超人女子戦士ガリベンガーV 第74話感想 バレエのレッスンはまた今度考えておくそうです。

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生徒役:電脳少女シロ、星街すいせい、天神子兎音

なかなか割れないなあ、この卵。

出演バーチャルYouTuber

電脳少女シロ

「タリオリーニって、パスタであるよね」
「タリオリーニはあります。今のは、タリオーニ」
「食いモノのことばっか考えてんじゃねえよ!」

 バーチャルYouTuber黎明期にデビューし、今なお最前線で活躍の場を開拓しつづけている始まりの人。清楚で暴虐で奇矯で蠱惑的な独特の感性は、誰もの頭を為にする、華やかな魅力に満ちています。一方で共演者やスタッフへ心配りを欠かさない細やかさがあったり、多様な価値観へ理解を示す聡明さもあったりしますが、それらは基本的にギリギリまで相手を追い詰めるためにこそ本領を発揮するので油断は禁物です。

 バレエを体験入学1日で挫折したエピソードから始まり、今回も場の話題を転がす中心的な存在として活躍しました。最終的に食いしんぼうキャラに回帰してオチも完璧。
 授業では他のトピックから着想を得て別のトピックの回答に応用するという、1つのテーマを深掘りしていくガリベンガーVならではの面白さもしっかり提供。レギュラーパネラーとしての貫禄を堂々見せつけました。

星街すいせい

「初登場になりますかね。星空すいせいちゃんですか?」
「はい! 全然違います!」
「星空じゃないの? ――あ、星街だ!」

 まるで熱狂中のライブアリーナからふと見上げた初冬の夜空のような、美しい名前が印象的なバーチャルアイドル。フィジカルとテクニックの調和がとれたバランスのいい歌声でオールジャンルな楽曲をオールマイティに歌いあげます。一方で根っからのアイドルオタクにして骨の髄まで染まりきったソシャゲプレイヤーとしての一面も。一昔前はガチャを回しすぎてしばしばクレジットカードを止められていました。

 今回が番組初出演でしたが、特に緊張も感じさせず、いかにもアイドルらしい回答をしてみせたり唐突に本当は怖いグリム童話ネタをぶっ込んできたり、ほどよい具合に爪痕を残していったのではないでしょうか。
 天神子兎音との気安い仲を窺わせるやりとりもあり、星街すいせいとはどういうキャラクターなのか、彼女をまだ知らなかった視聴者にもきっと伝わったと思います。

天神子兎音

「子兎音ちゃんは? 500歳のアナタ」
「そうですね。えーと、神様でいう幼少期の折り・・・フフッ」
「いやいやいや。笑いたいのはこっちのほうですよ。そちら側がヘラヘラされても。こっちはグッとこらえてるんですから」

 京都在住、500歳のロリゴッドにして和ロックの歌い手。ゴリゴリにコブシとガナリをきかせたエネルギッシュな歌声でいつも会場を沸かせています。好きなものはアニメとマンガ、コンビニ飯、缶チューハイ、それからお金。神性のカケラもないキャラクターですが、ひとまずファンを大上段から見下すことで辛うじて体面を保っているつもりでいます。信者をポンコツと蔑むとき、噛み様もまたポンコツかわいくなっているのだ。

 毎度のことながら、オープニングトークでぶっ込む割に授業中は至極真面目な優等生でした。小峠教官をイジるシーンでもなきゃ本当にふざけないですよね、この人。いいことだとは思いますが普段の印象からすると相当意外・・・。
 それはそれとして、自分の設定周りの話になるといきなりうろたえはじめるのもまた、毎度のことながら、なんなの?

超難問:バレエの謎を解明せよ!

