ヒーリングっどプリキュア 第39話感想 「お前ならできる」の先で紡がれた物語。

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でも、やってみたら何か変わるってわかったから! チャンスだもん。行ったほうがいいと思う。

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(主観的)あらすじ

 ひなたがビョーゲンズの本拠地への入口を見つけました。グアイワルが地球に来るとき開いて放置したもののようです。
 あからさまな罠の気配を感じますが、少し逡巡し、結局ひなたの一声で進むことに決めました。諦めないで行動すれば何かを変えられる。これまでたくさんのことに取り組んできた経験が、ひなたたちに自信を与えてくれていました。

 ゲートを抜けた先、本拠地の中枢には、果たして本当にキングビョーゲンがいました。テアティーヌ様と先代のプリキュアでも消し去ることまでは叶わなかった強敵。キングビョーゲンは嬲るように、遊ぶように、圧倒的な力をもってのどかたちに応戦してきました。
 何度吹き飛ばされても、何度攻撃を防がれても、けっして諦めることなく戦いつづけたのどかたち。
 けれどラビリンたちヒーリングアニマルの心には、半人前のくせに無謀な戦いにのどかたちを巻き込んでしまったことへの自責と後悔の思いが次第にわだかまっていくのでした。

 それでもそれぞれのパートナーの手を離さないのどかたち。
 だって自信があるのです。これまでも一緒ならなんとかできた。だったらこれからも一緒なら負けない!
 みんなで力を合わせた最後の攻撃は、ついにキングビョーゲンをも圧倒、そのまま浄化することができたのでした。

 長かった戦いもこれでおしまい。そう思ったところに、不敵な顔のグアイワルが現れて・・・。

 関係ない話ですが、またパソコンのHDDをヤっちゃいました。年始から準備していたアレコレの原稿が軒並み壊滅です。せっかくRAID 10を組んでいてもS.M.A.R.T.を呼び出せないレベルの不具合を半年も放置していたら何の意味もないわな。・・・いえまあ、今回は8割がたのデータをサルベージすることができたのでRAIDの意味が全く無かったわけじゃないんですけど。
 気をつけましょうね、本当に。

 さて。キングビョーゲンの正体ってナノビョーゲンの群体、集合意識みたいなものじゃなかったんですかね? てっきり、だからこそ地球を蝕むことで力を取り戻せるんだって設定だと思っていたのですが。部下の進化を歓迎するのも病原菌としての本能みたいなもので。というか、部下も独立した自我を持っているだけで本来的にはキングビョーゲンを構成する群体の一部みたいな。
 だとしたら、グアイワルの野望に反してこのあとも平然と復活してくるかなー、と妄想中。残り話数的にもキンググアイワルがラスボスの座につくわけないですし。シンドイーネやダルイゼンにキングが挿げ替わっていくパターンもありそうですが。
 まあ、どっちにしろのどかたちがこれから取り組むことは変わらないので何でもよし。(かわいくない意見)

 今話で描かれたのはひなたの成長した姿。
 ひなたは自分にできることが何もない子でした。けれど彼女をそういうふうにしていた原因は、粗忽者であるという以前に、自己不信。数々の失敗経験が、彼女から挑戦しようとする意志を奪っていました。
 今は違います。ひなたはニャトランと出会い、のどかたちと出会い、少しずつ自分なりの成功経験を積み重ねてきました。自分にもちゃんとできることがある。そんな目の前にある厳然とした事実が、彼女に自分を信じさせることを促していきました。ステキなことです。

 ですが、さて。ここからが次話で訪れるであろう最後の試練。
 もし、また失敗したら?
 成功の経験が彼女のなかに自信を築きあげていきました。
 だけど少し前までは、失敗の経験が彼女のなかの自信を砕いていたわけです。
 次また大きな失敗をしたら、彼女はまた元のひなたに戻ってしまうのでしょうか?
 それでは意味がない。
 せっかくこれまでがんばって成長してきた意味がなくなってしまう。

 「意味なくなんか、ないんだよね!」(第13話)

 人生に挫折はつきものです。
 ひなたじゃなくても失敗なんていくらでも経験するものです。

 これまで積み上げてきた数多くの経験の意味を未来永劫信じつづけるために、ひなたは今度こそ失敗を乗り越えてみせなければなりません。

私は成功してきた

 「なあ、ひなた。俺と一緒にプリキュアにならないか。あの怪物。ビョーゲンズから地球を守るんだ。お前のなかの好きなものや大切なものを、お前の手で、守るんだよ。ひなた。お前ならできる」(第4話)

 ひなたの物語はニャトランとの出会いから始まりました。

 不思議なことを言う人もいたものです。
 わざわざ何もできないひなたを選んでくれて、しかも「できる」と力強く断言してくれた人。

 いったい何を根拠にそんなこと言ってくれたんでしたっけ?

