超人女子戦士ガリベンガーV 第73話感想 メイド喫茶より下男喫茶。でも執事喫茶があるからなあ・・・。

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生徒役:電脳少女シロ、樋口楓、ヤマトイオリ

下男喫茶って流行んないかな。いいですよね。“下男喫茶”って、文字にパワーはあるよ。秋葉原か何かに下男喫茶。

出演バーチャルYouTuber

電脳少女シロ

「なんで英二! なんでいいとこ取りするのぉぉぉ! シロが言おうと思ってたのにぃぃぃ!」
「・・・いやいやいや。じゃあ、一応産業革命って言っておきますか?」
「『産業革命』です!!」

 バーチャルYouTuber黎明期にデビューし、今なお最前線で活躍の場を開拓しつづけている始まりの人。清楚で暴虐で奇矯で蠱惑的な独特の感性は、誰もの頭を為にする、華やかな魅力に満ちています。一方で共演者やスタッフへ心配りを欠かさない細やかさがあったり、多様な価値観へ理解を示す聡明さもあったりしますが、それらは基本的にギリギリまで相手を追い詰めるためにこそ発揮されるので油断は禁物です。

 3歳児らしいダダをこねたシーン、とても愛らしかったですね。確定申告するダダっ子か・・・。
 今回本人申告の機会がなかった樋口楓のあだ名“でろーん”をさりげなく電波に乗せてくれたあたり、いつもどおり周りをよく見ての配慮が光っていましたね。

樋口楓

「腹踊りをする前に何をするかですね」
「脱ぐ!」
「脱いじゃう前に。なんでそんな状態になるのか、みたいな」
「お酒を飲む」

 業界最大手プロダクション・にじさんじを立ち上げのころから盛り上げてきた第1期生。飾らない性格とパワフルな歌声が持ち味です。和田アキ子みたいなキャラクターですね。たいくつなときはでろーんと昼寝、気が向いたときはエルフの森に放火。そこそこ危険人物な気がしないでもありませんが、基本的にはどこにでもいる普通の女子高校生です。

 デビュー当初からバーチャルYouTuberらしからぬ飾り気ないキャラクターでしたが、相変わらず今見ても普通に生身の芸能人を見ている感覚になりますね。電脳少女シロのトンチキ発言ひとつひとつにケラケラ笑っている姿が印象的でした。
 一方で授業中の回答は妙に鋭く、しっかりと地に足ついた考察がなされていました。ヤマトイオリの腹踊り発言から飲酒を連想できたあたり、元々の教養があって的を射た回答をしていたというよりは、優れた想像力と感性とによってふさわしい答えを導き出せたというところでしょうか?

ヤマトイオリ

「小峠教官の好きな、足のパチンってする太ももに紐が付いているので、ぜひ!」
「ガーター? ガーター付いてるの?」
「付いてます!」

 何気ない日々のなかからキラキラ輝く瞬間を見つける天才。その幸せな時間は彼女自身が努めてステキなものを見つけようと努力した証。とりとめない語り口からとめどなくあふれ出る日常の冒険譚には、聞く者みんなを笑顔にするほのぼのとした暖かみがあります。善性の塊のような子ですが、実は意外といたずらっ子なので、仲よくなるにつれて次第に殴ってきたり膝カックンしてきたりする頻度が増えてきます。

 メイドについての授業と聞いて、かわいいメイド服を期待していたのがありありと窺える言動でした。冒頭でメイド喫茶の感じとはだいぶ違うって言われてたでしょ!
 いわれてみれば新衣装になってから初めての番組出演です。以前は片目隠れかつ和装だったので、だいぶ印象が変わりました。もっとも、それ以上に本人の人となりが初期よりもっと天真爛漫方面へ変化してきたので、外見と内面のギャップは今のほうがずっと少なくなったかもしれません。これでも昔はおっとりお姉さんっぽいっていわれていたんですよ?

超難問:メイドの謎を解明せよ!