特別講師&授業テーマ雑感

 市瀬陽子先生は聖徳大学音楽学部の准教授です。専門はバロックダンス。授業にも出てきた、バレエがフランスに伝わってきて花開いた時代のダンスですね。学生時代は文学専攻だったようですが、在学中に舞台芸術の世界に触れ、卒業後改めて東京藝術大学で美術を学びなおしたという来歴の人物のようです。
 もちろん教諭業だけでなく、自身も振付師として、あるいは舞台監修などのかたちとして舞台に携わり、研究者ゆえの豊富な古典舞踊知識を生かした一角の舞台人としても活躍しています。

 「バレエは爪先で物語を語る」と評されることがあります。それほどに精緻な身体操作が尊ばれ、また、ダンスでありながら演劇性が強いジャンルでもあるということです。
 フランスに伝わったバレエは、当初オペラの一部として組み込まれていたようです。なんとなくそれっぽいイメージはありますよね。というか、ヘタするとバレエとオペラを混同している人もたぶんいますよね。しゃーない。そういう歴史があるからこそ、バレエはダンスを通じて物語を描くという独特の発展をしてきたんですから。オペラとバレエの違いなんて歌うか踊るかくらいなものです。(※ 暴論)
 日本にはロシアのバレエ団がしばしば公演に来ていますね。テレビCMでよく見かけるので、なんとなくオペラといえばロシアのものというイメージを持つ人もいるかもしれません。実際、世界5大バレエ団のうちボリショイ・バレエとマリインスキー・バレエという2つもの著名バレエ団を有していることからもわかるように、ロシアもバレエ史において重要な役目を担った地域です。もっとも、歴史に登場するのは18世紀以降なので、今回の授業で扱った範囲より後の話になってしまうのですが。

トピック1:バレエの起源は何?

 市瀬先生、のっけから楽器を弾いてステップを踏みつつ登場。
 この楽器は・・・何でしょう? 形はギターが小さくなった感じというかウクレレっぽいですが、弦が4コース8本。弾いている曲もイタリアンなリズムなのでマンドリンっぽい雰囲気もあります。マンドリンだとボディがくびれてませんし後ろに膨らんだ丸形なので明らかに違うのですが。素手で弾いてますし、弦はアクリル弦を使っているのでしょうか。ミニギターの一種をマンドリン風に演奏している?
 楽器がわからないなら注目すべきはステップでしょうね。爪先を外側に大きく開き、その爪先で床を撫でながら、踵の接地位置はまっすぐな一直線を描くように。爪先を大きく開いているので、普通に歩くのと違って股関節の可動域だけではまっすぐ前に歩くことはできません。代わりに膝の関節を柔らかく使うことで、どこか人間らしからぬ、ふんわり軽やか、重力を感じさせない羽ばたくようなステップとなっています。これがバレエか。

 さて、そのバレエ。起源は15世紀イタリアで生まれたといわれています。それはどういうものだったでしょうか? という、ちょっとふんわりとした質問です。

 「バレエを踊ってる人ってすごくキレイじゃないですか。美しいので、自分の好きな人に『私ってすごくきれいなのよ!』ってアピールするものだったのかなって思いました。キレイキレイアピール」

 天神子兎音の回答。
 バレエというか、ダンスは人間の体ひとつでできる、最も原始的な表現行為のひとつです。そこには必然、人間の素朴で根源的な感情表現が乗せられてきましたし、もちろん求愛アピールとして踊られてきた歴史も枚挙に暇がありません。誰でもできるわけですからね。
 ただ、まあ、バレエの歴史に限ってはあんまり関係ないかもしれません。

 「グリム童話とかで見たんですけど、拷問。なんか、鉄の靴とか履いて鉄板の上で踊らせた、みたいなやつ」

 星街すいせいの回答。いきなり何を言っているんだ。
 グリム童話における白雪姫のラストシーンですね。白雪姫と王子様の結婚披露宴にはあの悪役のお妃様も呼ばれました。自分より美しいという皇太子妃がどんな人物なのか気になったお妃様が披露宴に出席してみると、そこにはにっくき白雪姫の姿、そしてなぜか真っ赤に炙られている鉄の靴が。お妃様はその赤熱した鉄の靴を履いて踊らされ、そのまま死んだんだそうな。
 ・・・グリム兄弟のなんとしても勧善懲悪を描きたい断固とした意志を案じますね。結婚披露宴の余興でそんな趣向を凝らした処刑見せられても反応に困るわ。

