今までめっちゃ失敗してきたんだもん。今さら1個くらい増えたってどうってことないし!!
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(主観的)あらすじ
全てはグアイワルの謀略でした。プリキュアを招きこみ、キングビョーゲンと戦わせたのは、グアイワル自らがビョーゲンズの王に成り代わるためでした。大量のメガパーツを取り込みパワーアップしたキンググアイワルはプリキュアを一蹴、そのまますこやか市の侵食を開始します。
辛くもキンググアイワルの手から逃れたのどかたちは、しかしすこやか市に帰る手立てなく立ち往生。
グアイワルの罠に騙され、あげくのどかたちにもすこやか市のみんなにも迷惑をかけるかたちとなってしまったひなたは泣き崩れます。昔からいつもこうだった。考えが足りなくて、どうせ失敗するってわかってたはずだった。こんな自分、何もしなきゃよかった。
ですが、ニャトランがそれは違うと言ってくれました。失敗は誰にでもあるもの。ひなたは失敗にばかり目を向けすぎているだけ。失敗しても、そのたびに立ち上がってこられたじゃないか。そういうひなたが大好きだと、ニャトランは言ってくれるのでした。
立ち直ったひなたとのどかたちは改めてすこやか市に帰る手段を探し、ビョーゲンキングダムの一部だけでもプリキュアの力で浄化できればゲートが開くことを発見しました。
いざ、というところでダルイゼンの妨害が入り、あわやのどかだけ置いてけぼりになるところでしたが、先にすこやか市へ抜けたひなたたちがのどかを支援。無事、みんな揃って帰ることに成功したのでした。
何をやってもうまくいかない。失敗ばかり。
そういう人は実際います。運が悪いのか、要領が悪いのか、理想が高すぎるのか、原因は人によって様々だけれど。
平光ひなたはまさにそういう子でした。
運が悪かったのかもしれません。彼女は優秀な家族のもとに生まれ、何をするときも優秀な家族と自分とを比べざるをえませんでした。
要領が悪いのは間違いありません。昔から何をやっても思うようにできず、萎えて途中で投げだしてばかり。自分がそういう粗忽者であることを当たり前に受け入れてしまっていました。
理想が高すぎたのも確か。彼女は他人の優しさに気付ける優れた感受性を持っていました。周りにいる友達の親切ひとつひとつに感激していたばかりに、これもまた親切が裏目に出がちな自分を情けなく思う原因になってしまっていました。
「・・・ダメダメだよね。のどかっちが辛かったのに全然気付かないで。もう! 私ってばつい周りが見えなくなるっていうか。ひとりでどんどん突っ走っちゃって。これ飲んで落ち着いたら帰ろ。ね、そうしよ」
「ひなたちゃん。私、まだ帰らないよ。――だって、こんなにドキドキするくらい楽しいんだもん。帰りたくないよ」(第9話)
本当に何をやってもうまくいかない、なんてことはないのに。
「ひなたちゃんのジュース、おいしかったよ。めいさんのお店のジュースとは違ったかもしれないけど、おいしかったよ。ひなたちゃんがつくってくれたって聞いて、私、嬉しかった! ――意味、なくなんてないよ」(第13話)
本当に失敗しかしていない、なんてこともないのに。
それでも、見えなくなってしまう。
見たいものから目を背けて、見たくないものばかりを見てしてしまう。そんなときもある。
だって、私たちの目はたった2つしか付いていないんだから。
私たちは世界の全部を、あるいは自分の全部を、いつも見ていられるわけじゃありません。
なのに、私たちの両目にはたったひとつのありかたしか見えてこないから。それがこの世の真実の全部だと、ついつい、思い込んでしまいます。
「プリキュアかー。のどかっちもちゆちーもすごいね。なんか、戦うお医者さんって感じ」
「お前もだぜ、ひなた。これからも俺と一緒にお手当てしてくれるよな」
「あっ・・・」(第4話)
平光ひなたは、ずっと平光ひなたの情けない一側面だけしか見ないで生きてきました。
失敗した
「礼を言わんとな、キュアスパークル。貴様なら必ず罠にハマると思っていたぞ」
全部承知のうえでした。
「罠だと思う。本拠地への出入り口を開きっぱなしにしておくなんて、いくらなんでもありえないわ」
「何言ってんだ! ビョーゲンキングダムがどれだけ危険な場所なのか、俺たちもわかんないんだ。そんなところにひなたたちを連れていけるか!」(第39話)