 「こらー! そこの怪物、ふたりを離しなさいよ! これ以上何かしたらただじゃ済まさないからね!」
 「ちょっと飛ばされただけ。これくらいへっちゃら、へっちゃら」
(第4話)

 そうそう。ちょっと啖呵を切って、ちょっと強がってみせただけ。
 「できる」も何も、あの頃のひなたは弱っちくて、口だけ達者でも実際には何を守る力も持ちあわせていなかったのに。

 「ていうか、俺はお前と組みたい!」(第4話)

 それなのに、ニャトランはパートナーに選んでくれた。
 心の肉球にキュンと来たってだけで。たったそれだけのことで。
 ずっと欲しかった、だけど正直諦めかけていた、夢を叶えるための力を貸してくれた。

 「何言ってんだ! ビョーゲンキングダムがどれだけ危険な場所なのか、俺たちもわかんないんだ。そんなところにひなたたちを連れていけるか! ダメだ! ダメだ! 俺は絶対に反対――」

 不思議なことを言う人もいたものです。
 あなたが何もできない私に力を貸してくれて、私の「できない」を「できる」に変えてくれたのに。

 「行こうよ」

 私は知っている。
 ひなたは知っている。
 だって、ニャトランが知っていてくれたから。

 「お前ならできる」って。

 それ、本当だった。

 「プリキュアかー。のどかっちもちゆちーもすごいね。なんか、戦うお医者さんって感じ」
 「お前もだぜ、ひなた。これからも俺と一緒にお手当てしてくれるよな」
(第4話)

 やってみたら、ひなたにはプリキュアができた。

 「ひなたちゃんのジュース、おいしかったよ。めいさんのお店のジュースとは違ったかもしれないけど、おいしかったよ。ひなたちゃんがつくってくれたって聞いて、私、嬉しかった!」(第13話)

 やってみたら、ひなたにできることは他にももっとたくさんあった。

 「違うよ。前の私ならビビって『やめよう』って言ってたと思う。『無理』って諦めたと思う。でも、やってみたら何か変わるってわかったから! チャンスだもん。行ったほうがいいと思う」

 「私ならできる」。そう確信する。

 だって、「お前ならできる」から始まったこの物語は、本当は何の根拠もなかったくせに、本当に「できない」を「できる」に変えてくれたんだから。

 だから、「私ならできる」。
 そう信じることにする。

 信じることで、また変わってみせる。

 「よし、わかった! 俺も行く! ひなたが行くってのに俺が行かないなんてありえないからな!」
 「ニャトラン・・・」

 ありがとう。私を信じさせてくれて。
 私を変えてくれてありがとう。

私たちは成功してきた

 「えへへ。ニャトラン、私に言ってくれたじゃん、プリキュアになるとき。『好きなものや大切なものを守るんだよ』って。――守りたいんだ。ニャトランの気持ち」(第18話)

 ひなたは変わりました。ずっとやりたかったことをできるようになったくらいに。

 「私はさ、ひとつのことに集中するのって苦手じゃん。だから何かを特別に好きっての、わかんないんだ。でも、ニャトランの特別な“好き”を守ることはできる。それがすっごく嬉しいの! だって、一生懸命なニャトラン、カッコよかったもん!」(第18話)

 何でもはできないかもしれない。変われないところはどうしてもあるかもしれない。
 だけど、やりたかったことはできるようになりました。ひなたはそれで満足です。
 それだけできれば自分を好きになることができます。
 「私ならできる」って信じることができます。

 それが、ニャトランの変えてくれた今のひなた。

 だから――。

 「お前たちの声など届かない。半人前のヒーリングアニマルの声などな。お前たちはあの戦いのなか、どこかに隠れていたのだろう? 役立たずの見習いヒーリングアニマルと力のない名ばかりの王女が束になったところで何もできはしない」

 その考えかたは見るべきところを見ていない。

 「やっぱりボクたちじゃ無理なんだペエ・・・」
 「地球をお手当てどころか、パートナーをこんな目にあわせて・・・」
 「半人前のラビリンたちじゃ、何にも、何にも守れないラビ・・・」

 その弱音はありのままの自分を見ていない。

 半人前なんて百も承知。
 最初は何もできなかったことくらい誰よりもよく知っている。今ですら何でもできているわけじゃない。

 だけど、できたんです。
 現実として、事実として、経験として、体験として、そして自分たちがここまで戦ってこられた理由として。

 「一緒なら守れる」
 「これまでも一緒に守ってきたじゃない」
 「私たちパートナーじゃん」
 「私はラテの望みを叶えるためにここにいるのです」

 断言します。「私たちにはできる」と。

 昔のひなたが何もかもに失敗しつづけた結果自信を失ったのと同じように、
 今のひなたたちはたくさんのことに成功しつづけた結果、大きく自信をつけています。

 過去と現在と未来は連続しています。

 過去に成功経験があるからこそ「次もできる」と自信を持つことができ、
 今「次もできる」と信じるからこそ、本当に次もまた成功するんです。

 ニャトランがひなたに教えてくれたことです。
 ニャトランの隣でひなたが体験してきたことです。

 だから、キングビョーゲンの誹りも、ニャトランたちの弱音も、全部間違っている。

 「一緒なら負けない。だからがんばろう、ラビリン!」

 たしかに最初はできなかったかもしれない。
 できないことがあるのは今でも変わらないかもしれない。
 だけど、「お前ならできる」って信じてくれる人がいたおかげで「私ならできる」ことが出来た。
 だったら私も信じよう。「あなたならできる」ことをあなたに実現させるために。