特別講師&授業テーマ雑感

 新井潤美先生は東京大学文学部所属の教授です。専門は英文学と比較文学。
 日本語と英語の発音のクセからお気づきのかたもいるかもしれませんが、幼いころから海外を転々とし、イギリスのパブリックスクールにも通っていた帰国子女です。その経験からイギリスの階級社会に強い関心を持ち、演劇、小説、映画などの文学作品からイギリス人の階級に対するイメージを読み解く研究を行っています。
 イギリスの階級意識というのは本当に文化に根付いていて、たとえば英語のアクセントひとつ取っても伝統的なクイーンズイングリッシュでなければ上流階級らしく見えない、などと言われることもしばしばのようです。先生の英語の発音が逐一美しいことにもちゃんとした理由があるんですね。

 史実のメイドといえばイギリスが本場というイメージがありますが、日本のアニメやマンガ、メイド喫茶などで扱われるメイド像は明らかにそのイメージから乖離しています。実際のメイドはあんな華やかな制服を着ていません。
 これはメイド属性の源流が調教ものアダルトゲームから来ているためだったりします。メイドというものがただの小間使いではなく、エロいアレとして描かれていたために、見目麗しい、かわいらしい服装である必然性があったんですね。(※ ちなみに、調教ものが原点とはいえメイドが女性蔑視のアイコンだったわけではないのでそこだけ注意。当時の男性向けアダルトゲームはナンパものと調教ものが2大ジャンルだったんです)
 その後、メイド属性のキャラクターが恋愛ゲームやラブコメマンガなどでも活躍するようになったため、性的なニュアンスは薄れ、純粋にかわいらしい属性として全年齢的に受け入れられていくことになります。このあたり、近年では男の娘属性なんかも似たような変遷をたどっていますよね。
 おそらく誰もがオタク文化にズブズブ浸かっているであろうバーチャルYouTuberファンとしては、ぜひともそちらのメイド像と史実とのギャップをたっぷり楽しみたいところですね。

トピック1:この中でメイドはどれ?

 「6番のかた? 白い服とツルツルの服なので。下の黒っぽい服はメイドさんじゃないのかなって思ったりしました」

 ヤマトイオリの回答。良い視点ですね。
 メイドは基本的に客前に姿を見せない仕事なので、服装はごくシンプルなものでした。使用人なのに畏まった衣装を着ているのは上級職、もしくは職務上来客応対を行う者である証拠です。

 「私は1番だと思います。たぶんメイドさんはイスに座らせてもらえない気がします」

 樋口楓の回答。こちらも鋭い。
 つまるところメイドというのは誰にでもできる仕事でしかないので、同じ使用人のなかでもけっして立場の高い職種ではありませんでした。

 「シロもやっぱ服装で1番か6番かと思いました。かわいいの付いてる」

 電脳少女シロの回答。もちろん正解です。
 頭に付けているのはいわゆるホワイトブリムでしょうか。アニメマンガに出てくるものと違ってフリルはついていませんが、本来ブリムというのは動きやすいよう頭髪をまとめるための実用品ですのでこれでいいんです。

 キーワードは「Servant」
 通常、メイドといえば女性の使用人のうち管理職でも特別職でもない者のことを指します。(※ 特別職の例:乳母、家庭教師、レディースメイドなど)

 1番はハウスメイド。一般的なイメージどおりのメイドです。屋敷の掃除から食卓の用意まで幅広い雑務を受け持ちます。大きな家では当然ながら分業することになり、客に姿を見られることもある食卓担当などは相応の身だしなみを求められました。

 2番はハウスキーパー。アッパーサーヴァントと呼ばれる管理職のひとつです。屋敷の維持管理全般に責任を持ち、メイドたちの指揮監督のほか、人事までも任されていました。高価な食器やリネン類、屋敷の鍵などの管理も管轄に含まれます。

 3番はバトラー。執事ですね。男性使用人を統括し、こちらもやはり人事権を握っていました。語源は「bottler」であり、本来は酒類の管理、調達、ときに醸造などを司る職種だったのですが、ついでに給仕も任されるようになり、酒類や銀食器などを取り扱うことから財産管理までも任されるようになっていきました。

 4番は下男。英語では「footman」といいます。日本の執事喫茶などでイメージされているのは執事というよりこの下男に近いでしょう。
 基本的な仕事は雑用。多少力仕事もできるとはいえ、メイドがいればおおむね事足りる、いなきゃいなくても困らない職種でした。そのくせ男性使用人には税金が課せられるので雇用費はメイドの数倍。
 だというのに雇いたがる者はけっして少なくありませんでした。というか、ムダにコストがかかるからこそあえて雇っていました。それだけ裕福だということをアピールできたからです。ほぼ見栄のためだけにある職種なので、身長の高いイケメンであればそれだけで重用され、来客時などはこれ見よがしに傍に置かれていました。

 5番はレディースメイド。婦人や令嬢の身の回りの世話を受け持つ職種です。一般のメイドと違ってハウスキーパーの監督下に含まれず、屋敷の婦人直属となっていました。婦人らの身支度を任される職務上、宝飾品などの管理も行っていた信用不可欠の立場です。

 6番はランドリーメイド。洗濯担当のメイドですね。屋敷が大きければそれだけメイドの業務も細分化されていきます。
 他の専門部署の例としては、スカラリーメイド(皿洗い)、ナースメイド(乳母)、キッチンメイド(調理助手)、スティルルームメイド(紅茶と菓子の手配)、デイリーメイド(酪農婦)など。

トピック2:なぜメイドの数が増えたの?