 キーワードは「Ballo・Balletto・Ballet」
 一言で言ってしまえばイタリア語で“踊る”という意味の「Ballare」から派生してバレエになったという話でしかないんですが、実は3つ挙げられたキーワードのうち最後のBalletだけはフランス語です。そこに注目しつつ、もうちょっと突っ込んで見ていきましょう。

 バレエの原型は15世紀イタリア、つまりルネサンスの絶頂期に生まれました。当時、宮殿では演劇や詩の朗読など、様々な余興が催されていました。それら余興のうちのひとつとして演じられた踊りがBallo。
 市瀬先生によると、特に演劇の幕間に演じられていたということのようですね。演劇は舞台装置としてちょっとした建築物も扱うので、宮廷で演じられるような豪奢な演目だと特に場面転換に時間を要します。幕の裏では豊臣秀吉の一夜城よろしく、その場でビスを打ったり解体したりなんてことまでするんですよね。

 なんとも贅沢な話ですが、こういうところで見栄を張るというのは国力の顕示として大切なことなんですよね。前話のメイドの件と似たような事情です。お金を持っている国は大抵の場合軍事力にも充分お金をかけていると考えられますから、他国の使者なんかにこういう贅沢なものを見せると、それだけで無用な戦争回避にもつながるわけです。
 現代でもこの手の外交術は合同軍事演習とか軍事パレードとかというかたちで続いています。ご近所の例の国みたいに外交的に孤立しているところだと特に力を入れていますよね。

 当然、そういう豪奢な演劇だと5分や10分じゃ幕は開きません。その場つなぎとしてBalloが演じられていたということです。
 最初のころは主にステップの美しさを見せるものだったようですね。軽やかな足取りで床に描いていく図柄を楽しむものだったんだとか。
 踊り手は職業舞踊家ではなく貴族でした。貴族はどこの国でもだいたい教養としてダンスを学んでいますもんね。Balloを通じて貴族階級の生活の余裕を示すこともできたのでしょう。

 このBalloがやがてBallettoと呼ばれるようになり、そして16世紀、カトリーヌ・ド・メディチのフランス王・アンリ2世への輿入れを機に、フランスへも伝わっていくことになります。
 現代でも用いられるBallet(バレエ)という言葉の誕生です。

トピック2:バレエが爆発的に広まったきっかけは?

 カトリーヌ・ド・メディチはたいへんなBallettoの愛好家で、フランス王宮でもたびたびバレエを催させたといいます。おかげでフランスの王族・貴族たちにはこの時点ですぐに広まりました。
 しかし、フランスで本当にバレエ文化が花開いたといえるのはもっと先の時代でのこと。バロック芸術が咲き乱れる17世紀、“太陽王”ルイ14世の治世下でのことでした。
 さて、この時代のフランスでは何が起きたのでしょうか?

 「アイドルが広めた」
 「ちょっとすいちゃんに似てるけど、国の象徴となる王女様とかがやるようになった」

 星街すいせいと天神子兎音の回答。
 だいたい合っていますね。演じたのはルイ14世ですけど。彼は幼いころからバレエを見て育ち、自らも舞台に立つほどバレエに傾倒していました。太陽王と呼ばれるようになったのもバレエで太陽神の役を演じたことがきっかけなんだとか。

 「先ほどお話しで『国力を示すひとつとしてバレエが数えられていた』と伺ったので、積極的にバレエを用いて民を平定しようとしたのかなと思いました」

 電脳少女シロの回答。
 直接的にそういう説が唱えられているわけではないようですが、当然にありうる話です。
 ルイ14世の治世は政治的に安定していたため、軍備強化より文化奨励に多くの力が注がれていました。文化は平和情勢下における重要な侵略戦力のひとつです。他国に批難されることなく国境を越えて浸透させることができ、表向き一滴の血も流すことなく国内外への影響力を拡大することができます。
 国民に好かれている人物や国家へ武器を向けることは、たとえ一国の王であってもできないんです。肝心の兵隊からして、自由意志を持つ国民のひとりなんですから。糧食や装備を生産しているのも国民なんですから。彼らの意に沿わない命令をしたところで逆に自分の喉元へ武器を向けられてしまうだけです。