 根拠なら、ある。

 私たちは成功してきた。
 だから、私たちならできる!

成功者の論理

 ここからは今話の物語から少し逸脱したお話になります。

 今話、ひなたたちはこれまでの成功経験の積み重ねを根拠に自信を持つことができました。
 ですが、それは成功者の論理です。
 成功できる人にしか持つことのできない強さです。

 もし、成功できなくなったとしたら?
 成功だと思っていたことが実は裏目に出ていたとしたら?

 そのとき、ひなたはなおも自分を信じ抜くことができるでしょうか。

 過去と現在と未来は連続しています。

 「私、ちっちゃい頃から水泳も体操もピアノもダンスも、お兄やお姉のマネしてがんばっても同じにできないの。何してもぜーんぶダメ。そういうのテンション下がるじゃん。だから続かなくなっちゃって」(第13話)

 いくばくかの成功経験を得たところで、ひなたの過去に無数の失敗経験が積み上がっている事実は未来永劫変わることがありません。
 いつか成功だと信じていたものを失ったとき、自信の根拠となるものを奪われたとき、そのときひなたの手のうちに残るものは・・・。

 「お前サイコーだよ! やっぱオレひなたのこと気に入ったぜ。心の肉球にキュンときた」(第4話)

 あのときはつくづく不思議なことを言う人もいたものでした。
 昔のひなたは、今よりずっと、本当にできないことだらけの子だったのに。

 ――いったい何を根拠にあんなこと言ってくれたんでしたっけ?

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    コメント

    1. 東堂伊豆守 より:

      キングビョーゲンの回想によると、力尽きてぶっ倒れたプリキュア・フウを庇って見習いアニマル・テアティーヌが起った、らしい。
      現代において、心折れたラビリン達をキュアグレース達が鼓舞したのとは逆の構図で、なるほどキングビョーゲンが、かつてのテアティーヌよりひ弱な当代の見習いアニマル達を侮るのも無理はない……と同時に実は、キングビョーゲンも、そしてテアティーヌも、「人間の力」を侮っている点では共通しているのかもしれません。「人間など所詮はヒーリングアニマルによって庇護されるだけの存在」だと。
      ラビリン達が「ヒーリングアニマルの名にかけて」「ヒーリングガーデンを代表して」と悲壮な覚悟で臨んでいる戦いを、テアティーヌ達正規アニマルは「自分達が快復して戦線復帰する迄の時間稼ぎ」としか認識していない様子なんですが、そのような認識の背景には、見習いアニマル達への過小評価に加え「人間がお手当ての同志になど成り得ない(せいぜいアシスタントどまり)」という過小評価もあるのではないか、と。
      と、なると……自己肯定感回復クエストを一年間かけてやってきた平光ひなたの最終試験となるであろう次回は、ひなたのパートナー・ニャトランにとっての最終試験ともなるのかもしれません。彼にとって「お手当て遂行に好都合な“掘り出し物”」から「守ってやりたい“友達”」へと変遷してきたひなたを、果たして「大事を任せるに足る“同志”」に昇格させてあげることが出来るのか……。

      • 疲ぃ より:

         そもそも未熟な子どもたちに前線を守らせちゃっている構図ですから。冷酷な大人なら安い捨て駒としてしか利用価値を見出しませんし、マトモな大人なら心苦しすぎて活躍してほしいとか思えないわけで、いずれにしろ大人対子どもの関係じゃ正当な評価なんてされませんよ。正当な評価をしちゃいけません。
         リアルに考えるならこんな状況を喜ぶ大人なんて、あらゆる意味でありえません。

         ニャトランは最初からひなたの人間性を気に入ってパートナーに選んでいたので、そのあたりはどうでしょうね。全人格的に好いているからこそ、ひなたの粗忽なところを毎日見ていても、呆れながらボヤキながら、それでも付きあっていられるわけで。
         かつて「お前の手で、守るんだよ!」と夢を見せて手を引いてあげた友達が、今まさにその夢のとおりの人物になって、今度は臆病風に吹かれた自分の手を引いてくれています。頼もしい。
         だからこそ。今また失敗しか知らなかったころのひなたに戻ってしまったとき、彼が何を思うかは見どころですね。

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