 18世紀イギリスでは使用人は男女合算で20万人ほどだったところ、19世紀中ごろにはメイドだけで80万人と爆発的に増え、19世紀末に至っては200万人を越えました。メイドばかり急増したのは当時男性使用人にだけ税金が課せられていたという事情があるのですが、それにしたって全体数としても明らかに増えていたわけですね。
 さて。それはどうしてか?

 「制服がかわいくなった。フリフリの」

 ヤマトイオリの回答。
 マンガやアニメと違って、現実のメイドの大半はあんなかわいらしい衣装を支給してはもらえませんでした。フリルを潤沢に浸かったエプロンドレスなんてもっての外でした。かなしい。

 「たぶん戦争とかが増えて、ナースさんが増えたから、そのシーツとか洗う人用にメイドが増えたんじゃないかなって思いました」

 樋口楓の回答。不正解ですが良い回答ですね。
 戦地病院の衛生環境が重要視されるようになったのはナイチンゲールが活躍したクリミア戦争以後のことです。このクリミア戦争がちょうど19世紀中ごろなんですよね。時期的にはぴったり。
 ただ、ナイチンゲールは職業看護師と修道女を指揮して衛生環境改善に取り組んでいたため、ここにメイドの活躍はありませんでした。

 「偉い人とお近づきになれるお仕事として、メイドさんという職を希望されるかたが増えたのかなって思いました」

 電脳少女シロの回答。
 先のトピックでも来客対応は主に下男の仕事だと語られていたように、残念ながらメイドとして屋敷で働いていても有力者と親しくなる機会はきわめて少ないものでした。レディースメイドになれるのもほんの一握りだけでしたしね。

 キーワードは「Lower middle class」

 19世紀中ごろのイギリスは産業革命がひとしきり整った時期でした。
 大規模工場の増加に伴い、国内の労働者が地方農家や家内手工業から都市部の雇われ工員に転換。その大量の工員を使役し監督していた資本家(=中産階級)のもとに富が集まり、伝統的な貴族階級にも並びうる影響力を持つ者が続々と増えていきました。要は成金ですね。

 こうなると、自分たちの権力が脅かされかねない貴族たちも黙っていません。貴族は彼ら成金たちを、贅沢ばかりで品格が伴っていない、みっともない連中だとバカにするようになりました。
 誰かを見下すという行為は必ずしも愚かさの表れとは限りません。相手に悪印象を植えつけ、社会的発言力を摘みとるための積極的な攻撃という側面もあるんです。実際この戦略は功を奏し、それまで市民の批判のマトといえば貴族階級だったところ、産業革命以後は中産階級に憎悪が移っていきました。

 こういう情勢でしたので、中産階級にとっては“見栄”がとても重要な価値を持つようになりました。
 資本の額だけでは得られない、堂々と胸を張れる社会的権威を持つために、あえて貴族のまねごとをしなければならなくなったんです。

 その一環がメイドの雇用でした。
 家事のために使用人を雇うことは、それだけ優雅な生活を送っているということのアピールに使えました。ただ、個別の資本家みんなが何人も使用人を雇えるほど生活に余裕があったわけではないので、費用の安いメイドを1人だけ雇って家の仕事全部を丸投げするという無茶ぶりも横行していました。
 夫人に苦労をかけていない良き夫というイメージづくりの意味でもこの見栄は重要でした。そういうイメージを守るため、中産階級の夫人はできるだけ自分で家事を行うことを避け、全てメイドに任せるようにしていました。家事で手指にタコでもできたら一生ものの汚点ですからね。

 本当に余裕のない家だと、住み込みですらない、通いで玄関前の掃除だけするメイドを雇うパターンすらあったようです。
 そんなしょうもないことをしなければいけないほどに、イギリス階級社会において“見栄”というのは本当に大事なものだったんですね。

トピック3:メイドが増えたことで普及したものは?