 キーワードは「記譜法」
 バレエ大好きルイ14世はバレエの普及に尽力しました。オペラ座をつくってバレエを広く上演させ、さらに王立舞踊アカデミーを設立して職業舞踊家を育成しました。
 教育機関をつくるなら教本も必要です。バレエ経験者に経験則を教えさせるのでもいいですが、それでは教員の質と数を充分に確保できません。そこで、楽譜と同じようにバレエの振りつけを紙に記す方法を考案させ、教育システムを体系化させたんです。

 記譜法の確立は国内の舞踊家育成以外にも多大な効果を生みました。
 なんといっても書籍は人間よりも国境を越えるのが容易ですからね。カトリーヌ・ド・メディチの時代のように大きなきっかけがなくとも、ただ教本を輸出するだけでバレエ文化を輸出することができます。
 ぶっちゃけ、文化侵略ってやつです。他国の伝統的な文化を駆逐し自国の文化に染めあげることで他国民からの支持を集め、外交的に優位に立てるようになるわけです。

トピック3:何のためにトウシューズは作られた?

 隙あらば画鋲を入れられることで有名なトウシューズ(※ 違う)。可憐な見た目の印象に反して、靴底は革でできているので新品だとめっちゃ固いです。野球のグローブのように、使い込んだりよく揉んだりして、柔らかくしてやる工夫が必要になります。
 また、爪先で立つために靴の先端を平たく加工してあります。ただし、充分な修練を積んで足の甲の筋肉を発達させた舞踊家以外が爪先で立つのはくれぐれも厳禁。転倒しますし、骨折しますし、成長期前の子どもだと足の骨の成長を阻害するリスクまであります。というか、プロでも本来は足先に詰め物を入れて使うものだったりします。
 さて、このトウシューズは何のためにつくられたものなのでしょうか? ・・・今回の授業、質問が全部ふわふわしていますね。

 「リボンが付いているじゃないですか。なので、あれは自分をラッピングして観客にプレゼントっていう、エンターテイナーの鑑なんですよ!」

 電脳少女シロの回答。
 トウシューズにかわいらしい装飾が施されているのは重要な着目点です。一応舞台衣装の一部なんですから、こういう靴を履くからには舞踊家の愛らしさを引き立てる意図が当然あります。
 ちなみに、そういうわけで一般的にトウシューズは女性しか履きません。

 「トウシューズでしっかり立ったときに足の形がメチャメチャキレイに見えるんですよね。で、踊るときって結構まっすぐ立ったりとか足を片足上げたりとかアラベスクしたりとかするんですけど、そのときにキレイに見えるようにつくられたのかなあ」

 天神子兎音の回答。
 アラベスクというのは、両手を前後に伸ばし、片足を後ろに大きく伸ばす、バレエといえばこれというべき定番ポーズのことですね。天神子兎音はバレエ経験者だそうで、その経験が回答にしっかりと出ていますね。

 「私も子兎音ちゃんと同じになってしまうんですけど。やっぱなんか、足がきれいに見えるというか。私も結構ヒールとか履いたりするんですけど、ヒール履くと足が長く見えるので、そういうやつ」

 星街すいせいの回答。
 質問がふわっとしているせいもあってふわっとした回答になっていますが、そういう方向性の話だというところまでは合っています。ただ、先生としてはもう少し踏み込んだ回答が欲しかったのではないでしょうか。

 キーワードは「ラ・シルフィード」。純真可憐な風の妖精に恋した男性が彼女を自分のものにできず破滅していくという筋書きの演目です。
 このバレエの主役は風の妖精。可憐に軽やかに羽ばたくように、人間離れした愛らしさを表現したうえで演じる必要がありました。そのためのトウシューズ。爪先立ち(ポワント)という人間にはムチャな姿勢をあえて、しかも美しく実現するための靴だったというわけです。

 この演目は当時大変な反響を生み、その後トウシューズは、同じく採用されていた舞台衣装のチュチュとともに、他の演目でも広く用いられるようになっていったんですね。

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