罠だとわかっていて、リスクが大きいことを認めたうえで、それでも行こうと決めました。
「私ならできる」。そう、信じていたから。
大した根拠なんてありませんでした。
ただ、以前ニャトランが「お前ならできる」って言ってくれたから。
それから勇気を出して色々挑戦してみたら、案外うまくできたから。
だから、「私ならできる」って、信じたくなりました。
「前の私ならビビって『やめよう』って言ってたと思う。『無理』って諦めたと思う。でも、やってみたら何か変わるってわかったから! チャンスだもん。行ったほうがいいと思う」(第39話)
だって、平光ひなたは幼いころからずっと、そういう“できる”人になりたいって願いつづけてきたんだから。
それが自分には叶えられない願いだという諦めも半ば受け入れつつ。
「なあ、ひなた。俺と一緒にプリキュアにならないか。あの怪物。ビョーゲンズから地球を守るんだ。お前のなかの好きなものや大切なものを、お前の手で、守るんだよ」(第4話)
あの日、ひなたはシンデレラになりました。
今日、ついに12時の鐘が鳴ってしまったけれど。
「ごめん。全部私のせいだ。私がグアイワルの罠にハマったせいで取り返しのつかないことしちゃった」
「だって、ニャトランは反対したのに、私が『行こう』って言ったせいで、みんなも、地球も、困っちゃってるじゃん!」
ニャトランがくれた「お前ならできる」の魔法は解けました。
あとに残されるのはみすぼらしいいつもの私。
「わかってた! 何やったって、私は、私は失敗する。ちゃんと考えたつもりでも間違えて、迷惑かけて、・・・やっぱり私、何もしなきゃよかった!」
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
「いや、だから・・・。見世物になる前に保護するとか、迷子ならおうち探すとか、早くお兄に相談!って思ったら慌てちゃって・・・」(第4話)
風変わりな仔猫を見つけたから特別慎重な保護が必要だと気がついたまではいいものの、慌てて変な言いかたをしてしまったせいで、その優しさは誰にもわかってもらえませんでした。
「あ、そうだ。のどかっち。それあそこに飾ったらいいじゃん。のどかっちの部屋の写真コーナー」(第9話)
長期入院を終えたばかりの友達のため、せっかくみんなで想い出をつくろうと張りきったのに、その子の体力がまだ戻りきっていないことにまで気が回らず、余計な迷惑をかけてしまいました。
いつもいつもそうでした。ひなたは優しい友達のことが大好きで、みんなみたいに何気ない親切をしてみたいと憧れていたのに、どうにも結果が伴った試しがありませんでした。
みんなに優しくあろうとして失敗してしまう自分のことが嫌いでした。
親切なことをしようとして反対に迷惑をかけてしまう自分のことが嫌いでした。
ニャトランがプリキュアに変身させてくれたことは本当に嬉しいことでした。
好きなものや大切なものを自分の手で守ることができる。ずっと憧れていた、みんなと同じことをやっとできるようになったんです。
それはあくまで変身でしかなくて、借りものの魔法でしかなくて、いつか自分の手で叶えなければならない遙けき夢をちょっとの間だけ前借りしているようなものだったけれど。
それでも、おかげで少しは自分に自信を持てたような気がしていました。
「ひなたちゃん。そんなことないよ」
「そんなことあるよ!!」
気のせいでした。
「前の私ならビビって『やめよう』って言ってたと思う。『無理』って諦めたと思う。でも、やってみたら何か変わるってわかったから! チャンスだもん。行ったほうがいいと思う」(第39話)
夢は夢。
ひなたはひなた。
憧れは憧れ。
その大した根拠もなかった自信を含め、借りものの魔法は所詮借りものでした。
短い夢を見ていただけで、ひなたはいつまでたってもひなたのままでした。
なのに。
「なに泣いてんだよ。お前に振りまわされるの、俺は好きだぜ」
こともあろうに、ひなたにシンデレラの魔法をかけてくれた当のニャトランが、ありのままのひなたを認めます。
「誰だって失敗はするもんだ。お前、失敗ばっか覚えてるからヘコむんだよ。うまくいったときだってあったじゃねえか」
――そもそものあの日、ニャトランは何を根拠に「お前ならできる」と言ってくれたんでしたっけ?