 「白色申告用紙と青色申告用紙ですかね。確定申告で個人事業主が使えるシートのことです」

 電脳少女シロの回答。
 メイドは個人事業主ではありません。

 「レース。かわいいお洋服を、メイドさんがんばってくれてるから着させてあげようっていうつもりで。お洋服。布とか」

 ヤマトイオリの回答。この子、意外と頑固なので一度染みついたイメージがなかなか抜けないんですよね。
 一応、レディースメイドなら婦人から古着のドレスを下賜されることもあったようです。いつも身近にいて信頼も愛情もありますし、そもそも社交の場に同行させるのであんまり貧相な格好もさせられませんしね。

 「えー。なんだろう。ペットとか増えたんじゃないですか。動物の癒やしとかも欲しいなって人が」

 樋口楓の回答。
 先生の想定した回答ではありませんでしたが、実はこれも間違いではありません。19世紀中ごろのイギリスではペットブームも起きていました。主に犬ですね。もちろん、貴族が飼っていたのを中産階級が真似したからです。当時のヴィクトリア女王が愛犬家だったこともブームに拍車をかけました。そりゃ飼うわ。

 正解は使用人ハンドブック
 基本的にはメイドに読ませるためのものではありません。そもそも当時のメイドは読み書きもできない下層民がほとんどですし。このハンドブックはあくまで雇用者側が読むものです。
 新しく雇用が増えた就職口が成金の邸宅ですからね。雇う側も使用人の使いかたなんて全然知らなかったんです。
 昔から雇っていた貴族からノウハウを教えてもらえたならまだよかったんでしょうけれど。むしろ彼らと肩を並べるために無理してメイドを雇おうってわけなので、そうそう教えてもらうことなんてできなかったんです。本だけが頼り。

 先生が持ってきた本は「Mrs Beeton’s Book of Household Management(ビートン夫人の家政読本)」といって、出版当時10年間で売上げ200万部を越えた大ベストセラーです。著者はイザベラ・メアリ・ビートン。執筆当時まだ20代前半だった若き才女で、自身も中産階級の婦人でした。
 本の内容は使用人各職種ごとの仕事内容の解説のほか、家庭の医学、法律知識、財産運営など。特に料理のレシピが充実していました。現代のレシピ本と同じ構成で、手順を図解入りでわかりやすく解説されています。
 ちなみにこの本、当然ながら著作権が切れているので、Amazon Kindle ストアでなら無料ダウンロードすることができます。

トピックex:19世紀の使用人 基本ルール

 出典が何なのか調べきれなかったのですが、授業で先生が紹介したのは以下の5点になります。

  1. 妊娠したら解雇
  2. 主人に口答えはNG
  3. 主人の子どもの前でうわさ話はNG
  4. ボーイフレンドが屋敷に来るのはNG
  5. 執事がこっそりお酒を飲むのはNG

 まあ、要は従順であれということですね。
 少々厳しい項目もありますが、当時のメイドは従わざるをえませんでした。先生の言うように紹介状を書いてもらえなければメイドの仕事を続けられませんでしたし、何より、彼女たちにはメイド以外の仕事の選択肢がなかったんです。

 上でも書いたとおり、産業革命は国内の労働力を地方農家や家内手工業から都市部の雇われ工員に転換しました。
 この結果、以前なら家庭内で働くことができた女性たちが家の外へ働き口を探さなければならなくなりました。ところが当時はまだまだ男性社会。工場に就職しようにも、あえて女性を雇うより普通に男性を選ぶ資本家が大多数でした。
 また、男性は男性で雇われ工員は薄給。夫の給与所得だけでは妻や子の生活費まで賄いきれず、どんなに就職情勢が厳しくとも共働きにならなければ家計を支えられませんでした。当時は売春婦ですら1晩の相場が食事1回分にも満たなかったほどの超買い手市場。それに比べたら、多少労働環境が劣悪だろうと税制上男性より有利なメイド業にしがみついていたほうがずっとマシだったんですね。

 なお、二度の世界大戦のための徴兵によって一時的に男性労働力が足りなくなった時期、やむをえず工場工員などの就職口が女性にも開放されることになりました。
 これをきっかけに、ひたすら従順でいるよりなかったメイドたちも転職可能だという心の余裕により主人に対する交渉カードを獲得。以降、メイドの労働環境はずいぶんと改善され、また、そもそもメイドとして働く労働人口自体も急速に減っていくことになります。

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