考をまとめる手助けをしてあげる。
 この子こんな優しい喋り方もできる子だったんですね。

 「よいしょ。よいしょ。ちーちゃん。いっち・に。わん・つ」
 このかけ声とか、私すっごい既視感があるんですけど。
 ちっちゃいときお婆ちゃんによくこうやって手を引かれてたっけなあ。なんでこういう人たちってこういうときこっちの名前を呼んでくるんでしょう。ムズ痒いんですけど。なんか呼ばれたくなくて自分で歩く気になる。

 今回パイプの上を歩いている間、ちーちゃんはほとんど意味のある言葉を話しません。
 ムダに小難しく喋っているように見せかけているだけで、その実、言いたいことはただのグチだったり、結論に至る途中で思考をこんがらがらせていたり。まるっきり精彩を欠いています。
 だって結論は最初から出ているんですから。行くしかない。自分でそう決めたんですから。
 「あ、このまま簡単に着いたら面白くないから別の道に行ってみるのはどう?」
 「は!? 却下! 目的地を目前にして道しるべを無視するヤツがどこに――」
 「ここにいるが」
 「ホントにやめて」

 どの口が言うか。
 行くか戻るかの2択しかないパイプの上で散々グズっていたくせに。
 結局目的地に行く以外の答えはありえなかったくせに。
 無意味な思索に逃避してはユーの手を煩わせまくったくせに。
 今さらキミがそれを言うのか。

 あーもう! 今日のちーちゃんは格別かわいいなあ!!

しあわせタイム

 人生において、ご飯を食べているときより幸せな時間があるでしょうか。
 あります。
 ご飯をつくっているときです。

 だってご飯を食べるときって幸せでしょう?
 ご飯をつくっているとですね、間もなくその幸せな時間がやってくると保障されるわけですよ。
 ご飯をつくることで自分から幸せな時間に近づくことができるわけですよ。
 それって最っ高に夢がある話じゃないですか!

 「芋、砂糖、塩で、もしかしてレーションつくれるんじゃ」
 「マジか! すげえ!」
 「ようし・・・!」

 そんなわけで、ちーちゃんとユーはレーションを手づくりできると知ったとたんに生き生きしだします。
 ちーちゃんなんて第1話でまとまった量のレーションを見つけたときはほどほどテンションだったくせに、今は頬を紅潮させるほど明らかにウキウキしています。
 ついでにBGMも今まで聞いたことのなかった跳ねるようなアップテンポの曲が流れはじめます。さてあなたはこのBGMが耳に残りましたか? 私はちっとも残りませんでした! 2周目で初めて気づきました。だって観ていてワクワクしていた私のテンションそのものすぎて、無意識レベルで完全に溶け込んでいたんですもん。記憶に残らないのは優れた音響演出の証拠。

 「こねる」「こねる」「こねる」「こねる」「こねる」「こねる」・・・
 このあたりちーちゃんとユーの芸術的センスの差が如実に出ていて愛らしいですよね。変な節をつけて遊びはじめるのはたいがいユーの方です。終わった世界で音楽を再発明した勘の良さはダテじゃない。
 鼻歌も一緒に歌ってはいるものの、リードしているのはやっぱりユーの方で、ちーちゃんはちょっぴりたどたどしく遅れ気味。
 「よいしょ」「ふー」「よいしょ」「んー」「あ、よいしょ」「うー」「いち・にー」「んー」「わん・つー」「つー」「あ、よいしょ」「へーい」・・・
 かけ声に歌唱成分が多くなってくるといよいよちーちゃんは対応できなくなっていきます。キミはゾンビか何かか。
 でも忘れちゃいけません。
 「へへっ。もっちもちー」
 この妙に愛らしいワードだけは紛れもなくちーちゃんが自力で発明したのだと。
 ちーちゃんを愛でたくて愛でたくてたまらない視聴者諸君はくれぐれも忘れてはいけません。この終わってしまった世界にラブリーキューティーをもたらした偉大なる発明家の功績を。永久に失われることなきよう、私たちは後世の後世のそのまた後世にまで語り継いでいかなければなりません。
 義務です。これこそが私たちに課せられた大いなる義務なのです。
 私たちは視聴者でいる限り、彼女たちの生き様から何かしら価値のあるものを受け取れるよう努力しつづけなければなりません。
 お爺さん、イシイ、カナザワ、神様・・・ちょうどふたりの少女がたくさんのモノたちの終末から何かを受け取り、どこか遠くへ運んでいくのと同じに。いつか彼女たちの物語が終末するときは、今度は私たちが彼女たちを連れて行かなければならないのです。
 遠くへ。そう、私たちの未来へと。(酔い)

 たとえつくったレーションが(どうせめっちゃ硬いんだろうなー・・・)って想像に難くないシロモノであったとしても、ご飯をつくっている時間は何ものにも代えがたくステキ。
 「甘いって幸せだよね」
 「そうだなあ」

 テンション上げきった時点で私たちの勝利です。なんだかよくわからないけれどとりあえず勝ち誇りましょう。ぽっぱっぽっぱっぽっぱっぱー。

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