成功の先、失敗の先、その先のまだ見ぬ未来で
「穴が!」
「あーあ。置いてけぼりだ。――なにっ!?」
「グレース!」
ダルイゼンの妨害に遭い、ひとりビョーゲンキングダムに置いてけぼりとなってしまったのどか。
けれど、すこやか市側からもういちどゲートにパワーを注いでみることにしたひなたたちの諦めない思いによって、のどかは無事救出されました。
ひなたがプリキュアに選ばれたあの日、ニャトランは密かにひなたのことを試していました。
きっかけはひなたが当たり前のように言った一言。
「なあ、ひなた。俺のこと他の人には秘密にしてくれよな」
「もちろんだよ! てか、最初からそのつもりだし」(第4話)
初め、ニャトランはヒーリングアニマルの存在を知ってしまったひなたが口を滑らすことを警戒していました。見るからに何も考えてなさそうな粗忽者の少女が、そりゃあもうすごい勢いでお兄さんにニャトランの秘密をバラそうとしたように見えたからです。
けれど、違いました。ひなたは何も考えずに秘密を言いふらそうとしていたのではなく、むしろニャトランを守るため信頼できるお兄さんに相談を持ちかけようとしていたのでした。
その心根の優しさに、そしていかにももどかしそうにしている不器用さに、ニャトランは興味を持ちます。
もう少し付きあってみると、ひなたはやはり底抜けにお人好しな子で、そしてこれまたやはりどうしようもなくヌけたところのある子だということが見て取れました。
「無事か、ひなた!」
「ちょっと飛ばされただけ。このくらいへっちゃらへっちゃら。それよりニャトランこそ大丈夫? なんともない?」(第4話)
呑気にすら見えるそのバカバカしいほどの優しさに、ニャトランの心の肉球はキュンとしました。
ニャトランの目の前にいるその子は、身に余るほど大きな夢を抱いていて、周りにいる人みんなを愛していて、みんなに優しくありたくて、いつも必死にもがいている。今はまだ何もできていないようだったけれど、心から尊敬すべき子だと思えました。
もし叶うならこの子が夢を叶えるところを見てみたい。手伝ってやりたい。
だって、この子は自分に無いものを持っている。
消えない情熱を。
半ば諦めながら、それでも手放さない強い思いを。
もどかしくてもどかしくてたまらない、溢れんほどの渇望を。
だから。
「たしかにお前は失敗が多い。でも何度失敗しても立ち上がってきたじゃん。俺、お前のそういうところ大好きだぞ。最初に心の肉球がキュンってしたときより今のほうがもっと好きだぜ」
ニャトランの知っているひなたなら、こういうとき心折れてしまうのは“らしく”ありません。
ひなたは幼いころからたくさん失敗を繰り返してきました。
たくさん挫折して、たくさんうつむいて、たくさん諦めて、たくさん自分のことを嫌いになって、それでも、今ここにいます。
プリキュアになってからいくつかの成功を収めてきました。
生まれてこのかた、それ以上にたくさんの失敗を繰り返してきました。
プリキュアになってからの成功経験が、ついさっきまでのひなたの自信を支えていました。
違う!
ひなたという子の本質は、そんな薄っぺらいものに守られなければならないほど弱っちいものじゃありません。
この子は、失敗して失敗して失敗して失敗して失敗して、それでもなお誰かに優しくあろうとする気持ちだけは捨てずに抱えつづけてきた強い子です。
本当にひなたの自信を裏打ちするべきものはむしろ、彼女の失敗経験にこそある。
「そうだね。今までめっちゃ失敗してきたんだもん。今さら1個くらい増えたってどうってことないし!!」
あなたの心に秘めたその熱さに、あの日のニャトランは憧れたんですよ。
もちろん、プリキュアとしての成功経験だって無意味なものじゃありませんでした。
「バテテモーダとかまだ全然いるけど、それでも今私ががんばれば、みんなを助けられるんだもんね。意味、なくなんかないんだもんね!」(第13話)
「私ならできる」という成功経験に基づく自信はどうしても必要です。どんなに失敗しても自分を捨てない強さも大切ですが、それでも、前を向けなきゃ意味がない。
プリキュアになる前から本当は強かったひなたに、ニャトランが一番必要だったものを贈ってくれたわけです。
まるで、12時の鐘のあとにも残ったガラスの靴のように。
「グレース! よかったー!」
この子はこれからもこうして夢を追いかけていくのでしょう。
たくさん失敗しながら。ときどき成功もしながら。
三歩進んで二歩下がりつ、喜んだり嘆いたりしながら、どこまでもマイペースに、諦めず、プリキュアらしく。
ずっと、いつかみんなみたいになりたいと、誰よりも思いやり深い心で祈りつづけるのでしょう。
コメント
思えばひなたは1年かけて同じ問題をグルグルしてるような子でしたが、次の行動に移るまでの時間は確実に短くなってる気がします。
まあ、『鉛筆転がしの極意』とかいう方向に行ったりしますけどw
自分はグアイワル穴が『ビョーゲンキングダムを一時的に浄化して生み出す』という話が気になりました。
じゃあ前回のグアイワル穴は一体……?
というか、そもそもビョーゲンキングダムはどういう座標軸の場所なんでしょう??
残り1ヶ月、初期からの幹部全員が残ってる中どう着地しますやら。
きっとビョーキのエレメントさんとかいるんだろうなあ・・・。>グアイワル穴
うん? それってつまりナノビョーゲンなのでは???
ええと……第39話じゃなくて第40話ですね。
さて、グ改めキンググ氏が「この町をビョーゲンキングダムの首都とする」などと宣言したり、次回タイトルが「すこやか市の危機」だったり、何だかすこやか市(民)が全人類の代表みたいな扱いになってまいりましたが……。
ただ、最終決戦に於いてすこやか市をフィーチャーするんだとなると、「すこやか市主催プリキュア祝勝会」という平光ひなたの夢が正夢になりそうではあります。
……で、ここでキーポイントとなりそうなのが、これまでクドイくらい繰り返し(重要な伏線だと言わんばかりに)語られてきた「ヒーリングアニマルやプリキュアの存在は人類に秘匿しておかなければならない」という例の規則。
そもそも、何でこんな規則が制定されたのか?
ビョーゲンズの出現にヒーリングアニマルもしくは地球さんが関わっていて、この“不祥事”を隠蔽するために、地球のお手当て機能の存在も秘匿することとしたのか?
あるいは、かつてテアティーヌとフウが「魔犬と魔女」「ビョーゲンズと同類」などとして村人達から迫害されたことがあったので、ヒーリングアニマルとプリキュアの安全を確保するために制定されたのか?
プリキュアシリーズで割と恒例の「プリキュアの元締的存在が一番の食わせ者」展開に加え、「プリキュアが、これまで守ってきた人々に背中を刺される」展開の可能性も見えてきて、本作の最終決戦、これまで以上に緊迫した展開になりそうなんですが……。
考えすぎ、だよね、多分……。
話数訂正しました。ありがとうございます。
最前線に立たされた人々が代表扱いになるというのはそこまでおかしな話じゃないと思っています。彼らは誰かに支持され嘱託されたわけではありませんが、彼らこそが誰よりも当事者です。
どこにでもいる普通の人が自分たちの日常を守るために戦うというのはいかにもプリキュア的ですしね。